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巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

「鋼血の姫甲士 ~花の章~」第1話「誕生! ドールピンク」6・7章 | main | 蒼き反射少女の苦闘 狩猟者アークニー編
蒼き反射少女の苦闘 狩猟者アークニー編 その2

 5、
 
 
 雨が降る、校舎の屋上。
 厚く重なった黒い雲によって、世界は薄墨に覆われていた。すでに夕刻という時間帯。運動部の者でさえ、今日は早々と帰宅の途についている。
 
 制服姿の白井日菜子は、うつ伏せで濡れた屋上に倒れていた。
 エロコモンでの闘いに敗れ、現世に戻った少女は、冷たい雨に打たれている。意識がない日菜子を迎えるのは、その涙と、股間を濡らす分泌液とを隠す、無情な雨のみ。
 
「日菜子っ!? どうしたの、日菜子っ!!」


 傘もささずに、ひとりの少女が横たわる日菜子に駆け寄った。
 肩甲骨まで伸びた、長くて赤い髪の少女だった。眉の上で切り揃えた前髪が、凛とした表情によく似合っている。
 日菜子を抱き起す動きは、しなやかでキレがあった。スレンダーな肢体は、バネと柔軟性に富んでいるのがその動作だけで窺える。
 
「日菜子っ、一体なにがあったのっ!? なんでこんな姿に……っ!!」

 少女の胸のなかで、日菜子の肢体はぐったりと脱力したままだった。
 四肢には力がなく、濡れたショートヘアーが青白い頬や額に貼りついている。口元がやけにテカっているのは、雨だけでなく、垂れ流れた涎も濡らしているせいだ。
 
 なんとか抱え上げようとして、少女は日菜子のお尻の下に腕を差し込む。
 スカートに、ほんのりと温かさが伝わった。
 瞬時に少女は気付く。日菜子は……股間から、大量の体液を漏らしていることに。
 
 リフレクターとして、精神世界で闘うもうひとつの顔を知っている少女は、日菜子の身に何が起こったかを想像できた。
 この世界を守るため、たったひとりで闘っている親友を、見捨てるわけにはいかなかった。
 
 
 
「おや、お目覚めのようだね」

 深い眠りから覚めたとき、白井日菜子は、自分が置かれた状況を理解するのに、しばしの時間を必要とした。
 毛布に包まれている。天井の色には見覚えがあった。通っている、星ノ宮女子高等学校の校舎の天井。
 鉛のように重い身体と、ひどい脱力感……ああ、そうだ。私は……エロコモンで、またも原種シュモディアの刺客に負けたんだっけ。
 
 窓ガラスを水滴が叩いている。外はすっかり暗くなっていた。どれだけの時間、意識を失っていたのだろうか。
 制服を脱がされ下着姿になっているのは、グッショリと濡れてしまったからだろう。部屋の隅に、水分を吸った制服が干されている。
 
 頭がガンガンと痛み、少し吐き気がした。
 あれだけカラダを弄ばれたのだ。嘔吐したくなるのも……当然だろう。
 だが、日菜子はグッと、こみあげるものを呑み込んだ。これ以上、迷惑をかけるわけにはいかない。
 聞こえてきた声、そしてソファーに寝かされている状況から、日菜子は己が親友たちに救われたことを悟っていた。
 
「有理。……更紗も」

 上半身を起こすと、見知った顔がふたつ、視界に飛び込む。
 長くて黒い髪。夏でも冬の黒い制服を愛用する、斉木有理と。
 もうひとりは、前髪パッツンにした赤髪が似あう少女、森川更紗。
 
 そうか、ここは科学部の部屋か。
 日菜子は全てを理解する。リフレクターが闘う精神世界=コモンへの扉は、校舎の屋上にあった。そのためコモンでの闘いに敗れたとき、強制的に現世に戻されると、屋上に運ばれる場合が多い。
 屋上には科学部室が作られている。
 科学部といっても、在籍するのは有理ただひとりであった。IQ300の、天才少女。少々風変りなこの美少女のために、学校は設備の整った部室を用意したと、もっぱらの噂だ。
 
 エロコモンで惨敗を喫した日菜子は、近くにあるこの科学部室に運ばれたのだろう。
 幸いなことに、有理もまた、日菜子がリフレクターであることを知っている。かつての闘いで、日菜子を助けた12人の少女のひとり。その頭脳が、おおいに役立ったのは言うまでもない。
 
「まだ寝ていなさい。無理のできる身体じゃないわ」

 猫のような瞳でキッと見つめて、更紗が強い口調で言う。
 初めて更紗に接する者は、彼女のこうした、キッパリしすぎる言動に戸惑いを覚えることもあるが……長い付き合いの日菜子はわかっている。これが更紗の、優しさからきていることを。
 普段から努力をし、研鑽を続けている更紗は、毅然とした態度が身についている。だから心底から他者を思いやれる性格なのに、その表現が少々不器用だ。
 
 かつてバレエのトップダンサーだった日菜子の、よきライバルが更紗であった。
 舞踊の天才、と呼ばれるほどに、更紗はどんなジャンルでも踊れる少女だったという。そんな更紗は、とあるコンクールで日菜子のバレエを見て……他の一切のダンスをやめ、バレエに転向した。
 
 あなたに憧れてバレエを始めた、と更紗に告白された時の、むず痒い感覚をいまでも日菜子は覚えている。もちろん、嬉しかった。
 そして同時に、事故で右膝を痛めた己の不甲斐なさが……ケガのせいで踊れなくなった不運が、申し訳なかった。
 
「身体の状態を調べさせてもらったが、肉体のダメージはないようだ。ただ、激しく疲弊している。恐らくは精神の問題だろう」

 こちらは淡々とした口調で、有理が言う。
 常人離れした知能を持つ一方、黒髪の少女は感情を失っている、と診断されていた。日菜子たちとの交流が深まった今も、奇妙な行動をとることがあるのは、そのせいだろう。
 
「これらから類推されるのは、君がコモンでの闘いに負けた、ということだ。違っているかい?」

 可愛らしい顔をしているのに、有理が放つ台詞は、年上の学者といった風情であった。
 
「日菜子、あなたはまだ、リフレクターとして闘っているのね?」

 ノーとは言わせない、といった調子で更紗が訊いてくる。
 声質が甘く、耳のなかでコロコロと転がるように響きが心地よい。こんなところも、常に凛としている更紗が、そのキツイ口調の割りに愛されている理由かもしれなかった。
 
