巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

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キュート! 第1話「見参!! 夢のヒロイン」その1
第1話 見参!! 夢のヒロイン



 序、
 
 
 夢を、見ていた。
 
 これは夢の中なんだ。ハッキリと自覚できる夢だった。眼に見えるもの、耳に届く音、ニオイ、肌の質感・・・全てが異様にリアリティを伴っているのに、なぜだか夢だと確信できる。事実、彼女がいま立っている場所は、紛れもなく夢の中の世界であった。
 周囲の光景には、見覚えがある。毎日通い慣れた、高校の中庭――。
 
「・・・また、あなたなの?」

 正面に立つ男を睨み付けながら、少女は毅然と言い放つ。いつからそこにいたのか? などとは、あまり気にならない。夢の中ではよくあることだ。
 内心の感情を悟られまいとしたのに、語尾が少し震えてしまった。むしろそちらの事実の方が、少女にとってはショックだった。
 


 そう。私は、この男をよく知っている。
 素性もちゃんとわかっているし、なにより、この男には何度も苦杯を舐めさせられた。数々の屈辱を、頭どころか肉体の細胞レベルで記憶している。
 
「またオレだよ。十王玲央奈」

 180㎝を越える巨体が、カカと笑った。以前から巨躯の持ち主であることは知っていたが、今眼の前にいる男は小山のように大きく見える。
 
「今宵も遊ぼうじゃないか。正義のミカタ様を嬲るほど、キモチイイことはないぜ」

 悔しさで、思わず下唇を噛み締める。
 両手に嵌めた赤い皮手袋を、力強く握る。同じく赤色をしたツインテールの下で、瞳が鋭く光った。記憶のなかでこれまでの敗戦がリフレインするが、心は折れていない。イケる。私はまだ、闘える。己を鼓舞し、少女は胸の内で何度も頷いた。
 
「はあああァッ・・・!!」

 呼気とともに、ブレザーの制服を着た女子高生は一気に突っ込んだ。
 ツインテールが猛獣のたてがみの如く揺れる。少女の動きは早かった。佇む巨漢に、いきなり戦闘を仕掛けていく。
 
「ハアアッ!!」

 体重とスピードの乗った右正拳が、男の鳩尾にめり込んだ。
 重い打撃音。とても17歳の少女のものではなかった。一撃で巨体が悶絶し、校庭をのたうち回ってもおかしくはないだろう。
 だが現実には、男はニヤリと唇を吊り上げたのみだった。
 
「弱い。弱い。空手王者と威張っていても、所詮女などこの程度だ」

 青褪めた少女が、後方に跳び逃げようとする。しかし、巨体に似合わず男の動きは俊敏だった。
 小さな両肩が、ガシリとグローブのような両手に掴まれる。
 捕獲されたツインテール少女の腹部に、巨漢の膝蹴りが突き上げられた。
 
 ドボオオオォォッ!!!
 
「んぐう”う”ッ――ッ!! ・・・オ”ァッ・・・!! ゴブッ!!」

 ブレザー姿の女子高生が、50㎝は垂直に浮き上がる。
 夢のはずなのに、胃袋が破裂したかのような激痛は深刻だった。瞳も口も大きく開いたまま、苦悶に美貌を歪ませる。かろうじて二本足で立っているだけでも、奇跡的に思えた。
 
「そらよ。今日も一発で、勝負アリだ」
 
 左右の肩を掴んでいた手が離される。
 ここぞとばかり、少女は逃げた。フラつく脚で、よろよろと後ろに下がっていく。一発ずつ打撃を打ち込みあっただけで、歴然とした力の差を悟ってしまっていた。
 
「ウア、ア”ッ・・・アア”ッ・・・!! ううぅ・・・!」

「ブザマだな。逃げられないって知ってるはずだが?」
 
 男は慌てなかった。逃げる獲物を悠然と見下ろす。
 ただ両腕を前方に突き出すと、伸ばした10本の指全てが、漆黒の鎖に変形していく。
 
「う”ッ!?」

「フハハ・・・今日も緊縛ショーの始まりだ」

 10本の鎖が一気に伸びる。
 制服少女の四肢に、首に、胴に、次々と絡まっていく漆黒の鎖。
 瞬く間に縛り上げられた肢体が、空中に吊り上げられる。
 
「胸の上下で縛ると、巨乳ぶりが顕著になるな。いい形してるじゃないか。大きさも質感も最高のオッパイだ」

 カチャカチャと鎖を鳴らして暴れる少女に、男はゆっくり近づいていった。
 男が言う通り、濃紺のブレザーの下ではオレンジでも入っているように胸が大きく膨らんでいる。見るからに弾力性のある乳房。少女は必死に身を捩っているが、大の字で縛られた肢体はわずかに揺れるのみだった。
 今にも噛みつきそうな表情で、少女は男を睨み付けている。
 だが無駄だった。男が少し鎖に力を入れるだけで、四肢が強引に捻じり回され、胴体と首とがギリギリと締め付けられる。
 
