巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

オメガスレイヤーズ 第0話「破妖の天使」② | main | シン・ゴジラが凄すぎた・・・
オメガスレイヤーズ 第0話「破妖の天使」①
オメガスレイヤーズ 「第0話 破妖の天使」


 序


スレッド名「【都市伝説】マントのヒロインは実在するか?Part2【目撃談】」


255:名無しさん 20XX/09/03 18:52:49 ID:N5GYKw

オレが聞いた話だとバケモノみたいなのと戦ってたらしい
マントもしてたし、なんかアメコミのヒーローモノみたいな感じ?
最初は撮影かと思ったら、気が付いたら消えてたんだって!


256:名無しさん 20XX/09/03 19:03:02 ID:iTV4Vj

消えたってw


257:名無しさん 20XX/09/03 19:11:23 ID:BaDO/Lw7

アメコミっていうとスーパーガールみたいな?
映画とかテレビドラマでやってたよね コスプレじゃないの?


258:名無しさん 20XX/09/03 19:16:42 ID:mknPI0B

お前らまだこんなの信じてんのかよwww


259:名無しさん 20XX/09/03 19:33:02 ID:fZHy5HO

信じるか信じないかは勝手だしウソだと思うのが普通だろう。
だが誰がなんと思おうがこれだけは言わせてくれ。これは真実だ。
なぜならオレがこの目で、彼女をみたからだ。


260:名無しさん 20XX/09/03 19:42:15 ID:fZHy5HO

上で言っているようにアメコミのようなマントをしていた。
マントだけじゃなくコスチューム?みたいなのを着ていた。
オレはモーターショーのコンパニオンとかレースクイーンをイメージしたけど。

ちなみに思ったより若そうで、かなりかわいかった。


261:名無しさん 20XX/09/03 19:47:38 ID:7LHxDFp

マジで? もっとkwsk


262:名無しさん 20XX/09/03 20:01:17 ID:fZHy5HO

亡霊がでるって言われてる廃墟のホテルがあるんだ。有名な心霊スポットなんだけど。
仲間とそこに入ろうとしたら、入り口の前に立ってたんだよ。あの時はめちゃめちゃビビった。
噂のマントヒロインじゃん、っていうよりまず、いつの間に現れたかわからなくて。
んで、入るなって言うわけよ。入ったら命の保証はしないって。


263:名無しさん 20XX/09/03 20:06:02 ID:fZHy5HO

頭混乱したけど、すごい迫力でさ。圧倒されて動けない、って感じ。
女子高生くらいの小さい女の子なんだけど、あれは本物のヒロインかもって思った。
その後その子はホテルに入っていったんだけど…オレらは怖くなってすぐ逃げ帰ったよ。

ちなみにその子は全身黄色だったよ。マントもコスチュームもね。


264:名無しさん 20XX/09/03 20:08:54 ID:TX08wQQ

おいおいすげえじゃん!
やっぱり怪物と戦ってるマントヒロイン、実在するんじゃねーのか!


265:名無しさん 20XX/09/03 20:11:44 ID:fZHy5HO

ちなみにその子、オメガなんとかって言ってた。
多分、名前だと思う。うっかり喋ったあと、めっちゃ焦ってたから。



 1、カルラ


 妖魔など、存在しない――。
 
 誰もがそう思う。胸の内でどこか期待にも似た感情を抱きつつ、信じるわけがないと。
 
 むろん、それを狩る者など、フィクションのなかだけの存在・・・ファンタジーの住人だと。
 
 だが、いつしか人々は気付く。
 
 いない、のではなかった。
 
 知らなかった、だけなのだ。
 


 ほんの気まぐれから、起こったことだった。
 
 高校からの帰り道。相沢健人は少しでも早く駅へと向かうため、普段は通らないショートカットの経路を選んだ。友人から借りた新作アニメのDVDを見たい、そんな些細な動機だった。
 そこは高層マンションの建設現場で、資金繰りが難しくなったのか、ここ数か月、工事は途中で完全にストップしていた。白の建築シートが垂れさがっているだけで、出入りする者は誰もいない。
 ここを通れば距離も時間も短縮できる、そう思った健人は、人目がないことを確認してシートをくぐり抜けたのだ。
 
 それが人生で忘れられない悪夢の引き金となる、など予測できるわけもなかった。
 
「うわああああッ・・・!! し、死体ッ!?」

 茶色の地肌が剥き出しになっている敷地、そのほぼ中央。
 そこまで健人が進んだ時、土の地面が盛り上がる。無数に。ボコボコと、健人の周囲を取り囲むように。
 
 目の前の地中から飛び出したのは、白骨化した頭蓋骨だった。
 皮も肉も眼球もない。わずかに顎に土気色の皮膚が張り付いただけの、いわゆるシャレコウベ。空洞になった左右の眼窩を、二匹のミミズが這っている。だが健人が、真にゾッとしたのはその後だった。
 
 その髑髏頭に続いて、地中から腕や胴体が飛び出す。
 這い出てくるのだ。土に埋まっていた、死体が。頭部が白骨化しているのだ、死んでいないわけがない。
 
 だが、明らかな死体であるにも関わらず、半分腐乱している肉体はよく動いた。ところどころ、ずるりと黄土色の肉片が落ち、白い骨が見えている。
 しかも亡骸たちは次々に――盛り上がった地面から湧き出てくる。健人を中心にして、瞬く間に十重二十重の死者の人垣が出来上がった。
 
「ゾッ・・・ゾンビッ・・・!!? うぁッ”・・・うああ”ッ・・・!!」

 巨大テーマパークのテレビCMが、健人の脳裏を瞬間よぎった。
 ゾンビナイト、とかいう夏限定のイベントを紹介するもの。要するにテーマパーク全体がお化け屋敷になるもので、入場者は無数のゾンビの群れに襲われる、という設定らしい。
 健人はそのイベントは未体験だが、カワイイ若手女優がゾンビに囲まれる映像はインパクトがあってよく覚えている。あの光景が、今実際に我が身に起こっているのだ。
 
 だが、健人は知る。
 本当の恐怖に襲われたとき、ひとは悲鳴などあげられないことを。
 ただ、引き攣った呻きが、咽喉奥から漏れただけだった。わずか2mほどの距離を置いて、四方を死者に囲まれることが、どれほど恐ろしいことか――。
 
 ざっと見て、4、50体。動く死体の視線が、一斉に中央の健人に注がれている。向けられた眼のなかには、真っ暗な空洞のままのものや、眼窩から目玉がこぼれかけているものもあった。
 感情のない眼は、怒りや憎しみの眼光より、はるかに臓腑を震撼させた。健人の遺伝子が、怯えていた。理屈など抜きに、根源的恐怖をもたらす存在が周囲を囲んでいる。
 
