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巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

ウルトラ戦姫物語 博士の愛した戦姫編② シャインの章 | main | 「鋼血の姫甲士 ~花の章~」第1話「誕生! ドールピンク」2・3章
「鋼血の姫甲士 ~花の章~」第1話「誕生! ドールピンク」4章

 4、決断の時
 
 
 白桃色のセーラー服に身を包んだ少女は、両脚を投げ出して座り込んでいた。
 背後には、頭部に小型発電所を内蔵したアンドロイド。雷帝インデュラ。
 正しくいえば、ドールピンク・オウカはその格好にさせられていた。なぜか? 敗北した姿を、立花春香と大和独人に見せつけるためだ。
 
 その格好だと、正面に立つふたりに、スカートの奥までよく見えた。
 インデュラの左手がその内部にまで伸び、淡いピンクのショーツ越しに、うっすらと陰を刻んだ縦筋を摩擦していた。
 
 
「ぁぐッ……!! ん”ッ……、ぅくッ……!! はぁ”ッ……ア”ッ……!!」

「どうした、ドールピンク? 偉そうな口ぶりの割に……随分感度がいいようだな。クハハハッ!」

 ハーフを思わせる彫りの深い美貌が、セーラーと変わらぬほどピンクに染まっている。
 くっきりとした二重まぶたを閉じ、オウカは俯いていた。ショートヘアーゆえに、その表情は何にも遮られるものなくよくわかる。
 唇を半ば開き、荒い息を途切れることなく漏らすピンクの闘姫は、春香が見ても感じてしまっているのがわかった。
 
 瞳を閉じたオウカの顔は、ギリシャ彫刻の女神のように美しかった。本当に端正な顔立ちをしている、と同性ながら春香は嘆息する。
 ほつれ毛のひとつもないショートヘアーは、アイドルのようにピッタリ決まっている。iドールという名前を大和がつけたのは、このドールピンク……花咲はるえさんの可憐さから思いついたのではないか?
 だが、クラスにいたら確実に目立つレベルの美少女は、いまや明らかな官能に頬を染め、艶っぽい声を喘ぎ続けていた。
 戦士らしき凜々しき佇まいと、勇敢な戦闘を見たばかりだけに……春香は電撃の余波を受けたかと思うほどのショックを受けた。
 
「フン。そうか、態度がいかに生意気でも、所詮は小娘というわけだ。蕾が開きかけたばかりの年頃では、こうした刺激には慣れていないのだな?」

 人工知能のはずなのに、インデュラの言動は下衆な人間とほとんど変わらない。詩的な表現すらすることに、驚きを禁じ得ない。
 雷帝は、今度は右手を動かした。背後から鷲掴んでいる、オウカの右乳房。その先端から飛び出た2本の赤銅色のコードを、指でつまんで捻り合わせる。
 バチバチと、火花が飛んだ。電撃を放ち、切れたコードの先端をショートさせたのだろう。
 
「くあ”ッ!! あああ”ッ~~~ッ!!」

 カッと大きな瞳を見開き、オウカは仰け反った。
 iドールは、鋼血とやらを身体と衣服に行き渡らせることで、自らを鋼鉄化するという。とすると、あの赤銅色のコードは、神経の一部ということなのか。オウカの乳房の先端に、繋がった神経。
 そんなところを直接刺激されたら、思春期の少女でなくても、まともでいられるわけがない。
 
「クハハハッ! やはりここは特別に感じるのかッ!? ほら、悦べドールピンク! 我ら『ネクスター』の同志を、手にかけた罪は重いぞッ!」

 インデュラの指先から小さな稲妻が迸り、赤銅のコードを幾度も貫いた。
 
 バジジッ!! バシュンッ!! バリィッ!! バヂバヂッ!!
 