「……そうだよ。新たな原種が、また地球にやってきてるから」

 ふぅ、と深いため息をひとつ吐き、日菜子はソファーに深く沈む。
 再びリフレクターとして闘っている事実を、かつての仲間たちに話すかどうか――。日菜子は迷っていた。躊躇っているうちに、話さねばならなくなった。
 
 彼女たちの手を再び借りることに、躊躇いがあったのだ。
 
「ユズやライムが、もういないのに!? じゃああなたは、たったひとりで原種と闘っているのっ!?」

「仕方ないよ。私しか、リフレクターはいないんだから。この世界を守るためには、私がやらないと」

「なんで私たちに、それを教えないのよっ!」

 更紗の口調と表情は、ハッキリと日菜子を責めていた。
 いや、怒っている、というのが正しいかもしれない。
 
「私や有理は、フラグメントであなたと繋がっているわ! 以前のように、力を与えることだってできる!」

 想いの欠片であるフラグメントを、共有することでリフレクターは他者の「想い」を力に変える。
 そうやって更紗や有理の「想い」を、日菜子は共有してきた。共感、あるいは、想いを理解した、と言い換えてもいいだろう。
 だからふたりとは、強い力で結ばれている。更紗や有理のみならず、12人の仲間たちと繋がっていた。
 
 そう、繋がって「いた」。
 
「……敵は原種だけじゃない。原種が作り出した化身や、モンスターたちも相手にしなきゃいけない」

「じゃあ尚更、あなたを助けなくちゃっ……」

「ハッキリ言って、危険すぎる闘いだよ。今の私じゃきっと、更紗たちを守れない。みんなまで辛い目に……遭わせることになる」

 これまで、数々受けた陵辱と痛みが、日菜子の脳裏に蘇っていた。
 
「正直に、言うよ。私はずっと、新たな原種に負け続けてる。みんなの力を借りたって、たぶん敵わない。それくらい今度の敵は厳しいって……もうわかっちゃってる」

「っ……!! そんなっ……!! だって、私たち12人の力が揃えば……っ!!」

「残念だけど、12人は揃わないよ。もうすでに、早苗としほりは敵の手に堕ちてしまった」

 西田早苗と菅本しほり。
 日菜子の親友であったこのふたりは、原種シュモディアが遣わした使徒=女教師・持内あずさの強力な催眠術によって操られていた。
 リフレクターに力を与える仲間が、むしろ敵として寝返ってしまったのだ。
 
「早苗と……しほりがっ!?」

「ふたりだけじゃないかもしれない。他にももっと、シュモディアの手先になってしまった仲間はいるかもしれない」

「そんなっ……」

「更紗と有理がまだ仲間でいてくれて……内心、すごくホッとしたよ。ありがとう」

 微笑を浮かべてみせるものの、どこか寂しい表情になるのが、日菜子は自覚できた。
 
「でも、だからこそ……。ふたりを、危険に巻き込むことはできないよ。私の、リフレクターとしてのレベルがもっとあがれば、なんとかなるかもしれない。それまでは……私ひとりで踏ん張るつもり」

「なんでっ!? なんでそんなこと言うのっ!? 日菜子が苦しんでいると知って、放っておけるわけないでしょうっ!!」

「友達だからだよッ! 更紗も有理も大切な友達だからッ……傷つけたくないんじゃないッ!!」

 つい声が昂るのを、日菜子は抑えられなかった。
 更紗は、真っ直ぐ気持ちをぶつけてくる少女だ。そのキッパリとした態度が日菜子は好きだし、だからこちらも呼応するように、本音が飛び出てしまう。
 真正面から見つめる更紗の唇は、強く噛み締められていた。
 その瞳が吊り上がっているのに、心なしか潤んで見えるのは……きっと彼女が、日菜子のことを大切に想ってくれている証拠なのだろう。
 
 本当に、あなたは優しい。日菜子は思う。
 だけど……ううん、だからこそ、私みたいな酷い目には遭わせたくない。
 せめて、せめてもう少し、私が強くなるまでは……。
 
「君たちはケンカしているのかい? それともお互い好きなのか? どちらなんだい」

 身も蓋もない発言が有理から飛び出して、日菜子と更紗は慌てて目を逸らす。
 頬が真っ赤に火照っていた。興奮しただけが原因ではなく……きっと、ライバルだったふたりの関係を、有理に絶妙に言い表されたからに違いなかった。
 
「知っての通り、ボクはひとの感情というのが理解できないんだ。今のように複雑な交渉をされるといささか困るな」

 『交渉』などという単語で表現するのが、いかにも有理らしかった。
 普通の者の発言ならば、皮肉か冗談めかした忠告とでも受け取る台詞だが、有理に限っては紛れもない本音であるのを日菜子も更紗もわかっている。彼女は本当に、感情を理解できないのだ。
 
「とりあえず君たちが興奮しているのはわかった。これでも飲んで、お互い落ち着きたまえ」

 アルコールランプで沸かしたコーヒーを、有理はふたりに勧める。
 日菜子にはビーカー、更紗には三角フラスコに入ったまま、だったために、頬が自然に引き攣った。
 これが場を和ませるためのジョークではなく、有理にとっては通常営業なのが悩ましいところだ。三角フラスコの方じゃなくてまだ良かった、ヘンなところでホッとする。
 
「原種が現れた以上、君はリフレクターとして闘わなきゃいけない。そこまでは確実だ」

 褐色の液体が入った試験管を傾け、有理も咽喉を潤す。
 
「ならばボクや更紗、あるいは他の仲間たちの力を借りるべきではないのか? 少しでもこの世界を守る可能性が高まるならば、そうすべきだ」

「……力を借りて勝てるような、甘い相手じゃないよ。もっと確実に倒せるって、勝算が増えない限りは……」

「ねえ、日菜子」

 それまでしばし沈黙していた更紗が、口を開いた。
 三角フラスコの中身は、空になっていた。お嬢様らしき雰囲気もある更紗が、そんな容器で飲む姿は想像しにくいが……コーヒーを飲み干すことで、落ち着きを取り戻したかったのかもしれない。
 
