巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

オメガガール1章―4 | main | オメガガール1章―2
オメガガール1章―3
 「どうしたの? 私を倒したいんでしょ。この程度で終わりなの?」

 「ま、待てよ、オメガガール。ちょ、ちょっと話しあおうぜ・・・」

 両腕を腰にあてた麗戦士が地に這う怪人を見下ろす。頑強さでも、攻撃力でも、圧倒的な差異を悟ったダイアマンは、目の前の乙女が四之宮天音とは別次元の能力を持つ超人であることを認識して、必死で言葉を紡ぎ出す。

 「考えたこと、ある?」

 結晶のとっかかり、胸倉を掴んだオメガガールは、転がる巨体を右腕一本で一気に頭上まで持ち上げた。乙女の持つスーパーパワーに、山賊顔が無様に強張る。

 「な、なんだ?! なんのことだ?」

 「あなたが見せしめのために殺した人々・・・そのひとたちがどうやって毎日を暮らしていたのか、考えたことがあるのかって聞いてるのよ!」

 腕一本で持ち上げた巨漢を鋭く睨みつけるスーパーヒロイン・・・魅惑的な瞳が、心なしか潤んで見える。

 「家族がいて、恋人がいて、守るべきものをいっぱい背負って、夢や希望を胸に抱いて・・・必死に、でもきっとどこかで幸せを感じながら生きていたひとたちを、あなたは殺したのよ! 見せしめだなんて、くだらない理由で! 許せないわ。私はあなたを許すことができない!」

 ギュッと握られた左の拳に、力がこもる。

 「ま、待て! わかった、お前の勝ちだ、オメガガール。あんたには敵わねえ、負けを認めるよ。だ、だから許してくれよ」

 「あなたに殺された人々も、きっと助けて欲しいと願ったわ。でも、あなたは助けなかった」

 「ちょッ・・・わ、わかった。じゃあドクター・ノオの居場所を教えよう! それならいいだろう、あんたが一番倒したがってる、悪党の親玉なんだからな」

 「ノオは確かに許せないわ。でも、この場所で犠牲になったひとたちは、あなたが倒れるのを願っているはず」

 漆黒の瞳に一切の迷いはない。

 「な、なら・・・いいのか?! 人質の子供たちが死ぬことになるぜ!」

 苦し紛れにダイアマンの口かれ出た台詞は、全くのデタラメであった。
 なにを言っても、どんな取引を持ちかけても、オメガガールの心が揺らぐことはない。麗しき乙女戦士に燃え上がった炎は、ダイアマンを沈めるまで消えることはないだろう。そう感じ取った怪人の、無様な足掻きに過ぎなかった。
 だが、冷静になればすぐに見破れるはずの浅はかな騙しに、胸倉を掴むオメガガールの右手の力が一瞬、抜ける。

 ゴオオオオオオッッ!!!

 光り輝いたダイアマンの破壊光線が、至近距離から青いボディスーツの全身に叩き込まれる。
 アスファルトの大地が一瞬で融解し、空気に潜む塵芥が燃え尽きる。ダイアマン最大最強の必殺光線を、フェイクに掛かったオメガガールはもろに浴びてしまっていた。

 「ギャハハハ! 甘いねえ、お嬢ちゃん。こんなバレバレの嘘に簡単に・・・ッッ?!」

 髭面の高笑いが、引き攣った呻きへと変化する。
 ダイアマンの胸倉を掴む右手は、離れてはいなかった。
 紺青のボディスーツから、深紅のケープからブスブスと紫煙が昇っている。白雪のような肌のところどころには、黒煤と火傷を示す赤い染み。無敵を誇る超少女といえど、鉄すら融解させる熱線を浴びて無事では済まされない。大理石のごとく滑らかな肌を高温で焼かれ、美乙女の脳髄には津波となって痛みの信号が押し寄せているはずだ。それなのに、オメガガールの凛とした姿勢は一切崩れることはなく、怒りを湛えた瞳は静かに結晶の男を見詰めている。

