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ウルトラ戦姫物語 ~七大将軍編~ vol.2 表紙サンプル | main | オメガスレイヤーズ 用語解説とキャラ紹介
オメガスレイヤーズ 第1話「ウエノ動乱」1章(サンプル)

オメガスレイヤーズ 第1話 「ウエノ動乱」


 1、金髪の破妖師
 
 
 安っぽい油とアルコール、そして吐瀉物の酸っぱい臭気が、わずかに漂う路地裏だった。
 酔いどれの男たちが騒ぐ声が、通りの一本向こうから聞こえてくる。灰色の雑居ビルの壁際を、真っ黒なネズミが横切るのが見えた。空いたビールケースとパンパンに詰まったゴミ袋とが、一箇所に固まって捨てられている。
 
 浅間翠蓮(あさま すいれん)……いや、「元」浅間翠蓮は、思わず眉根が寄るのを抑えることができなかった。
 
 深夜の大阪。飲み屋が立ち並ぶ裏通りの、さらなる奥地に、着物姿の美女は立っている。
 似つかわしくない、光景だった。
 良識ある者なら、「お嬢さん。ここはあなたのようなひとが、来るべき場所ではないですよ」と強引にでもこの場を連れ出そうとしたかもしれない。ハーフアップにした髪も、着物の襟から覗くうなじも、丸く大きな瞳も、すべての色素が薄い美女は、儚さすら伴う気品があった。繁華街で和服姿、となれば水商売も連想したくなるが、こんな上等な女は、一席5万円は取られるのではないかという高級クラブにしか在籍しないだろう。
 串カツとワンカップの日本酒のニオイにまみれた路地裏には、本来いるはずがない人種であった。

 
「……さすがですわね」

 翠蓮の台詞と視線が向けられた先には、もうひとり、和服美女とは別タイプの、この場に不釣り合いな乙女がいた。
 若くて、美人であった。翠蓮の記憶では、確か彼女はひとつ下だったから、今年で23歳になるはずだ。
 鮮やかな、輝く金髪がまずパッと目に入る美乙女は、足首まで届きそうな長いケープと、ワンピース型のスーツを纏っていた。いずれも緑と青の中間色、ターコイズグリーンで統一されている。
 膝までの白いロングブーツが、スレンダーな肢体によく似合っていた。身長は翠蓮よりも頭ひとつ低いほどなのだが、すらりとしてバランスがいいためか、プロポーションがよくモデルのように見える。
 
 切れ長の瞳と高い鼻梁が、正統派の美貌をいかにも象徴していた。クールビューティー、と呼んでもいいだろう。
 だが、やはりなんといっても……そのアメコミのヒロイン然としたコスチュームは、暗く、汚い路地裏には似合わなかった。ハロウィンとしても、まだ一カ月以上先のことだ。
 
「あ……」

 振り返ったケープのヒロインは、一言それだけ、呟いただけであった。
 小顔に収まった華やかな美貌が、見る見るうちに真っ赤になる。
 最初、翠蓮はその反応がなにを意味しているのか、理解できなかった。闘いのあとの高揚、などでは恐らくない。
 
 そう、ターコイズグリーンの美乙女は、つい数秒前まで、翠蓮の目の前でバトルを繰り広げていたのであった。
 誰と? 妖化屍(アヤカシ)と、その配下であるケガレとだ。
 妖化屍とは、いわゆる妖魔のことであった。知性を持ち、我欲を剥き出しにした、動く死者。その妖化屍に殺され、思考を持たない操り人形と化したゾンビのことを、ケガレと呼んでいる。
 
 闇に沈んだ路地裏には、3体の妖化屍と113体のケガレが細切れの肉片となって転がっていた。
 むろん、この美乙女……深緑の地天使・オメガフェアリーの仕業であった。116体全てを、金髪の破妖師ひとりが葬ったのだ。わずか数分で。翠蓮が、見ている目の前で。
 
「オメガスレイヤーのリーダーになったとは聞いていましたが……その実力を認められてのことなのですね。お見それ致しましたわ」

「……翠蓮さん」

「ご無沙汰しております、美園華那(みその かな)さん。ご立派な地属性のオメガスレイヤーになられましたね」

 ふっと、軽く微笑んだのは、翠蓮の本心からのものであった。
 
 かつて妖化屍を倒す破妖師集団『水辺の者』に所属していた翠蓮にとって、オメガフェアリーこと美園華那は、知らない顔ではなかった。
 おとなしく、自己主張しないタイプの華那が、最強の破妖師であるオメガスレイヤーの五天使のひとり、しかもリーダーにまで選ばれるとは驚きではあったが……嬉しい気持ちもなくはない。
 華那、というか美園家は、『水辺の者』を構成する『征門二十七家』から、除外されかかるほど冷遇された時期があった。華那が常にビクビクしていたように見えたのは、そんな境遇と決して無縁ではなかったろうが……当時の状況を思うと、よくぞここまで、と感じるものがある。
 