 ボロ布を纏ったゾンビの群れが、ずい、と一歩を縮めた時、健人は悟った。
 
 この死者たちは、自分を殺そうとしている、と。
 いや、もっと正確にいえば。
 
 柔らかで、温かいボクの肉を・・・食べようとしている。
 
「ッ・・・ぅああ”ッ・・・うわあああああッ~~~ッ!!!」

「まったく。なんでこんなところに迷い込んじゃうわけよ?」

 心臓が潰れそうな恐怖に、悲鳴がようやく口を割る。と、呆れたような声が頭上から降るのとは、ほとんど同時であった。
 
 ・・・女のコ? 確かにどこかのアニメヒロインに似た声が、聞こえた気がしたが。
 
 しかし健人が、上を向いている余裕はなかった。
 四方から、恐怖が津波となって押し寄せる。ゾンビの群れが、灰色の指を伸ばして健人に一斉に襲いかかってきた。
 健人の肉を掴もうとする、死体の指が。
 
「ひッ、ひィ”ッ!! たッ、助けッ!!」

「大丈夫よ。すでに風が、あんたを守ってるから」

 ザンッ!! ザザザザンンンンッッ!!!
 
 健人に向かって飛び込んできた死体が、空中で破裂して粉塵となる。
 まるで見えないバリアが、張ってあるかのようであった。半径約1m。それ以上健人に近付く者は、侵入を拒否されたかのように弾け飛ぶのだ。
 
「アリサの竜巻は、日本刀よりもよく斬れるからね。危ないから、あんたもヘタに動かないでよね。見えないだろうけど、あんたを中心にして風の壁があるんだから」

 確かに落ち着いて耳を澄ませば、ヒュルルル、と木枯らしに似た風切り音が、健人の周りで聞こえている。
 ゾンビの群れが突撃をやめ、じりと一歩下がった。ゼエゼエと、荒い息を吐きながら、健人は声のする上空へ視線を向ける。
 
 建設途中の高層マンション、その最上部。
 まだ剥き出しになっている鉄骨に、ポニーテールの少女が立っていた。
 
「ッ!! ・・・黄色の・・・マントヒロイン・・・ッ!?」

 SNSの掲示板で話題になっている存在を、咄嗟に健人は思い出した。
 風に煽られる長いケープも、露出が多めのコスチュームも、ほとんどが黄色で統一されている。よく晴れた青い空をバックに立つ姿は、遠目からでも鮮やかさが際立った。
 
 上半身を包む半袖のスーツは着丈が短く、必然的にキレイな形のお臍がハッキリと見えている。大きめの襟は大胆に開き、そこから覗く胸元には黄金のリングが輝いていた。下半身には極端に短いフレアミニ。健康的で、すらりと引き締まった生足には、バンビのような躍動感があった。
 身長は決して高くない、むしろ小柄な少女であることが離れていてもわかるが、惜しげもなく素肌を晒した衣装のためか、随分スタイルがよく見える。肉付きのバランスがいいのだろう。誰かがコンパニオンやレースクイーンに喩えていたが、納得のコスチューム姿だ。
 
 二重の切れ上がった瞳が、勝ち気そうな印象を与える。おぞましいゾンビの群れが地上に蠢いているというのに、微笑を浮かべたままなのも、よほどの強心臓の持ち主としか思えない。
 だが、こんな異常事態で出会っていなければ、健人は間違いなくひと目惚れをしていた――と断言できるほど少女の顔はチャーミングだった。
 少なくとも、一瞬死者に囲まれていることも忘れ、健人の胸がドキリと高鳴ったのは事実であった。

カルラ

 
「あ! もしかしてあんた、あの掲示板見てんの!? ちょっと、やめてよね! アリサ、ホントに困ってるんだから!」

「いや、そのッ・・・! ボ、ボクは見てるだけで・・・」

「この間も五大老のジジィたちにすっごく怒られたんだから! ナイショにしてってお願いしたのにもうっ・・・あんたはここで会ったこと、言っちゃダメよ。いい?」

「あ、ハイ、もちろん! 中も黄色だったとか・・・絶対言わないです、ハイ」

「中? ・・・ってなに見てんのよっ!! バカぁっ!!」

 短すぎるフレアミニのスカートを、慌てて少女は両手で押さえる。
 勝ち気そうな顔が、一瞬で真っ赤に染まった。こんな純朴な反応を示すとは、それまでの余裕綽々な態度と違いすぎて、健人の方が予想外で驚く。
 
「ゆ、ゆゆ、許せないっ! よ、よくもっ・・・! あんた、殺すわよっ!!」

 たん、と鉄骨を蹴るや、黄色のヒロインは高層マンションの最上階から飛び降りた。
 まだ建設途中とはいえ、20階はある高さ。転落死は間違いないはずの上空に、少女は階段をひとつ飛ばすくらいの気軽さで踏み出していた。
 
「いいィ”ッ!? うわああああッ~~~ッ!!!」

 絶叫する健人の目前に、大地を揺るがして少女が着地する。
 黄色のマントヒロインは、衝撃などなかったように、平然と腕組みをして健人の前に立っていた。
 マンションから飛び降りても平気な事実と、そんな噂のヒロインが柳眉を吊り上げてワナワナと震えている事実。
 ダブルのショックにますます健人は悲鳴をあげる。
 
「ごめんなさいッ!! ごめんなさいッ!! 不可抗力なんですぅッ~~ッ!! そんな短いスカートだったら、下からだと見えちゃいますよぉッ!!」

「へえー、言うじゃない。アリサのカッコウが破廉恥だからいけないってわけ?」

「わあああッ――ッ、そういうわけじゃッ・・・!! 正義のヒロインなのに、殺すとかって言わないでくださいよぉッ~~ッ!!」

「ちょっと待って。あんた、勘違いしない方がいいわよ」

 必死でペコペコと頭を下げた効果なのか、いくぶん落ち着いた様子の少女は、健人を制止するように掌を向けてきた。
 
「アリサは、っていうか、アリサたちは、正義のヒロインやってるわけじゃないから。掲示板でもヘンに盛り上がってるけどさ、そこんところ誤解しないでよね」

「え? で、でも、助けてもらったっていうひともいるし・・・今だってこうして」

「アリサたちオメガスレイヤーは、ケガレ・・・ああ、こいつらゾンビのことね、こういう生きた人間に仇なす亡者を、始末するのが目的なだけよ。正義のためとか、そんな大層な理念とかないから。あまり買いかぶらない方がいいわ」

「で・・・でも・・・実際に人々の役に立ってるのは確かですよね?」

「もしかして、あんたを助けるためにアリサがここに来た、とか思ってない? 残念だけど違うから。三か月前からこの付近で、200人以上が行方不明になってる。この異常な事態の犯人がここにいるんじゃないかと・・・見当をつけてただけよ」

 腕組みをしたままポニーテールの少女は、『なぜ自分がテストで高得点をとれたのか?』の秘密を講釈するような気軽さで話し続ける。
 腐りかけた亡者たちに囲まれているとは、到底思えぬ自然な仕草。
 だが、異常で、おぞましすぎる状況にあることに変わりはなかった。ゾンビどもはきっと、生きた人間に飢えているのだ。もちろんこの小柄でスレンダーな少女もまた、ケガレと呼ばれたアンデッドたちには、ご馳走に見えているのに違いない。
 
 健人の背筋を寒気が走った。不意に、気付いてしまったことがあった。
 黄色のヒロインは、見えない竜巻が健人を守っているという。だが、少女自身はどうなのだ?
 風の摩擦音は、健人の周囲からしか聞こえてこない。もしやバリアのような風の壁は、ひとつしか生み出せないのでは?
 
