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C91「ウルトラ戦姫物語~七大将軍特別編~」サンプル | main | オメガスレイヤーズ 第0話「破妖の天使」④
オメガスレイヤーズ 第0話「破妖の天使」⑤

 8、オメガペガサス
 
 
 よく見ればオメガペガサスのコスチュームは、ケープ以外にも紫色が配色されていることに縛姫は気付いた。
 セーラー服そっくりのスーツはカラーとその下の『Ω』の紋章、そして下半身のブルマにと、さまざまな箇所に紫が使われている。膝下までのソックスやショートブーツ、グローブなども同じ色だ。
 首から提げられたハート型のリングが、ペガサスのオメガストーンなのだろう。パッと見には、女子高生に人気がある高級ブランドのアクセサリーそっくりだ。
 スーツ自体が純白であるのと、造りがほぼセーラー服そのものなため、普通の女子高生と間違えたのも無理はない。ペガサスこと浅間萌音は、変身前と勘違いされやすい外見を、今回のカルラ救出作戦に利用したわけだ。
 
 
「・・・浅間・・・モネ? もしかしてお前、あの女の妹かい?」

 聞き覚えのある苗字に、縛姫の脳裏に和服姿の美女が浮かぶ。
 胡桃のように大きな瞳と、全体に薄い色素。
 六道妖のひとり修羅妖・〝無双”の虎狼にぴたりと従う女と、オメガペガサスには共通点があった。透き通るような白磁の肌に、西欧人と見紛うストレートの茶髪。丸い瞳もよく似ているが、あの女が青みがかっているのに対し、視線の先の小娘は少し赤が混ざった茶色に見える。
 
「ん――? 誰のこと、言ってるのかな」

「とぼけるんじゃないッ!! ・・・そうかい、それであの裏切り女・・・〝輔星”の翠蓮が、やけに紫雲の空天使を貶める理由がわかったよ」

 裏切り女、と罵ったものの、実際には縛姫ら妖化屍は「裏切られた」わけではない。その逆、「裏切らせた」方だ。
 本来なら翠蓮には感謝する立場かもしれないが、縛姫は何気ない顔で六道妖に混ざっている元『水辺の者』が大嫌いだった。組織を裏切る者は信用ならない、のは古今の常だ。なによりも、自分よりも若くて美人、というのが気に入らない。
 
「身内に対しては評価が厳しくなる、ってわけだッ! あるいは妹への愛情の裏返し、叱咤激励ってやつかねぇ!?」

「えっと、さっきから勝手に盛り上がってるけど、なんの話かな?」

「誤魔化そうと思ってもムダだよッ! モネと『睡蓮』・・・お前たちが姉妹であることは明白じゃないかッ!」

 ゴシゴシと手の甲で、額から流れた血をオメガペガサスは拭っている。
 セーラー服型のスーツの胸が、内側から丸く大きく盛り上がっていた。Dカップは確実にある豊かな膨らみ。全体的にムチムチと肉付きがよく、ブルマから生えた太ももは筋肉と脂肪の絶妙なブレンドを示してもっちりと張っている。
 肢体の成熟度においては姉より上ねぇ・・・会話しながらも縛姫は、空天使のあらゆる情報を探っていた。ここでオメガペガサスを倒せば、『五天使』のうちのふたりを葬ることができるのだ。〝輔星”の翠蓮は、ペガサスは未熟で脆いと評していたが、どこまで信じていいのか慎重を期す必要があった。
 
「モネには姉さまなんて、いないよ」

「はッ! しらばっくれてもムダだと何度も・・・」

「あんな弱いひとのことなんか、知らない。『征門二十七家』の宿命から逃げたひとなんて、浅間家の人間であるわけないよ」

 アイドル顔負けの可憐なマスクの持ち主は、表情を凍らせ、冷たく言い放った。
 華やかさと朗らかさを自然に発光しているような少女が、初めて見せる姿であった。
 
「じゃ! そういうわけだから。君たち妖化屍の皆さんとは、次出会ったときに決着つけてあげるね!」

 深刻な表情を見せたのは、わずか一瞬。
 すぐにパッと、花が咲いたようにオメガペガサスは微笑む。茶色の髪の右サイドを束ねたリボンが、首を傾げた拍子に揺れた。
 
「今日はカルラちゃんを連れて帰るよ。でもね、君たちのことは許さないから! 悔しいけど、カルラちゃんの治療を優先しなくちゃね」

「ッ!? ま、待ちなッ! このまま逃げられるとでも・・・」

 あっさりと退却を宣言する空天使に、慌てたのは縛姫であった。
 今までなら、狩人であるオメガスレイヤーがいなくなるのは幸運以外のナニモノでもなかったが、状況は変化している。狩るのは六道妖の方なのだ。
 カルラとペガサス、一度に始末する絶好のチャンス。オメガスレイヤーを全滅させるには、なんとしてもふたりをこの場から逃がすわけにはいかない。
 
「うん。思うよ。君たちのスピードなら、オメガペガサスは余裕で逃げられるよ」

 赤茶色の胡桃の瞳を、ぱちんとウインクする空天使。
 意識のないオメガカルラを両腕に抱え、紫のショートブーツをわずかに後退させる。ウソやハッタリなどではなかった。ペガサスは本気でこの闘いから退くつもりなのだと、瞬時に縛姫は理解する。
 
 この小娘は、したたかだ。
 人妖・縛姫は奥歯をギリと噛む。いかにも明るく可憐なイマドキの女子高生、といった容姿に騙されそうになるが・・・オメガペガサス=浅間萌音は決して浅慮なタイプではなかった。冷静かつ利発。感情で動くカルラとは異なり、優先してすべきことはなにか、判断できるようだ。
 
 そういえば。
 ふと大脳皮質の片隅で思い出す。〝輔星”の翠蓮は、確か学歴も高かったことを。
 浅間萌音も頭脳明晰であっても不思議ではない。未熟だ、などという翠蓮の評価は、やはり血の繋がりがあるが故の厳しさから来ているのではないか。
 
「ッ!? オメガペガサス、貴様ッ・・・」

 風船のように膨らんだ巨漢が、白と紫のセーラーコスチュームに迫ろうとした刹那。
 ペガサスの肉感的な肢体が後方に飛ぶ。
 速い。速かった。そのひとつの動作を見ただけで、縛姫はおろか、〝跳弾”の剛武も空天使のスピードが自身を上回っていることを悟った。