「うああ”ッ・・・!! あがァ”ッ・・・!!」

「わかるか? お前はオレのオモチャなんだよ。この世界ではな」

 乳房の下から下腹部にかけて。三重に巻かれた鎖が、強烈に胴を圧迫する。
 アバラの軋む激痛に、パクパクと口を開閉する美少女。
 鎖に縛られ、腰のくびれがクッキリと際立つ。相対的に、よく発育した胸とお尻とが強調されることになった。
 
「ハハハ。すごいプロポーションじゃないか。遊ばないのは勿体ないぞ、十王玲央奈」

 眼前に迫った男の両手が、丸い乳房を包む。
 柔らかな肉を、容赦なく握り潰す。濃紺のブレザーのなかで、ギュムギュムとふたつの肉饅頭が形を変えた。
 
「ぐぅッ!! う”ぁっ・・・! さっ、触る・・・なッ・・・!」

「昨日、一昨日とたっぷり乳首は調教してやったからなぁ。随分と開発されてきたじゃないか」

 少女の言葉を無視し、男は膨らみの頂点を人差し指で弄り回す。
 すりすりと擦りあげると、制服の下でコチコチに小豆が固くなるのがわかった。
 
「どうした、正義のミカタ? 簡単に尖ってきたぞ。見ろよ、ブレザー越しにもお前の乳首が立っているのがわかるぞ」

「・・・ん”ゥっ・・・! ・・・くふぅ・・・う、うる・・・さいっ・・・!」

「クク・・・口はお転婆でも、カラダは素直なようだな」

 執拗に男の人差し指は、胸の突起をこね回す。
 ゾワゾワと広がる甘い刺激に耐えるように、ツインテールの少女は何度も頭を振った。柳眉が切なげに寄っている。溢れる唾液がキラキラと光りながら、周囲に飛び散る。
 
 自分でもわかる。ふたつの乳首が、敏感になっていると。
 そうだ。昨日、そしてその前日と、二日がかりで男によって、豊満な乳房は弄ばれてきた。数時間に渡って突起を吸われ、口のなかで転がされたせいで、鋭く快感に反応するようになっている。
 
「今日はココだ。カマトトぶってるお前も、女にとってここがいかに重要で、過敏なものか・・・知っているよな?」

 男の右手が濃紺のプリーツスカートに伸びる。
 少女の下腹部に位置する生地が、無造作に鷲掴みにされた。
 
「や、やめッ・・!! きゃああああッ――ッ!?」

 甲高い悲鳴が、思わず漏れてしまっていた。
 高校指定のスカートが一気に破られ、ピンク色のショーツが露わになる。
 
「空手少女も、下着はなんとも乙女チックじゃないか。案外と可愛らしいヤツだな」

 嘲るような口調と薄笑い。
 正視に耐えられなくなった少女は、頬を紅潮させて横を向く。涙が出そうになるのを、懸命にこらえた。わななく唇を噛み締め、強引に震えを止める。
 
「惨めだなぁ、十王玲央奈。得意の空手は通じず、いいように肉体を嬲られる始末。女のくせに正義のミカタを気取るとどうなるか・・・身に染みてわかったか?」

「・・・ぐッ・・・ううぅ・・・くッ・・・!!」

 嗚咽が漏れそうになるのをこらえるだけで、少女は精一杯だった。
 
「では今日はココの開発だ。お前は二度と、このオレに逆らえないカラダになっていくのだ」

 男の頭が、破れたスカートの間から股間に埋まる。
 空中に緊縛された少女の下腹部に、荒い男の鼻息がハアハアと浴びせられた。
 
「ふわああっ!? うああっ・・・! な、なにするのっ・・・!? や、やめてッ!!」

 生温かな吐息を股間に吹き付けられる嫌悪感。そして仄かなくすぐったさ。
 かつて経験したことのない感覚に、そっぽを向いていたツインテールが天を仰ぐ。勝ち気だが端整な美貌が真っ赤に染まっているのは、恥ずかしさだけが原因ではなかった。
 