「あ”ッ!! はくぅ”ッ!! ぇ”ア”ッ!! あああ”ッ――ッ!!」

 そのたびにオウカの全身がビクンッ! と痙攣する。投げ出した両脚が突っ張り、だらんと垂らした腕が震える。
 胡桃のような瞳を見開き、潤んだ唇も大きく開けて、ショートヘアーの美少女は絶叫した。透明な唾液が、ツツ……と顎を伝っていく。
 表情は苦しんでいるものの、耳まで桃色に染まっていることが、オウカが快楽に貫かれている事実を春香に教えた。瞳の奥の光が陽炎のように揺らいで見えるのは、右の乳首を襲うのが苦痛のみではないのだろう。
 
 ハリウッド女優の、夜のプライベートしか見せぬ表情を見ている。
 ハーフを思わせる美貌と、それまでとは豹変したオウカの姿に、そんな錯覚が重なった。有り得ないものを、見てはならないものを見ている罪深さが、春香の背中に貼りついてくる。
 
 ようやく電撃がやむと同時に、オウカは卵形の顔をガクリと垂らす。
 再び瞳は閉じられていた。流れ出た唾液が、胸元の紐状のリボンに落ちていくのも気付いていない。
 
「はぁ……はぁ……はぁッ……!! ……ぅぁ”……んくッ……!」

「ククク……鋼血のセーラー服とやらに、左の乳首が浮かんでいるぞ? コチコチに尖っているようだな。乳首への刺激だけでイキかかるとは、情けない小娘め」

 インデュラの台詞は真実だった。少し距離が空いていても、白桃色のセーラー服に、左胸の突起がポツンと浮かんでいる。
 カワイイ乳首、と思った。
 自分のものと比べてもあまり変わらない、クールなオウカには一見似つかわしくない、小ぶりな突起。チェリーの実を思わせる影がぷくりと浮いているのを見て、春香はポッと赤面した。
 
 だが、人類の抹殺を企むというアンドロイドは、あくまで右の乳房に固執するようだ。
 より深いダメージと、鋭い快感を与えられるに違いない、金属の内部が露出した側を。

 切れた2本のコードの先端を、インデュラの右手がギュッとつまんだ。
 バリバリと、再び高圧電流を流す。今度は断続的に貫くのではなく、オウカの乳房に電撃を注ぎ続ける。
 元々刺激とは、電気信号によって伝わるものだ。インデュラの電撃は、それ自体が快感そのものといっていい。 オウカの右胸には、乳首から快楽の塊となった針を次々と埋め込まれているようなものだった。
 
「んふぅ”ッ!? はあぁ”ッ!! はあああ”あ”ッ~~~ッ!! キャアアア”ア”ア”ァ”ッ―――ッ!!!」

 これでは、オモチャのようなものだ。
 颯爽と輝くピンク色の風、のように見えたオウカが、今や愛撫に成す術なく喘ぐ被虐の少女と化している。可愛らしい白桃色が、春香には卑猥な色彩にすら感じられてきた。あれほどクールだった花咲はるえは、股を広げて両脚を投げ、脱力して嬲られるだけの、無抵抗な愛玩人形になってしまった。
 
 私のせいで。私を助けようとして、はるえさんはこんな惨めな姿になってしまった。
 
 痙攣と、艶っぽい叫びが止まらないオウカの惨状に、春香の瞳にも涙が浮かんでくる。
 
「考えろ考えろ考えろッ!!」

 隣に立つ大和独人は、ボサボサの髪をさらに両手で掻き毟ってた。
 春香に命令したわけではない、自分自身に言い聞かせているのだ、とすぐに気付いた。無意識にでた独り言。ガリガリと血が出そうな勢いで頭を掻く少年は、ずっと歯を食い縛っている。
 
「オレは天才! 天才だろッ! できる、絶対なんとかできる! できるできるできるッ!! できるったら出来ろオレッ! へこむなッ! オ、オ、オレなら出来るんだ! オオオ、オレオレオレッ……!!」

「クハッ! 動揺するな、小僧。安心しろ、貴様らを始末するのは後回しだ」

「黙れ黙れ黙れッ!! クソボケェッ!! いい気になるなよッ!! ははは、はる、はるえさんがそそそ、そんなことで負けるとおお、思うなよッ!! すぐに立ち上がってお前をッ……」

「クハハハッ!! 感じまくってアンアン喘いでいるこの女がか? 貴様の動揺が、ドールピンクがもはや終わったことを証明しておるわ! 聞き出すべきことを聞き出したら、コイツはすぐにスクラップにしてやろう!」