「剛武ッ、違うわ! そっちじゃない!」

 跳ぼうとする肥満体を、縛姫の叫びが止める。
 女妖化屍はすでに走っていた。だが、方向は逆。オメガペガサスを追うのではなく、反対側の舞台に向かって。
 
「ペガサスには追い付けないッ! ならばッ!」

 体育館のステージの上には、濃紺ブレザーの少女がいた。
 襟足の、ふたつのおさげ髪を揺らす童顔の美少女。水城菜緒と名乗った『水辺の者』は確かに自身をオメガスレイヤーのサポート役といった。浅間萌音の親友とも。
 
「ムダですよ」

 一瞬瞳を大きく見開いた和風の美少女は、すぐに構えを取る。
 
「私を襲えば、オメガペガサスが助けに来ると思いましたか? 有り得ません。カルラさんと私とでは、命の重みがまるで違いますから」

「ムダかどうかは、やってみなけりゃわからないねぇッ!!」

 ペガサスに追いつくのが無理なら、向こうから来させるしかない。
 六道妖と闘うか、カルラの治療を優先するか、ならば空天使は迷わず仲間の命を選択するだろう。しかし、同じく『水辺の者』の少女が、死の窮地に立たされたとすればどうか?
 
 カルラを救出するための、小娘たちの作戦にはしてやられた。だがオメガペガサスは重大なミスも犯している。
 相当な身体能力の持ち主とはいえ、妖化屍とオメガスレイヤーの激突に水城菜緒という〝一般人”を巻き込んだことだ。
 
「死ぬ覚悟なんて、とっくの昔にできています」

 怯えも気負いも見せず、おさげ髪の少女は凛と言い放った。
 縛姫のオレンジ髪が、スレンダーなブレザー姿に襲い掛かる。距離にして数m。一気に伸びた投網のごとき髪を、真横に飛び跳ね菜緒は避ける。
 
「なるほどなッ! そういうことかッ!」

 かろうじてオレンジ髪をかわした童顔少女に、〝跳弾”の巨肉が一直線に迫っていた。
 
「うッ!!」

「構わないよ、剛武ッ!! オメガペガサスの目の前で、そのお友達をミンチにしてやりなッ!」

 紫雲の空天使が来ないのなら、そのまま水城菜緒を圧殺すればいい。
 最悪それでもいいと、縛姫は覚悟していた。カルラにトドメを刺せないのは痛いが、『水辺の者』の戦力を削れるなら無意味でもない。
 
 そんな覚悟はまるで不要であったと、次の瞬間縛姫は知った。
 
「イヤだなー、菜緒ったら」

 おさげ少女の目の前に、突如白と紫の壁が出来た、と思った。
 空間に割り込む突風となって出現したのは、オメガペガサス。
 テレポート、などの特殊能力ではない。ただ、凄まじい速度で剛武を追い越し、駆け付けただけだ。〝跳弾”となって飛ぶ剛武を、さらりと抜き去って。
 
「も、萌音!?」
 
「菜緒もカルラちゃんも、どっちも大事な友達だよ。あともうひとつ、大事なこと」

 ドオオオオォォウウッ!!!
 
 ブルマから伸びた逞しい右脚が、真っ直ぐ突っ込んでくる150kg超の肉弾をハイキックで蹴り飛ばす。
 
「闘うんやったら闘うで、うちは全然かまへんのよ?」

 薄桃色の唇をアヒルのように歪ませたペガサスは、なぜか急に京都訛りでつぶやいた。
 
「やはりッ!! 仲間は見捨てられなかったようだねぇッ、オメガペガサスッ!!」

 反対の壁まで吹っ飛んでいった剛武には目もくれず、縛姫は千本単位でオレンジ髪を飛ばす。
 紫雲の空天使の両腕にはオメガカルラが抱かれている。先程の蹴りはゾッとする切れ味だったが、脚だけでは無数の髪は防げまい。
 
「えっとね。六道妖のひとり、人妖・縛姫だっけ? あなたには負ける気、まったくしないな」

 胡桃のような瞳を持つ愛くるしい美少女は、輝く笑顔をニコリと向けた。すでに口調は標準語に戻っている。
 その華やかな微笑みに、圧倒されたかのように。
 殺到したオレンジ色のシャワーは、オメガペガサスに届かなかった。
 
「なぁッ!?」
 
 見えない渦巻きに呑まれたようにぐにゃりと曲がる。縛姫の意志を無視して、あらぬ方向へと向かう。
 カルラが操る風のバリアと似ている・・・が、風自体は発生していないのは音でわかった。また、弾き飛ばされるというより、急激にベクトルを変えられるこの感覚は。
 
「これがお前のッ・・・紫雲の空天使の能力かいッ・・・!!」

 空間を捻じ曲げたのだ。
 信じがたいが、縛姫は認めるしかなかった。目の前の空間を、オメガペガサスは飴細工を練るように螺旋状に変形させたのだ。
 これでは縛姫の攻撃は、なにもペガサスには通じないだろう。緊縛する力は最強であっても、ターゲットに辿り着かねば意味はない。捻じ曲がった空間の障壁を突破するパワーも、女妖化屍は持っていない。
 
「うごおおおおッ――ッ!! オメガペガサスゥッ~~ッ!!」

 咆哮が轟き、彼方の壁面で力士のような巨体が立ち上がった。
 ゴムの体質だからこそ、ペガサスの強烈なキックを受けても生き残れたのだろう。だが、鼻から噴き出した鮮血が、ダメージは確かにあったことを示している。怒り猛った〝跳弾”の剛武は、再びセーラーコスの空天使に向かって一直線に飛んでいく。
 
「菜緒、カルラちゃんをお願いね」

 両腕に抱えていた萌黄の風天使を、ブレザー姿の友人にペガサスはトスした。
 慌てた菜緒が同じように両腕で、失神しているカルラを受け止める。華奢な少女はフラつきながらも、倒れることなく踏ん張った。
 
 たん、とバレエでも踊るかのように。オメガペガサスは華麗なステップで、一歩を前に踏み出した。
 右側だけを束ねた、長い茶髪が揺れる。たなびく紫のケープ。白基調のセーラー服型スーツを、むっちりとした発育ボディが内側から膨らませている。ブルマから覗く太ももも、ちらりと見えるお臍も、健康的な乙女の肉は瑞々しく煽情的であった。
 
 不覚にも縛姫は、オメガペガサスを美しい、と見惚れてしまった。
 一級品のアイドルと遜色ないルックスも可憐だが、それ以上に、若く、弾けるような、肉感ボディが美しい。よく引き締まっているのに、出るべきところは豊満で、乳房も美尻も柔らかさと張りが同居している。男好きのする肢体、というのはこういう肉付きを言うのだろう。
 
 ギリギリギリギリギリギリッッ!!!
 
