FC2ブログ
巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

ヒロインピンチの思い入れを語るその3「チェンジマーメイド」 | main | 「鋼血の姫甲士 ~花の章~」第1話「誕生! ドールピンク」5章
オメガスレイヤーズ 第2話「ウエノ血戦」サンプル
 
 2、カルラ舞う
 
 
 首から提げられた黄金のリング。オメガストーンを強く握って、四方堂亜梨沙はオメガカルラへと変身を遂げた。
 オメガスレイヤーに超人的なパワーや耐久力を与えているのは、すべてオメガ粒子が原因となっている。そのオメガ粒子を普段大量に宿しているのが、通称オメガストーン。リングの形をしているのは、風属性のそれであった。
 
 カルラが立っているのは、上野恩賜公園が一望できる、タワーマンションの屋上。
 距離は少し離れている。そのぶん、ここまではケガレの侵攻を許していない。住民たちは『水辺の者』が、不発弾が見つかった、という理由ですでに避難を済ませている。
 
 屋上の出入り口には、大きなガラスが張られていた。
 そこに映る己の姿を、カルラはじっと見つめてみる。両手を腰に添えて、いかにもスーパーヒロインらしいポーズを、とってみたりする。

 
 身長153㎝は、オメガスレイヤーのなかでもっとも低かった。体重も比例して最軽量だ。
 切れ上がった瞳に、くっきりとした二重瞼。気の強さが、顔にも出ちゃってるな、と自分で思う。バストサイズにはちょっとしたコンプレックスがあるが、開襟でタイトな黄色のスーツに身を包むと、案外形は悪くない。これも黄色のフレアミニのスカートは、少し動いただけで、なかが見えそうに短かかった。短さに関しては、これもオメガスレイヤー内でナンバーワンだろう。いかにも俊敏性に優れた引き締まった脚が、そこから長く伸びていた。
 
 オメガカルラのコスチューム……正確にいえば、『水辺の者』が開発した強化スーツは、半袖でお臍が剥き出しになっているから、必然的にもっともオメガスレイヤーのなかで露出が多い、ことになる。
 スレンダーではあっても、健康的で溌剌とした色香が、カルラにはあった。17歳という年齢も、大きく影響しているのだろう。なにもしていないのに光るような素肌は、水を浴びれば弾きそうだ。
 
 ここ最近は、ずっとポニーテールにしている。自分で言うのもなんだけど、アリサ、けっこう似合ってんじゃん、なんて思ってたりする。
 いいね、悪くない。即席の鏡のなかの自分に、オメガカルラは満足した。
 これが最期になるかもしれないだけに、見た目にはちょっと、こだわりたかった。亜梨沙はまだ、高校生なのだ。死ぬ時はカワイくいたいって、望んだところでバチはあたるまい。
 
 大きな闘いの前には、己の死を、覚悟する。それがオメガカルラ、四方堂亜梨沙の流儀。
 決戦前日の昨夜、聖司具馬とふたりだけで交わした会話を、カルラは思い返していた。
 
「ふーん。それがアリサの役目ってわけ?」

「そう、萌黄の風天使オメガカルラにしかできない大役だ。やってくれるな」

 オメガヴィーナスの遺体が眠る教会。以前は神父が使用していたと思われる書斎に、亜梨沙は呼びつけられていた。
 他のメンバーがいないところで話すのは、その任務が秘匿性が高いため、というわけでは恐らくない。
 腹を割って話したい、という司具馬からのサインだろう。亜梨沙の少々ひねくれた性格は、司具馬にはすでにバレてしまっている。
 
「当たり前でしょ。っていうか、そんなのアリサからすれば簡単な話よ」

「わかっていると思うが、一歩間違えればもっとも危険な役割だ。特に、仮にオメガエンジェル……郁美が戦闘不能に陥りでもすれば、死地に飛び込むようなものとなる」

「ヘーキヘーキ。あのさ、アリサを誰だと思ってるわけ?」

「お前、死ぬつもりだな?」

 ブレザーの制服を着た女子高生は、一瞬、身体を固くした。
 すぐに唇をゆがめると、生意気の手本のような表情で、はんっ、と笑い飛ばす。
 
「バッカじゃないのっ!? なんでアリサが死ななきゃいけないのよっ! 大体六道妖ごときが……」

 ビュッと音がして、司具馬の右手がポニーテール少女の左の手首を掴んでいた。
 切れ長の澄んだ瞳が、大きく見開かれる。
 不意を突かれたとはいえ、亜梨沙はオメガスレイヤーだ。変身前の今でも、本来の10分の1は能力を発揮できる。普通の人間からすれば、異次元のスピードとパワーだ。
 そんな亜梨沙が易々と手首を掴まれ、しかも司具馬の手を振りほどけなかった。
 
