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ウルトラ戦姫物語 パラレル編 第1章「復活の四天王」
第1章  「復活の四天王」


 1、


 肉と肉とがぶつかる、重い打撃の音がした。
 
 続いて荒野に、なにかが落下する響き。宙を舞い、大地に叩きつけられたのは、赤い水玉模様がある肉体だった。首回りと腰付近には、ウールのような白い毛が密生している。
 
 大地に這いつくばったその異星人は、赤い鮮血を吐き出した。
 身体のいたるところに、殴打の痕が刻まれている。殴られ、殴られ、とことん殴られ。徹底的に暴行を受け続けたのだと、その姿を見るだけでわかった。
 
「・・・ふん。なるほど、褒めてやってもいい」


 ブザマなKOを喫した異星人に、歩み寄った影は、意外な台詞を口にした。
 
「カイザー・ナックル。暴虐で名高いナックル星人のなかでも、もっとも獰猛かつ最強を自称する男か。〝皇帝”を自ら名乗る者は、他にもいたが・・・尊大になるだけの実力はあるようだ」

 かつて服従を余儀なくされた暗黒宇宙大皇帝の存在を、漆黒の影は思い返していた。その者は、凄まじく強かった。戦闘力では到底かなわない、と思っていた暗黒皇帝に・・・今の自分なら勝てるだろうか?
 
「確かに、〝暴将”と呼ばれていたナックル星人よりも・・・貴様の方がずっと強い。カイザーの名はダテではないようだ」

「・・・メフィラス・・・ッ・・・!!」

 近付く影を憎々しげに睨み、水玉模様の異星人は吐き捨てた。
 闇のなかで、青い眼が光っている。寒々しい辺境の惑星には、恒星からの光はほとんど届いてこなかった。暗く、寒く、小さなこの星は、青い眼を持つ悪質宇宙人が決闘の地として指定した場所だ。
 
 暗黒宇宙皇帝・エンペラ星人が率いた大軍団のなかで、四天王のひとり〝知将”の座についていたのが、このメフィラス星人であった。
 ナックルの同胞もまた、四天王〝暴将”として宇宙に恐怖を振り撒いたものだ。だが、エンペラ星人の〝帝国”は滅びた。ウルトラ戦姫との闘いに敗れ、〝帝国”に属していた多くの侵略異星人や怪獣が死んでいった。
 
 四天王のなかで、いや、〝帝国”の主力戦力のなかで、唯一生き残ったもがメフィラス星人だった。
 しばらくは表舞台に現れなかったが・・・ウルトラ戦姫の本拠地である光の国も、宇宙に潜む悪逆異星人も、その動向にアンテナを張っている。エンペラ星人亡きあと、暗黒宇宙の支配者にもっとも近い位置にあるのがメフィラス星人だからだ。
 
 そのメフィラスから、カイザー・ナックルは決闘を挑まれた。
 真意はわからないが、チャンスに違いなかった。メフィラスを倒せば、支配者の地位がグッと近くなる。これほどおいしい話はない。
 
 勇んで辺境の小惑星に乗り込んだカイザー・ナックルを待ち受けていたのは、ほぼ一方的な敗北であった。
 
「なぜだッ・・・てめえッ!! ・・・〝知将”とか呼ばれてるくせによォッ・・・どうしてこんなッ・・・強えんだッ・・・!?」

「誇れ、カイザー・ナックル。この私に本気を出させたことが・・・貴様の強さの証明となる」

 血濡れた右手の拳を、メフィラスはすっと上にあげる。ナックルの返り血で、染まった拳を。
 悪質宇宙人に従う影が、そっとシルクの布をかぶせて、その血を拭い取った。その寸前まで、メフィラスの傍に立つ存在に、ナックルは気付いてさえいなかった。影は気配を消していたのだ。
 
 宇宙女忍者レディ・バルタン。
 瀕死の重傷を負ったと噂されていた宇宙くノ一も、やはり生きていたようだ。メフィラスの参謀であり、秘書でもあり、優秀な諜報部員でもあるバルタン。気配を微塵も感じさせなかった事実が、女忍者の実力を教えている。
 
「ッ・・・!! てッ・・・めえェッ~~・・・!!」

 今メフィラスに襲いかかれば、当然バルタンが黙ってはいないだろう。
 いや、それ以前に、メフィラス自身が強すぎた。純粋な格闘で、これほど圧倒された記憶などない。再び立ち向かったとしても、返り討ちにあうのが関の山だ。
 わかっていても、カイザー・ナックルは立ち上がろうとした。負けることなど、認められなかった。どんな手を使っても、最終的に勝つのは自分でなければならない。ナックル星の住人には、その掟が骨の髄まで沁みついている。
 
「やめとけやめとけ。無駄ってもんダ」

 不意に新たな声が、殴りかかろうとする、ナックルの背中に掛けられる。
 
「あんたじゃそのひとに勝てねーヨ。おとなしく軍門に下っときナ」

「てッ・・・!! 誰だァッ――ッ、ふざけたことをッ――ッ!!」

 辛辣な、それでいてどこか飄々とした声に、たまらずナックルは振り返った。
 
「・・・ガッツ星人だなッ、てめえはッ!」

「マモン、ってんダ。オレ様の名前はヨ。まあ、種族はガッツ星人で間違いないゼ」

 オウムを思わせる巨大な頭部と尖った口を持つ分身宇宙人。
 かつては四天王のひとり〝凶将”として、何人ものウルトラ戦姫を苦しめたガッツ星の住民が、荒野に直接あぐらをかいている。
 
「ナックル星人は血の気が多くていけねーナ。だからオレたちのように種族として繁栄できず、個体数が少ないんだヨ。大昔に母星も壊れちまったんダロ?」

「黙りやがれェッ~~ッ!! すぐ数に頼る、てめえらガッツは・・・臆病すぎなんだよォッ――ッ!!」

 マモンと名乗ったガッツ星人に、カイザー・ナックルは握った拳を振りあげる。
 本来の標的がメフィラス星人であったことも忘れて、分身宇宙人に殴りかかる。地に這わされた屈辱を、とにかく晴らせればいいようであった。
 
「しょーもねーバカだナ。臆病と慎重の、区別もつかねーのカヨ」

 あぐらをかいていたオウムのような異星人が、一瞬で立ち上がる。
 その動きだけで、類稀な瞬発力を持つのは一目でわかった。どこか小馬鹿にしたような口調は、実力に裏付けされたものだと瞬時にナックルも見抜く。カイザーを自称するこの男も、己の強さには相応の自信があった。
 思わず胸がたぎった。コイツを潰したい。強者を暴力で屈服させる快感は、ナックル星人のDNAをなによりも歓喜させる。
 
 カイザー・ナックルとガッツ星人・マモン。いずれも宇宙にその名を轟かす、強豪宇宙人が激突する寸前。
 
 漆黒の空を割り、黒い影が飛び出す。
 
 影は人型をとっていた。スレンダーな体型の、新たな異星人。
 不意に空中から出現したその影は、ナックルとガッツ、両者のちょうど中間地点に着地する。
 
「おやめなさい、ふたりとも」

 制止したのは、女の声だった。
 くるぶしにまで届く、漆黒の長いローブを着ている。胸元と肩回りだけが白い布で覆われていた。腕と足首から先、そして顔以外はほとんど見えない。
 マモンもカイザー・ナックルも、地球の事象には詳しい。いつか侵略して我が物としたい、その筆頭候補が地球なのだ。だからその衣装が、修道服と呼ばれるものだとすぐにわかった。
 
 衣服はシスターのものでも、顔は異星人のもの・・・
 ガッツとナックルの間に割って入ったのは、同じく元四天王であるマグマ星人のひとりであった。
 
「私たちがともに傷つけあっても、喜ぶのはウルトラ戦姫のみです。我らがともに受けた屈辱を忘れたのですか?」
 
 女のマグマ星人が、修道女のコスプレをして平然と立っている。
 違和感のある、しかし、嘲笑するにはどこかゾッとする雰囲気が、その姿にはあった。同じ女性ではあっても、以前エンペラ星人のもとで〝妖将”として暗躍した個体とは、別の者だ。なにしろ〝妖将”も、先のウルトラ戦姫との闘いで戦死しているのだから。
 