「あなたにとって、私は……どんな存在なの?」

 じっと澄んだ瞳で見つめられ、日菜子は戸惑った。
 改めて問われる内容は、本人を前にして答えにくいものであった。
 
「……大切な、友達だと思っているよ」

「ありがとう。そう言ってもらえるのは嬉しいわ。でもバレエの関係だったら?」

「バレエの?」

「私は日菜子の演技を見て、あなたのようになりたくて、バレエを始めたわ。一緒に表彰台に上るようになった時は……嬉しかった」

 右膝の怪我で、二度と踊れなくなった日菜子にとって、バレエの話はできればしたくなかった。
 だが、相手が更紗ならば。ことバレエにおいては、誰よりも、両親よりも深く関わってきた更紗の問いならば、答えるべきだと素直に思えた。
 
「それは……ライバルだと、思ってた」

「あなたは私に勝ちたいと、本当に思っていた?」

 続けざまの質問に、当惑する。
 更紗のことは、なんてキレイな踊りをする子なんだろう、と初めて見た時から気になっていた。更紗のバレエが好きで、メキメキと成長する様子に感心した覚えもある。
 だが、勝負している、と感じたことはあまりなかったかもしれない。
 日菜子は自分のバレエを磨くことに精一杯だった。他の誰かに、更紗に、勝つとか負けるとか、考えたことがない。
 
「ねえ、日菜子。あなた、走ることは得意?」

 唐突すぎる話題の変化に、思わず目をパチクリしてしまう。
 しかし更紗の表情は真剣なままだった。細く整えられた眉が、わずかに皺を寄せているのは、なにか悲しい想いをグッと我慢しているようにも見える。
 
「え? ま、まあ、トレーニングの一環でよく走ったから、長距離走は得意だったよ」

「マラソンをしている時、あなたは後ろのランナーを振り返ったりするのかしら?」

「……それは」

 しない。したことがない。
 日菜子は常に、ゴールを見据えて走っていた。前だけを見て、己の進む先を見ていた──。
 
「私にはいつも、あなたの背中が見えていたわ」

「え?」

「私は本当に、あなたにライバルと認めてもらっているのかしら?」

 更紗の言葉に、心臓がドキリと痛んだ。
 その事実が、質問の答えになっているのかもしれなかった。
 
「日菜子。あなたには……私の背中が、見えることがあるの?」



 6、
 
 
 突然の地震に、科学部室がグラグラと揺れた。
 更紗に返す言葉がなかった日菜子は、一瞬どこかでホッとしていた。すぐに身を引き締める。大きな地響きの発生源はすぐそば、校庭で起こったことを察したからだ。
 
「時空の歪みを計測器が感知した。以前、原種が出現した時と同じ現象だね」

 抑揚のない有理の声を聞くまでもなく、日菜子にはわかっている。
 原種は精神世界=コモンだけでなく、現世にも出現できるのだ。むしろ現実世界での地球支配を成し遂げる前に、コモンにて徐々に侵略をしている、という感覚に近い。
 
 いつの間にか、雨のやんだ外へ、3人は飛び出した。
 夜なのに、屋上から見下ろす校庭の様子がよく見える。これも原種出現の影響かもしれなかった。
 
 『特異点』である星ノ宮女子高校は、コモンと現世の境界が曖昧なのだ。
 原種の影響が強くなれば、現世であってもコモンと似たような状況となる。現実でありながら、半ば精神世界のルールが適用される。
 今、日菜子たちが動けているのは、リフレクターの力が影響しているためであった。普通の生物は、時間が止まっている。校庭を中心とした一角だけが、異空間として切り取られたようなものだ。
 
「狩猟者アークニー……ッ!!」

 不可思議な異空間の中心にあるものを、日菜子は鋭く睨みつけた。
 3mはある巨大な蜘蛛が、校庭の真ん中で巣を作り始めている。
 8個の赤い眼と、膨らんだ腹部から飛び出した太くて赤い針。グロテスクなその姿を認め、傍らの更紗が悲鳴をあげかける。
 
「あっ……あのクモのバケモノが、新しい原種なのっ!?」

「原種シュモディアは他にいる。あれは、原種が送り込んだ刺客ってところだよ」

 その刺客にさえ、私は完敗を喫したんだよ。
 そんな台詞は、とても更紗や有理には言えなかった。原種の生み出したモンスターが現れた以上、その退治が出来るのはリフレクターである日菜子しかいないのだ。
 
「ホホホッ……! そんなところにいたのね、白井日菜子」

 巨大蜘蛛の周囲にわらわらと、黒髪の女たちが湧いて出る。
 全部で13人。全員が同じ容姿をしていた。屋上の3人を見上げて、ケラケラと笑っている。
 
「あれは……新しく赴任してきた、持内先生じゃないっ!? どういうことなのっ!」

「持内あずさはシュモディアの化身……13体の使徒だよ。私を……リフレクターを倒すために、早苗やしほりを操っているのもあのひとたち。私にトドメを刺すために、現世まで追ってきたみたいだね……ッ!」

 グッと強く、日菜子は唇を噛む。
 本来はコモンに生息するモンスターが出現した、ということは、この場で日菜子もリフレクターに変身ができる。魔法少女として、高い身体能力と強力な魔法を扱えるようになる。
 
 だが……巨大蜘蛛と13体の使徒。孤独なリフレクターが闘うには、あまりに戦力差がありすぎる。
 事実、数時間前に、日菜子はエロコモンにて惨敗を喫したばかりではないか。
 
「アークニーが、どうしてもあなたが欲しくてたまらないみたい……制止しきれないから、来ちゃったわ。早く闘いましょう、白井日菜子。リフレクターが現れないなら、現実世界がどんどんとコモンに飲まれていくわよ?」

 女教師に挑発されずとも、覚悟はできていた。
 リフレクターとなった時から、日菜子に選択肢などないのだ。そうやってこれまでも、強大な原種たちと闘ってきた。
 
「更紗と有理は、ここで待ってて!」

「日菜子っ、あなたはまだ身体がっ……!」

「大丈夫ッ!! ふたりはここから、絶対に離れないでッ!!」

 先程の更紗との会話の動揺も、依然収まっているわけではなかった。
 しかし今はとにかく、ふたりの安全だけは守りたい。私はどうなろうと、大事な仲間たちだけは守り抜いてみせる。
 