 つまりチャーミングな黄色の少女は・・・今、なにからも守られていない。
 
 ポニーテールの向こう。マントヒロインの背後に、5体のゾンビが殺到したのはその時だった。
 
「ィ”ッ!! う、うしッ!!」

「大丈夫。全部、わかってるから」

 黄色のケープが翻る。
 少女が唇をニッ、とあげた。と見えた瞬間には、すでにそれは残像だった。レースクイーンのようなコスチュームののヒロインは振り返り、その右腕は閃光を放っている。
 恐らくは、旋風の塊のようなものを撃ち込んだ、のだと思う。
 
 ボボボンンッッ!! と爆ぜる音色を響かせて、5つの動く死者は粉々に飛び散った。
 
「ッ!! す、すごッ・・・!!」

「ケガレってさ、脳や心臓を潰しただけじゃ動き続けるから。バラバラにするしかないのよね」

 ふぅ、と溜め息を吐く少女の声は、心なしか、哀しげに聞こえた。
 だが、感傷的な気分に浸る余裕はなさそうだった。ボコボコと、土の大地が次々に盛り上がる。工事現場の敷地面積、ほぼいっぱいに。沸騰したお湯の水面に、ブクブクと沸き続ける気泡のように際限がない。
 
「う、うわああああッ――ッ!? こ、これはッ・・・!!」

「やっと親玉登場みたいね。これまでのはただの前座だから。あんた、アリサが作った竜巻バリアから、絶対外に出ちゃダメだからね」

「お、親玉って・・・!!」

「200人殺した親玉よ。そいつの手にかかった可哀想な犠牲者が、ケガレになった。妖魔に殺された人たちは、アンデッドとなってヤツらの下僕になるのよ!」

 ・・・ということは、今襲ってきた死者たちは・・・少なくとも三か月前は、普通の人間だったのか。
 もし少女が現れていなければ、きっと健人も、このゾンビの群れの一員になっていたに違いない。
 
「ちょッ、ちょっと待って! てことは・・・ケガレは200体はいるってことッ!?」

 地中から蘇ったアンデッドの人波が、健人と黄色のヒロインを囲む。
 土気色の顔と、腐乱した肌。剥き出しになった白骨と、鼻腔をつく異臭。それらが幾重にも、連なっている。
 健人を襲う冷たい汗と全身の震えが、止まらなくなっていた。肉に飢えた亡者を相手に、1対200。むろん健人は、なにもできない。風を操る少女の力に、頼るしかない。
 
「大丈夫、って言ってるでしょ。萌黄の風天使オメガカルラは、1万人ケガレがいたって負けないから」

「オメガカル・・・ラ? もえぎの・・・ふうてんし・・・」

「あっと、また言っちゃった・・・ええいもうっ、それはちゃんと忘れてよね! ねえあんた、高校生でしょ? 今何年生?」

「え? ええッ? い、1年生、ですけど・・・ッ?」

 今にも飢えた死者たちが襲ってきそうというのに、なぜ学年など聞かれるのか、健人には意味がわからない。
 
 コツコツと、建設中のマンション内から靴音が響く。
 硬い足音だった。健人が好きなアニメのなかには、ミリタリーものもあるからこの音には聞き覚えがあった。これは恐らく軍靴・・・編み上げブーツが鳴らす音だ。
 
「しょうがないわね。アリサより年下だっていうなら、守ってあげることにするわ。今回は特別よ、特別!」

「は、はぁ・・・と、年が関係あるんですか?」

「少しでも長く生きてた方が先に死ぬ、てのが当然だとアリサは思ってる。1分でも1秒でも、アリサの後まで生かしてあげるわ!」

 押し潰されそうな恐怖のなかで、少女の言葉はじわりと沁み込んだ。
 
 殺すとか、しょうがないとか、口で言ってるくせにこのひとは・・・きっと、なんとしてもボクを守ろうとしてくれている。
 
「でたわね。親玉の、妖化屍(アヤカシ)登場よ」

 マンションの出入り口から現れた人影を、少女の視線が鋭く射抜いていた。
 妖化屍、と呼ばれた者の姿を見た瞬間、健人の全身は総毛だった。
 
 本物の殺人者とは、きっとこういう存在を言うのだろう。
 
 外見自体は、20世紀初頭の陸軍兵士といった趣きの男だった。軍服を纏い、口髭を生やしている。胸に飾られた多くの勲章が、危険度を示すバロメーターに見えるのは気のせいか。
 だが男の眼に浮かぶ無機質な光が、なにより健人の魂を震えあがらせた。人間を虫以下にしか見ていない、そんな眼だった。道を歩くときひとは、その足の下に蟻がいるかどうかに気付くだろうか? それと同じだった。平然と踏み潰しておきながら、誰かに指摘されるまで、この男は罪を犯していることに気付かない。
 
 そして恐らく、指摘されようと、己の性質を微塵たりとも変えようとは思わない。
 
「貴殿が、五天使のひとり、オメガカルラで相違ないか?」

 男が口を開く。低く、感情の見えぬ声だった。
 
「・・・そうよ。よく知ってるじゃない」

 唇を吊り上げて少女がニヤリと笑う。
 そんな不敵な表情も、可憐に映る不思議な少女だった。健人以上に男の危険性に気付いているはずなのに、まるで怯える素振りもない。
 殺意の塊と闘うことなど、黄色のマントヒロインには当たり前のことなのかもしれなかった。
 
「我輩は〝軍神”の将威(しょうい)という。貴殿には、ここで死んで頂こう」

 懐から取り出した拳銃を、将威と名乗った男が、真っ直ぐ少女に突きつけた。
 
「アリサにそんなもの、効くと思ってんの?」

 黄色のヒロインが、ますます自信を漲らせて微笑む。
 焦ったのは健人の方だった。風のバリアは健人の周囲にある。少女を守るものは、なにもなかった。銃弾を撃ち込まれたら、いくら数々の神秘的な力を見せてきたスーパーヒロインといえども肉体は・・・!
 