「あ、いや……私なんか、その……」

 小さな両手を、顔の前でフルフルと振るオメガフェアリーを見て、ようやく翠蓮は彼女が照れているのだと気付いた。
 
「全然、その……オメガフェアリーになれたのも、たまたまだし……」

「髪を金色に染めたのですね。よくお似合いですわ」

「こ、これはそのっ……お父さんたちが……ちょっとでも目立つようにしろ、って……」

 ウェーブのかかった長い髪を、さらに顔を赤くしてフェアリーは必死に隠そうとする。
 
 ……かわいい子ね。
 
 純粋に翠蓮は、地属性のオメガスレイヤーに好意をもった。顔見知り程度の間柄だったが、クールビューティーな外見と内面にこれだけ落差があるとは、改めて知った。
 だからこそ、嫌な役目を押し付けられた、と思わずにはいられない。
 
「それで、あの……」

 なかなか本題に入れない翠蓮を、促すように口火を切ったのは深緑の地天使の方であった。
 
「『水辺の者』を裏切った翠蓮さんが……どうして、ここに?」

 「元」浅間翠蓮……いまや妖化屍、〝輔星(ほせい)〟の翠蓮となった和服美女は、薄い笑いを再び貼り付けた。
 今度の笑いは、本心からのものとは、到底言えない類いであった。
 
「……あなたを、オメガフェアリーを殺しにきた、と言ったら驚きますか?」

「……えーと……あのぅ……」

 一瞬切れ長の瞳を見開いたターコイズグリーンのヒロインは、もじもじしながら次の言葉を紡いだ。
 
「とりあえず……私の家に、来ませんか?」



 なぜ私は、敵となったはずのオメガスレイヤーの家に、ノコノコとあがりこんでいるのだろう。
 
 小さなちゃぶ台の前。薄い座布団に正座しながら、〝輔星〟の翠蓮は思わずため息を吐いていた。
 変身を解いたオメガフェアリー……美園華那のあとをついていくと、新築間もない高層ビルが眼前に現れた。オートロックの賃貸マンション。建物の内部に入るためには、暗証番号を入力するか、手のひら認証が必要な最新式のものだ。
 妖化屍に命を狙われる立場にある今、さすがに警備には気を使っているのね……翠蓮が思うのも束の間、ジーンズとTシャツというラフな格好の華那は、豪華なマンションを通り過ぎていく。
 
「え?」

「あ、私の家……こっちです」

 よく見れば新築マンションの横には、人ひとりがようやく通れるほどの、狭い通路があった。
 通り抜けて、マンションの裏にでる。昼間であっても、こうも周りを高いビルに囲まれては陽の光など当たらないだろう、と思われる敷地に小さなアパートが建てられていた。
 
 間違いなく、昭和の時代からあるであろう、古びた木造二階建て。
 ギョッとする翠蓮を気にすることなく、金髪の乙女は外付けの階段をあがっていく。錆びた鉄製の階段が、一段昇るたびにガンガンと甲高い音をあげた。
 
 202号室、と手書きのプレートが貼られた部屋の前にくると、美園華那は小さな鍵を取り出す。
 南京錠の鍵だった。よく見れば、玄関のドアノブが壊れていて、代わりに100均ショップで売られているような鍵が取り付けられている。
 
「……華那さん、あなた……安全面には気を配らなくて?」

 己の今の立場も忘れて、思わず翠蓮は訊いてしまっていた。
 
「あ……私一応……オメガスレイヤーなんで……」

 確かに変身前の状態でも、オメガスレイヤーは本来の10分の1ほどの能力を発揮できる。並の犯罪者はもちろん、ケガレ程度に襲われたとしても、致命傷を負うことはないだろう。具体的には拳銃で撃たれたり、時速60キロで走る車に轢かれても生き残るはずだ。
 華那の首元には、三日月型のペンダントが黄金に輝いていた。通称オメガストーンと呼ばれる結晶体には、オメガスレイヤーの力の源泉=オメガ粒子が蓄えられている。彼女たちは普段は力をセーブし、いざという戦闘の際に備えているのだ。
 