「アークニーッ!! 持内あずさッ!! 今すぐ行ってあげるわッ!!」

 校舎の屋上から校庭へと、迷うことなく日菜子は飛び降りた。
 小さく、しかしグラマラスな肢体が、青い光に包まれる。一瞬夜が、朝陽を浴びたように眩くなる。
 日菜子の右眼が青く輝き、下着姿にコスチュームが装着される。
 淡いピンクとブルー、透明感あるリフレクターの衣装。リボンとフリルに飾られた全身が、キラキラと輝いた。蒼き魔法少女が、現世に光臨する。
 
「はあああッ!! アヴェルスヴェリエッ!!」

 急降下しつつ、ガラスの剣で空間を斬りつける。
 斬撃の衝撃波が、カッターとなって13人の女教師に襲い掛かった。日菜子の先制攻撃に、同じ姿の女たちが慌てふためく。
 高速で飛ばした無数の刃は、3体の持内あずさにヒットした。
 絶叫しながら、黒髪の女は霞のように消えていく。
 
「この小娘ッ……奇襲とはねッ!」

「あなたたち相手に、容赦するつもりはないよッ!!」

 ガラスのような透明な靴から、軽やかに日菜子は着地した。魔法少女への変身を完了させ、夜の世界で、自ら発光するようにぼんやり浮き上がっている。
 よく訓練された兵士のごとく、すぐさま残る10体の持内あずさは日菜子を取り囲んだ。
 その長い黒髪が、頭上でゴワゴワと変形する。原種シュモディアの化身でもある彼女たちは、それぞれ個別の武器を髪で作り上げるのだ。
 
「だけどッ! どう頑張っても、私たち全員を一斉に倒すのは不可能なようねッ!?」

「くッ……!!」

 ハンマーや槍、あるいはノコギリなど。
 頭上の武器を振りかざし、次々と女教師は日菜子に飛び掛かった。1対10。それも包囲された状態での、圧倒的不利な闘い。
 
 現実世界においても、リフレクターの闘いは基本的に変わらなかった。
 魔力の元、ともいえるエーテルを消費しながら、魔法で攻撃する。エーテルは自然に回復するが、底を尽いたら魔法は使えなくなる。
 そして魔法を発動した後は、次の魔法まで時間がかかる。
 日菜子が苦戦を強いられる、最大の要因がここにあった。リフレクターの仲間がいれば、魔法発動可能になるまでカバーしてくれるが、たったひとりで闘っている今の日菜子は、この時間をひたすら耐えしのがねばならない。
 
 アヴェルスヴェリエで3体を倒した代償に、日菜子はしばらくの間、敵の攻撃を受け続けねばならなかった。
 
「くうッ!! いつの間に、周囲を……ッ!?」

 突き出されるドリルや鉄球を避けながら、避難場所が狭まっている事実に日菜子は気付いた。
 巨大蜘蛛の糸が、すっかり周りに張り巡らされている。果敢に敵陣に飛び込んだリフレクターであったが、シュモディアの刺客たちは冷静に、獲物を逃がさぬ準備を進めていた。
 
「ホホホッ、逃がさないわよ、白井日菜子ッ! 私たちの攻撃を避け切れるかしらッ!?」

 真っ直ぐ突き出される黒髪の刀を、日菜子は飛びよけた。
 その瞬間、待っていたかのように、背中をバラ鞭が叩く。そこに飛んでくるのを待ち構えたような一撃が、剥き出しになっている背でバチイイィッ、と破裂した。
 
「きゃあああッ!! ううぅ”ッ!!」

 仰け反る日菜子に、さらに黒髪を鎌に変形させた女教師が斬りかかってくる。
 咄嗟に跳躍する、ブルーとピンクのリフレクター。
 高々と舞い上がった日菜子は、蜘蛛の糸で張られた天井を突き破らんと、ガラスの剣を振るった。
 
「えッ!? こ、これはッ!!」

 ネバネバした糸が輝く刀身に絡みつき、切れ味を鈍くする。
 これ以上、糸が巻き付いたらガラスの剣が使えなくなる──慌てて日菜子は、斬りつけるのをやめた。
 透明な靴をカッと鳴らし、虚しく校庭に着地する。
 
「言ったでしょう、逃がさないと。狩猟者アークニーの作り出す糸は粘着質で弾力にも優れている……リフレクターの剣であっても、そう易々とは切れないわ」

「……どうやら、ここで確実に私を倒すつもりみたいだね……ッ……」
 
 蜘蛛の糸に包囲されたことで、逃げるという選択肢が消えたことを日菜子は悟った。
 いや、それだけでは済まない。巨大蜘蛛アークニーの糸は、想像以上に厄介なシロモノであった。
 魔法を駆使できなくても、剣はいつでも振れるが……これでは安易に振り回せない。糸に絡まれて、使いものにならなくなってしまう。
 
「ホホホッ……あなたのカラダでたっぷり遊ぶつもりだけど……最悪、死ぬなら死ぬで、シュモディア様は構わないと思っているのよ? 大事なことは、リフレクターを私たちに跪かせることですもの」
 
 コモンでの闘いと、現実とで、大きく異なる部分がいくつかあった。
 ひとつは精神世界とは違い、現実での敗北は死に繋がる、という冷徹な事実。
 だから日菜子は、なんとしてもこの闘いに負けられなかった。数時間前とは比べ物にならない、決定的な破滅を迎えることになってしまう。

(こ、このままじゃダメッ!! なんとかして、魔法が使えるまで時間を稼がないとッ……!!)

 しかし逆に、現実だからこそ、日菜子に有利に働く面もある。
 そのひとつが、エロコモンによる影響であった。あの場で闘うだけでも、臭いや視覚効果などで、気分がおかしくなってくる。媚薬成分が肌から浸透するようなエロコモンは、ウブな日菜子にとっては、毒沼同然の不利な戦場であった。
 エロコモンでの闘いに比べれば、日菜子はずっと動けている。
 
(致命傷だけは避けて、なんとか逃げ切ろうッ……! 10体の持内あずさとアークニー、全ての攻撃をさけるのは難しいけど……大丈夫、今の私は決して悪い動きじゃない……ッ!)