「では、これはなんだ?」

「何ってただの、腕時計じゃないっ!」

「そうじゃない。時計の内部に仕込まれた、薬の内容を問うている」

 思わず顔が蒼白となるのを、亜梨沙は誤魔化せなかった。
 なぜ、薬の存在を知っているのか? しかもその意味まで、気付いている?
 四方堂家には、数々の秘薬や秘術が伝わっている。その源流は、戦国時代の伊賀にまで辿り着くという。
 その数ある秘薬のうちでも、特別な者と場合にしか、所持の許されないものがある。
 
 死と引き換えに、己の能力を極限にまで引き出せる猛毒――。
 
「四方堂の一族は、元来、守護の家だと聞いている。『水辺の者』を形成する『征門二十七家』、その中枢となる者たちを四方より守るのが宿命、と」

「……手を放して。じゃないと、本気だすよ」

 司具馬はそっと、ポニーテール少女の手首を解放した。
 
「全うしなくて構わん。家に伝わる宿命だとか、自分が盾になる、などという使命は」

「……いつアリサが、誰かの身代わりになって死ぬ、なんて言ったのよ?」

「郁美は……オメガエンジェルは、まだまだ未熟なんだ。能力は高くても、隙は多い。彼女を助けようとする者を、きっと危険に巻き込むだろう。まず君は、自分の命を最優先に考えろ」

「だから……別に、アリサは死にたがってるわけじゃない、って言ってるじゃん。勝つ。勝てば、いいんでしょ」

 眼を伏せて、ブレザー制服の少女は、くるりと背を向けた。
 そのまま、書斎の扉へと進む。もう話は済んだでしょ、と背中で訴えかけて。
 これ以上、この話はしたくなかった。
 
「生きて、いいんだ」

 司具馬の台詞が、亜梨沙の背中を追いかけてきた。
 
「生きろ、四方堂亜梨沙。自分が生き残ることだけを、考えろ。誰かの犠牲になる必要はない。君は、君の力で、自分を生かして、いいんだ」

 無意識のうちに、亜梨沙は唇を噛んでいた。
 四方堂の家に生まれて、これまで過ごしてきた鍛錬の日々が、洪水のように脳裏を埋め尽くす。何度も泣いた。何度も血を吐いた。何度も罵倒され……そして自分が、守るべき人々の名を呼ばされた。寝言で呟くようになるまで。
 幼い子供になんて仕打ちを、と周囲の大人が囁くのが、聞こえてきたこともある。
 
「四乃宮郁美が、死ぬわよ」

 振り返った亜梨沙の口から、ポロリと言葉が漏れ出ていた。
 
「ねえ、アリサが自分の命を優先したらさ、郁美が死んじゃうかもしれないよ? あんた、それでもいいわけ?」

「構わん」

「……っ……!! バッカじゃないっ? 本気で言ってるのっ!?」

「たとえどんな窮地に陥ろうとも、オメガエンジェルはオレが救う。だから君は、自分を大切にすればいい」

 次の言葉が継げなくて、亜梨沙は半開きになった口を、ぐっと強く引き結んだ。
 
「誰かを守るために、他の者が犠牲となる。それを強いられることが、正しいと本気で君は思うのか?」

 声高に訴えるでも、諭すわけでもなく。
 ただ淡々と、事務手続きをするかのように、司具馬は亜梨沙に問いかけた。
 
「……わかってる。そんなのイマドキ、古臭いってアリサも思う。親を何度も恨んだし、なんでアリサが、って今だってずっと思ってる」

 全てを見透かすような男の眼を、真っ向から少女は強く見つめた。
 
「でも、アリサはオメガヴィーナスを、助けることができなかったから」

 亜梨沙と司具馬。
 今いるふたりの目の前で、最強の破妖師だったオメガヴィーナスは、惨殺されたのだ。半年前。この、教会で。
 
「他のオメガスレイヤーや『五大老』のために、命を使えとアリサは教えられてきた。四方堂の娘は、犠牲になるために生まれてきた。そんなの、間違ってる。100人が100人、きっとそう言う。アリサもその100人にいたら、それはおかしいってきっと言ってる」

 再び少女は踵を返し、扉に向かって歩き出す。
 もう、二度と振り向かないと、固く心に誓いながら。
 
「それでもアリサは、オメガカルラは、みんなを守って死んでみせる」

 司具馬の声が届いてこないよう、激しく扉を閉めて、亜梨沙は書斎を後にした。
 
「…………全員無事なら……闘いに勝てば、アリサも死ぬ必要なんてない……勝てば、いいのよっ!!」

 漆黒の空を見上げて、オメガカルラは呟いた。
 タワーマンションの屋上には、風が吹き始めていた。彼方に見える、国立博物館の本館には、深紅のケープがなびいている。オメガエンジェルが敗れる、という最悪の事態は、早くも現実になっていた。
 
 六道妖率いる、20万体もの軍勢との決戦は、激闘となることが以前から予測できていた。苦戦を強いられることも、とっくに覚悟はできている。
 だから司具馬は、萌黄の風天使に対し、奇襲の策を授けていた。
 