「なにもない家だけど……どうぞ」

 招かれて入った地天使の棲み処には、最低限の生活用品以外、本当になにもなかった。テレビもエアコンもパソコンも。
 ただひとつ、部屋の真ん中にあるちゃぶ台の上に、ボロボロになったファッション雑誌が置かれている。どうやらその一冊が、華那にとっての唯一の娯楽のようだ。
 
「……去年の秋冬合併号やないの……」

 今は9月である。無意識のうちに京訛りの言葉を、翠蓮は発していた。
 
「あっ、あっ! 見ないで……恥ずかしいっ……!」

「1年前とはもう流行が変わってるやん……捨ててしもたらええやないの」

「だ、ダメ……これまだ、使うから……」

 パッと翠蓮の手から雑誌を奪うと、裏向けにしたそれをちゃぶ台の真ん中に戻す。
 華那にとって唯一の楽しみであると同時に、鍋敷きの代わりでもあると悟った和服美女は、己がやってしまった言動を猛烈に後悔した。
 
「ご、ごめんなさいッ……!」

「ウ、ウチはその……貧乏だから……まだ使えるのに……もったいないから」

 妖化屍を退治する『水辺の者』には、様々な方面から資金が流れ込んでくることを、『征門二十七家』でも名門の出である翠蓮は知っている。政府やかつての財閥とも、秘密裡に繋がっているようだ。
 だが、華那の美園家には、一時期そのような支援金が完全に途絶えていた。追放を免れた今でも、その助成金額は最低ランクに位置付けされているはずだ。
 翠蓮の実家・浅間家では、常に最高ランクにあったため、最低ランクの生活がいかに困窮するものなのかはわからない。だが、当然のことながら、他人の家庭の内情を聞くのはあまりに失礼すぎる。
 
 結果、黙り込むことしか、翠蓮には出来なかった。
 もっとも裏切者を輩出した罪を問われて、今や浅間家も史上初めてランクを落とされているに違いなかった。
 妹の萌音が、妖化屍となった姉を憎悪するのも、案外そんなところが一番の理由になっているかもしれなかった。
 
「翠蓮さんはあの……私を、殺しに来たんですか?」

「……今の私は〝輔星〟の翠蓮……油断なさらぬよう、忠告だけはいたしましょう」

「あの……とりあえず、すぐには殺さない……んですよね?」

 この子を相手にしていると、どうも調子が狂う。
 戸惑いを、翠蓮は抑えられなかった。見た目と性格とのギャップといい、どうも美園華那という破妖師は、動きの読めないところがある。
 
「ごはん、一緒に食べませんか?」

「は?」

「お腹すいちゃって……食べてからお話聞いた方が、いいかなぁって……」

 それから20分後。
 翠蓮の前のちゃぶ台に、湯気をたてたお手製の料理が並べられたのであった。
 
「……困るわぁ。こないなことされると、自分で選んだ道を後悔したくなるわ」

 美しい正座をした和服美女がボソリと呟くのを、台所と居間とを忙しく往復する華那は、聞いていないようだった。
 台所と居間、とはいっても3畳と6畳の部屋があるだけ。あとは手狭なユニットバスとが、間取りの全てだった。苦学生が住むようなこの家を、関西方面をひとりで任されたオメガスレイヤーのリーダーは、妖化屍退治の拠点にしている。
 
「お口にあうのか……わからないけど……」

 ひよこのエプロンが金髪モデル風の美女にはまったく不釣り合いだが、料理を並べる姿は堂に入っている。
 きちんとふたり分、出来上がったのは、かぼちゃ煮と秋ナスの煮びたし、そして銀色に焼き上げた秋刀魚であった。
 
「ッ……これ、本当に華那さんがお作りになられたのですか?」

「あ、かぼちゃは作り置きのものを……煮直しただけですけど……」

 京都生まれの翠蓮は、野菜には少々詳しいつもりだが、見た目といい味といい、見事なナスであった。
 箸でつまんで持ち上げると、なかからじゅわ、っと黄金色のお出汁が滲みだす。一口頬張ると、甘味とうまみがふんわりと舌の上いっぱいに広がった。
 二日目だというかぼちゃも、口に入れた瞬間、ほろりと溶ける。かぼちゃならではの風味は損なわれていないのに、甘さといったら栗と間違えるほどだ。
 高名な料亭で食べることにも慣れている翠蓮だが、華那の作った手料理は全く遜色ない出来だった。
 