「……うふふ……きっとなんとかなる、って顔をしているね……日菜子ちゃん」

 突如湧いた声に、日菜子の体温がすーっと低くなった。
 
「し……しほりッ!?」

「やだなぁ、日菜子ちゃん。なんでそんなにビックリしてるの? 私がここにいるの、そんなにおかしい?」

 アークニーの後ろから、すらりとした美少女が、微笑を浮かべて現れる。
 サイドポニーにした髪と、少し垂れ気味の瞳が特徴的だった。顔の造りは可愛らしいのに、豊かなバストと長い手足のおかげで、随分大人っぽく見える。甘い芳香のような艶っぽさが漂うのは、ほんのりと施したメイクの効果かもしれなかった。
 恐らくこの星ノ宮女子高校で、もっともモテる少女が、この菅本しほりであった。
 
「だ~い好きな女の子の後を追うの……当たり前だよね? 逃がさないよ、日菜子ちゃん」
 
 日菜子への愛情を敵に利用され、操られてしまった……かつての仲間のひとり。
 
「日菜子ちゃんのカラダはね、全部私のものにするの。その柔らかな唇……揉み応えのある大きなオッパイ……ジュクジュクといやらしい蜜を垂れ流すアソコ……全部私がもらうんだよ」

「お願いッ!! 眼を覚まして、しほりッ!!」

 元々しほりは日菜子の下着を欲しがり、その肢体を抱きたがる……友情を越えた行動を見せる少女であった。日菜子を見詰める熱っぽい視線は、恋に近いものがある。
 持内あずさの催眠術によって、しほりを縛っていた理性の鎖は、砕けてしまったのだろう。
 今のしほりは、日菜子への劣情を隠しもしなかった。そのカラダを全力で愛撫し、肉欲の対象として見つめてくる。
 ある意味で、アークニーや女教師たちよりもしほりは厄介な敵と言えた。なにしろ普通の人間である彼女を、リフレクターが傷つけるわけにはいかないのだから。
 そしてもうひとつ。厄介なのは。
 
「うふふ……さっきの続きをしよ? 気持ちよかったでしょ、日菜子ちゃん……」

 自らの胸を、しほりは両手で揉み始める。
 日菜子のバストサイズも相当なものがあるが、ベストの上からでもわかるほどにしほりの乳房は膨らんでいた。その豊満な果実を、しなやかな指がぐにゅぐにゅと揉み潰す。
 
「んくぅ”ッ!? ……あはぁ”ッ……!!」

 ピンク色の光が、しほりと日菜子の間に繋がっていた。
 想いの欠片であるフラグメントを、ふたりは共有している。それはつまり、感情が繋がっている、ということ。
 しほりが感じている官能の痺れを、日菜子も同時に受け取ってしまっていた。
 快楽信号の強制受信。これにより日菜子は、先のエロコモンでの闘いでも敗北を喫したのだ。
 
「うふ、相変わらず日菜子ちゃんは反応がいいね……こうすると、堪らないでしょ?」

 頬をピンクに染めたしほりが、ベスト越しに己の乳首を、くりくりとこね回す。
 
「んはあ”ぁ”ッ!? ぁ”ッ──ッ!! ……し、しほッ……!! や、やめぇ”ッ……」

 半透明なコスチュームの下で、ゾワゾワと湧き起こる快感に日菜子は悶えた。
 左右の乳首がビクビクと、勝手に痙攣してしまう。少しでも甘い痺れを誤魔化そうと、日菜子はバストを掻き毟った。
 
 数時間前、日菜子はさんざん陵辱を受けている。アークニーの媚毒を胸や局部に打たれ、女教師の愛撫にたっぷりとイカされた。
 コモンでのダメージは、現実には影響しない……と言いたいところだが、それは肉体面での話だ。精神への影響はむろん、おおいにある。
 官能に浸され、肉欲に興奮したのなら、子宮の昂りは当然現実世界に受け継いでいる。
 淫らに堕ちたあの時の愉悦が、日菜子の細胞に蘇っていた。全身がたぎり、トロトロに蕩けそうになっている。
 
「ムダムダ♪ キモチイイのだけが、日菜子ちゃんに伝わってるんだもん。私と日菜子ちゃんは一緒にイクのっ……!!」

「んはア”ッ!? んあああ”あ”ぁ”ッ~~ッ!! ……やめッ……ッ!! さ、さわらない”ッ……でぇ”ッ~~ッ!!」

 しほりの左手が股間を擦り始めると、たまらず日菜子は叫んでしまった。
 胸と股間で起こる電撃が、下腹部にビリビリと流れてくる。奥にある肉壺から、トロトロと蜜が分泌されていく。
 貫く悦楽に、蒼き魔法少女の動きは止まってしまった。
 リフレクターの大きな隙を、10体の持内あずさが逃すはずもない。
 棍棒とハンマーが、震える日菜子の後頭部を、したたかに殴りつけていた。
 
「うぐう”ッ!! ……ぅああ”ッ!!」

 脳天を襲う火の出るような痛みに、一瞬日菜子の視界がブレる。フラフラと、前に数歩つんのめる。
 その腹部に、棘の付いた鉄球と回転するドリルとが、深々と埋まっていた。
 
「んぶうう”う”ゥ”ッ―――ッ!!! ……かはァ”ッ!!」

 エビのように折れ曲がり、叫びとともに唾液の塊を噴き出す魔法少女。
 こうなるともはや、リンチ同然であった。
 刀が袈裟切りに斬りつけ、背中を鎌が引き裂く。真横から伸びた槍が、形のいい美乳にグボリと埋まった。
 
「んああ”ッ!! うぐう”ぅ”ッ!! ぅああ”ぁ”……ッ!!」

 チャーンが首に巻き付き、バラ鞭はすべすべの生脚にビシャリッと炸裂した。ノコギリの鋭い歯は、脇腹に当てられてゴリゴリと摩擦する……。
 しほりから与えられる快楽に身悶える日菜子を、次々と10体の持内あずさが蹂躙していく。
 早くも校庭での闘いは、蒼き魔法少女のリンチショーと化そうとしていた。
 
 
 