 火薬の破裂する音がして、銃口が火を噴いた。
 
 ゾンビの親玉が、引き金を引いていた。撃った。拳銃を撃った。飛来する銃弾が、佇んだままの少女の肢体へ――。
 
「えっ!?」

 ボッ、と銃弾はポニーテール少女の右肩に着弾し、肉片と血潮を周囲に撒き散らした。
 
「バカっ・・・なぁっ!! ぐうう”っ・・・うああああ”あ”ぁっ~~~っ!!!」

 右肩を押さえた黄色のヒロインが、茶色の大地に倒れ込む。
 鮮血が、押さえた指の隙間から滲む。額に汗を浮かべて、少女は悶絶した。鮮やかなコスチュームが汚れるのも構わず、地面を転がり回る。
 
「噂通りだ。オメガスレイヤーなどすでに、恐れるに足りず」

 依然、淡々とした口調で話しながら、〝軍神”の将威が胸ポケットから銃弾を取り出す。
 水晶のようにキラキラと輝く銃弾は、不気味な紫色を反射していた。
 
 
 
 2、〝軍神”
 
 
「紫水晶が我ら妖化屍を傷つけるシロモノであることは知っていたが・・・よもやオメガスレイヤーに対しても同様の効果があるとは。六道妖の情報は、真実だと証明された」

 口髭を生やした軍服の男に、リボルバー式の拳銃は違和感なくフィットしていた。
 銃口を躊躇うことなく、地を這う少女に向ける。紫色の水晶で出来ていると思しき銃弾は、すでに装填済みだった。
 
 ブルブルと震えるだけで、相沢健人は声を発することすら出来なかった。
 高層マンションから飛び降りても平気だった黄色のマントヒロインが、たった一発の銃弾を受けて右肩から血を流している。撃たれて傷つく、のは当たり前のことだが、超人じみた能力を数々見せられたあとでは、少女が苦しむことが信じられなかった。
 
 殺される、と思った。
 よくわからないが、あの紫水晶は、少女が苦手とする物質らしい。その銃弾で再び狙撃されたら・・・
 
 甲高い音がして、軍服男の指が拳銃の引き金を引いていた。
 紫の銃弾が、飛ぶ。むろん健人に、その弾道が見えるわけもない。
 
 ボッ、と着弾の音がして、黒土の地面が抉れた。つい今しがたまで、ポニーテールの少女が倒れていた場所に。
 まさしく風のように、黄色のコスチュームを着たヒロインは、右肩を押さえて立ち上がっていた。
 
「じ、銃弾を・・・避けた!?」

 呆気にとられた声を、健人は無意識に漏らしていた。
 信じ難いが、少女はただ立ち上がっただけ、とは見えなかった。迫る紫水晶の弾丸をその瞳に捉え、確実に身をかわした・・・そんな動きだった。動体視力といい、敏捷性といい、とても人間業とは思えない。
 
 しかし恐らく、このケープをなびかせたヒロインは、やってのけたのだ。弾丸をかわすという、神業を。
 いい加減、認識を改めねばならない。ゾンビの群れといい、軍服の殺人者といい、黄色のヒロインといい・・・健人は現実世界にいながら、超常の闘いに足を踏み入れている。並の感覚ではついていけない。
 
「〝軍神”の将威、だっけ? あんた、六道妖と知り合いなの?」

 顔いっぱいに汗を浮かべながら、少女の表情に不敵な微笑が戻っていた。恐らくは強がっている、と健人は見た。撃たれた右肩からは、依然真っ赤な血が滴り落ちている。
 
「彼奴らと同盟を結べば、破妖師を始末するための有益な情報を得られる。活用しない手はあるまい」

「へー。我欲剥き出しの妖化屍が同盟だなんてね。笑わせるじゃない」

「オメガヴィーナス亡き今、貴殿ら『水辺の者』の最高戦力は五天使と呼ばれるオメガスレイヤーども・・・それも火と水はすでに敗れ去ったと聞き及ぶ。残るは風、地、空の3名のみ。この者どもさえ抹殺すれば、我ら妖化屍の天下となる」

 初めて聞く単語がいくつも出てくるが、大体の内容は健人も理解できた。
 ハヨウシというのは、『妖を破る者』という意味だろう。黄色の少女は亡者を倒すのが目的、と言っていた。『水辺の者』とはどうやら、その破妖師たちの組織のことらしい。マントヒロインはその一員かつ最強の戦士のひとり、というわけだ。
 これまでに見せた能力からも、萌黄の風天使という異名からも、黄色の少女が『風』属性であるのは間違いなかった。
 
「抹殺すべき対象が自ら飛び込んでくるとは、我輩には運気がある」

「・・・ちょっとアリサを傷つけたからって、調子に乗らないでよね」

 少女が左手の人差し指を、右肩の傷穴に突っ込んだ。
 まさか、と驚く健人の目の前で、風天使は躊躇いなく、旋回する風のドリルを己の肩に撃ち込む。
 ボシュッ! と裏側から、鮮血まみれの弾丸が肩を突き抜けて飛び出す。
 
「ィ”ィ”ッ!? ・・・じ、自分で・・・自分の肩をッ!!」

「はい、ムカつく紫水晶の弾は取り出してやったわ。まさかあんたが、こんなもの用意してるとは驚いたけどね」

「紫水晶さえあれば、オメガスレイヤーを殺すことは可能と判明した。妖化屍が貴殿らに怯え、闇に生きる時代は終わりを告げるのだ」

「弱点がわかったくらいで、このオメガカルラに勝てると思ってんの?」

 アイドル活動してもおかしくないほどの美少女なのに、鮮血で右肩を染めた黄色のヒロイン=オメガカルラは、健人がゾクリとするほど凄惨な笑みを浮かべた。
 
「舐めないでよね。たとえ1万体ケガレを集めても、アリサの風は止められないから」

「我輩の配下を、ただの操り人形と思わぬことだ」
 
 風が唸り始めるのと、200体のゾンビが動き始めるのとは、ほぼ同時だった。
 カルラを囲んだ死体の人波。その中から、5体。
 測ったような等間隔、しかもまったく同じタイミングで、半腐乱のアンデッドが黄色の少女に飛び掛かる。
 
「〝軍神”という我輩の異名、その理由を貴殿には教えてくれよう」

 ザシュンッ!! ズザザザザァッ!!!
 