「さて・・・今日は何時間、耐えられるかな?」

 男の長い舌が、ショーツ越しに少女の股間に当てられた。
 ゾゾゾ・・・と音がしそうな強さで、敏感なクレヴァスを這う。
 陰唇だけではなかった。舌の先端はお尻の菊門にも届いている。湿った、滑らかなベロが、そこから少女の縦筋をじっくり舐める・・・。秘裂の先にあるもっとも過敏な萌芽まで、唾液を塗りつけていく。
 
「んはああ”っ・・・!! はああ”っ――っ・・・!! んふう”っ、ふっ・・・!!」

 間近で見る男の顏。その右の頬には、長く大きな傷跡が刻まれていた。
 そう、この顏――。この傷跡のある顏を、どれだけ嫌というほど見せつけられたか。
 ここ数日の間、男の顏は常に少女のカラダに密着していた。敏感な場所を探っては、貪り続けていた。

 少女は知っていた。これからどんな処罰が、己に下されるかを。
 夢から醒めるまでの、5時間か6時間。目覚めの時が来るまで、男は緊縛少女の股間を愛撫し続けるのだ。ただただ、一心不乱に。
 泣き喚こうが、イッテしまおうが、関係なかった。ピチャピチャと、愛蜜を滲ませる卑猥な秘唇を舐め続ける。少女の反応に構うことなく。
 そうやってこの二日間、左右の乳首を責め抜かれたのだ。執拗すぎる愛撫に半狂乱になりかけた頃、ようやく朝が来て少女は現実に戻った。
 
「やめっ、やめええっ・・・!! そんな、とこっ・・・!! ずっと弄られたらぁっ~~っ・・・!! おかしくっ、本当におかしくぅっ・・・なっちゃうぅっ~~っ!!」

 ぴちゃ・・・ちゅぶッ・・・レロレロレロ・・・
 
 もはや男からの返答はなく、丹念に舌が陰唇内部の肉襞を舐め回す音色が届く。
 アナル。クリトリス。そして膣壺のなかと、夜を通して少女の陰部は、男の舌に犯され尽くすのだろう。
 
「はふうっ!? んはああ”ア”っ・・・あああ”ッ―――ッ!!! いやああ”あ”ッ~~ッ!! やめえええぇっ―――ッ!!!」

 夢の世界に、女子高生の悲痛な叫びが轟いた。
 
 
 
「はッ!?」

 目覚まし時計が鳴るより一時間も早く、十王玲央奈は眼を覚ました。
 身体がアツい。やけに火照っている。7時間近く睡眠をとったはずなのに、むしろ寝る前よりも身体は重く、ダルかった。だがそんな疲れの酷さよりも、燃えるような身体のアツさがずっと気になった。
 
「うッ・・・? また、なのッ・・・!」

 火照る肢体とは対照的に、股間を襲う冷たい感触。
 慌てて布団のなかに右手を突っ込む。恐る恐るショーツに指を伸ばすと、ぐっしょりと濡れた感覚が伝わってきた。
 おねしょ、ではない。もう3日連続のことだから、経験でわかっている。
 玲央奈の股間を、内股までぐずぐずに濡らしているのは、彼女自身が分泌した愛蜜だった。
 
「・・・っもう・・・なんなのよ、私・・・」

 不甲斐なさと嫌悪感で、たまらず布団のなかで自責の声が漏れ出る。
 夢精という現象が男性にはよくあると知ったのは、最近のことだ。女性でもたまにあるらしい。己の身に起きた異変を調べていて知ったのだが、夢精と言うには愛蜜の量は激しすぎた。無意識にオナニーしていたとしても、これほど大量の液を分泌するものだろうか。
 
 まるで、誰かに犯されたかのようだ。
 それも何十、何百回と。数時間かけて、陰部を愛撫され続けたかのような、異常な興奮。
 
「・・・くっ。まさか、ね・・・」

 バカバカしい妄想を、玲央奈は必死に打ち消した。
 寝ている間に犯されるなんて、あるわけがない。いくら疲れていても、目覚めるはずだった。衣服に乱れはないし、部屋に誰かが侵入した痕跡だってないのだ。
 
「・・・でも、3日も連続でって・・・」

 私、もしかして淫乱体質ってヤツなのかしら?
 