「待ってて、郁美。華那。アリサが、あんたたちを絶対救ってみせるから」

 突風が、背中のケープを強く叩く。鮮やかな黄色が、バタバタと翻った。
 風に押されるように。オメガカルラは屋上を駆けた。コンクリートの床を、タンっ、と黄色のブーツが蹴る。
 
 地上130m以上あるビルから、萌黄の風天使は身を投げ出した。
 
 落ちる。墜落する――当たり前に起こるはずの現象は、カルラの身には起こらなかった。
 
 オメガカルラは空を舞っていた。
 
 地から天へと吹き上げる風が、軽量の少女を空高く舞い上げていた。漆黒の闇夜を、黄色のコスチュームを纏った美少女が、嚆矢のごとく翔けていく。
 風を操るオメガカルラは、唯一、空を飛べるオメガスレイヤーだった。
 
 遥か眼下で蠢くケガレの群れを、破妖師と妖化屍の闘いを見下ろし、一直線に敵アジトへと向かう。文字通り、誰も手の届かぬ高みを、ひとりポニーテールの少女が悠々と舞う。
 敵陣深くにある本拠地……国立博物館の本館は、本来なら辿り着くまでに、多くのケガレや六道妖と遭遇せねばならなかった。
 しかし、オメガカルラならば、そんな混戦を一足飛びに越えられる。敵本陣に直通で、突撃することができるのだ。
 
 各所でオメガスレイヤーと六道妖が、激闘を繰り広げている間に、カルラは本館に囚われた、オメガフェアリーを救出する。
 それが聖司具馬が、萌黄の風天使に与えた指令だった。
 
「助ける相手がひとり増えたところで、なにも変わりはしないわ! ふたりとも、まとめてアリサが面倒みてあげようじゃないっ!」

 風と一体化したカルラは、闇空を切り裂く黄色の流星だった。
 絶斗だろうが虎狼だろうが、遥か天を舞う風天使に、指一本触れることはできないだろう。空をゆくカルラを邪魔する者は、誰もいなかった。
 足下に見える不忍池を、あっという間に通過する。池の水面が随分荒れているところを見ると、オメガセイレーンが妖化屍相手に暴れているのかもしれない。
 
 不忍池を越えて、次は上野動物園の頭上。ここを過ぎれば、目的地である国立博物館まではあと少し。
 高速で飛行するカルラの肌が、ピリッとザワついたのは、その時であった。
 
「……ャァ”ッ……!」

 空飛ぶ風天使より、さらに上。
 吹きすさぶ風が清冽な調べならば、その甲高く、濁った声音は禍々しい不協和音。頭上より、かすかにその声が降り注いだ時には、ポニーテールの美少女は身を捻っていた。
 
 翻る、鮮やかな黄色のケープ。カルラの切れ長の瞳が、糸を引くように横に流れる。
 数瞬前までそこにあったスレンダーな残像を、天空から急降下した、漆黒の雷が貫く。
 
 ギュオオオォゥゥンンッッ!!!
 
 通過した漆黒のあとを追って、衝撃波がカルラの全身を叩く。
 黄色と黒が、舞っていた。桜の花びらのように。黄色は、引き裂かれたケープの破片。黒は、巨大な鳥の羽根。
 稲妻と見紛う漆黒の塊が、オメガカルラの前で、本来の姿を現した。
 
「グギョギョッ!! グギョロオオオオォッ~~~ッ!!」

「畜生妖っ!! 啄喰(ツクバミ)っ!!」

 そうか。あんたがいたっけ、畜生妖・〝骸憑〟(むくろつき)の啄喰。
 
 アリサ以外に有り得ない、と思っていた空の支配者が、六道妖のなかにもいたことをカルラは思い出した。
 2mを越す巨大な体躯。ところどころ、赤くケロイド状に爛れた地肌が、黒の体毛の狭間に見えている。獰猛さを象徴するような嘴は大きく、鋭く、濁った眼はまさしく野生のそれだった。
 
 人間を喰らい、怨念と殺戮本能だけで動いている、巨大カラス。
 遮る者などいないはずの空で、行く手を阻む怪鳥と、風天使との激突が開戦した――。
 
スポンサーサイト
| オメガスレイヤーズ | 11:06 | トラックバック:0コメント:1
コメント
第1話のDL販売 http://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ218524.html と第2話の開始を記念しまして、2章のみ公開いたします。
サンプルとしてお読みいただければ…
とはいえ、サービスシーンがないので、あまり参考にならないかもしれませんが(^^ゞ
ファンティア https://fantia.jp/posts/36149 でも同じ内容のものを公開しています。
2018.02.01 Thu 11:07 | URL | 草宗
コメントする














管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL
http://kusamune.blog45.fc2.com/tb.php/449-34825d96
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック
| ホーム |

プロフィール

kusamune

Author:kusamune
FC2ブログへようこそ!

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ

カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索

RSSフィード
リンク