 疾風の刃が、5体のケガレを一斉に斬り刻んだ。
 巨大な猛獣の爪が、引き裂いたように。どの亡骸も細切れとなって、バラバラと撒かれる。いくら不死者といえども、肉片になってはヒクヒクと痙攣するくらいしか出来ない。
 
 風を操るカルラには、ゾンビを細かく刻むなど、容易なことなのだろう。
 だが逆にいえば、肉片になるまで風を浴びせねば、ケガレの動きは止められない、ということでもあった。
 
「うっ!?」

「我輩は手足のように、一寸の狂いなくケガレどもを操作できる。完璧なる指揮が可能なゆえ、ついた異名が〝軍神”である」

 斬り刻んだケガレのすぐ後ろ。
 別の5体が、新たに、再び全く同時のタイミングで、カルラに飛び掛かっていた。
 波状攻撃とはいうが、波とは普通、一定の間隔があるものだ。〝軍神”の将威が操るケガレたちの攻撃には、隙間がほとんどなかった。津波のすぐ後ろに、次の高波がもうそこまで迫っている。
 
「ケガレのくせにっ・・・生意気じゃない!」

 カルラに触れる寸前、ボボボンンッ! と5体のケガレは粉塵となった。
 だがその旋風は、なんとか無理矢理に作り出したものなのだろう。切れ上がった美少女の瞳が、必死さを証明するようにヒクヒクと引き攣っている。
 
「ケガレではない。我輩の指揮が優秀なのだ」

 3段目の波が、すでにカルラに飛び掛かっていた。
 今度の5体は全員が同じ動きをしているのではなかった。背後から襲う2体は両腕に組み付き、正面からの3体は助走をつけてジャンプしている。
 
「貴殿の風は切れ味鋭いが、吹いた後には凪ぐのが風というもの。その一瞬の隙を、我が手足であるケガレどもに的確に突かせる」

 小柄でスレンダーな肢体が、2体の亡者に羽交い絞めにされる。
 ほとんど同時に、正面の3体はドロップキックを放っていた。両脚を伸ばし、矢のように突っ込んでいく。
 黄色のスーツに包まれた、小ぶりだが形のいい左右の美乳。そして露わになっている腹部にと、合計6本の足が勢いをつけて突き刺さる。
 
「ぐぶううう”う”っ――っ!! ・・・かはぁっ!!」

「その小さな身体では、他のオメガスレイヤーより肉体の強度は劣ると見た。萌黄の風天使」

 乳房と腹部に跳び蹴りを喰らい、「く」の字に折れ曲がるオメガカルラ。
 細くて白い首筋に、両腕を抑えた2体のケガレが歯を立てる。その鋭さは、もはや牙と呼んで差し支えなかった。柔らかな少女の肉に、ズブズブと噛みついていく。
 
「ぐあああ”っ――ッ!? こ、このっ・・・!! ふざけたことっ、しないでよねっ!!」

 ザザザンンッ!! 
 
 風の刃が、前後のゾンビを一瞬にして切り裂く。細断された肉片が、ドシャドシャと血を噴きながら落ちていく。
 しかし、いくらオメガカルラが風の遣い手といえ、旋風のバリアをひとつしか作れないように、限度はあるようだった。
 1万体のケガレが相手でも勝てる、というのは多少の誇張はあるかもしれないが、あながちウソでもないのだろう。ただそれは、単に死者の群れが相手ならば、だ。〝軍神”の将威が操るケガレは、烏合の衆ではなく統率された軍隊に近い。合理的な指揮で動く200体は、ただ集まった1万体よりずっと強い。
 
 そこまで考えて健人は気付いた。もし、今彼を守っている風のバリアを自分自身に使っていれば・・・カルラはもっと楽に闘えているのではないか、と。
 健人を守っているために、黄色のマントヒロインは苦戦を強いられているのではないか、と。
 
 ましてカルラは右肩を負傷しているのだ。これまでの会話を聞いている限り、オメガスレイヤーと呼ばれる最強の破妖師とやらは、滅多に傷を負うことなどなかったらしい。美少女が常に勝ち気な表情なのも納得だが、つまり今回はかなりの窮地ということなのではないか?
 風という、視覚では捉えにくい能力を使っているためハッキリわからないが、もしかしたら今のカルラは、本来の半分も実力を出せていないのかもしれない。
 
「あ・・・ああッ!! ・・・ア、アリサさんッ!!」

 もう何度目となったかわからない5人組の突撃を、切り裂く旋風でカルラが粉々に消し飛ばす。
 だがそれは、あくまで囮だったのだろう。
 その隙に、背後から迫った巨漢のゾンビが、手にした鉄骨でポニーテールの後頭部をフルスイングで痛打した。
 
「あ”っ!! ・・・」

 何トンもある梵鐘を撞いたような、重い響き。
 スレンダーな少女が一瞬身を強張らせ、瞳を裏返す。コンマ何秒、という単位であろうが、オメガカルラは意識を失ったのだ。
 周りを幾重にも包囲したゾンビどもにすれば、それは絶好の隙であった。
 
「かかれ。萌黄の風天使を噛み殺せ」

 〝軍神”の将威が言い終わるより早く、死者の群れが黄色のヒロインに殺到した。
 前から後ろから、四肢を抑える。そのほとんどが男であるケガレどもは、自分たちより頭ひとつ小さい少女に全力で組み付いていく。
 
 鮮やかな黄色のコスチュームから覗く、バンビのようにしなやかな手足。そして引き締まったお腹に、無数のゾンビがガブガブと噛みつく。
 
「うぐぅ”、う”っ!! ぐあ”ぁ”っ!! あああ”あ”ぁっ~~~っ!!!」

 粉を吹く、ミイラのようなガサガサの掌が、カルラの内股に滑り込み、フレアミニの奥へと侵入した。
 黄色のスーツを盛り上げる、Cカップはあろうかというお椀型の双乳。よく見れば、その間には『Ω』の文字を象ったらしいマークが描かれている。その紋章が歪むほどの勢いで、4、5本の血の気のない手が、グニャグニャと美乳を揉み潰す。
 
「さ、触る・・・なぁっ!! 汚らわしい手でっ・・・あ、あんたたちっ、ゆるっ・・・あああ”あ”っ――ッ!!」

 怒りに震えるカルラの声が、途中で甲高い悲鳴に変わった。
 首筋に、ケガレの牙が食い込んでいる。剥き出しのお臍も、スベスベとした内股にも、生ける死体は噛みついていた。
 勝ち気な少女を叫ばせているものは、痛みだけではないかもしれない。
 ミニスカートの奥に差し込まれた手も、バストを握り締めた複数の掌も、シュリシュリと摩擦の音色を奏でている。
 
 明らかに、愛撫をしていた。
 表情も、生気もないリビングデッドたちは、その血の通わない手で乙女の弾力性ある柔肌を弄んでいる。敏感な箇所に触れるたび、電気が走ったようにヒクンと反応するカルラを愉しんでいる。
 
「あ”っ!・・・んぁ”っ! ・・・・・・ぅ”くっ! ・・・」

「『純血・純真・純潔』か。貴殿らがオメガスレイヤーたるための三要素もこの耳には届いておる。操を奪われること、及びそれに準ずる行為は貴殿らを弱体化させるというのも、事実であったようだ」