 あの〝妖将”よりも、この女マグマ星人は慇懃であった。態度に落ち着きがみられる。
 そのぶん、秘めた感情の闇が、底なしのように深く感じられる・・・獰猛なカイザー・ナックルも、横柄なガッツ星人・マモンも、思わず背筋が寒くなった気がしたのはそのせいかもしれない。
 
「・・・なんだッ、てめえはッ!? バトルの邪魔しようってのか!?」

「私の名はシスター・マグマ。ご想像の通り・・・かつての〝妖将”レディ・マグマの遺志を継ぐ者ですわ。あなた方と、同じように」

 マグマ星人の冷たい視線に見詰められ、ナックルは開きかけた口を閉じた。
 
「悔しい想いを・・・したのでしょう? 〝帝国”が滅びてから・・・。ウルトラ戦姫に敗れて以来、私たち四天王の名声は地に堕ちました。かつて畏怖と嫌悪の対象であったナックル、ガッツ、マグマの名は・・・いまや嘲笑の的にすぎません」

 敗者にはなにも残らない。その言葉の意味を、全宇宙で誰よりも噛み締めたのが、この場にいる3つの種族に違いなかった。
 興奮していたカイザー・ナックルが押し黙る。脳裏には屈辱の日々が蘇っていた。「暗殺宇宙人だなんて、名前だけだ」「あいつら、ホントは弱いらしいよ」「ウルトラ戦姫がいる限り、怖くもなんともない」「所詮ブラックキングがいなきゃカスでしょ」・・・
 
「貴様らに、チャンスをやろう」

 降りかかった声に、3者は一斉に振り向いた。
 メフィラス星人が立っていた。傍らに控えるのはレディ・バルタン。ほとんど光も届かぬ暗黒の星なのに、漆黒の悪質宇宙人の姿はやけにハッキリ映ってみえた。
 
「ナックル。ガッツ。マグマ。貴様らの同胞は、この私とともに四天王として、ウルトラ戦姫と闘い・・・敗れた。種族のなかでも特に力のある貴様らは、仲間の復讐を誓った。計画を練り、戦姫どもを倒そうとしていることは、バルタンの調査で把握済みだ。ヒッポリト星人やヤプールとの闘いで、奴らが疲弊した機会を狙ってな」

 つい数か月前、異次元人ヤプールとヒッポリト星人との同盟相手に、ウルトラシスターズが激闘を繰り広げたらしいことは、多くの侵略異星人が情報を得ていた。
 だが、ウルトラ戦姫の戦力は分厚かった。隙を突こうにも、地球を守護する防衛力は生半可ではない。
 結果、太陽系近辺に滞在しつつも、3人の復讐者たちは侵略を仕掛けることさえできずにいた。
 
「ハッキリ言おう。貴様らでは勝てぬ。ウルトラ戦姫どもを倒すには、強大な力が必要だ」

 拳を握るカイザー・ナックル。舌打ちを漏らすガッツ星人・マモン。
 苛立ちを隠せずとも、反論はできなかった。彼らはメフィラスに叩きのめされていた。己の無力を思い知らされた。
 そのメフィラスが脅威と断ずるウルトラレディ・シャイン。そして彼女の姉妹たち。
 容易に勝てぬ相手であることは、火を見るより明らかだった。
 
「勝ちたくば、私の配下となれ」

 メフィラスが迫った選択は、この決闘の小惑星に来る以前に、どこかで覚悟していたものかもしれなかった。
 
「貴様らが私の駒となれば、シャインらウルトラシスターズに勝たせてやろう。四天王を復活させてやる。このメフィラスを中心とした、新たな宇宙秩序の幹部として君臨することを許可しよう」

 一様に、3者の眼が鋭く輝いた。
 メフィラスの配下となるのは、屈辱ではある。だが、それでウルトラ戦姫を倒せるのなら・・・光の国を打倒できるのなら、種族の栄光と繁栄を取り戻せる。
 
「ただし。私は、無能が嫌いだ」

 冷たいメフィラスの声は、3体の心臓を鷲掴みにした。
 
「四天王の名を賜りたくば・・・貴様らの力を証明してみせろ。『裏地球』に存在するウルトラ戦姫・・・ウルトラレディ・ティオ、マイン、アイナの3名を処刑するのだ。その結果次第で、メフィラス直属の四天王は復活を遂げることとなる」



 2、
 
 
 パラレルワールド、というものがある。
 別の時空の並行世界、並行宇宙といわれるものだ。タイムトラベルを行うことで、本来の世界とは別の世界が生まれる。その結果、よく似た世界が、別の次元に無数に存在している、という概念だ。
 
 よく似ているが、ほんの少しだけ異なる別次元の世界。
 地球の科学力では、その扉を開けることなど不可能であるが、IQ1万を誇るメフィラスとなれば話は変わる。悪質宇宙人には『裏地球』と呼ぶパラレルワールドに行き来する方法があった。
 
「正式には『次元iー2236』と呼んでいる世界だ」

 メフィラスが語る間に、宇宙女忍者がデータ化された資料を投げ渡す。
 極小のチップが暗い空間に描き出したのは、3人の戦姫の戦闘映像、人間体での姿などであった。レディ・バルタンの諜報活動による成果なのは、疑うまでもない。
 
「私の見立てでは、そやつらの戦闘力は、この世界のウルトラシスターズと大差ない。手段は問わぬ。ティオ、マイン、アイナ、3戦姫のカラータイマーを抉り取って私に差し出せ。タイマーの数だけ、貴様らを四天王に任命しよう」

 チップを黙って拾い上げたのは、シスター姿のマグマ星人であった。
 
「・・・私たち3人で・・・3名の戦姫を、ですか?」

「サシの勝負でウルトラ戦姫を倒せぬようでは、四天王は務まらん」

「オレひとりで、二匹の戦姫を殺してもいいのかッ!?」

 水玉模様の暗殺宇宙人が、ドスの利いた声で吼える。
 
「手段は問わぬと言った。好きにすればいい。むろん、活躍するほど四天王に選ぶ順位は優先しよう」

 3体の異星人の間に、ザワリと緊張が蠢いた。
 
「ただし。安易に考えぬことだ。ティオとアイナの両名は、タイプチェンジという特殊技能を持っている。新時代のエースなどと呼ばれている、ウルトラレディ・メリムと似た能力だ。そしてもっとも厄介なのは・・・マインだろうな」

 うなじでひとつに結んだ髪をリボンで飾った戦姫の姿が、大きく映し出される。
 
「そのマインは『最強最速の戦姫』と異名をとっている。パワー、スピード、そして光線の威力と、いずれも3人のなかで群を抜いていよう。果たして貴様らが、いくつカラータイマーを奪えるかな?」

 メフィラスがニヤリと笑ったように見えたのは、言外にこのミッションがいかに難しいものであるかを示唆しているようであった。
 
「チッ。意地のわりぃダンナだゼ。単純な戦闘力だけじゃなくヨー・・・謀略や判断力、オレたちの総合力を試してみてーようだナ」

「わかっているなら実行することだ。母星から、威信回復のために選ばれた最強の戦士マモンよ」

 冷酷に吐き捨てる悪質宇宙人の前に、時空が歪んで口をあける。
 『裏地球』=『次元iー2236』へと通じる次元の扉だった。
 
「いけ。パラレルワールドの戦姫を処刑し・・・四天王復活を成し遂げてみせろ。このメフィラスが光の国を完全に制圧するために・・・な」

 躊躇いを見せたのは、一瞬だけであった。
 カイザー・ナックル。ガッツ星人・マモン。そしてシスター・マグマ。
 かつての四天王の遺志を継ぐ強豪異星人は、『裏地球』へと飛び込んだ。
 
 
 