 右手で右の乳房を揉み潰し、左手で股間を摩擦しながら、インデュラがオウカの耳元に口を寄せる。
 
「ドールピンク。我ら『ネクスター』を次々と破壊して回っているのは、貴様たちで間違いないな?」

 乳首に直接快楽を突き刺す、と思われる赤銅色のコードから、指を離している理由がようやくわかった。インデュラはこれから、尋問に入ろうとしているのだ。
 オウカがきちんと話せるように、過激な電撃愛撫を休めているのだった。
 
「……ぁ”ッ……!! ……ん”ッ……くふぅ”……ッ……!! ……はあぁ”ッ……!!」

 ブルブルと小刻みに全身を震わせるだけで、依然オウカは脱力したままだ。
 本当に壊れた人形のようだった。雷帝の度重なる高圧電流によって、内部の機能が完全に破壊されてしまったのかもしれない。
 目蓋を閉じ、荒々しい呼吸を繰り返すだけのピンクのセーラー闘姫。
 インデュラは、オウカの返事を待たなかった。あくまで最初の質問は、わかっていることを確認したのに過ぎないのだろう。
 
「色による識別がなされているということは、貴様らにはまだ仲間がいるな? 仲間は何人だ? このデパート内に潜伏しているのか、それとも貴様らだけなのか?」

 嬌声といっていい喘ぎを漏らしていたオウカが、一瞬ピタリと沈黙した。
 口をつぐんだのは、眼を血走らせた少年も同じだった。しかしその反応は、春香が見ても、緊張を感じ取れるものだった。答えたくない、という意識が、ふたり共通に滲みでている。
 
「言え。身体中の神経を、焼き切られたくなければなッ!」

 胸から離れた雷帝の右手が、オウカの顔側面に迫る。
 接続端子のような指先が、耳とこめかみ、そして頬とに突き刺さる。ギリシャ彫刻の女神を思わす美貌に、バリバリと電撃の網が覆いかぶさる。
 
「キャアアアア”ア”ァ”ッ―――ッ!!! アア”ア”ッ、うあああア”ア”ア”ッ~~~ッ!!!」

「ま、待てッ!! それ以上はもうやめろッ――ッ!! 仲間はいるッ!! お前らを倒すために、今ここに向かっているところだッ!!」

 電流刑に呆気なく屈したのは、オウカ自身ではなく、苦悶の様を見せつけられる大和だった。
 ガクンッ、とショートヘアーがうなだれる。半開きの美少女の唇から、ゴボゴボと大量の泡がこぼれでる。
 インデュラの右手は、オウカの顔に接続されたままだった。耳の穴から白い煙が、うっすらと昇っている。
 
「当然だろッ!! てめえらを倒すために、相応の戦力は要るんだ! ピンクだけでこんな敵地に乗り込むかよッ! 他の闘姫もすぐに集結するぜッ!! スクラップになるのはてめえの方だッ、インデュラッ!!」

「……iドール、とかいったな。貴様らは全部で何人だ? 鋼血とやらで金属化する戦士は? 造り出したのは、貴様ひとりというのは本当の話なのか、小僧?」

 インデュラの眼が、冷たく光ったように春香には見えた。
 ドクン、と心臓が波打つ。大和独人が本当にたったひとりでiドールを生み出したのならば、そんな秘密は教えるべきではないのではないか。『ネクスター』が、大和を狙うのは確実だからだ。
 躊躇なく口を開こうとする少年に、春香は気がつけば、胸に飛び込み抱き締めていた。
 
「いィ”ッ!? ちょッ……は、はは、春ッ……!?」

「……言わなくて……いい、わ……ッ……!」

 春香が伝えようとした言葉は、別の、春香より低いアルトの声が発していた。
 冷たい床に座ったままのドールピンク・オウカが、瞳を開けて抱き合うふたりを見つめていた。
 
「ドク、ト……ウソは言わなくても、いい……」

「は、はるえさんッ!!」

「……仲間なんて……誰も来ない……ウソをつけば、インデュラは私をすぐに始末せず、人質にすると思ったんでしょ? ……少しでも私を救出する……チャンスが出来ないかと……」