「そっ・・・そんなこと・・・までっ!! な、なんで・・・知って・・・ぇ”ふぅ”っ!?」

「聞いているぞ。『水辺の者』を裏切った者が、六道妖の傘下におること。もはや貴殿らは末期のようだな。哀れなり、オメガスレイヤー」

 口に蓄えた髭を、つるんと右手の指で〝軍神”が撫でた。
 それを合図とばかり、バストを揉みしだいていたケガレのうちの2体が、大きく口を開く。生え揃った黄色の牙を剥く。
 黄色のスーツをぷくりと押しあげた、乳房の先端。屹立して固く尖った少女の胸の突起に、亡者の牙がガリリと噛みついた。
 
「はきゅふぅ”っ!!? ふぎゃあああ”あ”あ”ぁ”っ―――ッ!!!」

 雷に打たれたように、カルラが仰け反る。
 
 もうまともに見ていられなかった。凛とした佇まいと、引き締まったスレンダーボディを持つ破妖の少女が、半分腐乱したような無数の死者に噛まれているのだ。しかも乙女にとって敏感な箇所を、乱暴に嬲られて。
 このまま黄色のマントヒロインは負ける・・・そう健人が絶望しかけたのも無理はない。
 
「あっ・・・んた、たちっ!! もう謝ってもっ・・・遅いからねっ!!!」

 ゴウッ、と突風が地から天へと昇った時には、カルラに触れていたすべてのケガレが、シュレッダーにかけられたように細断されていた。
 健人には見えた。本来風は見えないはずなのに、凄まじく旋回する空気の流れがカルラの左手に集まっている。あまりに高速、高圧縮で風が凝縮しているため、わずかに大気が歪んでいるのかもしれない。
 
 本当に風だけで出来た風車、といったものだと健人の瞳には映った。
 
「風手裏剣っ、乱舞っ!!」

 透明な、扇風機の羽、のような気流のカッターを、カルラの左手が投げつける。
 その高速旋回する風に触れた瞬間、亡者の肉体は爆発するように砕け散った。
 
 ボボボンンッ!!! ボボボボッ!! ズザンンッッ!!!
 
「う、うわあああッ――ッ・・・!? こ、これが・・・アリサさんの、オメガカルラの本当の風の威力ッ!!」

 風手裏剣が通った後には、霧散したゾンビの肉片だけが、パラパラと地に降り注いだ。
 ざっと見ただけでも、半分。200体いたうちの、100体ほどの死者たちは、全てを切り裂く旋風の円盤により殲滅された。
 
 ガクンと、ケガレどもの拘束から解放されたカルラが、地面に片膝をつくのが見える。ダメージを受けた後遺症なのか、大技を放ったが故の消耗なのか、理由はわからない。多分、その両方だと健人は解釈した。
 しかしその推測が間違っていたことは、数秒後には明らかとなる。
 
「・・・どうやら・・・ヘタな抵抗はムダみたいね・・・」

「その通り。貴殿の負けだ、オメガカルラ」

 降伏の意志を示すかのように、右膝をついた黄色の少女が、両腕をだらりと垂らす。
 一体、どういうことなのか――? 健人の疑問は、四方を周り見た瞬間、氷解した。
 
 残る約100体のケガレたち。その全員が、ハンドガンを構えて中央のカルラに狙いを定めている。
 これだけ多くの銃器を、調達していたというのか。それだけでも驚きだが、その弾倉に装填されたのは、紫水晶の弾丸に間違いなかった。カルラのような存在が現れたときのために、〝軍神”の将威は抹殺するための膨大な準備を整えていたのだ。
 
 オメガカルラは誘い込まれてしまったのだ。処刑の罠に。
 〝軍神”の将威はひとり、またひとりと自らの兵隊である死者を増やしていきながら、破妖師がこの地に来るのを待ち構えていたのだろう。
 
 いくら萌黄の風天使が敏捷性に優れているといっても・・・100挺もの拳銃に包囲され、一斉放射されたら逃げられるわけがない。
 そして〝軍神”の将威が操る兵士は完璧に統率されており、わずかな隙も見つけられなかった。将威が指示した瞬間、避けることのできない紫水晶の銃弾の雨が、カルラの肢体を蜂の巣にするのだ。
 
 オメガカルラといえど、この包囲網から脱出する方法はなかった。
 
「・・・まさか、あんたがこれほど大量の紫水晶を用意してるとはね・・・さすがに予想できなかったわ」

「戦力を使いこなすことだけが、指揮官の役割ではない。戦力を揃えることこそが肝要なのである。〝軍神”の威光の前に散るがよい、萌黄の風天使」

 再び己の口髭を撫でながら、軍服の妖化屍がカルラに歩み寄る。
 ブチブチと、その指が髭を数本毟り取った。
 
「ア・・・アリサさんッ!! ボ、ボクに使ってる竜巻のバリアを自分にッ! 自分自身に使ってください! そうすれば、銃弾を弾き飛ばすことも・・・」

「バーカ。アリサより先にあんたは殺させない、って言ったでしょ。素直に守られてなさいよ、年下クン」

 3桁の銃口が突きつけられているというのに、ポニーテールの少女はふっと笑った。
 
「大丈夫って、何度も言ってるじゃない。オメガカルラは簡単には死なないんだから」

「笑止なり。愚かな強がりと見た。その小癪な笑みがいつまで続くかな」

 〝軍神”がつまんだ数本の髭が、ズズズ、と伸びていく。
 その先には、毛根と思しき肉の粒が付着している。微小なものだが、並の毛根と比べれば数倍は大きい。
 
「この肉の細胞が、ケガレどもが我が意のままに一糸乱れず動く秘密だ。オメガスレイヤーの肉体も支配できるのかどうか、試してみるとしよう」

 グニグニと、それ自体が意志を持っているように、長い髭がのたうつ。カルラの顔色がさっと青く変わった。
 風天使の左右の耳に、〝軍神”がそれぞれ数本の髭を差し込んだ。
 カルラの脳に向かい、耳の内部を黒い髭が侵攻していく。
 
「うはぁ”う”っ!! んああ”っ、あああ”あ”ぁ”っ―――っ!!!」

「貴殿の脳ミソに、我が肉細胞を植え付けてくれる。オメガスレイヤーを操り人形にできれば、これぞまさに最強の手駒よ」
 
 ビクビクっ!! ビクンッ!! ヒク、ビクンッ!!
 