 赤い髪をブンブンと大きく横に振った少女は、シャワーを浴びるためにこっそりと移動を開始した。幸いお風呂の脱衣所に洗濯機があるので、グショグショのショーツも処理しやすい。
 パジャマの下で、乳房の頂点にあるピンクの突起は、コチコチに尖ったままであった。
 
 
 
 1、
 
 
 私立翠民高校は、ここ翠民市を代表するだけでなく、県内でも有数のマンモス校であった。
 中高一貫校であるため、広い敷地には中学と高校の校舎が併設されている。さらに同じ学校法人が運営する系列大学が隣接しているので、周辺は「翠民生」と呼ばれる学生でごった返していた。
 しかも普通科のみでなく、特進科、工業科、スポーツ科、芸能科など、様々なコースが用意されているため、グループ全体の在校生は万の単位に到達している。
 数が多く、様々な学科が存在するということは、自然いろいろなタイプの生徒が在籍する、ということでもあった。国立大学に進学する受験生もいれば、高校卒業後、すぐにプロの現場で働くような職人もいる。
 そしてまた、落ちこぼれと呼ばれるタイプの者が存在するのも、こうした学園の常であった。
 
「あなたたち。そこで何やってるの!?」

 高等部の校舎が並ぶ、中庭。
 ひと目のつきにくいその場所は、所謂不良たち・・・落ちこぼれ翠民生たちの溜まり場であった。ひと口に中庭といっても、敷地全体が広いので、学校側もどこか一箇所を警戒すれば事故を未然に防げる、というものではない。
 喫煙、恐喝、などの不良行為を監視するには、広大な中庭をパトロールする必要があった。
 生徒の自主性を尊重する校風のせいもあって、教師陣がわざわざ不良の溜まり場に顏を出すことはない。犯罪の温床と成り得る場所があっても、取り締まりは生徒自身に任せる。それが彼らのモットーだ。
 
 むろん、今回の現場に登場したのも、自主的に巡回する女子高生のひとりであった。
 
「あっ!? 玲央奈先輩!」

 数人の男子生徒に囲まれていた少女が、救世主の姿を見つけてブンブンと手を振る。
 釣られて男たちも、現れた邪魔者に視線を送る。そのうちの幾人かが露骨に顏をしかめ、また他の何人かが怯えた様子で視線を泳がせた。
 
「チッ! 嫌な女が出てきやがったぜ・・・」
 
 不良生徒たちの間に、明らかな動揺が広がっていた。
 濃紺のブレザーに同色のプリーツスカート。清楚な白シャツの首元を鮮やかな深紅のリボンが飾る制服は、紛れもなく翠民高校のものだ。しかし、彼女の髪形と佇まいは他とは一線を画していた。
 赤い髪のツインテールと、同じく真っ赤な皮手袋。
 どう見てもタダモノではないその女子高生は、ドロップアウトした翠民生には忘れがたい人物であった。
 
「十王玲央奈ぁ! なんの用だぁッ、てめえ!」

 パーカーのフードを目深に被った少年が、声を荒げる。
 総勢8名の不良たち全員が、視線をツインテール少女に釘づけにしていた。それまで囲んでちょっかいを掛けていた少女には、すっかり興味を失っているらしい。
 空手を駆使する彼女・・・十王玲央奈に、痛い目に遭わされた連中は、ひとりやふたりではない。彼らからすれば、教師などよりよほど目障りで、憎たらしく、脅威となっているのがこの赤髪少女なのだ。
 
「なんの用って、マユちゃん助けに来たに決まってるでしょ!」

 マユちゃん、と呼ばれた少女は、男たちの隙を縫って一目散に駆け出した。
 おいでおいで、と手を振る玲央奈に抱きついていく。ショートヘアの小柄な少女だが、ブレザーの下のバストはやけに膨らみ、愛くるしいまでの童顔とは不釣り合いなほどだ。
 
「あなたたちだって知ってるわよね? マユちゃんはウチの芸能科期待の新人アイドルなんだから! ヘンなことしようとするなら許さないわよ」

 マユという名の少女の制服は、ふたつのボタンが外されていた。
 人形のように丸い瞳には、涙がうっすら浮かんでいる。男たちが身体中を触り、バストやヒップを揉みまくっていたのは、制服の乱れから想像できる。
 
「くッ・・・! アイドルが下手に反抗できないのをいいことに・・・! 思春期の女のコの身体をなんだと思ってるの!?」

「はァ? なんだ、なんかしたって証拠でもあんのか? 風紀委員でもないてめえに、文句言われる筋合いはねえよ」

「困ってるコがいたら、助けるのが当然でしょッ! あなたたち、マユちゃんになにしたの!?」

「ケッ! ただちょ~っと写メ頼んだだけだろうが! ひとり頭10枚。撮らせてくれりゃあいいんだよォ! 安心しろや、表には出さねえ。ネットでひっそり売った方が、高く取引できんだよぉ~」