 インデュラの眼がギラリと光り、春香もまた、間近で見る大和に驚きの視線を向けた。
 オウカの言葉が本当だとしたら、大和独人はこの窮地を乗り切るために、あらゆる判断を今の一瞬で下したことになる。その速さと平然とウソをつく度胸は、やはり並みではないかもしれない。
 しかし、そんな大和の苦心は、こともあろうにオウカ自身が無駄に終わらせてしまったのだ。
 
「仲間は来ない、だと!? ドールピンクッ、今の言葉は本当かッ!」

「私のことは……気にしなくていいわ、ドクト」

 怒気を含めるインデュラの声を、オウカは無視した。
 口調の端々に、愉悦の余韻を示す悩ましさは残っているが……それでも凛と強く、ピンクの闘姫は言い放った。
 
「私は……負けたの。ドールピンクになると決めた時から……死は覚悟していた。……私が死ぬのは……私が悪い」

 顔に埋まった端子から、オウカの脳に、直接電撃が撃ち込まれる。
 今度の電流拷問は、顔だけに留まらなかった。インデュラは、股間を擦る左手からも電撃を放ったのだ。オウカの頭部から股間にかけて、その胴体部を電撃の奔流が駆け巡る。
 
 バリバリバリィッ!! バヂヂッ!! ズババババァッ!!
 
「あああ”あ”ッ―――ッ!!! ウアア”ッ、ウギャアアア”ア”ア”ァ”ッ~~~ッ!!!」

 白桃色のセーラー服を透過し、黄色の稲妻が暴れるのが、春香の瞳にも映った。
 全身を鋼鉄ボディと化したドールピンクも、無事で済むわけがなかった。絶叫するオウカの口から、黒煙がブスブスと昇る。
 投げ出した両脚が、カクカクと膝を跳ね上げ動いていた。とても見ていられない、惨状。
 
「ア”ッ……!! アアア”ッ……ッ!! イ、インデュラ、はッ……わ、私から、手を離せないッ……!! い、今のうちにッ……に、逃げなさいッ!!」

 灼熱の串を埋められるような激痛に襲われているだろうに。
 オウカは言葉を紡いだ。それは、春香と大和を助けようとする言葉だった。
 
「……はやッ、くッ……!! その、コを……ッ……! 春香さん、を……助けるためッ、に……!! ここ、にッ……! 乗り込んだ、んでしょッ……!!」

 電流を浴び、ビクビクと痙攣しているというのに。
 ピンクの闘姫は、話し続けた。口を開くたび、ブクブクと白い泡が溢れるにも関わらず。まるで、そうすることだけが、今の自分にできる全てと言わんばかりに。
 
「どうしッ……ても!! ……スマホを、盗んででもッ……!! ドクトが守りたかった、相手ッ……!! 助け、なくて……どうする、のッ!!」

 天才と呼ばれる少年が、唇を噛むのが春香には見えた。
 わずかに眉を寄せていた。ボサボサ髪の奥は、こんな顔をしていたんだと改めて春香は気付く。意外と、幼い顔立ち。泣き出しそうな、恥ずかしそうな、苦悩するような表情がそこに刻まれている。
 
「オ、オオ、オレはッ……『ネクスター』を潰すのが目的でそのッ!! ……は、春香はたまたま、そのッ……!!」
 
「好きになったコを守るのはッ!! ……カッコ悪くなんてないわッ、大和ドクトッ!!」

 大和やオウカが、このデパートにいたことは、決して偶然などではなかったことを、春香は思い知った。
 
 それは……困るよ。
 
 死が待ち受けるかもしれない窮地で、人々の悲鳴渦巻く建物の内部で、ブレザー制服の女子高生は思う。平和と安寧が跡形なく崩壊する今、心に巣食うには、場違いかもしれない感情を。
 
 はるえさん、それは困るよ。
 それならふたりが……はるえさんと大和くんが、危ない目に遭ってるのは……完全に、私のせいじゃない。
 
 そんなこと、知ったら、さ。
 
「私はッ!!! 逃げないっ!!!」

 抱き締めている大和に向かって。
 潤んだ瞳で見上げながら、立花春香は叫んでいた。
 
「逃げないよっ、大和くん!! 私は逃げないっ!! はるえさんを置いて、逃げられるわけ、ないよッ!!」

「バ、バカッ!! それじゃあ、はるえさんの気持ちが無駄になるだろッ!? 誰のためにはるえさんが、あんな姿になってまで耐えているのか……」

「じゃあ大和くんは逃げるっていうのっ!? はるえさんを助けたいんでしょっ!? だからさっきから、ずっとここを動けないんだよねっ!? そうだよねっ!?」

「か、感情で動くのはバカがやることなんだよッ! いいかッ、ここぞで必要なのは、合理的かつクールな行動。オレだって春香の百倍ははるえさんを助けたいッ!! そりゃあ助けてぇさッ!! だがなッ、あの殺人アンドロイド相手にオレたちが何を……」