 壊れたように、黄色のコスチュームを纏ったヒロインは、全身を痙攣させた。
 白目を剥いた瞳から涙がこぼれ、半開きになった口からも透明な涎が垂れる。
 ぐったりと両腕を垂らし、無抵抗を示したポーズのまま、オメガカルラは叫び続けた。
 
「アッ・・・アリサさッ・・・!!!」

「さすがに容易には我が肉を受け付けぬようだ。だが、快楽を注ぎ、弱体化させてみてはどうか?」

 〝軍神”の将威が新たに口髭を毟った。
 右手の指に数本の髭をつまむと、大きく開いたスーツの胸元に掌を滑り込ませる。目指すはお椀型の乳房の頂点、すでに尖り立ったピンク色の突起。
 カルラの乳首の中央、少し陥没した穴に、意志持つような髭がズブズブと埋まっていく。
 
「んふう”ぅ”っ!? ふくっ、ぅああ”っ・・・!! アアア”っ、アア”ア”っ―――っ!!!」

「脳ミソに比べれば、乳房の肉は我が意に染まりやすいようだ。そら、痺れるような悦楽を存分に受け取るがいい」

 左右の乳首に、将威の髭が深く差し込まれる。
 胸の内部にモーターでも埋められたかのように、カルラの美乳がそれ自体、ブルブルと振動する。むろん、それに伴う官能の刺激が、黄色のヒロインを襲っているに違いなかった。
 
「んくぅ”っ、ふぅ”・・・な、なにコレぇ”っ・・・!?」

「もはや貴殿の乳房は我がものだ。性感のツボを刺激するのも自在である」

 黄色のスーツに浮かんだ突起が、ますますギチギチと尖っていく。
 異様に尖った乳首が、自ら小刻みに震えているのが、健人にもわかった。キュンっ、と蠢くのにあわせ、カルラの全身がビクンと仰け反る。
 
「あくぅ”っ!! あはぁ”っ~~っ!! いぎぃ”っ、い”っ・・・!! やっ・・・やめぇ”っ・・・!!」

 整った顔を歪め、懇願にも似た吐息を漏らす萌黄の風天使。
 そんなカルラを嘲笑うように、お椀型の乳房はさらに激しく揺れ動き、乳首はツンツンに固くなる。
 片膝をついた姿勢のまま、美少女は大きく仰け反り絶叫を迸らせた。
 
「ア”っ、アアア”ア”っ~~~っ!!! ぐうぅ”、うう”ぅ”っ――っ!! こ、こんなっ・・・こんなこと、でぇっ――っ!!」

「貴殿の過敏な箇所は、まだいくらでもありそうだ。徐々に我輩の支配下においてくれる」

 新たな髭を、〝軍神”は剥き出しになっている、キレイな形のお臍に侵入させる。
 カルラの腹部、その引き締まった腹筋の内側に、根を伸ばすかのように髭がはびこっていく。
 
「ィはあ”ァ”っ――っ!!! あぎィ”っ、ぇああああ”あ”ア”っ~~~っ!!!」

「肉体を奪われ、尚且つ自分自身の細胞に責められるのは苦しいか、オメガカルラ? 生意気な台詞がすっかり聞こえなくなったな」

 さらに5本の髭を毟った将威が、黄色のヒロインのフレアミニを捲り上げる。
 同じ色のアンダースコートが露わになった。その股間部。うっすらと縦の筋が浮かんだ影に、グニグニと蠢く髭を押し当てる。
 
「さて、子宮も陥落すれば、もはやまともに思考もならないとみた。頑迷に我が肉を拒否する脳ミソも、すぐに支配を受け入れることだろう」

 鼠蹊部の隙間から侵入した5本の髭は、まずは膣穴の肉襞にピタピタと密着した。
 
「あふう”ぅ”っ――っ!! ぅああ”っ・・・!! あああ”ア”ア”っ――ッ!!」

 髭の先についた毛根が、いくつかピンク色のびらびらに転移していく。
 膣全体を摩擦されているような激感が、すぐにカルラの脳髄に押し寄せる。繰り返される突き上げの律動は、男性器を挿入されたのと同じようなものだった。
 
「あ”っ!! あ”っ!! あ”っ!! あ”ぁ”っ~~~っ!!!」

「これで膣壺も我が支配下となった。女の蜜を搾り出すのも造作もないことである」

 将威の言葉通りに、やがてカルラの股間からヌチャヌチャと粘着質な音が漏れだし、健康的な太ももに透明な液が伝い始める。
 
「うああ”っ、あああ”あ”っ~~~っ!! こわれぇ”っ、こわれちゃっ・・・!! アリサっ、のっ・・・!! お腹ぁッ・・・!! シビ、れてっ・・・おかしくなるぅ”っ――っ!!!」

「無惨なり、オメガカルラ」

 十分な成果を確認した〝軍神”は、挿入した髭を秘壺の奥へと殺到させる。
 カルラの子宮に、さらにその奥、卵巣に。
 ピタリと張り付き、絡みついていく黒い髭。先端の〝軍神”の肉細胞を、ヌラヌラとした美少女の内肉に埋める。
 
 その途端、カルラの下腹部全体が蠢き、敏感な性感地帯から一斉に刺激が沸き起こった。
 
「んはああ”ぁ”っ!!? ふぇあ”っ、ふぇあああ”あ”ア”ア”ア”ァ”っ~~~っ!!! ひびィ”、ヒビれぇっ・・・ヒビレひゃう”ぅ”っ――っ!!! ふぎゃあああ”あ”あ”っ~~~っ!!!」

「うわああッ、ア、アリッ・・・アリサさんッ――ッ!!」

 黄色のマントヒロインは、激しく痙攣した。
 涙も、涎も撒き散らして、ガクガクと首を振る。ポニーテールが乱れて舞った。
 下腹部を覆う黄色のスコートに沁みが広がり、内股を濡らす。〝軍神”がミニスカートを捲ったままのため、その淫らな光景が健人の眼にもハッキリ見えてしまう。
 
 この破妖師の少女は負けたのだ。
 間もなく精神をも軍服の妖魔に乗っ取られるか、あるいは殺されるか・・・
 
 健人が絶望したのも、無理はなかった。
 
「他愛のないものだ。所詮オメガスレイヤーも、弱点がわかれば・・・」

 勝ち誇った〝軍神”の声が、不意に詰まったのはその時だった。
 ようやく健人も気付く。悶え震え、嬌声といっていい叫びをあげているオメガカルラに、どこか違和感があることを。
 
 白目を剥いていたはずの切れ上がった瞳は、いつの間にか、強い光を戻して軍服姿の妖魔を睨んでいた。
 
 ザシュンンッッ!!!
 