 錆びた金属が摩擦するような音色は、縛姫の歯噛みの音だった。
 羨ましい、と思ってしまった。オメガペガサス=浅間萌音の、蕾のような瑞々しさと熟れた豊満さに嫉妬した。どちらも縛姫にはないものだった。
 
 心底から紫雲の空天使を、血の一滴まで搾り尽くして殺したいと、沸騰するような憎悪で熱望した。
 
「殺せえええ”え”え”ぇ”ッ~~~ッ!!! 剛武ッ!! オメガペガサスをグチャグチャに磨り潰すんだよォォッ―――ッ!!!」

 ふわりと一歩を跳んだペガサスと、空気を切り裂く肉弾のミサイルとが、真正面から激突する。
 交錯の瞬間、事実上、両者の優劣はただの一撃で決定した。
 
 ズドドボオオオオォォォッッ!!!
 
「んとね、まだ言ってなかったと思うんだけど」

 紫雲の空天使が突き出した右脚が、剛武の風船のように膨らんだ腹部に、半ば以上突き刺さっていた。
 
「モネ、本当はバスケってあまりやったことないんだ。得意なのはサッカーだよ」

 右の前蹴りを力士体型のどてっ腹に突き刺したまま、とん、と左足が地を蹴る。
 浮き上がったペガサスの左の膝が、ブルブルと震える剛武の顔面、その顎先を鋭く打ち砕いた。
 
 ゴキャアアアアッッ!!
 
「がふぅッ!!」

「なでしこジャパンU18代表、エースストライカー浅間萌音。さて、と。いくらゴムの身体といっても不死身じゃないよね? ゴムも限界まで伸ばしたら切れるでしょ」

 激しく脳を揺すぶられ、剛武は半ば白目を剝いている。動きは完全に止まっていた。お腹から右脚を引き抜いたペガサスは、羽でも生えているかのようにふわりと床に降りる。
 剛武の足の甲を、空天使は左のブーツの踵で踏んだ。
 目的は痛みを与えるため、ではなく、巨体の動きを封じるため。
 
「カルラちゃんにやった酷いこと、お返しせんとあかんね」

 再び漏れ出る京都訛り。
 次の瞬間、弧を描いたオメガペガサスの右脚が、〝跳弾”の顔面に吸い込まれていた。
 轟音が鳴った。巨大なゴムタイヤが破裂するような、甲高い音色。
 180度。首がぎゅるんと回転した剛武の上半身が、凄まじい速度で吹っ飛ぶ。グングンと、毬のような肉体が長く長く伸びていく。ギチギチと肉の軋む音が、体育館中に響き渡った。
 
 しかし、足を踏まれている剛武の身体は、限界まで伸びたら戻ってくる。
 ギュンッ、と空気の擦過音すら置き残して、力士体型の上半身は元の場所へ引き返る。オメガペガサスが、シュートの態勢で右脚をあげた場所へ――。
 
 ドオオシュウウウウッッ!!!
 
 完璧なタイミングで、剛武の顔面をストライカーのボレーシュートが蹴り返す。
 血反吐をまき散らしながら、〝跳弾”の上半身はまたも長く伸びた。千切れる寸前で、戻ってくる。目にも留まらぬ豪速球を、ペガサスはこれ以上ないジャストミートで蹴り飛ばす。
 
 ドガアアッ!! ゴキャアアッ!! ドオオオッ!! ・・・
 
 蹴る。蹴る。蹴る。
 確実に自分のところへ返ってくる巨大な肉球を、オメガペガサスは渾身の力でシュートし続ける。
 いずれブチンッ、と剛武の上半身が、下半身と離れ離れになる光景が縛姫の脳にも浮かんだ。セーラー服にブルマ、可憐なマスクに肉感ボディ、という悩殺的な外見に反し、オメガペガサスは微笑んだまま、一切の躊躇なく剛武を責めている。
 
 またも見た目と翠蓮の言葉に、騙されかけた。
 縛姫は思い知る。オメガペガサスは未熟どころではなかった。強い。しかも容赦がない。純粋なパワーは紛れもなくカルラより上だし、命のやりとりをする戦士にとっては甘さは減点材料でしかない。発言は強気でもどこか隙の多いカルラより、素直そうな物言いのくせにまるで油断のないペガサスの方が、よほど難敵であった。
 
「・・・やはりあの女の血族はッ・・・どこまでも気に入らないねェッ!!」

 六道妖のなかで、もっとも人間らしい妖化屍を人妖とする。
 そのように、六道妖の創設者である骸頭から、縛姫は教えられていた。前任の人妖である〝慧眼”の男も、人間らしさをどこかに醸した妖化屍だったと聞いている。
 
 確かに縛姫は、人間っぽさの強く残る妖化屍だった。
 憎悪する。嫉妬する。恐怖もすれば、生き抜くためならプライドだって捨ててみせる。強さという点では天妖〝覇王”絶斗や修羅妖〝無双”の虎狼に及ぶべくもないが、誰よりも長く生き続けるのは、自分だという自負がある。
 
 だから縛姫は、この時点で剛武を切り捨てた。
 縛姫自身の力では、まともにぶつかってオメガペガサスに勝てるわけがない。あの状態からでは、剛武が死ぬのは確定的。
 どれだけ憎悪しようと、今の状況ではペガサス=萌音に敵わない。ならば・・・
 
「せめてカルラの首をッ!! もらっていくよぉッ!!」

 黄色の風天使を抱えた水城菜緒に、〝妄執”の縛姫は襲い掛かる。
 カルラをこの〝一般人”の少女に預けたのは、どう考えてもペガサスの失態であった。剛武を蹴り殺すことに集中している今、空天使はふたりの仲間の警護を完全に疎かにしている。
 