「大丈夫っ!! バカなことは私がやるもんっ!!」

 大和の背中に回していた腕を離し、ブレザー制服の女子高生は、少年の右手を両手で握り締めた。
 
「天才の大和くんは、やんなくていいよっ!! 私がバカをやるっ!! だからお願いっ、力を貸して!」

「ッ……!! ってお前、一体何をッ……!?」

「私も、iドールになるっ!!」

 館内を照らす非常灯の光が、その赤色を強くした、気がした。
 
「ィ”ッ……!! んな……ッ!!」

「鋼血ってのがあればいいんでしょっ!? 私じゃ力不足ってのはわかってるよ。運動神経は普通だし、これといって特技もないし。でもっ!! 今この場ではるえさんを救えるのは、私しかいないっ!! 私じゃダメ!? ダメかなぁっ!?」

「闘うんだぞッ!?」

 今度は大和の方が、空いている左手を添えて、春香の両手を握り返した。
 
「今だけじゃねェッ!! iドールになったら、ずっと闘うんだッ!! 無慈悲な機械軍団を相手にッ!! 人間を殲滅しようとする、アンドロイド相手にッ!! 『ネクスター』に命を真っ先に狙われるんだ。感情に流され、思いつきで今選んだことが、春香の多くの未来を消すんだぞッ!? 平和な家庭も、楽しい学校生活も、明るい夢も、希望もッ!! もう後戻りなんて出来ないんだぞッ!!」

「覚悟してるに決まってるじゃんっ!!」

 渾身の力を込めて握った大和の両手を、春香はブンブンと大きく振った。
 
「今ここでっ!! はるえさんを見捨ててっ!! 笑える未来があるわけないよっ!!」

「惚れた女が闘うのを、黙って見過ごせるバカがどこにいるかよッ!!」

 全部を言ってしまった後で、大和の表情がハッと強張る。漏らしてしまった本音を吸い込まんとするかのように、パクパクと口を開閉する。
 フォトジェニック賞に輝いた美少女の顔も、火がついたように赤く染まった。
 
「ふふんッ! 追い詰められて仲間割れか? やはり人間どもは醜いな」

 時に人間以上にらしく振舞う人工知能も、理解しがたい感情というのはあるようだ。
 春香と大和のやりとりを、インデュラは喧嘩とでも受け取っているようだった。ドールピンク・オウカ以外にはさしたる興味もなく、ただの雑魚としか映っていないのだろう。
 
「そこでドールピンクが破壊される姿を見て、ますます絶望にひれ伏すがいいッ!!」

 左手に握った金剛杵から、電撃の剣がバリバリと伸びる。
 オウカの太ももの間。座り込んで広げた股間に、ジリジリと放電の刃を近づけていく。
 
「ウア”ッ……アアア”ッ!! ……イヤ、やぁ”ッ……!! きゃあああ”あ”ア”ァ”ッ~~~ッ!!!」

 どんなに苛酷な責めを受けても、凛々しさを失わなかったオウカの声が、年相応の悲鳴となった。
 桃色のスカートの奥。大事な秘部に向かって、鋭い電撃剣が迫るのだ。
 ショーツのなかのヒクついた陰唇が、いかなる悲劇を迎えるのか。それを思えば、恐怖に支配されて当然であった。いや、このままなら秘裂のみならず、膣穴や子宮までも真っ二つにされるかもしれない。
 
「大和くんっ!! 鋼血は持ってないのっ!?」

「あるんだよッ、それが!! チクショウッ、なんでオレは持ってるんだァッ!?」

 シルバーのペンケースから、30㎝ほどはある注射器を大和は取り出していた。
 
「はるえさんは、私を守りたいと言ったよっ!? じゃあ問題ないっ!! 私がiドールになったら、身体が硬くなるんでしょっ! 逃げるよりずっと、私の身は安全になるわっ!!」