 切断の音色は鮮烈で、一瞬だった。
 
 〝軍神”の将威の頭部が、額のところで輪切りにされ、宙を飛ぶ。
 健人の位置からでも、両断された大脳の断面図がハッキリと見えた。
 
「ッッ!! ・・・」

「・・・ふぅ~・・・ったく。随分嬲ってくれたじゃない」

 スッパリと、頭部の半分を切り取られた〝軍神”の将威は、一度大きく痙攣したきり、動かなくなった。

「名付けて、風手裏剣・葉隠れ。葉っぱがそっと、触れたぐらいにしか思えなかったでしょ? ゆっくり、音もしないほどゆっくり、だけど高密度で圧縮した風の刃よ。作るのに時間がかかるのが欠点だけどね」

 己の指を耳のなかに入れ、カルラは忌々しげに吐き捨てた。先程まで快楽と脳への侵攻に悶えていたヒロインは、すっかり強気を戻している。
 ビュッ、と隙間風のような音が、カルラの耳から漏れる。
 唇を尖らせた風天使の少女は、ぷっと黒い塊を吐き出した。
 塊の正体は、絡み合った〝軍神”の髭だった。
 
「妖化屍ってのはさ、知能が残っている分、ケガレよりずっと厄介だけど・・・代わりに脳が壊れたら、もう動けない。えーっと、『ワガハイの思うがままに兵隊は動く』だっけ? てことは、周りのコイツら、みんなあんたの指示待ちってことよね」

 ハンドガンを構えた四方のケガレたちは、そのままの姿勢で動こうとしない。
 地に落ちた〝軍神”の大脳を、カルラの黄色のブーツがグシャリと踏み潰した。
 
「もう聞こえてないと思うけど、アリサを操ろうなんて思ったのがあんたの敗因よ。とっとと紫水晶の弾丸撃ち込んでれば殺せてたかもね。ていうかさ」

 残る100体のゾンビを切り刻むべく、風が唸りをあげ始めていた。
 
「アリサは、あんたなんかの思い通りにならないから。風は自由なのよ」


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| オメガスレイヤーズ | 00:38 | トラックバック:0コメント:8
コメント
前日譚の終わった「オメガスレイヤーズ」本編を、今回から新たにスタートさせました。
表紙として、この更新分の主人公であるオメガカルラを炙りサーモン/マヨさまhttps://twitter.com/riorio0429 に描いていただきました。炙りサーモンさま、ありがとうございます(*´▽`*)
カルラこと亜梨沙の雰囲気がすごく出ていて、作者としてはたまらなく気に入っておりますw 表情がまさにアリサ、って感じで。

このオメガスレイヤーズはゆくゆくDL販売する予定ですが、まずはこの0話に関しては作品世界を知っていただく&サンプルってことで(^^ゞ、無料公開としています。
その点申し訳ないのですが、ご容赦いただければ・・・。

ようやくオリジナルの新作を始められたので、一人でも多くの方に喜んでもらえる作品目指して頑張りたいと思います。
2016.09.22 Thu 00:41 | URL | 草宗
予想より早くオメガの新編を読むことができて、とてもうれしいです。しかも初回から濃厚なピンチシーンもあり、ハラハラ、ドキドキしながら読み進めました。大満足です。今後も楽しみにしております。
2016.09.23 Fri 01:16 | URL | オメガ好き
>オメガ好きさま
細かいところで設定を煮詰めるのに少し時間がかかっちゃいましたが、なんとかこのタイミングで発表できてよかったです(^^ゞ
ハラハラドキドキしてもらえるのは、作者としてはとても嬉しいですw さらに楽しんでいただけるよう、続きも頑張りたいと思います(*´▽`*)
2016.09.23 Fri 09:29 | URL | 草宗
>拍手コメントくださった方
将威は最初からやられキャラとして考えていたんで、こんな形になったんですが・・・思った以上にガンバってくれまして(^^ゞ ボクもちょっと惜しいな~と思いましたが、まあ彼はベストを尽くしたということで・・・w

カルラは強気がウリですが、戦闘慣れしてるのも魅力のひとつかもしれませんね。
窮地になるときは、当然将威よりも強い敵が出てきますので、そのあたりも楽しみにしていただければと思います。
これからの物語ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
2016.09.23 Fri 23:55 | URL | 草宗
更新、お疲れ様です。
オメガスレイヤーズの再開、早くて嬉しいです。

前シリーズでは、「邪魔者」と失礼な事を言ってしまったカルラですが(汗)、
早速ピンチもあったりして、大活躍でしたね。
「正義のヒロインやってるわけじゃないから」の発言にはびっくりしましたが、やっていることは正義のヒロインそのものですよね。
オメガスレイヤーたるための三要素も広まっているし、
紫水晶には傷つけられたりと、弱点も解決されずに残ったままのようで。

前回の敗北から半年しかたっていないですから、オーヴへの対策もまだまだという感じかな。
六道妖も元気で活躍しているみたいで、
オメガスレイヤー側は、ぎりぎりの戦いをしているようですね。
こんな状況の戦いだとすると、今後のピンチにも期待が持てそうですw
炙りサーモンさまのイラストが凛々しくもありつつ可愛さも有って、
良いですね。
こんな素晴らしいイラストを見ちゃうと、
本格的なピンチを早くみたくなっちゃいますw

ここからが本番ということで、今後の展開を楽しみにしていますね。
今シリーズも、いっぱい草宗さんの手のひらで踊らされたいと思いますw
2016.09.25 Sun 02:48 | URL | さとや
>さとやさま
予想より早くお届けすることができたようで、よかったですw
カルラは邪魔者扱いされて発奮したわけじゃないんですが(^^ゞ、前日譚で顔見せしていたので、ここで活躍してもらおうかなと。

カルラこと亜梨沙は、やって当たり前、といった環境で育ったせいで、褒められるのを極端に恥ずかしがるんですよねw
正義のヒロインと自分で思っていないのは確かですが、強く否定するのはそういった部分も影響してます。

それまでは狩る者と狩られる者、の関係だったオメガスレイヤーと妖化屍ですが、今ではほぼ差がなくなってますね。そこが前日譚のカウント5と、本編との違いでしょうか。

炙りサーモンさまのイラストは、仰るように凛々しさと可愛さがあって、カルラの雰囲気を見事に表現していただきました(*´▽`*)
裏でウルトラ戦姫を作りつつ進めるので、ペースがどれくらいになるか、わかりませんが、また応援していただければ幸いです。
2016.09.25 Sun 15:18 | URL | 草宗
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016.09.26 Mon 21:55 | |
>コメントくださった方
ありがとうございます。熱狂的とまで仰っていただき、創作をする者としてはこれ以上ない悦びに浸っております(*´▽`*)

ヴィーナスのあの最期を越えるのは、少し大変かもしれませんが・・・(;^ω^) 今回は顔見せの要素が強いので、もうちょっと本格的なピンチは比較的早くお見せできるかと思っています。満足いただけるかは、頑張るとしかお約束できないのですが(^^ゞ

そうなんです、セイレーンはまだ死んでないんですよね。将威は六道妖ではないので、そこらの情報が曖昧なようですがw
もちろん五天使こと他のオメガスレイヤーたちも出番を待ち構えているので、楽しみにしていただければと思います。
ボク自身、他のコたちがどのように評価いただけるのか、不安と期待にドキドキしていますw
2016.09.27 Tue 02:00 | URL | 草宗
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