 左右の腕を、緑の大蛇に切り替える縛姫。それは緊縛を得意とする女妖化屍の、もっとも攻撃的な態勢。
 仁王立ちしたまま動かない『水辺の者』の少女に、顔を陥没させた熟年女が奇声をあげて飛び掛かる。
 
「萌音が私に預けたのは、カルラさんだけじゃありません」

 和風美少女の落ち着いた声が、縛姫の背中に不穏な寒気を感じさせた。
 
「忘れましたか? あなた自身が用意した道具です。オメガスレイヤーの能力を、封じるために」

 菜緒が右手に握ったものは、カルラの首から外した、緑色のネックレス。
 オメガ粒子を消滅させる〝オーヴ”――アンチ・オメガ・ウイルスをたっぷり含んだ鉱石が、少女の掌に収まっていた。
 
「普通の人間である私には、なんの変哲もない石だけど・・・オメガスレイヤーとあなたたち妖化屍の力を減退させる、んでしたよね?」

「ぎッ・・・ぎィざまァああああああッ~~~ッ!!」

 クレーターのごとく凹んだ縛姫の顔面に、緑の鉱石を菜緒は投げつけた。
 妖化屍の能力をも奪う〝オーヴ”。そんなものを顔に受ければ、いくら六道妖でも死者の特権である肉体の頑強さが発揮できない。深刻なダメージは避けられない。
 
 懸命に縛姫は背中と首を反らす。
 投げられた拳大の〝オーヴ”の鉱石は、鼻先10cmほどを通り過ぎていく。
 水城菜緒の切り札は、避けることができた。となればこちらのターン。小癪な小娘とカルラを、八つ裂きにして殺――・・・
 
「させッ!! ないッ!!」

 縛姫が見上げた上空に、紫雲の空天使が紫のケープを舞わせて飛翔していた。
 
 仲間の窮地に、素早く反応したのか。なんという速さ。そして。
 なんという、読み。
 菜緒がそこに〝オーヴ”鉱石を投げるとわかっていたかのように、両足を揃えたオメガペガサスは抜群の高さとタイミングでその場に現れていた。
 
 ドジュウウオオオオッッ!!!
 
 緑の鉱石もろとも、オメガペガサスのドロップキックが、縛姫の顔面を打ち抜いた。
 陥没した〝妄執”の顔に、〝オーヴ”の塊がグボリと埋まる。そのうえから紫のブーツが、首ももげよと言わんばかりに突き刺さる。
 
「ぷぎょおおオオオッ!!」

 顔の中央に緑の石をめり込ませた縛姫は、鮮血を飛ばしながら木の葉のように吹っ飛んだ。
 体育館の中央まで、ゴロゴロと転がっていく。ようやく止まったドレス姿の妖化屍は、ビクビクと全身を痙攣させた。
 
「菜緒ッ!」「うん」

 セーラーコスの空天使と、ブレザー姿の美少女は、互いの右手をパチンと合わせた。
 爽やかなまでの女子高生たちに対し、人妖・縛姫と〝跳弾”の剛武は、冷たい床に大の字で倒れてヒクヒクと震え続けている。
 
 一方的なまでの、オメガペガサスの完勝――。
 誰が見ても勝敗は明らかななか、白と紫のセーラー服姿のヒロインは、トドメの一撃を放ちにかかる。
 
「六道妖。オメガヴィーナスとフェニックス、ふたりを手に掛けた君たちのことは、絶対に倒すってモネは誓っていたんだよ」

 10m以上、距離を置いたままで、ペガサスは仰臥する縛姫に向けて両腕を突き出す。
 左右の掌の間で、空間が奇妙に捻じれていく。
 空間を自在に変形させる――それが空属性のオメガスレイヤーの異能力であった。だがオメガペガサスは、ただ空間を高密度で圧縮しているだけではなかった。
 
「人妖・縛姫。あなたはモネの最強の必殺技で倒すことにするよ。六道妖だけは、確実に仕留めたいからね」

 空間を操る空天使は、そのふたつの掌の間で気圧も変化させていた。
 気圧が変われば温度も変わる。温度が変われば、空気内に含まれていた水蒸気は水や氷に変化する。
 オメガペガサスの両手の間には、ぐるぐると渦巻く白いモヤのようなものが現れていた。雲だ。旋回する雲の渦は凝縮したまま留まり、空天使が両手に持ったサッカーボールのようにも見える。
 セーラー服姿の萌音が初めて体育館に足を踏み入れた時、持っていたボールの正体は、この小型ハリケーンのような球体であった。
 
「君たち六道妖を全滅させたあとで・・・モネは翠蓮お姉さまを倒すから。お姉さまの犯した罪は、モネが拭うの」

 バチバチバチィッ!!
 
 旋回する雲のなかで、電撃が発生する。
 帯電した証なのか、モヤのように白かった雲には薄墨のような濃淡が色づいている。暗雲、というほどではない。この彩りの様子は・・・紫雲と呼ぶのが相応しい。
 
 これが紫雲の空天使、最強の必殺技であった。空間を凝縮し、結果的に雷を発生させる。オメガペガサスの両手の間に造られた球体は、電撃を帯びた紫雲の砲弾。
 名付けて。
 
「サンダーボルト、ならぬッ・・・サンダーボールッ!!」

 ドキャアアアアァァッ!!!
 