 「ぐううッッ・・・ウオオオオッッ――ッッ!!」

 冷たい汗で四角い顔を光らせた男が、無事な左腕を振る。
 反撃、と呼べるほど上等なものではなかった。必殺の光線を真っ向から受け止められ、美しき戦士の瞳に怯えた愚者の、無様な悪あがき。
 美貌に迫るダイヤの拳は、華奢な乙女の片手に容易く受け止められていた。

 「嘘でよかったわね。もしあなたが本当に子供たちを人質にしていたら・・・この腕を粉々にするところだった」

 「ひッ・・・ヒイッ!」

 漆黒の瞳の奥、灯る清廉な光。
 深く、強く、真剣な光を覗いた結晶の怪人に、もはや正義の戦士に抗う気力は残されていなかった。

 「ゆ、許してくれ・・・オレはただ、そのッ・・・ドクター・ノオに指示されただけなんだ。オレをこんな身体にしたのもヤツの仕業さ!」

 「『ジャッカル』がドクター・ノオによって異能力を授けられた集団であることは知っているわ。でも、『ジャッカル』は基本的な行動は自由。ノオはマッド・サイエンティストだけど、それぞれの犯罪を指示したりなんかしない。今回もあなた自身の判断でやったことでしょ?」

 「く、ククク・・・」

 無精髭に汗を滴らせ、男は引き攣った笑いを浮かべた。

 「そう、確かに『ジャッカル』は徒党を組んだりなどしない。勝手に暴れるのがオレたちの流儀だ。だが・・・お前はやりすぎたんだ、オメガガール」

 「・・・」

 無言で美戦士は、濡れ光った山賊顔を見詰め続ける。

 「何人もの『ジャッカル』のメンバーを倒してきたお前に、ノオは怒っている。お前を倒すことが、いまや『ジャッカル』の最優先事項なのだ」

 「・・・そう。あなたたちの方から来てくれるのなら、こっちも好都合だわ」

 揺るぎない口調で台詞を終えた瞬間、オメガガールの背後に濃密な悪意と摩擦音が沸く。
 残像の帯を引いて、青い乙女の肢体は横跳びに移動していた。
 元いた場所に取り残されたダイアマンの巨体に、漆黒の螺旋が絡みつく。

 「喋りすぎよ、ダイアマン」

 シュパアアッッ・・・

 爽快ですらある擦過音が、夜の公道に染み渡った。

 「あんたがオメガガールね。はじめまして」

 振り返る麗乙女の視線の先に、女が立っている。
 年の項、30後半といったところ。青い瞳と高い鼻が印象的な顔は、欧米の血が繋がっていることを教えた。赤色の長い巻き髪と純銀のドレスは、セレブの装いを思わせる。一見上品な容姿ではあるが、残酷な光を湛えた視線と、両手に持った黒革の鞭が全てを台無しにしていた。

 「私の名はバーバラ。『ジャッカル』最高幹部のひとりよ」

 ゴト、ゴト・・・滑らかな断面を見せて、輪切りにされたダイアマンの身体が切り離れていく。
 最強の硬度を誇っていた肉体は、いまや鮮血まみれのダイヤの塊と化して、ガラガラと崩れ落ちていった。

 「なッ?!」

 「噂以上に強いようね、オメガガール。そしてそれ以上に、美しいわ」

 突如現れた女の躊躇ない手際と、数瞬前まで拳を合わせていた敵の突然の死。スーパーパワーを誇るといえど若い乙女の脳を、わずかな間空白が訪れる。
 穢れない大きな瞳が次に映したのは、鼻先に現れた西洋妖女の笑顔であった。

 「お前のように美しい小娘は・・・殺さなきゃ、ね」

 漆黒の鞭が超少女の雪肌を叩いた。
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