 7、
 
 
「……ぐッ、ううぅ”ッ!! いい加減に……してッ!!」

 一方的に責められながらも、日菜子は逆襲のチャンスを狙っていた。
 右眼だけ青い、オッドアイを光らせる。ようやく反撃の時が、リフレクターに訪れたのだ。
 
「ッ!! マズイわ、白井日菜子から離れるのよッ!!」
 
 魔法発動までのチャージの時間が、終了していた。
 しほりや女教師にいいように嬲られていたのは、この時間を耐えるしかなかったためだ。日菜子の生命力が途絶えるより早く、魔法は発動可能になった。
 
「フレッシュサジテルッ!!」

 剣の先に魔力を集める。眩い光が、巨大な塊となって煌々と輝く。
 多数の敵を少しでも減らすために、広範囲に効果がある技を、日菜子は選択せざるを得なかった。それも一撃で、原種の刺客を滅ぼせる強力な技を。
 バラバラに逃げ去る持内あずさの背に向け、ガラスの剣から光の砲弾を撃ち込む。
 
 カカッ!! ドオオオオォンンッ!!!
 
 光の渦のなかに、4体の女教師が呑み込まれ、姿を消していく。
 魔法の光の余波を受け、残る者たちも大地に倒れ伏していた。
 
「くッ!! しまった!!」

 日菜子の口から漏れたのは、会心の台詞ではなく悔恨の言葉。
 シュモディアの刺客である黒髪の女たちは、残った6体がのろのろと立ち上がってくる。
 通常ならば、4体を一撃で屠ったなら十分な成果と言えるだろう。しかし今の状況では、6体も討ち漏らしたのは、痛恨すぎる。
 
 最強の技のひとつであるフレッシュサジテルは、当然エーテルの使用量も大きければ、次に魔法を使用できるまでのチャージ時間も長く必要となった。
 つまり日菜子は、またも魔法の使えぬ苦しい時間を、1対6で過ごさねばならないのだ。
 いや持内あずさだけではない、狩猟者アークニーの襲撃や菅本しほりの悦楽信号を受けながら。
 
「うふふ……どうやら、終わりみたいだね? 日菜子ちゃん」

 うっとりとした視線を向けながら、しほりが己の乳房と股間をまさぐる。
 ビリビリと痺れる快楽が、再び日菜子を襲っていた。たまらぬ刺激に、蒼き魔法少女も己の乳房と股間を押さえてのたうち回る。
 
「あはあ”あ”ァ”ッ~~ッ!! ア”ッ……!! し、しほりぃ”ッ!! やめてぇ”ッ――ッ!!」

 悶える日菜子を、6体の持内あずさは容易に捕獲した。
 左右の腕がガッチリと抱えられ、疼くバストや秘部に触れられなくなる。しほりとの間を繋ぐピンクの光が濃くなり、悦楽の信号がさらに強まった。
 
「イジッ、イジっちゃダメぇ”ッ~~ッ!! ……んはあ”っ、はああ”ッ……!!」

「日菜子ちゃん、私のオナニー……気持ちイイでしょ? うふふ……でもね、さらに持内先生が、日菜子ちゃんのエッチなカラダを遊んでくれるって♪」

 ニヤつく女教師の顔が、すぐ目の前に飛び込んだ。
 黒髪で出来た鎌の先端が、コスチューム越しに日菜子の乳頭を突く。コリコリと、小刻みに削る。
 
「ふひゃああ”あ”ッ!? ふあああ”あ”あ”ぁ”ッ~~~ッ!!! そんあ”ッ!! そんッ……!! ダメぇ”ッ~~~ッ!!!」

「ホホホッ!! 白井日菜子、次に魔法発動できるまで、私たちの責めに耐えられるかしらッ!?」

 チェーンを武器とする持内あずさが、日菜子の股間に通す。
 ジャラジャラと鳴る鎖を前後に揺らし、すでに濡れている秘裂を摩擦する。グイッと吊り上げ、魔法少女の股間にチェーンを食い込ませながらジャリジャリと擦り上げる。
 
「うはああ”あ”あ”ぁ”ッ~~~ッ!!! んくう”ぅ”ッ!! んあ”・あ”ッ・あ”ッ・ア”ア”ッ―――ッ!!! こんなぁ”ッ!! ……こんっ……らぁのッ!! ……ふぐぅ”ッ……!! た、耐えられぇ”ッ~~……ッ!!」

「フラグメントによる愛撫と現実の愛撫……二重の快楽に果てるといいわッ、白井日菜子ッ!!」

 ぶじゅぶじゅと、上と下の口から半透明の飛沫をだらしなく撒き散らすリフレクターを、6体の女教師は撫で回し続けた。
 
(……う、動け……ないッ…………!! わ、私は…………もう、ここで……殺されるの、かな……)

 透明感のあるコスチュームを己の体液で濡らしながら、日菜子は死を覚悟した。
 魔法が発動できるようになるまで、まだ時間が必要だった。しかし複数の女教師に抑えられ、しほりから送られる悦楽に抗えない身体は、敵の思うがままに嬲られるのみ……
 
 パパパパンンッ!!
 
 不意に乾いた音色がこだまし、日菜子を拘束していた黒髪の女たちが一斉に跳ね飛んだ。
 
「……え……ッ?」

 何が起こったのか、一瞬日菜子は混乱する。だが、苦しむ複数の持内あずさを見た時、孤独であったリフレクターに援軍が現れた事実を悟った。
 振り返った先に、ふたつの人影が立っている。
 ふたりとも、長く綺麗なストレートの髪。ぱっつんの前髪にしているところも似ているが、色は赤と黒とで対照的であった。赤髪の少女はスレンダーボディで、黒髪の少女は、こちらもスタイルのいい肢体を冬服に包んでいる。
 
「なん……で? 来ちゃダメって、言ったのに……」

 森川更紗と斎木有理。かつてリフレクターとともに闘った、サポーターの少女たち。
 持内あずさを吹き飛ばしたのは、有理のマシンガンであった。黒髪の天才少女は、まだ煙を銃口から昇らせたお手製の機関銃を両手で構えている。
 対原種用に造ったというこの武器を、有理は再び持ち出したのだ。
 