「・・・はい、カット! いいよ、バッチリオッケー! お疲れさまでしたー!」

 スタジオ内に監督の明るい声がかかる。
 回っていたカメラが止まり、数人のスタッフが拍手を送る。労をねぎらわれる側の主演女優は、ぐったりとベッドの上に横たわったままだった。
 
「さすが瞳ちゃん、いい表情だったよー。今回の『スイカジュース100%、おアツイうちに召し上がれ』もヒット間違いなしだね」

 いまだ放心状態のAV女優、北川瞳に構うことなく、チョビヒゲの監督は語りかける。
 作品のタイトル『スイカジュース』は、スイカップとも呼ばれる瞳の巨乳から名づけられたものだ。ジュースは潮吹きが激しいことで有名な瞳を比喩した言葉でもある。
 
「あ、はい・・・ありがとうございますぅ」

 大きな丸い瞳に、長い黒髪。
 清楚な顔立ちの人気女優は、やや舌足らずな声で答えた。整った美貌には、男優の発射したスペルマがいまだこびりついている。
 
 アダルト、という肩書をとっても、普通にアイドル女優として通用するであろう、愛くるしい顔だった。
 1年前、渋谷でスカウトされた時には、アイドルグループのひとりとしてデビューする、という話だった。事務所に入って半年もしないうちに、アイドル失格の烙印を押される。はにかみ屋で、恥ずかしがり屋の瞳には、笑顔と元気を振り撒く仕事はお世辞にも向いているとはいえなかったのだ。
 
 ところが、半ば騙される形でAV女優としてデビューしたところ、そのシャイな仕草がウケて大人気となってしまうのだから世の中わからない。
 いまや北川瞳は、日本を飛び越えアジア全域にその名を知られる人気女優となっていた。収入でも知名度でも、並のアイドルや若手女優では瞳の足元にも及ばない。
 
「シャワー・・・浴びてきます」

 のろのろと立ち上がったスイカ乳の女優は、全裸でシャワールームに消えていく。
 顔も股間も、射出された白濁でドロドロだった。今日一日の撮影で、何度イッてしまったのか、わからない。
 終わったあとの倦怠感と胸に迫る空虚感は、いつまで経っても慣れることはない・・・目尻に浮かんだ涙を隠して、瞳は熱湯の蛇口をひねった。
 
 湯気と、タイルを叩く水滴の音色が、狭い個室に充満する。
 
『・・・瞳さん。なぜ、そんな辛い想いをしてまで・・・この仕事を続けるのですか?』

 ひとりきりのシャワールーム内に、瞳以外の声が響く。
 実際には、この女性の声が聞こえるのは瞳だけであった。瞳の心の内に反響する声。
 それは、瞳の内部に存在する別人物が、語りかける声であった。
 
『・・・ティオさん』

 ウルトラレディ・ティオは、人気AV女優・北川瞳に憑依することで、普段は地球の生活を過ごしていた。
 シャインたち元の世界の戦姫たちと違い、ティオらパラレルワールドでのウルトラ戦姫は、地球人に肉体を借りることでこの星に滞在していた。怪獣や侵略者が出現した際には、入れ替わる形で戦姫が表面に押し出てくる。
 
 ひとつの肉体をふたりが共有する形。なので、心のなかで、両者が会話することは珍しいことではなかった。
 初めは戸惑っていた瞳も、今ではかけがえのない友人として、異星人であるティオを受け入れている。
 
『心配してくれて、ありがとうございます。でも、私は平気ですから・・・気にしないでくださいね』

 戦姫が憑依する相手は、清らかな精神の持ち主でなければならないが、それ以上に複雑なルールはない。基本的には、運任せのようなところもある。
 そのはずなのに、ティオと瞳はよく似ていた。互いに惹かれ合うものがあったのかもしれない。外見も、清楚な雰囲気も通じるものがあるし、付き合いが長くなっても敬語で話し合う控えめな性格もそっくりだ。
 
『ですが・・・毎回、終わるたびに泣いている姿を見ると・・・』

『ううん、大丈夫です。終わった直後は、気が動転してしまうけど・・・私はこのお仕事に、誇りを持っているんですよぉ』

『誇りを?』

 瞳の言葉に、ティオは思わず疑問を投げてしまった。
 ウルトラ戦姫の母星、光の国には、当然ではあるがAV女優などという職業はない。だが地球に棲み、瞳とともに暮らすうちに、ティオにもその仕事がどういったものか、理解できていた。
 
 とあるスタジオでアイドルグループと遭遇した折に、その数人の子らに露骨に侮蔑の言葉を投げかけられたこともあった。
 スイカと称されるサイズのバストを、ジロジロと見てくる男たちは数え切れぬほどだ。彼らの視線は例外なく、遠慮がなかった。見てもいいだろ? 問題ないだろ? だってお前はAV女優じゃん・・・怒りよりも哀しみが、ティオの胸に去来したのは1度や2度ではない。
 
『だって私のお仕事で・・・たくさんの方が喜んでくださるんですよぉ』

 熱湯を浴びながら、微笑む瞳の表情に、ウソはなかった。
 
『現場は辛いときもありますけど・・・監督もスタッフさんも、たくさんの方に喜んでもらえるよう、頑張ってるんです。私の裸なんかで喜んでくれるなら・・・これくらい、平気です』

 握手会に来ていたファンの姿を、ティオは思い出していた。
 確かに彼らの多くは、瞳に感謝を捧げていた。握手をするという、ただそれだけの行為に緊張し、憧れにも似た視線で瞳を見詰めていた。
 多くのファンにとって、瞳は彼らの女神だった。それは、一心同体となったティオもハッキリと感じることができる。
 
『みなさんが喜んでくれるなら、ですか・・・』

『ふふ、ティオさんと同じですね。地球のひとのために、身を張って頑張ってくれる、ティオさんと』

 瞳の言葉に、思わずティオも微笑みを浮かべる。
 そうか、やはり私たちは・・・似ているんですね。憑依した相手が瞳さんで、本当によかった・・・。
 
 先程までの撮影で、痛んでいたティオの胸は、すーっと癒えていくような気がした。
 私も瞳さんも、ひとりでも多くの者を喜ばせるために頑張っているのだ。どんな辛いことがこの先待っていようとも、私たちならきっと負けない。
 
 そんな、誓いにも似たウルトラレディの決意は、間もなく粉々に砕かれることになる・・・。
 
 
 
 3、
 
 
「大変だ! 外襲災害警報がレベル5で発表されているぞ!」

 バスローブに包まってシャワールームを出た瞳は、撮影スタッフらの喧騒に迎えられた。
 誰もが携帯に送られた情報を、食い入るように覗いている。慌てて瞳も、自らのスマホを起動させた。撮影中は電源を切っているため、現場の誰もが気付かなかったのだ。経費節減で最少人数のスタッフで動いているため、世間の情報からスタジオは一時期、完全に遮断されてしまっていた。
 
 外襲災害とは、地球外からの影響による災害・・・つまりは、侵略異星人が襲来した事実を示している。
 
 瞳にとっては、ただ日本のどこかで被害が起きた、という話では済まない。マインやアイナ、他にも戦姫がいるとはいっても、場合によってはティオに変身して駆けつける必要があるのだ。
 レベル5の災害規模ならば、相当ランクの高い宇宙人が侵略してきた可能性が高い。一刻も早く、情報を確認したかった。
 
「うっ・・・! やはりこれは、タダ事ではないみたいですね・・・」

 スマホの画面にまず写り込んだのは、異常なほどの着信件数だった。
 電話をかけてきた相手は、いずれも『北乃ちか』になっている。ウルトラレディ・アイナが憑依している地球人の名前だ。緊急事態に慌ててコールしてきた、というところだろう。女子大生のちかも、勝ち気で鳴らすアイナも、どこかそそっかしいところがある。危険度の高い宇宙人が現れれば、動転してまずティオに相談してくる、というのは有り得る話だ。
 