 旋回する紫色の雷撃弾を、オメガペガサスの右脚がシュートした。
 稲妻を迸らせて、唸る球体が闇を切り裂く。
 狙うは人妖・〝妄執”の縛姫。いまだ痙攣して倒れこんだ六道妖のひとりに、雷撃ボールをかわせるはずはなかった。むろん、耐え抜くことも。
 
 かつてオメガヴィーナスを抹殺した恐るべき妖化屍のひとりを、紫雲の空天使は葬ることができた。はずだった。サンダーボールさえ当たっていれば。
 
 突如立ち塞がった肉の壁が、縛姫の代わりに雷撃弾を喰らっていた。
 
「ぐおおおッ・・・おおおおッ―――ッ!!!」

 ほぼ全裸で褐色の肌を剥きだした力士体型が、駆け巡る電撃にバチバチと光る。
 太鼓のような腹の中央で、剛武はサンダーボールを受け止めていた。旋回する紫雲の砲弾は、いまだぎゅるぎゅると脂肪を掻き分け、弾力ある腹のなかで回り続けている。
 
「ッ・・・うそッ!?」

 セーラー服型のスーツを着たヒロインが、胡桃の瞳をさらに丸くした理由は2つ。
 ひとつは、最強の威力を誇るサンダーボールを受けて、〝跳弾”の剛武が生きていること。
 そしてもうひとつ。より驚愕したのは、自分をあっさり見捨てた縛姫を、己が欲望のままに動くはずの妖化屍が庇ったこと。
 
「グハッ・・・グハハハハァッ!! ファッ、ハハハッ!!」

 雷撃弾の回転が止まり、掻き消えていくと同時に剛武は笑った。
 腹を抱えてゲラゲラと哄笑する。何度も蹴られてその顔は鮮血に染まっているが、構うことなく笑い続けた。
 
「ツイてるッ!! オレたち妖化屍はツイてるぞッ! なあ、オメガペガサス!? お前の必殺技がよりによって電撃とはな! ゴムのオレ様にとってはラッキー以外のなにものでもねえぜッ!!」

「・・・ん-、そっか。ゴムの身体には電気は流れにくいってわけ」

「さあ、最強の必殺技とやらを破ったからには、今度はこちらの・・・」

「えっとね、調子に乗るのは早いんじゃないかな」

 アヒル口にした唇を、敢えてペガサスは微笑の形に吊り上げた。
 剛武がサンダーボールを耐え抜いた理由には、ある程度の予測がついていた。驚きはしたが、有り得なくはない。
 剛武が身を挺して縛姫を助けたのは、まだ勝てると思っているためだろう。しかし、と空天使は思う。確かにゴムの肉体を持つ〝跳弾”は厄介な相手だが、オメガペガサスからすれば脅威を覚える敵ではない。ただ、倒しにくい、だけだ。
 
 打撃を吸収し、電撃を無効化するゴムの身体にせよ、何度も引き伸ばせばダメージは残る。あと数回。強烈な痛打を浴びせれば、風船のような巨体を破裂させる自信がペガサスにはあった。
 
「サンダーボールだけが、モネの必殺技じゃないよ?」

 高く突き上げた右手の周囲に、紫雲の空天使は再び空間を捻じ曲げ凝縮させる。
 見た目にはわかりにくいが、ドリルの形をしたグローブを嵌めたようなものだった。螺旋を描いた空間に触れた物質は、成すすべなく旋回に巻き込まれる。空間自体を曲げているため、どんな強固な物質も変形を余儀なくされるのだ。
 ゴムの伸縮性を得た剛武といえど、青ざめておかしくない凶悪な技。
 
「金属だろうと生身だろうと、なんでもグニャリと捻じ曲げちゃうよ。名付けて必殺ドリルパンチ」

「クハッ! そのダサいネーミングセンスはなんとかならねえのか、おい」

「うるさいな。美術だけは昔っから1なんだよね」

 唇を尖らせた可憐な空天使は、次の瞬間には風となった。
 紫のケープをなびかせて、セーラー服コスチュームの肉感少女は真っ直ぐ突っ込んでいく。白と紫の弾丸。そのスピードは、〝跳弾”を遥かに凌駕していた。
 
 呆気ないほどあっさりと、オメガペガサスは剛武の懐に飛び込んでいた。
 
 渾身の右ストレートが、膨らんだ腹部に突き刺さる。
 完璧な一撃。地響きにも似た轟音が炸裂し、旋回する空間に巻き込まれた剛武の脂肪肉が螺旋を描いて捻じ曲がる。
 
「げはああァッ!?」

 力士然とした巨漢が、獣のような叫びをあげる。同時に口を割る、ドス黒い血潮。
 
 勝った。
 今度こそオメガペガサスは確信した。
 このままドリルパンチを打ち込めば、剛武の腹を突き破れる。まず一体、妖化屍の難敵は葬った。残るは本命ともいえる、〝妄執”の縛姫を倒すのみ。
 
「げぼオ”オ”ッ!! オボオオ”ォロロロロッ!! オ”ロオ”ロオ”ロロォ”ッ!!」

 コールタールのような漆黒の反吐を、剛武は吐き続けた。右拳を打ち込むオメガペガサスの頭から、バシャバシャと降りかかる。
 胸にまで届く長い茶髪も、白と紫のセーラータイプのスーツも、ヘドロに覆われていく。むろん汚いからといって、ドリルパンチを押し込む右手を休めるような空天使ではない。
 
 だが――。
 
 長い。長すぎる。
 いくら150㎏を超える巨体だからといって、これほど大量の吐瀉物は異常なのではないか。
 そしてなにより、嘔吐した血がこれほどに黒いのは一体・・・
 
「ッ・・・これは・・・血じゃないッ!!」

 ゲヒ・・・ゲヒヒヒ・・・・・・
 
 粘りついた笑いが耳元で響いたとき、オメガペガサスは自身を襲う窮地に気付いた。
 〝跳弾”の剛武が吐き出したのは、血反吐などではなかった。あらかじめ体内に隠しておいた、最後の切り札。
 
 ようやく紫雲の空天使は悟る。なぜ剛武が、縛姫を庇って己の腹部で雷撃弾を受けたのか。
 
 このためだった。どこまでも伸びるゴムの胃のなかに潜ませておいた・・・恐るべき妖化屍を外に吐き出すため。
 結果的にサンダーボールでは飛び出さなかったものの、続けざまに腹部に強打を喰らわせたことで、剛武の目論見は最高の形で現実となった。
 オメガペガサスからすれば、最悪の結果。ただ隠れ潜んでいた妖化屍を外に出すだけではなく・・・その接触を許してしまったのだから。
 剛武が言った妖化屍はツイてるという言葉は、確かに事実なのかもしれなかった。
 
「・・・ゲヒッ、ウヒヒヒ・・・ちょ~とっ・・・気付くのが遅れたねぇ~・・・オメガペガサスぅ~~・・・・・・」

 頭の先から胸元。乳房から下腹部にかけて。紫色のブルマの股間にも。むっちり張った太ももにさえ。
 すでに余すところなく、オメガペガサスの豊満ボディは黒いヘドロに覆われていた。いや、黒と見えたのは剛武の胃液と混ざっていたから。乾燥が進むにつれ、セーラーコスとブルマを包んだ汚泥は、本来の灰色に戻っていく。
 