「君も知っての通り、ボクは感情が理解できない」

 涼しい声で、有理は言う。
 
「だから君がボクたちを闘いに巻き込みたくない、という気持ちも理解できないし、するつもりもないよ」

「有理……」

「君を助けたいから、ボクは君を助ける。ただ、それだけのことだ」

「日菜子っ、あなたは私をライバルだと言ってくれたわっ!!」

 大きな、猫のような瞳を強く輝かせて、赤髪の更紗が叫んだ。
 優雅にターンをし、指先にまで神経が通っているとわかる動きで、踊り始める。
 それはバレエでもなく、ダンスでもなく、舞いというのがもっとも適切に思えた。祈りを込めた、舞い。神々に捧げるような。
 その更紗の舞踊が、リフレクターに力を与えるサポート能力になっていることを、日菜子は身をもって知っている。
 
「本当にライバルならっ……私もあなたと、同じ場所で闘うわっ! あんな、屋上なんかじゃなく」

「……更紗ッ……!!」

「バレエでは、もうあなたと同じステージには上がれなくなった。でもっ! ここなら、あなたと同じステージで闘えるでしょうっ!? そうでしょ、日菜子っ!!」

 愛撫を受け、ダメージを喰らい、疲弊していたはずの身体に力が戻るのを、日菜子は感じた。
 精神的な効果、ではない。現実的に、本当に更紗の舞踊でパワーが上がっているのだ。
 動ける。これなら私は……まだ闘えるッ!!
 
「……そうだねッ、更紗!!」

 ダッ、とガラスの靴で地面を蹴って、蒼き魔法少女は突撃していた。
 魔法のチャージは終わっていなくても、剣は振れる。攻撃は、できる。
 有理のマシンガンで傷ついた3体の持内あずさを、一気に日菜子は斬り伏せた。
 
「ぐううッ!? 白井日菜子ッ、貴様……ッ!!」

 残るはノコギリとハンマー、そしてバラ鞭の、3体の女教師のみ。
 動揺を露わにする3体に、ガラスの剣を握ったリフレクターは襲いかかろうとする。
 
「ギシャアアアッ――ッ!!」

「まだ、あなたがいたねッ! 狩猟者アークニーッ!!」

 3mを越す巨大蜘蛛が、日菜子の眼前に立ちはだかった。
 いまだ官能の疼きが消えたわけではない肢体に、日菜子は懸命に力を込める。あと少し。3体の持内あずさとこの蜘蛛のバケモノさえ倒せば、とりあえず原種の刺客は撃退できる。更紗と有理を、危険な目に遭わせずに済む。
 
 その瞬間、待ちに待った、時間が来た。
 チャージの時間が終わり、魔法の発動が可能になったのだ。
 これで、一撃。一発だけなら、リフレクターはまともにアークニーと闘える。
 
「はああああッ――ッ!!」

 蒼き魔法少女が、全力で駆けた。
 
 
 
 8、
 
 
 8本の脚を動かし、8個の赤い眼で日菜子を見据える狩猟者アークニー。
 蜘蛛のバケモノに、ショートヘアーの魔法少女は真っ向から突っ込んでいく。魔法を駆使できる今なら、怪物相手にも十分勝てる。
 
「エクレールトロッ!!」

 選んだ魔法は、ひとつの対象に対し、連続で斬りつける攻撃だった。
 最強の必殺技であるリミエルカンセールは、剣を槍に変形させ投げつける技だ。威力は絶大だが、武器を手放すことになる。まだ3体の持内あずさが残っている以上、適切な攻撃ではなかった。
 その次に、単体の敵に大きなダメージを与えられるのが、このエクレールトロ。
 
 ザンッ!!
 
 下から上へと、斜めに奔る剣閃が、アークニーの2本の脚を斬り落とす。
 
「ギシャアアアッ~~ッ!!」

「まだまだッ!!」

 ふわりと浮いた巨大蜘蛛に、追撃の剣戟が、間を置かず放たれた。
 再び斜めにガラスの剣が走り、新たに2本の脚を斬る。
 
「もう一発よッ!!」

 ズシャアアッ!!
 
 3度目の斬撃が決まり、また2本の脚が宙に飛んだ。
 日菜子の倍以上の体長がある蜘蛛は、高々と上空に舞っていた。3連撃で斬りつけながら、高く敵を浮き上げる……これがエクレールトロのプレリュード。
 そして天に舞い上がった対象を、斬りつけながら一気に叩き落せば、一連の魔法斬撃はフィナーレを迎える。
 
「これでッ!! トドメ……ッ!?」

 わずかに2本しか脚が残っていないアークニーに、ガラスの剣を振り下ろそうとした瞬間。
 日菜子の全身を、衝撃が襲った。
 
「なッ……!! 糸がッ!?」

 剣の刀身に、蜘蛛の糸が絡まっている。
 アークニーを間近で見たことで、ようやく日菜子は気付いたのだ。巨大蜘蛛の全身が、自らの糸で防御されていることに。
 アークニーを斬りつけるたび、リフレクターの魔法の剣は、その切れ味を失っていた。
 
「くッ……!!」

 構わず日菜子は、渾身の力でトドメの一撃を振り下ろす。
 一直線にアークニーの巨体が大地に叩き落され、校庭の砂が濛々と舞い上がった。ズウゥンッ、という地響き。
 だが、蜘蛛の脚は、今度は斬り落とすことができなかった。
 
「ああッ!?」

 動揺の声が、思わずリフレクターの口から漏れていた。
 仕留めそこなった。
 その事実を、誰よりも日菜子自身がわかっていた。重力に引かれて着地しながら、己が窮地に陥ったことを思い知る。
 一度魔法を使ったリフレクターは、次に魔法発動できるまで、時間が必要となる。
 手負いのアークニーと3体の持内あずさの攻撃を、日菜子はまたも耐え続けねばならなくなった。すでに渾身の力を出し尽くし、大きなダメージを受けている、この身体で。
 
「くああ”ぁ”ッ!? ぅああ”ッ……!! し、しほりッ!!」

「日菜子ちゃんはしぶといね。でも……さすがにもう、ここまでかな」

 突如胸と股間に湧いた快感に、日菜子は嬌声を漏らしていた。
 そうだ、まだ強敵が残っていたのだ。菅本しほり。かつての仲間であり、日菜子に愛撫の信号を送り続ける、魔性の少女。
 