 逆にウルトラレディ・マインの宿主である『北野のぞみ』の名は、ひとつも見当たらなかった。
 『最強最速』の異名を持つマインは、ティオからすれば旧知の仲間であり、もっとも頼りになる戦士であった。マイン自体の格闘能力は研修生時代から飛び抜けていたし、憑依先であるのぞみはプロボクサーのライセンスを取ろうかという美人アスリートである。本来の仕事は看護師なのだが、余暇を利用しジムで汗を流すうちに、本格的に転職をすすめられるほどの腕前になった。
 天然なところもある優しい女性だが、その実力は確かだった。ティオやアイナだけではなかなか倒せない強敵も、マインのおかげで退治できたことが幾度もあった。
 マインならば、すでに侵略宇宙人との闘いに行動を始めているに違いない。
 
『私たちも・・・早く闘いに向かいましょう!』

 心のなかのティオの声に、長い髪の人気女優はコクリとうなずく。どんな敵が現れようと、マインとアイナ、3人で力を合わせて迎撃するしかないのだ。
 
 撤収作業を急ぐスタッフたちを尻目に、瞳がスタジオを飛び出した、その時だった。
 
「見つけたぞ―ッ、ウルトラレディ・ティオッ!!」

 雷鳴のごとき大音声が、ビリビリと大地を震わせた。
 幸か不幸か、撮影スタジオは都心から遠く離れた、海辺付近の小さな町にあった。広く続く白い砂浜に、声の主が上空より降り立つ。
 砂塵が舞い上がり、地面がグラグラと揺れた。足元から伝わってくる、地鳴り。
 
「てめえの正体はわかっているんだよォッ――ッ!! 来い、ティオッ!! このカイザー・ナックルが、てめえのカラータイマーをもらっていくぜッ!!」

 浜辺に仁王立ちした水玉模様の暗殺宇宙人は、アスファルトの道路に立ち尽くした瞳に人差し指を突きつけた。スタジオから出た瞳に気付き、見定めてこの地に降り立ったようだ。
 
 正体が、バレている。
 ドキリと、瞳の鼓動が高鳴った。タダの侵略者でないことは、その一事からでも明らかだった。しかも台詞から察するに、この筋骨隆々の宇宙人はティオを倒すことが目的で、この地を襲撃したようだ。
 
『瞳さん、いきます!』

 ティオの叫びが胸の内で響くや、瞳の肢体は眩い光に包まれた。
 カイザー・ナックルの正面。対峙する形で、ターコイズブルーの長い髪を持った、淑やかな戦姫が現れる。
 白と青と赤。三色を絶妙に配置されたビキニタイプの強化スーツは、元の世界のウルトラ戦姫にはないパターンだ。銀のプロテクターに黄色が混ざるのも特徴的といえる。だが胸中央にカラータイマーが輝くのと、額のビームランプにも青色が灯るのはセレスやアルファと同タイプだ。
 
「カイザー・ナックルと言いましたね? この星に害を成すものは、このウルトラレディ・ティオが許しません!」

 顔と同じくらいあるサイズの左右の巨乳と、洋ナシのように見事に膨れ上がったヒップラインが、構えを取るのに合わせてブルンと揺れた。
 清楚な造りの美貌と、極上の豊満ボディ。人気AV女優という肩書が納得の戦姫は、凶悪さを剥き出しにした侵略者を前にして、なんら気後れるところもなかった。
 
「四天王に復帰した暁にはな、オレはメフィラスから、〝猛将”の名を授かることになってんだよォッ!!」

 ゴキゴキとナックルの体内で、肉の軋む音がする。
 身長ではわずかにティオより高い程度だが・・・カイザー・ナックルの肉体は、随分と分厚かった。肩も、腕も、脚も、胸板も太い。ティオがAV女優さながらの垂涎ボディならば、ナックルは研ぎ澄まされた格闘家の筋肉ボディだ。
 
「てめえを葬ってッ・・・ナックル再興の礎としてやらああッ――ッ!!」

 様子見することも、遊ぶこともなかった。
 いきなり全力で、カイザー・ナックルは構えを取ったティオに殴りかかった。
 
「くっ! なんて・・・!」

 なんて凶暴で、好戦的な宇宙人なのっ!?
 
 獲物を前にした野獣のように、ティオの勇姿を見た瞬間、〝猛将”はわずかも躊躇わず飛びついた。ティオと闘うことだけが望み。他はなにもいらん、と言わんばかりだ。
 
 顔に向かって真っすぐ飛んでくる拳を、長髪の戦姫は首を傾けてよけた。
 拳が頬を、かすめて過ぎる。
 
 思わずゾッとする。パンチの速さ、風切る威力、だけに戦慄したわけではない。
 カイザー・ナックルの拳は、異形だった。
 握った拳の、指の付け根。誰でもいくらかは骨が盛り上がるが、その部分が異様にデカい。
 ただ盛り上がりが大きいだけはなく、明らかに鍛えて固くなっていた。まるで鋼鉄の塊が、4本の指の付け根に埋めてあるかのようだ。
 
(こ、こんな拳でっ・・・殴られてしまったら・・・ッ!!)

 戦姫といえど、ティオも女の子である。
 顔を、それも凶器のような拳で殴られるのは抵抗が強かった。なんとかして、この宇宙人のパンチだけは避けなくちゃ・・・そう意識する時点で、カイザー・ナックルの戦術に嵌まっていた。
 
 続けざまに放たれた、ナックルのミドルキック。
 左右の拳ばかりに気を取られていたティオの、右脇腹にもろに埋まる。
 
「んぶうぅ”っ!?」

「柔らかい腹だぜッ! 鍛え方が足りねえようだな、女ッ!」

 「く」の字に折れ曲がったティオに、ナックルが猛然と襲いかかる。
 唸りをあげて撃ち込まれる、右ストレート。ゴツゴツと硬質化した拳が、優美な戦姫の顔面に迫る。
 
 避けられない。気付いた時点で、ティオは両手でブロックした。
 乾いた音色が響いて、鋼鉄が埋まったような異形の拳は、戦姫の掌に受け止められていた。
 
「ぐぅ”っ!」

 左右の手が痺れる。
 確実に受け止めたというのに、カイザー・ナックルの一撃は痛かった。手の骨にヒビが入るのでは、と錯覚するほどだ。
 だが、〝猛将”の名を準備されている異星人の攻撃は、次が本物だった。
 右ストレートは囮。真の狙いである左のボディブローが、無防備なティオの腹部に突き刺さる。
 
 ドッ・・・ボオオオォウウウッ!!!
 
「んんぐうう”う”っ!!? ・・・かはァッ・・・!! があ”っ!!」

 まともに鳩尾を痛撃され、長髪の戦姫は宙に浮きあがった。
 たった一撃で瞳が泳ぐ。胃袋が、口から飛び出てしまいそうだった。息が詰まり、ズキズキと身体の真ん中が激痛に疼く。
 
(なッ、なんて・・・パンチなのっ・・・! あ、脚に力が・・・っ!!)

 深すぎるダメージに、ティオの両脚はガクガクと震えている。
 
「どうだッ、ウルトラ戦姫ッ!? これが宇宙最強レベルの打撃だぜェッ!! こんな柔らけぇ身体で耐え切れるかッ!?」

 全身から血の気が引いていくのを、ティオは自覚した。
 強い。今まで闘ってきた怪獣や異星人とは、桁外れのパワーだ。ひょっとして、このカイザー・ナックルとは別の次元か外宇宙からやってきた、異世界からの侵略者なのではないか。
 
 フラフラとよろめきながら、ティオは可能な限り、ナックルから離れた。
 水玉模様の暗殺宇宙人は、逃げる戦姫を追ってこなかった。余裕があるのだ。遮二無二ならずとも、いつでもお前には勝てる。そう言わんばかりだった。
 
(接近戦では不利だわ。・・・離れて闘わないと!)