「そんなくだらないことにマユちゃんを・・・! あなたたちって本当に懲りないわよね!?」

「っせえ! 毎度毎度、正義のミカタぶって現れやがって・・・なんならロリ巨乳の代わりに、てめえがサービスショット提供するかぁ、空手女ッ? てめえも一部のマニアにゃ、人気あるんだよォ」

 自分に関する複雑な評価は気にも留めず、玲央奈は背中の少女を振り返った。
 案の定、ショートヘアの新人アイドルは、丸い瞳からついに涙を溢れさせている。
 
「うぅ・・・ロリ巨乳だなんて・・・ヒドイですぅ~・・・」

「あんたたちッ!! なにマユちゃん泣かせてるのよ!」

 元々吊り気味の瞳をさらに鋭くして、十王玲央奈は男たちを睨み付けた。
 怒りで赤髪ツインテールが、獅子のたてがみのように逆立って見える。8人もいる不良たちは、美少女が見せる闘志に一斉に後ずさった。
 
 これが翠民高校2年生。十王玲央奈という少女であった。
 
 外見はむしろチャーミング。赤いツインテールの下に収まった顏は、やや勝ち気に見えるが紛れもなく美形。特に切れ上がった大きな瞳は、凛々しさのなかにも可憐さがあった。158㎝はやや小柄な部類に入るが、張り出したバストとヒップ、それとは対照的なくびれたウエストは抜群のプロポーションを描き出している。果実のような丸みを帯びた乳房は、恐らく88㎝のDカップはあろうかという噂だ。
 
 同性も異性も垂涎もののルックスに恵まれながら、玲央奈に浮ついた話は一切なかった。恐らく最たる理由は、彼女が強すぎるため、だったろう。中学時代にすでに十王玲央奈の名は、空手界では全国に知られていたのだ。
 しかも曲がったことが大嫌いな彼女は、校内のあちこちで行われる不正行為に黙っていられなかった。
 喫煙タイム中の部室から、わいせつ行為まがいの教師にまで。あらゆる「許せないヤツ」に突っ込んでいくのだから、側にいる者はよほど腕っぷしもハートも強くなければ務まらない。並みの男では、玲央奈に求愛できないのも無理はなかった。
 
「や、やる気かッ、てめえ! こっちは8人いるんだぜェッ!?」

 パーカーの少年の声は、わずかに震えていた。ご多分に漏れず、彼もまた、以前玲央奈に叩きのめされた経験を持つひとりだ。はち切れんばかりの肉感ボディを持つ女子高生が、猛獣並に危険なことは痛みの記憶がわかっている。
 
「来るといいわ。8人全員でも、私は構わないから」

 凛としたツインテール少女が、赤グローブの両拳を構える。
 立つ姿も、玲央奈自身も、美しかった。
 周囲を囲もうとする男たちに動揺が走る。思わず惚れそうになる者もいれば、とても敵わないと観念しかける者もいた。数的優位にもかかわらず、正義のヒロイン然とした少女に、あらゆる面で勝てる気がしなかった。
 
「やめとけ」

 突如湧いた野太い声は、玲央奈の背後から響いてきた。
 
「さ、佐古田さんッ!?」
 
「8人がかりでもその女には勝てん。いや、オレを含めて9人でも・・・危ういだろうな」

 校舎の影からその男が現れた途端に、8人の少年たちが雷で打たれたように動かなくなる。
 その緊張した態度を見れば、9人目の男こそが、この不良グループのリーダーであることは誰の目にも明らかだろう。
 
「うわぁ・・・おっきい・・・!」

 ショートヘアの新人アイドルが、佐古田と呼ばれた男を見上げて声を洩らす。
 ざっと見て、185㎝はあるだろうか。縦だけでなく、横にも大きく恰幅がいい。
 体型といい、短く刈り揃えられた髪型といい、重量級の柔道家とでもいった趣きだが、右の頬に刻まれた切傷が凄みを植え付けていた。どちらかといえば、ヤから始まるその筋のひとに近い印象だ。
 
「佐古田錠・・・ッ!」

 8人の不良たちを前にしてもまるで動じなかった空手少女が、初めて緊張の色を見せる。
 ドキドキと鼓動が早まるのが自分でもわかった。他の少年たちと佐古田とでは、警戒レベルがまったく異なるのだ。
 そんな己が、玲央奈は自分でも不思議だった。
 
 おかしい。私はなぜ、佐古田をこんなに恐れるのかしら?
 