「ッ・・・餓鬼妖ッ・・・〝流塵”の・・・呪露ッ!!」

「言っただろうッ、オメガペガサス~~ぅッ!! 骸頭からはたくさんの道具をオメガスレイヤー抹殺のために借りているとねぇッ!!」

 いつの間にか息を吹き返した縛姫の声が、ステージの上から飛んでくる。
 顔面中央のクレーターはさらに深く窪み、溢れる血が陥没した凹みから流れていた。ハアハアと、荒い息を吐く〝妄執”の袖から伸びた二匹の大蛇は、それぞれ獲物に巻き付き締め付けている。
 
 確認するまでもない。オメガカルラと水城菜緒。
 黄色のコスチュームの風天使と、ブレザー姿のおさげ少女は全身を緑の大蛇に巻かれている。相当強烈に締めあげられたのだろう。元々意識のなかったカルラはもちろん、菜緒もまた白目を剥いてビクビクと痙攣していた。
 
 オメガペガサスの大事なふたりの親友は、気絶した状態で六道妖の手に落ちていた。
 
「六道妖のひとり、餓鬼妖・呪露こそが、骸頭から借りた最強の道具ってわけさぁッ!! オメガスレイヤーを狩るための、準備は万端だったんだよぉッ~~ッ!!」

「くッ・・・うッ・・・こんな、ことでッ!」

 粘ったヘドロが、全身をモゾモゾと撫で回す不快感。
 灰色の汚泥で出来た怪物が、自身の肢体の感触を楽しんでいることに空天使は気付く。だが、気になどしていられなかった。敵は3体、こちらはひとり。圧倒的不利に置かれた今、オメガペガサスはまずは着実に剛武を葬るべく、右腕の空間ドリルに力を込める。
 
「おっとぉ~~・・・そうはさせないよぉ~~・・・モ~ネちゃ~~ん・・・」

 ペガサスの白桃の頬にへばりついていたヘドロから、二本の指が飛び出す。
 全身泥の怪物、〝流塵”の呪露の、これが恐ろしさだった。空天使を包んだ泥の全てが、呪露の肉体そのものといっていい。
 大きく見開かれた胡桃の瞳に、二本の泥の指はズブリと突き刺さった。
 
「うああッ!? くああああッ~~~ッ!!」

 たまらず顔を押えて、ペガサスは仰け反る。
 ドリルパンチを打つ、どころではなかった。攻撃を中断したペガサスは、両手を使って顔に張り付いた汚泥を剝ぎ取ろうとする。
 
 むろん灰色のドロは簡単に取れるようなシロモノではない。餅よりも粘つき、瞬間接着剤よりもピタリと密着する。もがけばもがくほど、ますます汚泥は絡まってくるように思えた。セーラー服型のスーツ越しに、左右の乳房をギュウギュウと粘液が揉み潰してくる。
 
「あくぅッ!? くあぁッ・・・あッ!」
 
 眼球にヘドロが張り付く痛みと、流動体に肢体を這い回られるくすぐったさ。
 悲鳴とも喘ぎともつかぬ声が、オメガペガサスの口を割って出る。
 その隙を狙っていたかのように、灰色の汚泥はペガサスの口腔内へと侵入した。ズゾゾゾ、と喉を通り過ぎ、胃の奥までに雪崩れ込んでいく。
 
「オ”ぶぅ”ッ!! お、オオ”ッ・・・ごぼぼぉ”ッ・・・!!」

「・・・ゲヒヒ・・・フェニックスのときをぉ~~・・・思い出すねぇ~~・・・・・・あいつのオッパイも・・・揉み心地がよかったなぁ~~・・・」

 セーラーコスを盛り上げる丸いバストも、ブルマに収まった股間も、今やハッキリ視認できるほどに、纏わりついたヘドロがズリズリと擦りあげ、撫で回していた。
 敏感な箇所に付着したドロが蠢く。それはそのまま、生温かいローションで乳首や陰唇を愛撫されているようなもの。
 
「んボオオ”ォッ!? オボォ”ッ! ・・・おぶぅッ・・・んぅ”ッ!!」

 全身を腐ったような泥に覆われ、グニャグニャと揉みしだかれるオメガペガサス。
 小さな右手がブルブルと震えながらも、ゆっくり上がっていく。自身の顔の高さまで来たとき、空天使はその指をパチンと鳴らした。
 
 右手のなかで、稲妻が迸る。
 ペガサスはサンダーボールと同じ要領で、小型の雷を造り出していたのだ。発生した電撃を、自らの顔に向かって放つ。正確にいえば、顔を覆った〝流塵”の呪露に。
 
 ボンッ!! と破裂の音色が響く。
 灰色の汚泥は細かな粒子となって、四方八方に飛び散った。頬を真っ赤に染めたアイドルフェイスが、ヘドロの中から露わとなる。
 
「・・・ゲヒ、ウヒヒ・・・やるねぇ~~、と言いたいけど・・・それは自分も痛いよねぇ? ・・・」

 呪露の指摘は当たっていた。
 電撃は纏わりついたヘドロにだけではなく、ペガサス自体にも当然流れる。電気を生み出せるといっても、自分自身が平気というわけではない。
 
 しかも紫雲の空天使が小型の雷撃で吹き飛ばしたのは、肢体を覆う粘液の一部・・・胸から上の、上半身のみであった。
 腰から下は、変わらず灰色のドロにビッシリと纏わりつかれていた。しかも霧状になるまで爆散させたというのに、再び呪露の身体=灰色の汚泥は、オメガペガサスに粒子となって付着し始めている。
 
「はあッ、はあッ・・・!! んああ”ッ・・・!! ぐッ・・・!」

「・・・一方オレの方はぁ~~・・・バラバラにされてもぉ、またすぐ元通りぃ~~・・・ゲヒヒヒ・・・所詮ムダなあがきだったねぇ~~・・・ウヒヒッ!!」

 丸い瞳の美少女が、悔しげに顔を歪める。だが苦渋の理由は、呪露を倒せなかったから、ではない。
 ブルマの隙間から侵入したドロが、直接乙女の秘窟を浸し始めていた。
 じゅぶじゅぶと音をたてながら、アワビのようなクチを撫で、膣穴の壁に張り付いていく。粘った汚汁は徐々に、確実に子宮に向かって這い進む。
 