 格闘では敵わない。
 これまでの交戦で、ティオは思い知らされていた。打撃の威力に差がありすぎる。ナックル、という名前が示す通り、この異星人は殴打の技術に特化していると捉えてよかった。パワーだけならナックルを上回る怪獣はこれまでにもいたが、パンチやキックに生かす技量が、この暗殺宇宙人はズバ抜けているのだ。
 
 ティオにもパワータイプという、筋力の発達した肉体にタイプチェンジする特殊能力がある。
 だがパワータイプになったとしても・・・まともにぶつかっては敵わない、というのが自らわかってしまっていた。認めずにいられないほど、カイザー・ナックルの格闘能力は高い。
 
(・・・一気にいくしか、ありませんっ・・・! 私が勝つには、それしかっ!)

「ゼペリオル光線っ!!」

 一旦両腕を左右に広げたティオは、すぐさまL字に組んで自身最強の必殺技を発射した。
 紫色の光線が、一直線にカイザー・ナックルに突き進む。いきなり放たれた光線に、虚を突かれたように、〝猛将”は棒立ちになっていた。
 
 高熱の光の帯は、まともにナックルの胸板を直撃した。
 火花が飛び散る。爆発音が鳴る。
 ティオが呆気にとられるほど、容易く必殺光線は、侵略宇宙人に撃ち込まれた。
 
「ケッ! やっぱりな。思った通り、ジェニスのスペリオル光線とどっこいどっこい、ってとこかッ!!」

 濛々と立ちこめる黒煙のなか、カイザー・ナックルの吐き捨てる声が響く。
 とても深刻なダメージを受けたとは思えぬ、猛々しい声音。
 
「なっ!? まさかっ・・・? ゼペリオル光線が、通用しないというんですかっ!?」

 ティオが知る由もないことだが・・・ナックル星人には、かつてウルトラレディ・ジェニスと闘った折りの、詳細なデータが記録として残されていた。
 ジェニスの打撃力や光線の威力、基本的な身体能力などは全て解析され、ウルトラ戦姫を想定した戦闘訓練に利用されている。ブラックキングのような怪獣を調教したり、組み手用ロボにプログラミングしたり・・・。
 
 当然カイザー・ナックルも、何百回という、仮想ジェニスとの闘いで己を鍛え上げていた。
 
「いいことを教えてやるぜェッ!! スペリオル光線程度の威力ならよォッ・・・オレは5発連続でも、耐え切る肉体を手に入れたッ!!」

 その言葉は、ティオの必殺光線を、5発連続でも受け切れることを意味している。
 そして消耗の激しいゼペリオル光線を、ティオが放てるのは、一度の変身で一回が限度だった。
 
「うッ、ウソですっ!! そんなわけが・・・ゼペリオル光線が効かないわけが、ありませんっ!!」

 動揺するティオに向かって、煙のなかからカイザー・ナックルが飛び掛かる。
 胸板を少し焦がしただけの〝猛将”は、凶悪な笑みを浮かべて、佇むティオに殺到した――。
 
 
 
 4、
 
 
 打撃力だけでなく、肉体の頑強度も、このカイザー・ナックルという侵略者は脅威のレベルにある。
 
 恐れにも近い感情が、艶やかな戦姫に押し寄せていた。自然、肉体は硬直する。猛然と迫りくる敵に、構えを取ることも忘れて立ち尽くす。
 
「うああ”っ・・・!!」

 飛来する異形の拳を、ティオは鼻先で間一髪受け止めた。
 続けて唸り飛ぶ、もう片方の拳。
 ナックルのフックを、これも手首を掴んで止める。必死だった。まともに喰らえば、バラバラになりそうな激痛が襲うことは、先の一撃で身に染みている。
 
「はあっ!! はあっ!! はあっ!!」

「ケッ! やるじゃねえかッ! オレのブローを止めるヤツなんざ、ザラにはいねえッ!」

 カイザー・ナックルの称賛は、本音のようだった。だがその裏には、確かな余裕がある。
 ティオを葬るのは時間の問題だと、確信しているフシが見え隠れしていた。
 
「私はっ・・・負けるわけには参りませんっ!! みなさんに笑顔になってもらうためにっ・・・」

「殊勝なセリフじゃねえかッ! だがどうするッ!? 手を放した瞬間、オレの拳はてめえを抉るぜェ!? これじゃ反撃不能だなッ、ティオよォッ!」

 唇を噛み、ティオは悔しげに美貌を歪ませた。
 ナックルの台詞は図星をついていた。キャッチしたとはいえ、異形の拳はグイグイと力をこめてくる。その圧力に抵抗するだけで、全身を駆使せねばならなかった。腕はもちろんのこと、背筋も、腹筋も、脚の筋力も。
 互いに両腕を封じる格好で、ティオとナックルは膠着状態にならずを得なかった。
 
「なんならてめえのカラータイマーが赤になるまで・・・このままでもいいんだぜェッ!?」

「・・・あなたの強さはよくわかりました。私が勝つのは、簡単なことではないかもしれません」

 普段は優しさがにじみ出ている戦姫の表情が、凛々しく引き締まる。
 ティオは察知していた。ともにこの世界を守ってきた仲間だから・・・すぐに感じることができた。
 ティオのピンチに、駆けつけてくれた者がいる。
 
「ですがこの星のウルトラ戦姫は・・・私だけではありませんっ!!」

「アイナっ――ッ!!」

 白い砂浜の奥。ビーチの片端に、巨大な戦姫が出現する。
 ティオ同様、白と赤と青、トリコロールの強化スーツ。基調にしている色が、ティオが白であるのに対して、この戦姫は青が多く使われていた。メロンのように丸く大きく実った乳房も、青色の生地が包み隠している。ティオに負けず劣らぬ美巨乳であった。
 
 パッと見の最大の特徴は、金髪のツインテールであることだった。腰にまで届くターコイズブルーのストレートが、淑やかな印象を強くするティオとは対照的だ。
 ツインテールといっても、セレスとは異なり左右に大きく広がっているので、より活発で華やかさがあった。勝ち気そうな瞳を見ても、相当な跳ねっ返りであることは容易に想像できる。
 
「ちょっと待ちなさいよ、このっ! 水玉模様なんて今時流行んないわよ、ガチマッチョ宇宙人! このウルトラレディ・アイナがいる限り、侵略なんて諦めることねっ!」

 ビシッと人差し指を突きつけたツインテールの戦姫は、ハキハキした口調でたんかを切った。
 ウルトラレディ・アイナ。女子大生・北乃ちかに憑依した戦姫は、ティオを圧倒する〝猛将”を前にしても、まるで怯えの影もなかった。
 ティオやマインの後輩にあたるアイナは、よく言えば度胸がある、悪くいえば恐れ知らずな性格だった。ティオからみても才能に恵まれた戦姫だが、無鉄砲なところが危なっかしくもある。
 かつてない強敵、カイザー・ナックルに対しても、ティオがハラハラするような台詞を吐いているが、頼もしく見えるのも事実だった。アイナが来てくれたなら、なんとかなるかもしれない。少なくとも、この膠着から優位に立てるのは間違いなかった。
 
「ティオったら、何度電話しても全然でないんだもん! ま、いいわ。お説教は、このマッチョを倒したあとでね! アイナが来たからには、もう安心なんだからっ!」

 組み合った状態のティオとナックルに向かい、金髪の戦姫が駆け出す。
 離れた場所から光線を撃ち込む、という発想はないようだった。絶対に負けられない闘いであっても、どこか真っ向に勝負してしまう。そんな性質は、パラレルワールドであってもウルトラ戦姫には共通しているようだ。
 
 だが、そんな甘さは、カイザー・ナックルにとっては嘲笑の的でしかなかった。
 
「ケッ! マヌケがァッ!! ノコノコ誘き出されやがったなァッ、ウルトラレディ・アイナぁッ~~ッ!!」

 ドガアアアアッ!!