「秋刀魚の焼き具合も……絶妙ですわね」

「あ、その……料理だけはちょっと……得意かも……」

 顔を真っ赤にしながらも、照れた笑いが華やかな美貌に広がっている。
 
「お兄ちゃんとか、妹、弟とか……兄弟が多いから……私が作らなきゃならなくて……」

 最後まで完食して、翠蓮は気付いた。華那の料理は決して、食材の質はよくはない。スーパーで安売りされているものを、技術でおいしくしているのだ、と。
 金銭的に苦しいなか、兄弟たちに自分はなにができるのか。考えた末の答えが、きっとこの調理の腕に繋がっているのだろう。
 
「華那さん、あなたはなぜ、オメガスレイヤーになったのですか?」

「美園家を、復活させるためです」

 もじもじと喋る華那が、この時だけは淀むことなくハッキリと言い切った。
 
「潰れかけていた美園の血族を、私が守ります。父も母も、兄弟も、親戚一族も。みんなの期待を私が背負っているから。リーダーでもなんでも、私はやります」

 食べている途中で、カチャリと箸を金髪の乙女は置いた。
 涼しげな切れ長の瞳が、真っ直ぐに翠蓮を見つめている。
 
「ではあなたに……よい情報を、教えてあげましょう。深緑の地天使オメガフェアリー」

 ぐッ……と華那の小さな両手が拳を握るのが、翠蓮には見えた。
 
「……妖化屍である私の言葉を……信じるべきかは、あなたが決断なさいませ」

「続けて……ください」

 華那の瞳に映る光が、一段と強さを増したように翠蓮は思った。
 オメガスレイヤーになるためには、3つの条件があると言われている。『純血・純真・純潔』だ。
 2番目の条件、『純真』――疑うことのない清らかな心を、確かに翠蓮はオメガフェアリーとして選ばれた乙女から感じ取っていた。
 ある意味それらの条件は、オメガスレイヤーの弱点かもしれなかったが。
 
「六道妖のひとりであり、首謀者でもある地獄妖・〝百識〟の骸頭(ガイズ)は、東京の上野公園にいますわ。いくつかある美術館のひとつ、国立西洋美術館に。今ならば、油断している骸頭を……」

 その先の言葉を、翠蓮は敢えて言わなかった。
 ここまで教えれば、美園華那は、いやオメガスレイヤーであるなら誰でも、行動を起こさずにはいられないだろう。
 
 五天使と呼ばれるオメガスレイヤーのひとり、深緑の地天使オメガフェアリーは、骸頭の待ち受ける罠に嵌るであろうことを、〝輔星〟の翠蓮は確信した。
 大阪の地での、翠蓮の役目は終わった。
 
 
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| オメガスレイヤーズ | 01:18 | トラックバック:0コメント:5
コメント
7月になりましたのでファンティアhttps://fantia.jp/fanclubs/1770 での活動を本格始動いたしました。
早速オメガスレイヤーズの第1話「ウエノ動乱」をアップしています。
今回はそのお祝いと、宣伝を兼ねまして(^^ゞ、1章のみを公開いたします。サービスシーンは皆無なのですが…(^^ゞ フェアリーのキャラを楽しんでいただければ幸いです。

いろいろと変わっていくこともありますが、美しいヒロインの過激なピンチが好き、という本質は変わりませんので…今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
2017.07.01 Sat 01:19 | URL | 草宗
管理人のみ閲覧できます
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2017.07.05 Wed 01:57 | |
>コメントくださった方
いつもありがとうございますw
フェアリーは仰るように今までにないタイプのキャラで、ボク自身は気に入っているのですが、魅力をちゃんと伝えられているのか、かなり不安でした。おかげさまで好評のようで、とてもホッとしていますw

日常シーンなど、お楽しみシーンとは直接関係ないところを書くのは、ボクのポリシーってヤツですかねw ストーリー自体が面白くてキャラに魅力がある、という作品のヒロインがピンチに陥るからこそ興奮があるといいますか・・・
ご指摘のように、回りくどいと思われるかもしれませんが、結果的に最高の興奮を得られると考えています。

ヒロインの格好をした女性がただただエッチなことをされるAV、よりも公式の戦隊もので見られるハードなピンチの方が好きな派ですからねw
異端かもしれませんが、同意いただける同士の皆さんに支えられているとつくづく思います。

フェアリーのバトルはしばし先になりそうですが、今後も楽しみにしていてくださいねw
2017.07.05 Wed 02:34 | URL | 草宗
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017.07.09 Sun 00:27 | |
>コメントくださった方
コメント、ありがとうございますw ファンティアにも登録いただき、ありがとうございました(≧▽≦)
あちらでのコメントも確認しましたので、このあと返信させていただきますね。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします(*´▽`*)
2017.07.09 Sun 07:36 | URL | 草宗
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