 吐き気を催す嫌悪感。しかし、認めずにはいられない痺れるような快感。
 今にも鋭い嬌声が漏れようとするのを、懸命に浅間萌音は耐えていた。
 
「・・・んん~~? ・・・モ~ネちゃ~~ん・・・随分身体が震えているねぇ~~・・・グヒヒ・・・特に腰・・・オレの愛撫がそんなにキモチイイのかい~~・・・?」

「うくぅッ!? ・・・あッ、あまり・・・調子に乗らない方、がッ・・・いいよ・・・ッ!!」

「・・・ゲヒッ、ゲヒヒヒッ!! ・・・さてはお前~~・・・感度良好だなぁ? ・・・このムチムチの肌を触れられたこと・・・ほとんど経験ないようだねぇ~~・・・」

 表情が硬直するのを、不覚にもオメガペガサスは抑えられなかった。
 
「そういうことかッ!! なるほどねぇッ、ペガサスが未熟というのはッ・・・性的に脆いって意味だったのかいッ!!」

 陥没した縛姫の顔が、般若のごとく凄味を増す。不気味なその表情こそが、笑顔だとわかるには時間が要った。
 足元に転がる物体を、〝妄執”が蹴り飛ばす。
 つい先程まで、縛姫自身の顔に埋まっていたものだった。妖化屍とオメガスレイヤーの、能力を奪うもの。緑に輝く拳ほどの鉱石。
 
 〝オーヴ”石のネックレスは宙を舞い、空天使を覆うヘドロの怪物にキャッチされた。
 
「あッ!?」

「・・・ゲヒヒッ、ウヒヒヒッ!! ほ~~ら、六道妖からのプレゼントだよぉ~~・・・オメガスレイヤーにはこれが一番お似合いだねぇ~~・・・ッ!!」

 抵抗しようとした瞬間、ペガサスの豊かなバストは再結集した汚泥に覆われる。じゅりッ、とスーツ越しに乳首を転がされ、あえなくセーラー少女は全身をヒクつかせてしまう。
 あっさりと呪露に握られた〝オーヴ”のネックレスは、オメガペガサスの首に掛けられた。
 
 鎖に繋がれた緑の鉱石は、ちょうどDカップの胸の谷間・・・紫色の『Ω』マークに当たる。その少し上には、黄金色のハート型リング。
 紋章と、オメガストーン。もっともオメガ粒子の集積している場所に、〝オーヴ”の石が接近したのだ。
 オメガペガサスの翼は、もがれたも同然であった。
 
「うああ”ッ・・・うわあああああ”ッ―――ッ!! ち、力がッ・・・ぬ、抜けちゃッ・・・!!」

「やれッ、剛武ッ!! この縛姫の顔に傷をつけたクソ女ぁッ・・・!! 地獄を見せてやりなぁッ~~ッ!!」

 鮮血を噴きながら立ち尽くしていた巨漢が、人妖の言葉に息を吹き返す。
 カッと眼を光らせた剛武は、ガバリと紫雲の空天使に抱きついた。咆哮する。ほとんど意識もないまま、怒りと憎しみだけでペガサスの腰にしがみついていた。
 ベアハッグの態勢に捉えた〝跳弾”の剛武は、オメガペガサスを一気に締め上げる。
 
 メキメキメキィッ!!
 
「ぐはァ”ッ!? あああッ、きゃあああ”あ”ぁ”ッ~~~ッ!!」

 オメガ粒子を急激に消され、超人的な強度を失った空天使は、かつてない激痛に絶叫した。
 だが、妖化屍どもによるオメガスレイヤーへの責めは、ここからが本番。
 呪露によってじゅるじゅると摩擦されている乳房に、剛武の分厚い胸板が密着する。膣奥までドロの侵入を許した股間には、ゴム製の男性器。
 
 悪寒にゾクリと背筋が震える。だが、粘液による愛撫だけで脳に霞がかかったオメガペガサスには、なんの抵抗も出来はしなかった。
 
 ブウウウゥゥンンッ・・・!!
 
 ゴムの性質を持つ巨体が、小刻みに震動する。
 空天使の肉感的な肢体は、全身にモーターを張り付けられたかのように震えた。特に念入りに揺さぶられる、バストと股間。
 
「え”あ”あ”ッ!? ふぇあ”ア”ッ、うぇ”え”あ”あ”ア”ア”ッ―――ッ!!!」

 体育館に、絹を裂くような悲鳴がこだまする。
 ツンツンに屹立した左右の乳首が、有り得ない速さで前後左右にクリクリと転がされる。陰唇の入り口に突っ込まれた亀頭からは、電撃のような痺れが押し寄せた。
 
 男の手に触れられたことのない萌音にとって、経験のない随喜であった。
 しかもオメガペガサスを嬲るのは、剛武のゴム震動だけではない。空天使の表面は、〝流塵”の呪露に覆われ、その柔肌を間断なく擦られているのだ。
 
 呪露と剛武。二体による同時愛撫。
 人外の快楽責めを、生まれついて感度の高い空天使が受ける。
 身体中の全ての性感のツボを、粘液と震動、2種類の指でほじくられるような。怒涛のごとき愉悦が、オメガペガサスの脳と子宮を包んでいく。
 
「え”・あ”・あ”・ア”・ア”・ア”ッ!! ふぇ”ア”・ア”ッ、ア”・ア”・ア”ア”エ”エ”エ”ッ~~~ッ!!!」

 茶色の長い髪を揺らし、涎を撒き散らしてペガサスが絶叫する。赤茶色の大きな瞳が、ぐるりと白目を剥きかかる。
 ガクガクと震えるのは、剛武の震動がゆえ、だけではない。痙攣している。貫く快楽に、ピチピチと張った瑞々しい肉体が悶え踊る。
 