 突然。
 見えない壁にぶつかったかのように、走るアイナが弾き飛ばされる。
 ただ跳ね返されただけではない。美少女と呼んで差し支えない顔には、殴打の痕がくっきり浮かんでいた。切れた唇の端から、鮮血が噴き出る。
 
「ぐはああっ!? ぐ、うぅ”っ!? ちょッ・・・! な、なによっ、一体!?」

「おいおい、おめーの相手はこのオレだヨ。あったま悪そーなガキだゼ」

 口元を拭い取るアイナの前に、空間が一瞬で色を生み出す。
 巨大な絵筆で、ポン、とその空間に色を置いたかのようだった。まさに一瞬の出現。色が人型を形成していることに、脳が気付くまで数瞬を要した。
 ようやくアイナは、別の宇宙人が、その場に姿を消して隠れていた事実を悟る。
 
「くっ!! 何者よ、あんた!」

「ガッツ星人のマモンってんダ。四天王〝魔将”の座に就く予定の男サ」

 大きく丸い頭部に、鳥を思わす眼と嘴。
 オウムによく似た異星人は、透明化の能力を解除し、構えを取るアイナの前に立ち塞がった。
 
「・・・そっか。侵略者は他にもいた、ってわけ?」

「おめーとティオとはまとめて始末することにしたんダ。その方が手っ取り早いダロ? なにかとこっちの都合もいいしヨ」

 ナックルとの戦闘中、すでにこのガッツ星人という異星人は、この場に潜んでいたのか。
 気配を微塵も感じさせなかった技量に驚きつつ、ティオは侵略者たちの狙いが読めたような気がした。
 
(『最強最速』の異名をとるマインちゃんが現れる前に・・・私たちふたりを、葬ろうというのですねっ!? く・・・私はアイナちゃんをここに引き出す・・・囮にされてしまった・・・っ!!)

「バカじゃないのっ!? あんたたちの作戦は、見事に失敗よ!」

 悔やむティオの心を吹き払うように、ツインテールの戦姫は両手を腰にそえてふんぞり返った。
 
「マンモだっけ? マモン? ま、どっちでもいいわ。あんた、随分偉そうな口の利き方だけど、アイナの強さをわかってんの? インコごときに宇宙最強のウルトラレディが負けると思ってるわけ!?」

「あー、そういや昔、『いかなる敵にも負けたことがない』って豪語してる宇宙人がいたナ」

 呆れたようにつぶやくマモンの声は、アイナの耳元で聞こえた。
 
「えっ!?」

「そいつら、結局負けたけどナ。ちょーしこくバカは、最後は死ぬんダヨ」

 目の前のマモンと、まったく同じ姿をした異星人がもう一体。アイナの背後に出現していた。
 ガシリと、羽交い絞めに捕らえられる。振り向く間も、跳び逃げる余裕もなかった。
 もがくツインテール戦姫の首筋に、ガッツ星人の嘴がズブリと突き埋められる。
 
「あぐう”ぅ”っ!! うあああ”あ”あ”ぁ”っ―――ッ!!!」

「隙が多すぎだゼ、ションベンくせーガキ。おしめも取れてねーんじゃねーのか、この青臭さはヨ」

 グリグリとアイナの首筋を抉りながら、背後のマモンは嘲った。
 
「ぐっ、ひ、卑怯よ! もう一体、仲間が隠れてたのね!?」

 愛らしい顔を引き攣らせ、拘束を解こうと懸命に暴れるアイナ。
 カイザー・ナックルほどではないが、このガッツ星人も十分筋肉質な肉体であった。アイナの腕力ではビクともしない。幻覚などの類でないことは、間違いなかった。
 前後、同じ姿をしたガッツ星人は、ふたり同時に喋った。

「やっぱりあったま悪ぃーナ、おめー」「ま、こっちの世界にガッツ星人はいねーようだから、仕方ねーカ」

「オレたちガッツ星人は、分身宇宙人って通り名なんだヨ」「わかるカ? これ、分身の術ってわけダ」

「そいつはマモン」「そいつもマモン」

「オレらはどっちもマモンなんダ」「両方とも本物ってわけダ」

「だから息はピッタリだゼ」「最高のコンビネーションで、ウルトラ戦姫どもを狩ってやるヨ」
 
 嘴を引き抜いた背後のマモンが、アイナの背中を蹴り飛ばす。
 強烈な一撃に、ツインテールの戦姫は軽々と吹っ飛んだ。ここでもアイナは、ガッツ星人とのパワーの差を感じずにはいられなかった。背骨が軋む。キックの衝撃が全身に響き、痛みで思うように立ち上がれない。
 
「まずはじめの獲物はおめーダ」「死ねヨ、ウルトラレディ・アイナ」
 
 ヨロヨロとアイナが立ち上がってくるのを、前後で挟んだふたりのマモンは待ち受けていた。
 両腕を突き出し、同時に白熱の光線を射出する。
 絡みつくような光線が、前後からアイナの全身を包み込んだ。
 
「うぎゃあああ”あ”あ”っ~~~ッ!!! は、ハジケッ・・・!! ハジケちゃううう”ぅ”っ―――ッ!!!」

 絶叫を迸らせるツインテール戦姫に、ガッツ星人の破壊光線は容赦なく注がれ続けた。
 
 
 
 5、
 
 
「ア、アイナちゃんっ!!」

「おっと、てめえは自分の心配するんだなァッ、ティオ!!」

 執拗に撃ち込まれる挟撃の光線に、痙攣して泣き叫ぶアイナ。
 その悶えぶりを見れば、ガッツ星人・マモンの光線の威力は、手に取るように想像できた。このままではアイナが危ない。戦姫としては優しすぎるところのあるティオが、狼狽するのも無理はなかった。
 
 互いに両腕を封じられた状態では、いつまで経ってもラチがあかない。ティオは勝負に出た。
 イチかバチか、右脚でミドルキックを放つ。
 バランスは悪くなるが、ナックルのボディにダメージを与えられれば、膠着状態を脱することができる。窮地のアイナを助けに向かうことができる。
 
 ドオオオゥッ!!
 
「なッ・・・!?」

 右脚がナックルの脇腹に吸い込まれる――と確信した瞬間、ティオの視界に信じられぬ光景が飛び込んだ。
 
 ティオのミドルキックは、カイザー・ナックルの左腕によって受け止められていた。
 
 それ自体は不思議なことではない。ティオの格闘能力は、お世辞にもウルトラ戦姫のなかでは高いとは言えないものだ。せいぜいが中の下、といった程度。キックを捕獲されるのは、決して驚くことではない。
 
 しかし。しかしだ。
 
 カイザー・ナックルの左手は今、ティオが掴んでいるではないか。互いに両手を使っているからこそ、仕方なく空いている脚で、攻撃するしかなかったのだ。
 つまり。今、右脚を左腕で抱え込まれたとうことは。
 
 カイザー・ナックルの左腕は、2本存在していることになる。
 
「あ、あなたはっ・・・!! その腕は一体っ・・・!!」

「敵をいっぱい殴るにはよォッ・・・腕がたくさんあるのが、一番効果的だと思わねえかッ!?」

 左腕だけではない。右腕も、もう一本。
 左右の肩口から、2本ずつ。合計4本の腕が、カイザー・ナックルから生えている。
 
「今度は止められねえなァッ、ティオッ!! カイザー・ナックル渾身の一撃ッ・・・まともに喰らいやがれッ!!」

 自由な右腕が、豪風を伴って下から上へ突き上げられる。
 地面スレスレから、唸りをあげて浮き上がるアッパー。
 狙いはティオの股間部。右脚をあげ、無防備に晒してしまった急所だった。
 
 ゴキャアアアアッッ!!!
 
「はぎゅうううう”う”ぅ”ッ―――ッんんん”!!! ぎゅはア”ア”っ・・・!!! んん”ん”あ”あ”ア”ア”ァ”ッ―――ッ!!!」

 なにかが砕けるような音色が響き、壮絶な悲鳴がティオの口から迸った。
 ぎゅるり、と瞳が裏返り、白目を剥く。たまらず掴んでいたナックルの腕を離し、両手を股間に伸ばす。
 あまりの苦痛に、ぼってりと、喘ぐ口から舌がこぼれ出た。うぐうぐと、呪文のように呻き続ける。
 女性器を破壊されたかのような痛みに、ティオはただビクビクと痙攣するしかなかった。
 
「おらあッ!! でけえオッパイも、無防備になってるぜェッ!!」

 両手で股間を抑えているため、ナックルの元の腕も自由を取り戻していた。秘所に響く激痛に翻弄され、ティオはいまや棒立ちのサンドバッグと化している。
 白いビキニに包まれた、丸々と膨れ上がった美巨乳。
 見事に育った豊満なバストに、カイザー・ナックルの左右の拳が容赦なく撃ちこまれる。
 
 ドボオオォウウウッッ!!! ズドオオオォォッ!!
 