「佐古田、先週の決闘であなたも少しは懲りたみたいね」

 なるべく強気を押し出して、玲央奈は背後の巨漢に振り返った。
 ちょうど一週間前、同じこの中庭で、十王玲央奈と佐古田錠はタイマンで決着をつけたばかりだった。
 結果は玲央奈の完勝。チェーンを武器として持ち出した佐古田であったが、皮手袋を装着しただけの少女に失神KOを喫したのだ。
 本来なら、佐古田は屈辱と恥ずかしさで、二度と玲央奈の前に現れることはないだろう。そんなレベルの敗北だった。逆に玲央奈からすれば、疵顏の巨漢に対しては完全に上から目線になってもおかしくはない。
 
 ところが、現実は正反対だった。
 一週間ぶりに顏を合わせたはずの両者は、勝者が怯え、敗者が平然としている。口では負けを認めているものの、玲央奈を見下ろす巨漢の視線には、明らかな余裕が漂っていた。
 
(私・・・この男を怖がっている・・・なぜなの? 実力なら怯えるような相手じゃないのに・・・自然に脚が震えてきちゃう・・・)
 
「先週? ああ、そうか。オレはお前に負けたんだったな。この世界では」

 この世界?
 最後に洩らした佐古田の言葉が、空手少女にはやけに不気味に聞こえた。
 
「それって・・・どういう意味よ?」

「ククッ、わからなければそれでいい。夜になれば、嫌でも思い出すだろう」

「ちょっと待ってよ。ちゃんと説明して・・・」

 踵を返して立ち去ろうとする疵顏の巨漢を、思わずツインテール少女は追いかけようとする。
 あまりに玲央奈の意識は、佐古田ひとりに集中し過ぎた。残る8人に、無防備な背中を晒す。
 ボスに制止をされたとはいえ、格好の隙を逃すほど不良たちは甘くなかった。
 
「ぐはぁッ!?」

 背後からふたりの男が、158㎝の玲央奈にタックルを仕掛ける。
 不意を突かれたツインテール少女は、ガクンと前につんのめる。強いといっても、女子高生でも小柄な身体だ。もろに衝撃を受けてはたまらなかった。軽々と飛ばされ、倒れかかる。
 すかさず不良ふたりは、玲央奈の腕を抱え掴んだ。ふたりがかりで羽交い絞めにするような格好。
 
「くッ、このッ! ひ、卑怯よ!」

「ハハ、8人がかりでもいいと言ったのはお前じゃないか。せいぜい頑張るんだな」

「ちょッ、待ちなさいって! まだ話は終わってないんだから!」

 引き留める玲央奈の声を無視し、笑いながら短髪の巨漢は去っていく。
 敗北の屈辱を晴らすなら、またとない絶好のチャンスのはずだった。にもかかわらず、佐古田は敢えてこの場で、空手少女に闘いを挑もうとはしない。
 
(なによ、いつでも私に勝てるとでも言いたいわけ? ・・・そんなはず、ないのに・・・)

 そう、佐古田が玲央奈に、勝てるはずなどないのに。
 実力差があるとわかっていながら、それでも玲央奈はチェーン遣いの巨漢を恐れている。なぜかわからないが、この男には勝てないという、擦り込まれた恐怖がある。
 
「おらおら! ヨソ見してんじゃねえッ! てめえなんぞは、佐古田さんが出張るまでねえーんだよッ!」

 玲央奈の正面に回った不良が2名。両腕を封じられた少女に、固めた拳で殴りかかる。
 肉に肉が打ち込まれる、重い打撃音が響く。
 大きく膨らんだ右胸と、濃紺ブレザーに包まれた腹部に、ボディブローが埋まっていた。
 
「ぐッ!! ・・・痛いじゃない。コレ、『開始』ってことでいいわよね?」

 適度に引き締まった筋肉と、女子高生ならではの柔らかな肉の感触。
 嗜虐と仄かなエロスに悦んでいる余裕はなかった。8人の少年に届くのは、赤髪の獅子からの宣戦布告。
 
「それじゃあ・・・〝獅子充力”ッ!! ってネ♪」

 不良たちの顏に、一斉に緊張が走る。
 玲央奈の言葉が九九のダジャレであり、本気になった証明であることを彼らは知っている。
 
「くるぞッ!! やっちまえ!!」

 パーカーの少年が叫んだときには、風が巻いていた。
 玲央奈の眼前に立つ、2名。先程ボディへのパンチを打ち込んだふたりが、ほとんど同時に崩れ落ちる。
 跳ねあがった空手少女の右脚が、続けざまに顎を蹴り抜いたとわかったのは、ふたりが卒倒した後だった。
 