 露出した己のバストをしほりは揉み、秘所をクチュクチュと弄っている。
 そのたびにゾクゾクした痺れが日菜子の乳房を包み、膣穴の奥から愛蜜が湧き出した。たまらずリフレクターは胸を押さえ、内股になる。
 グツグツと女の芯が沸騰して、失神してしまいそうだ。どうしてこうも、しほりは的確に、日菜子の敏感なツボを刺激してくるのか。
 
「んはぁ”ッ、あああ”あ”ぁ”ッ―――ッ!!! やめぇ”ッ、やめて、しほりぃ”ッ……!! わ、私ぃ”……このままじゃぁ”ッ!! このままじゃ……負けてッ……!!」

「日菜子ちゃんの敏感な部分なんて、とっくにお見通しだよ……だって私は、日菜子ちゃんのこと、大好きなんだもん♪」

「だめッ、だめぇ”ッ……ッ!! 私、動けなくぅ”ッ……ッ!!」

「トドメだよ、アークニー。そろそろ日菜子ちゃんに、諦めてもらわないとね」

 ブルブルと震え、悦楽に耐えるリフレクターに、巨大蜘蛛が襲い掛かる。
 尻から飛び出た極太の赤い針が、日菜子の左胸にブスリと突き刺さった。
 
「くああ”ッ!? うわああああ”あ”あ”あ”ぁ”ッ―――ッ!!!」

 ドキュドキュと、乳房に直接注入される、蜘蛛の媚毒。
 胸に受ける快楽が、一気に数倍に膨れ上がり、魔法少女は昇天した。
 
 ぶしゅッ!! ぶしゅしゅッ……ッ!! ゴボボボッ、ゴボオッ!!
 
 股間から半濁の飛沫が吹き、涙も涎も大量に溢れ出る。
 白目を剥いた日菜子は、全身を突っ張らせて大地に倒れ込んだ。
 
 ビクビクウ”ゥ”ッ!! ビグビグビグッ、ヒクンッ!! ヒクヒクヒクッ……ッ!!
 
「ひ、日菜子っ……!!」

 激しく痙攣するリフレクターの惨状に、更紗も有理も声を失っていた。
 舌を突き出し、様々な体液を垂れ流して、全身を震わせる親友の姿……。
 
「ホホホッ……ッ!! ホホホホッ!! 勝負あったわね、白井日菜子ッ!!」

 いつの間に、用意したのか。3体の女教師が、校庭の真ん中に木で組まれた十字架を立てる。
 戦闘不能となった蒼き魔法少女を、3人がかりで抱えあげ、十字架のもとへと運んでいく。
 
 アークニーの吐き出す糸によって、日菜子の肢体は磔にされた。
 
「さて……コモンでの闘いと違って、ここは現実。こうして拘束されれば、お前はもう、どこにも逃げられない」

 黒髪をバラ鞭に変形させた女教師が、十字架の魔法少女に全力で叩きつける。
 バチィッ!! ピシャアッ!! という乾いた音色が、透明感あるコスチュームに何度も炸裂した。
 
「……ぅあ”ッ!! ア”ッ……!! ああァ”ッ……ッ!!」

 乙女の柔肌に焼け付く痛みが走り、日菜子の意識は戻ってくる。
 だが、うっすらと開いた瞳は、虚ろな光を灯すばかりであった。どれだけ鞭で打擲されても、世界を守るはずのリフレクターは、喘ぐことしかできない。
 
「ホホホッ……いいザマね!」

 ハンマーとノコギリ。もう2体の持内あずさが近づき、磔の日菜子を思うがままに蹂躙する。
 
 大きく盛り上がった乳房に、鳩尾に、容赦なくハンマーが撃ち込まれた。
 ドボドボと、肉に鈍器が深々と埋まり、そのたびに日菜子は鮮血混じりの唾液を吹いた。
 
 ノコギリは首筋や胸元、太ももなど、コスチュームが覆っていない素肌部分を狙って切りつける。
 明らかに、日菜子を苦しめることが目的だった。ギコギコと、鋭い歯が往復するたび、皮膚は破れないのに切り裂く激痛だけが磔のリフレクターを苦しめる。
 
「んぐう”ぅ”ッ……ッ!! ぅあ”ッ、あああ”ッ~~……ッ!! ア”ッ!? アアア”ァ”ッ―――……ッ!!」
 
 長い悲鳴を響かせて、日菜子の顔がガクンと落ちる。ショートヘアーがさらさらと流れた。
 グレーベージュに変色していた髪が、元の黒色に戻っていく。
 一瞬、キラキラと光の粒子が日菜子を包み、泡のように弾けて消えた。
 淡いブルーとピンクのコスチュームは掻き消え、白井日菜子は本来の制服姿に戻っていた。
 
 孤独に闘ってきたリフレクターが、完全なる敗北を迎えた瞬間であった。
 
「ホホホッ……ホーッホッホッ!! あとは息絶えるまで……じっくりと嬲り殺してあげるわ! 少しでも長く、楽しませてね、白井日菜子ッ!!」

 闘い敗れた魔法少女への、処刑の時間が始まった。
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| 蒼き反射少女 | 10:19 | トラックバック:0コメント:2
コメント
「蒼き反射少女」シリーズの続きになります。
ファンティアhttps://fantia.jp/fanclubs/1770 のプレミアム会員さまには、オマケのサービスシーンも読んでいただけますので、そちらで閲覧いただくのをオススメしています。

今回も信さまに素敵な挿絵を描いていただきました!(≧▽≦)
ワガママ放題なボクのリクエストに答えていただき、毎回本当にありがたいです(∩´∀`)∩
追い詰められた日菜子ちゃんの闘いぶりや、チラチラ登場し始めている他の少女たちの様子なども愉しんでいただければ幸いですw
2018.03.28 Wed 10:28 | URL | 草宗
すみません、なぜか信さまに描いていただいた挿絵を掲載することがうまくできませんでした(;´Д`)

https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=67907644

こちらのpixivページに信さまの素敵な挿絵がありますので、ご覧いただければと思います。
お手間おかけして申し訳ありません。
2018.03.28 Wed 10:39 | URL | 草宗
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