「ひぃぐう”う”ぅ”ッ――ッ!!! んはああ”あ”ア”ア”ァ”ッ~~~ッ!!!」

 一旦裏返った瞳が、あまりの激痛に再びひっくり返って元に戻る。
 ナックルの剛腕ストレートパンチにより、異形の拳は手首までティオの双乳に埋まっている。
 たまらず涙が、飛沫となって飛び散った。ゴブリ、と鮮血が開いた口からあふれでる。
 
「うあ”ッ、あ”っ・・・!! こ、んなぁっ・・・!! ひぐうう”う”ぅ”っ~~っ!!!」

「思った通り、脆いなティオッ!! オッパイとアソコを潰されちゃあ、もう動けねえだろッ!?」

 カイザー・ナックルの言う通り、女性の大事な部分を痛撃されて、ティオの肢体はまともに動けなくなっていた。女としての芯のようなものが、粉々に砕かれたかのようだ。
 物理的に、だけではなく、精神的なショックも大きい。今もティオの股間と乳房とには、凶器のような拳が深々と埋まっているのだ。
 
「だがなッ、オレの本領発揮はこれからなんだよォッ!!」

 カイザー・ナックルの言葉に、ティオの瞳は、大きく開かれる。
 再び悪夢のような光景が、目の前で展開されていた。
 
 ナックルの肩口から、新たに左右の腕が生えてくる。
 全部で3対――。それがカイザー・ナックルの、真の姿だった。最強のナックル星人を自認する男は、6本もの腕を持っていたのだ。
 
「この姿を見た者で、生き残ったヤツはいねえッ・・・メフィラス星人、あいつ以外はなッ!」

 恐怖におののくティオの細首に、新たに生えた2本の腕が迫る。
 むんずと掴み、絞め上げる。気道を潰し、脛骨を圧迫する。
 
「うぐう”っ・・・!! んぐぅ”っ・・・!! ァ”っ・・・!!」

「てめえは終わりだァッ!! 呆気ねえもんだなッ、ウルトラレディ・ティオッ!!」

 ティオの首を絞めながら、ナックルは乳房に埋まった腕を引き抜き、スイカと称されるバストを揉み始める。
 股間を砕いた拳も、白いスーツに包まれた秘裂を、ズリズリと擦りあげた。痛撃を喰らわせたあとは、愛撫によってティオの肢体を堕とそうというのだ。
 
「んふぅ”っ・・・!! はあ”、んっ!! ・・・なに、を・・・っ・・・!?」

 〝猛将”と呼ばれようかという暗殺宇宙人は、意外なほどに愛撫はソフトだった。
 柔らかなタッチで両の乳房を撫で回し、先端を指先でコロコロと転がす。
 ティオの突起は、敏感に反応してしまった。あっという間に白のスーツを押し上げ、先端がコチコチに固まる。尖った乳首を、ナックルのふたつの掌はさらにクリクリとこねまわした。
 
 一方で、湿り気を帯びた秘唇も、何度も摩擦される。
 縦の筋に沿って指が伝い・・・時折内部にまで侵入してくる。
 奥の壺から分泌された恥ずかしい蜜で、ティオの肉襞はしっとり濡れている・・・そのビラビラを、ナックルの指は繊細に震動させた。さざ波のような愉悦が、ジンジンと子宮に伝播する。
 
「うはああ”っ――っ・・・!! あぅ”ん”っ・・・!! くふぅ”・・・っ!! ・・・や、めっ・・・!!」

 首を絞められ、強烈な殴打によって肢体をシビレさせた戦姫には、かすかに震えるくらいしか抵抗はできなかった。
 ティオは悟る。この侵略宇宙人たちは、女としてウルトラ戦姫を処刑するつもりなのだと。
 ただ単に殺すだけなら、いつでも出来ると判断したのだ。余裕を持ったがゆえに、立ち直ることのできない敗北を、ティオたちに植え付けようとしている。
 
(マインちゃんっ・・・!! この世界には、まだあなたがいるわ・・・! こうなったら、あなただけが頼りよ・・・っ!!)

 ティオはカイザー・ナックルにいいように嬲られ、アイナはガッツ星人・マモンの攻撃に叫び続けている。
 かつて経験したことのない、窮地だった。このままでは一方的に処刑される・・・しかし、まだ希望の灯は残っていた。『最強最速』のウルトラ戦姫が、きっとこの危機を打破しようとむかっているはずだった。
 
「記念すべき、四天王復活の生贄だッ!! てめえには壮絶に散ってもらうぜ、ティオよォッ!!」

 乳首を尖らせ、股間から溢れた滴りを内股に光らせた、艶めかしい戦姫。
 ほのかにピンクに染まり、熱っぽくハアハアとあえぐティオを、カイザー・ナックルは荒々しく引き寄せた。
 
 トドメを刺される――直感で、ティオは察知した。だが、愛撫の手にすら抵抗できない身体では、6本の腕に抗えるわけもない。
 
 ラグビーのスクラムのように、ナックルとティオの肩同士が組み合わされる。戦姫の両腕は、〝猛将”の2本の腕によって手首を拘束された。
 さらに6本のうちの2本が、ティオの太ももに手を伸ばす。ガッシリと抱えると、そのまま一気に頭上まで、豊満な肢体を持ち上げた。
 
 カイザー・ナックルの肩口に、上下逆さで、乗せられた格好のティオ。
 頭を下にしているため、肩に乗った首に、己の全体重がかかっていく。抱えられた太もももまた、重力に引かれて自然に大股開きとなる。
 
「くあああ”っ・・・こ、これはぁ”っ――ッ!?」

 高々と天にあげられたヒップと股間部が、満天下に晒される――。両脚が開いているため、白いショーツに覆われた土手やクレヴァスが、嫌でも目立ってしまう。若き乙女にとっては、耐えられない羞恥であった。
 だがそれだけではない。この技の脅威は恥ずかしさにあるのではなく・・・実際の、肉体へのダメージにあった。
 
 逆さになっているため、首に全体重が乗り極まってしまう。脛骨が、ミシミシと鳴っていた。このまま衝撃を与えれば、首の骨が折れてしまうかもしれない。
 同じことは、背骨にもいえる。己の体重と、太ももを引き寄せる怪力によって、背骨は潰されようとしていた。抱えあげられただけで、拷問にかけられたようなものだ。
 さらに両脚を強引に開いているため、股裂きのダメージも加えられている。両腕も掴まれていることで、腕折りの効果もあった。
 
 首折り。背骨折り。股裂き。腕折り。
 恐るべきことに、これだけのことを一度にしてしまう複合関節技が、この態勢なのであった。加えて股間の秘部を晒す、羞恥の効果もある。
 
 抱えあげられただけで、ティオの全身はミシミシと悲鳴をあげた。
 
「うああああ”あ”っ~~~っ!!! あがあ”あ”ア”ア”ッ――ッ、く、砕けてしまいますぅ”ッ――ッ!!」

 もし、このままの状態でナックルが高々とジャンプし、着地による衝撃をティオに送ったら。
 現在軋んでいる関節へのダメージは、倍加、いや、4倍にも5倍にもなるだろう。首から真っ逆さまに大地に叩きつけられるようなものだ。
 
 砕ける・・・それが比喩でなく、現実として自分に襲いかかろうとしているのを、ティオは悟った。
 
(た、助けっ・・・!! 助けてぇっ――ッ、マインちゃんっ!! 私、このままでは・・・っ!!)