「ッ!! あ、脚だッ!! 気をつけッ・・・」

 注意を促す声は、遅かった。
 プリーツスカートが舞い上がる。玲央奈の右脚は、さらに背後に立っている、少年たちの額を襲う。
 スパーン、と甲高い音色が二回続き、腕を掴んだ男たちの意識は刈り取られた。
 
「ッ・・・!! バ、バカな・・・!」

「残念だったわね。獅子を抑えるには、やっぱり四肢を押さえないとネ♪」

 勝ち気そうな美少女が、自分では手応えバッチリの技とダジャレを決めて二カッと笑う。
 玲央奈の足元には、4人の少年たちが蹴り一発でノビて倒れ込んでいた。
 
「ダテに、中学ん時・・・全国大会で優勝してねえってわけか」
 
 スピード、技のキレ味も恐るべしだが、玲央奈の空手で真に驚異的なのは股関節の柔らかさであった。
 背後に立っている人間の額を、己の頭越しに蹴るのだ。いくら玲央奈の身長が低いとはいえ、180度以上の開脚は必須となる。雑技団レベルの柔軟性がなければ到底出来ない芸当だろう。
 
「準優勝だけどね。そこ、大事なとこだから」

 残る不良少年たちが、慌てて走り逃げていく。自由になった十王玲央奈とまともに闘うのは、猛獣に素手で挑むようなものだ。
 ただひとり、フードを目深にかぶったパーカー少年だけが、小刻みに震えながらその場に残っていた。
 
「あなたは逃げないの?」

「う、うるせえよッ・・・いつまでも女にコケにされて・・・たまるかってんだよッ・・・」

「いいね。そういうの。差別発言っぽいけど、私は嫌いじゃないよ」

 可憐な美貌をニッコリと綻ばせ、玲央奈は右拳を背中後方まで振りかぶった。
 
「でも、闘うなら容赦しないわよ?」

 満足そうに微笑みながらも、切れ上がった瞳は鋭く光っている。
 
「ったりめーだッ!! ウオオオオッ・・・!!」

 無防備に特攻してくるパーカー少年に、玲央奈は照準を定めた。
 可哀想な気持ちもあるが、真っ向勝負してくる相手には全力をもって返す。それが長年の稽古で身についた空手少女のモットーだ。
 
「十王拳ッ・・・〝牙”ッ!!」

 引き絞った弓矢が、放たれるがごとく。
 玲央奈の全身がバネとなって、前方にダッシュする。同時に限界まで振りかぶった右拳が、一直線に突き出された。
 足腰の筋力、背骨の回転、肩・肘・手首の伝達。全ての力が一撃に加算され、玲央奈自体を砲弾と化したような正拳突きが、不良少年の顔面に打ち込まれる。
 
 バキイイイィッッ!!!
 
「ゲハアァッ――ッ!!」

 パーフェクトなブローをカウンターで喰らい、フードの下から鼻血を散らして少年は吹っ飛んだ。
 
「バキッ、って決まるから〝牙”ってネ♪ マユちゃんを泣かせた報いよ」

 昏倒する少年を尻目に、傍らで見守っていた少女の元に玲央奈は向かった。
 佐古田錠の姿は、とっくに見えなくなっていた。
 
 
 
 2、
 
 
「マユちゃん、大丈夫だった?」

 大袈裟なまでにパチパチと拍手して、八神繭は闘いの勝者を迎えた。
 先程まで泣いていたのがウソのように、愛くるしい顏を崩してコロコロと笑っている。
 
「え? なにがですかぁ?」

「だってほら・・・さっきまで涙を・・・」

「いやだぁ~。ロリ巨乳くらい、握手会じゃファンからも言われてますよぉ~。お芝居ですよ、オ・シ・バ・イ♪ 一応マユもアイドルの端くれですからぁ」

 思わず眉がヒクつくのを、玲央奈は懸命にこらえた。
 そうだった。迂闊にも忘れていた。天使が降臨したかのような愛らしさではあるが、八神繭という新人アイドルは見た目以上に肝が据わっているのだった。
 アイドルという職業柄なのか、生来の性質なのかはわからない。ただ、不良に絡まれたくらいで参るような、ヤワな少女でないのは確かだ。
 