「トドメだよッ、オメガペガサスッ!! これで紫雲の空天使も終わりだッ!!」

 縛姫がなにかを、再びペガサスの頭上に投げる。キラキラと光る、筒状の長い結晶。
 オメガカルラに事実上のトドメを刺したそれは、紫水晶のバトンであった。
 
「はふぅ”ッ・・・!! ふぇ”ッ!! ・・・エ”、アア”ッ・・・!!」
 
 意識が飛び掛かったペガサスは、迫る脅威に気付いていなかった。
 〝跳弾”の剛武がベアハッグを解く。一気に上空高くへ飛び上がる。
 棒状の紫水晶がペガサス目掛けて落ちる頃には、剛武の巨体は天井にあった。
 
「・・・ゲヒヒヒヒッ!! そぉら~~・・・オメガペガサスぅ、討ち取ったりぃ~~・・・ッ!!」

 肥満体の締め付けから解放されたペガサスは、ぐったりと全身を弛緩させた。
 崩れ落ちかかる発育した肢体を、呪露が背後から大の字に拘束する。天を仰ぐような格好で、オメガペガサスは固定された。
 
「ぅあ”ッ・・・あッ!?」

 紫水晶のバトンを受け取った呪露は、その先端を空天使の胸に突き刺した。
 硬い物質が胸の谷間を打つ痛みに、ペガサスは呻く。だが、真の苦しみはここから――。
 
 細長い紫水晶の先端が当てられたのは、『Ω』の紋章であった。
 その遥か頭上から、150㎏の巨体が降ってくる。〝跳弾”が、加速をつけて落下する。
 
 いわば杭となった紫水晶を、凄まじい速度で迫った剛武が、一息に根本までオメガペガサスの胸中央に打ち込んだ。
 
 ドオオオッ・・・ジュボオオオオッ!!!
 
「んああ”ッ!! うぎゃあああ”あ”ア”ア”ア”ッ~~~ッ!!!」

 絶叫とともに、紫雲の空天使の口から、鮮血の塊が噴き出した。
 セーラーコスを盛り上げるふたつの丸い果実。形も大きさも申し分ない美巨乳の狭間から、太い血の柱がブシュウウッ、と昇る。
 
 妖化屍どもの哄笑が響くなか、紫水晶を胸に埋めたオメガペガサスはビクビクと痙攣し続けた。
 
「ホホホッ・・・オホホホッ!! お前の負けよぉッ!! オメガペガサスッ、浅間萌音ェッ!! あとはカルラとふたり揃って・・・夜が明けるまで嬲り殺してくれるわぁッ!! 覚悟しておくんだねェッ!!」

 胸を抉り抜かれたような激痛のなか、オメガペガサスは縛姫の嘲笑を、消えかかる意識の彼方で聞いていた。
 深夜の体育館のなかで、風に続き、空属性のオメガスレイヤーが六道妖の軍門に下った瞬間であった――。
 
 
 
 
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| オメガスレイヤーズ | 00:16 | トラックバック:0コメント:4
コメント
今度こそ今年最後の更新になると思います(^^ゞ 1日早いクリスマスプレゼント、というところでしょうかw
今回はオメガペガサス特集ですね。できるだけキリのいいところで区切りたかったので、ちょっと無理をして詰め込みました。

あとは冬コミに向けての連絡というか宣伝というか(^^ゞ、少しお知らせをして今年は終わりになると思います。
オメガスレイヤーズも来年からが本番になると思いますので・・・引き続きご愛顧いただければ幸いです。
2016.12.24 Sat 00:17 | URL | 草宗
>拍手コメントくださった方
今年を終わるには前回分までではちょっと物足りなく思っていたので、なんとか頑張りました(^^ゞ

ペガサスの性格はこれから明らかになってくると思いますが(もったいぶっているわけではなく、文章量的に書けないだけですけどw)、姉の翠蓮が大きなポイントになってくるでしょうねえ~。
ただ一番の魅力は、仰るようにムチムチボディとそれと反比例するような性的な脆さですので(^^ゞ、存分に楽しんでいただければと思いますw

今やっているのは0話なために、本格的な内容はDL化する1話からになってしまうのですが・・・それでもある程度は仰るようなチョメチョメな展開はありますので、少しだけ期待いただければと思います(^^ゞ

今年もたくさんコメントくださり、ありがとうございました(o´∀`o) 来年もよろしくお願いします。よいお年をお迎えください。
2016.12.25 Sun 22:27 | URL | 草宗
年末に2日更新とは、凄いペースでしたね。
お疲れ様でした。
丁度クリスマスのプレゼントでしたよ。

今回のペガサスの活躍、カッコよかったですね。
サッカー少女という事で、蹴るはもちろんで、
オーヴごとのドロップキックは、ちょっと笑っちゃいましたね。
元気有り過ぎw
ネーミングセンスの悪さも、可愛いい♪
敵にも見方にも影響が有るオーヴには、
こんな使い方が有ったのですね。

後半は調子に乗りすぎて、ピンチになっちゃいましたが、
ペガサスの未熟の意味は、性的な所だったのには
予想外でしたよ。
てっきり力や戦闘不足などからの未熟だと思ってた。
こんな魅力的なところが未熟なんて、
今後の展開が楽しみでしょうがないですよ。
捕らわれてしまったペガサスの今後を、
楽しみにしていますね。
翠蓮が姉というのも、重要な鍵になりそうですね。

そして週末のコミケ、いっぱい楽しんできてください♪
2016.12.26 Mon 21:11 | URL | さとや
>さとやさま
うまく休みが取れる時は、月2回更新も可能になるんですが、今回は特にクリスマスもあったので、そこは意識しました(^^ゞ

ブルマを履いていて、太ももむっちりなペガサス=萌音ちゃんにはサッカーは似合うんじゃないかとw オーヴごとのドロップキックはなにげに気に入っています(^O^)
性的に脆いのも弱点ですが、美術センスゼロなのも弱点といえば弱点ですねw まあでも、ヒロイン・ヒーローの必殺技はダサイくらいでちょうどいい気もしますので、意外とアリかな、とも思っていますが(^^ゞ

エロ担当っぽい子があまりいないので、ペガサスにはそこらを期待、というところですね。
これは面白いんじゃないかな、と思う嬲り方がひとつあるので、早く試してみたいです^_^;

やるべきことは終えたので、これで安心してコミケにいけますね(o´∀`o) さとやさまの分も楽しんできます。
2016.12.26 Mon 23:50 | URL | 草宗
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