 逆さで頭上に持ち上げられたティオの乳房に、2本の腕が伸びていく。
 そう、まだ・・・カイザー・ナックルの腕は残っているのだ。両腕を極め、太ももを抱えて・・・それでもまだ、2本の腕が残っている。処刑執行を待つティオの身を、いいように嬲れる腕がある。
 
 上下反転しても形の崩れない、スイカのようなふたつの乳房をナックルの腕が揉みしだく。
 
「あはあ”っ・・・!! あぅ”ん”っ、んッ・・・!! こんなぁ、こんなぁっ・・・!!」

 惨めだった。
 首も、背骨も、股も、両肘の関節も、ギシギシと激痛を走らせているというのに、ティオは胸を愛撫されて喘いでいた。
 柔らかに揉まれ、乳首を転がされては、甘い吐息が漏れてしまう。
 肉体を壊されながら、快感に引き攣っているのだ。完全にナックルに遊ばれていた。それでもティオは、固くとがった乳首を、クリクリと転がす指から逃れられない。
 
「い、やぁっ・・・~~っ!! マイン、ちゃんっ・・・!! 助けて・・・助けてぇっ――ッ!!」

 悲痛な願いを、天が聞き届けたのか。
 ティオの絶叫が響くや、遥か上空で、なにかが光った気がした。
 
 落ちてくる。
 赤色が見える何かが、猛烈なスピードで天空から落下してくる。
 薄れゆく意識のなかで、それでもティオにはハッキリみえた。赤い色は、腕や脚を包む強化スーツの色だと。
 大きなリボンで、ひとつに結んだ長い髪と、黄金のパーツを伴うプロテクター。優しくも、凛とした美しき顔と、ティオやアイナに劣らぬ巨大な丸い乳房。
 
「・・・マイン・・・ちゃんっ!!」

 紛れもなく、それは『最強最速』のウルトラ戦姫、ウルトラレディ・マインであった。
 この世界を守るもうひとりの戦姫が、ついに仲間たちの窮地に駆けつける――。
 
「・・・えっ!?」

 ドドオオオオオォォッ!!!
 
 遥か上空から落下したマインは、そのまま受け身も取らずに、大地に激突した。
 
 着地した、とは到底言えぬ状態だった。
 墜落した、というのが妥当な状況。うつ伏せのまま、マインは顔と胸から、大地に叩きつけられたのだ。
 
「なにが起きたのか、わからない――といった表情をしていますね。ウルトラレディ・ティオ」

 落下の衝撃で砂浜に埋没したマインの傍らに、気が付けば、新たな異星人が立っていた。
 漆黒の肢体を、修道服・・・シスターの衣服で包んでいる。口調は丁寧だが、闇の底に光るような冷たい視線が、この女異星人も侵略者のひとりだと知らせる。
 
「私の名はシスター・マグマ。四天王〝謀将”の名をメフィラスさまより賜らんとする者です」

 コツコツと、高いヒールの音色を鳴らしたシスター・マグマは、うつ伏せのマインを蹴り転がした。
 『最強最速』のウルトラ戦姫が、仰向けとなる。
 
「あなたが希望を託したウルトラレディ・マインは・・・すでに私が、処刑しました」

 マインの胸の中央、乳房の谷間にあるはずのカラータイマーは、抉り抜かれて空洞になっていた。
 瞳を閉じたまま、マインは呼吸をしていなかった。清楚な美貌は眠るように、ピクリとも動かない。
 
 ウルトラレディ・マインは死んでいた。
 
 シスター・マグマの掌のなかで、パリン、となにかが砕け散る。
 結晶の破片が、掌からこぼれてキラキラと光を反射した。
 
「私たち、かつての四天王で3人の戦姫を狩る・・・残るはあなた方ふたりです。ティオとアイナ」

 ティオの絶叫が、浜辺の空に響き渡った。
 その瞬間、友の死を嘆き悲しむ戦姫にトドメを刺すように、カイザー・ナックルが複合関節技を極めたまま高く跳躍する。
 
「喰らえィッ!! ナックルバスタァァッ――ッ!!!」

 ドッゴオオオオォォォッッンン!!!
 
 ナックルが砂地に着地した瞬間、落下の衝撃が肩口に乗せられたティオに叩き込まれる。
 
 首折り、背骨折り、股裂き、腕折り。
 破壊の衝撃が、ティオの全身に襲いかかる。
 
 ベキベキベキベキィッ!!!
 
「はぁぐう”う”ぅ”ッ――ッ・・・!!!」

 白目を剥いたティオの口から、大量の吐血が溢れ出た。
 壮絶な粉砕音を奏でた戦姫の肢体を、カイザー・ナックルはゴミでも投げるように、波打ち際に放り捨てた。
 
 押し寄せる波音に、ピコピコと、カラータイマーの点滅音が混ざる。
 胸と額、ふたつの結晶を赤く灯らせたティオに、自力で立ち上がる力は、残されてはいなかった――。
 
 
 teiobuster.jpg
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| ウルトラ戦姫物語 | 03:32 | トラックバック:0コメント:2
コメント
いつもお世話になっている新 京史朗さまが、このたびブログhttp://ryonablog475.blog2.fc2.com/ にて間もなく30万HITを迎えるということで・・・おめでとうございますw

というわけで「ブログ30万ヒット記念企画」の一環といたしまして、今回ウルトラ戦姫の書き下ろし作品を書かせていただきました。
本来、ボクはリクエストを受けられるほど器用な人間ではないのですが・・・今回は特別記念であることと、冬コミなどを通じて新さまにはいろいろとお世話になったこと、また題材がウルトラ戦姫のなかでも、ティオやアイナなど、以前から興味ある内容だったため引き受けさせていただきました(^O^)

本来なら、30万HITを達成してから掲載するべきなのかもしれませんが、けっこうな文章量になりそうなので・・・何回かにわけて投稿しますので、一足先に1回目をあげることにしました。

今回挿絵に使わせていただいた素敵なイラストも、新さまよりお借りしたものです。原作者のらすPさまに描いていただいた作品を、快くお貸ししていただきました。
重ね重ね、ありがとうございました。

ただ、今回ティオたちパラレルワールドの戦姫を扱うのにあたり、難題もありまして・・・
実は平成ウルトラについて、ボク自身がほとんど知らなかったりします(;^ω^)
メビウスは10話くらい、マックスはちょっとだけ見た程度で、ティガやダイナは一度も見たことがなく・・・(すいません)資料を読みながら書いたため、オリジナル要素がかなり強くなってるかもしれません。

一方で、原作者のらすPさまもティオたちパラレルワールドの戦姫については、公式設定はほとんどアナウンスされていないので・・・
人間体や技の名前など、こちらで独自につけさせていただきました。ティオやアイナはまだいいのですが、マインについてはほとんど謎でw

人間体の名前も、「AV女優繋がり」と「偶然にも北の名前で始まっている」というところから、最近偶然知った女優さんをチョイスすることになりました。この方、あまりに美人なんで、アダルト女優やっていることにビックリしたんですが・・・今はすごい時代ですねえw
設定もマインの雰囲気と、他戦姫との兼ね合いから勝手に作ってしまいました。とはいえ書き始めると、愛着が湧いちゃうのでこまったものですがw

そんなこんなで、かなり独自色の強い作品になってるかもですが・・・しばらく続きますので、よろしくお願いします。
あ、もちろんオメガについてもちゃんとやりますので、ご容赦くださいw
2016.05.24 Tue 03:35 | URL | 草宗
>拍手コメントくださった方
意図してハードにやっている、というより、無意識のうちにハードにしちゃうんですよね(^^ゞ もうそういう性質としかいいようがないですw

基本的にヒロインの苦しむ姿が見たいので・・・どうしても急所は多めに攻撃しちゃいますね(^^ゞ

書きたい作品がいっぱいある・・・ありすぎるので、なんだかいつも創作に追われているのです(;^ω^) もちろんそれを楽しんでいるんですがw
ひとつでも多く作品を出すために、やるしかないって感じですねえ~。販売を開始したのも、将来的に小説一本で生きていく、という夢を叶えたいためですから(^^ゞ

少し無理する、くらいで頑張りますw
2016.05.28 Sat 23:36 | URL | 草宗
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