「く、クッソォッ……!! だから言ってるだろッ!! 感情で動くのは、バカがすることなんだよォッ!!」

 真っ黒な液体が入った注射器を、大和は春香に向かって投げていた。
 
「バカで構うかァ――ァッ!!! はるえさんを救えるならッ!! オレは天才の称号など、捨てるッ!!!」

 乾いた音色をたてて、春香が注射器をキャッチするのと、その女の声が響くのは同時であった。
 
「――雷帝インデュラ。なにをモタついているのです?」

 気品に溢れているのに、毒が盛られているかのような痺れる声であった。
 聞いた瞬間、春香は心臓をギュッと締められる思いがした。息苦しいのは、きっと気のせいなどではない。
 登場するだけで居合わす者を、圧倒する存在があることを春香は知った。
 大和の顔に、ビッショリと冷たい汗が浮かんでいる。
 目に見えぬ、されど確実に振り撒かれている放射線のような殺意に、大和も呑まれているのは明らかだった。
 
「ッ……三幹部ッ……!! 破壊者シーヴァッ!!」

 ゾッとするほど端正な美貌を持つ女は、全身真っ青な機体のアンドロイドであった。
 機械であることが剥き出しの腕が4本ある。先端にドリルなどの武器が装着されていた。
 コーンロウに編んだ、と見えた長い髪は、よく見れば金属で造られた蛇だ。漆黒の蛇のマシンが、何匹も頭部から伸びてそれぞれにうねっている。
 
 デパート奥の通路から、音もなく現れた女体のロボットは、ベルトコンベアにでも乗っているように床を滑って一気に迫る。
 
「ッ!! ……ぐゥッ!!」

「我ら『ネクスター』の邪魔をする不確定要素……目障りな抵抗者は誘き出せたのでしょう? そのピンク色の娘がそうですね?」

 近くに寄れば、2mはあるシーヴァの巨体に、大和も春香も無意識のうちに数歩を後退していた。
 
「捕らえられたのなら、作戦は成功です。なぜもっと早く、私の元に連れてこないのですか?」

「し、しかしシーヴァ様ッ……! この小僧はこやつらを造ったなどと……」

「雷帝インデュラ。あなたは邪魔者を私の前に差し出せばいいのです」

 なんの感情もこもらぬ声に、発電所を頭部に持つ人造人間は、見えない圧力に潰されたようにその場に跪いた。
 
「偉大な『ネクスター』に歯向かう者は、速やかに処刑せねばなりません」

 4本の腕のうちのひとつ、金属のマジックハンドが取り付けられたものが、座り込むオウカへと伸びて、その脇腹を掴んだ。
 
 グシャアアアァッ!! とプレスされる音がして、ドールピンク・オウカの脇腹は4分の1の薄さにまで挟み潰された。
 火花が噴き出し、ベコリと凹んだ損傷面から、金属の破片がバラバラと飛び散る。
 
「ア”ッ!!? ごぶゥッ!! ア”ッ……アアアア”ア”ア”ァ”ッ―――ッ!!!」

「抵抗する者には、徹底的な破壊を。人間どもの命など、残酷に散らすに限ります」

 無惨にひしゃげた脇腹から、金属の部品やコードを露出させるオウカを、青い破壊者は高々と掲げた。
 
「この者は処刑室に連行します。見せしめとして、八つ裂きにするといたしましょう」


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| 鋼血の姫甲士 | 10:53 | トラックバック:0コメント:1
コメント
鋼血の姫甲士シリーズ、通称「ドール」の4章になります。
戦隊ヒロイン風、とは銘打っているものの、今のところ戦隊らしさは薄いのですが……そのうち戦隊っぽくなるので、ご容赦ください。
とはいえ、外見はあのいかにも、な戦隊にはならない予定です。制服っぽいメタルスーツ、というのがドールの根本設定になっていますので……
相変わらず構想が長くなってますが(^^;)、お付き合いいただければ幸いです。
2017.12.15 Fri 10:53 | URL | 草宗
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