「ちょっとくらい泣いてた方が、玲央奈先輩も燃えるかなぁ~と思って♪」

「・・・あなたね・・・」

「あ、でもホントにカッコよかったですよぉ。やっぱり玲央奈先輩は強いです。マユひとりじゃどうにも出来なかったから・・・」

 小動物を思わせる黒目がちな瞳が、キラキラと輝いて赤髪少女に向けられる。
 アイドル少女のショートヘアは肩までの長さで、ふんわりとしたボリュームを白のカチューシャで押さえつけている。翠民高校の校則は緩めなこともあって、かなり明るく染められていた。茶髪というより黄色というほうが近いかもしれない。
 バストの大きさには玲央奈も定評があるが、濃紺のブレザーを押し上げる繭の膨らみは、相当の豊満さがあった。恐らくサイズ自体は玲央奈よりもわずかに劣るが、身長が10㎝以上低いぶん、存在感はより際立つ。カップでいえばE、あるいはFに届こうかという巨乳ぶりだ。
 アニメにでも出てきそうなロリ美少女の顏に、アンバランスなまでの豊満ボディ。
 現役アイドルとして、周囲が期待するのも当然かもしれなかった。
 
「ん。んー・・・強い、のかな」

「ふにゅ? どうしたんですかぁ?」

「なんでもないの。こっちの話よ。・・・佐古田のヤツ、結局逃がしちゃったわね」

 巨漢が残した思わせぶりな態度と、向き合った際に覚えた恐怖感が気になり、玲央奈は半ば強制的に話題を変えた。
 
「逃がしたって、あのビッグボディさんのことですかぁ? 玲央奈先輩、先週決闘して勝ってましたよねぇ」

「まあね。そうなんだけど・・・なんか気になるのよ」

「そんな気にしなくても大丈夫ですよぉ~。あれからずっと、おとなしくしてるみたいですよ? 玲央奈先輩にコテンパンにやられちゃったから、さすがにビッグボディさんも大きな顏できないんじゃないのかなぁ」

 佐古田錠がこの一週間、目立った動きをしていないことは、玲央奈も知っている。復讐計画を企てている様子もない。
 だからこそ不安が募るのだ。なにもされていないはずなのに・・・完勝した佐古田相手に、どうして私はこんなに怯えるのだろう? 右頬の切傷を見るたび、嫌な記憶が蘇ってくるような、この苦い感覚は一体・・・?
 
「おやおや。〝最強の帰宅部”が珍しくちょっとお悩みのようね? 華々しく暴れていたように見えたけど、どうしちゃったのかな?」

 ぽっかりと心が温かくなるような声が、ふたりの間に割って入った。
 赤のツインテールと黄色のショトヘアが、慌てて周囲を見回す。その優しい声と穏やかな口調にふたりは・・・いや、翠民高校の生徒なら、恐らく誰もが聞き覚えがあるはずだ。
 
「〝寛容なるプレジデント”ッ・・・! と、〝峻厳なるジャッジメント”ッ!!」

 この学校の生徒会長、百地(ももち)ひまわりが、朗らかに手を振りながら、こちらに向かって歩いていた。その隣りにはもうひとり、まるで表情を変えない少女が付き添うように従っている。
 
「うわぁ、ひまわり先輩・・・だけじゃなく、恐怖の風紀委員長さんもいますよぉ!?」

「あちゃあッ~! 今の闘い・・・っていうかケンカ、九条さんにも見られちゃったかな?」

 あちゃあ、と本当に言うひとを初めて見て、八神繭は新たなふたりの登場人物より、隣の玲央奈に驚いたようだった。
 
 翠民高校の有名人には、誰ともなくあだ名をつけられる風習がある。特定の部活に所属していない十王玲央奈が〝最強の帰宅部”ならば、生徒会長の百地ひまわりは〝寛容なるプレジデント”であり、その親友であり風紀委員長である九条優莉は〝峻厳なるジャッジメント”であった。
 
 3年生であるひまわりと優莉は、このマンモス校でも特に知れ割った人物といっていい。自主性を重んじる校風にあっては、生徒会長と風紀委員長の権威は他校よりも格段に大きいのだ。
 事実上、翠民高校を牛耳っているのがこのふたりであった。牛耳る、という表現が不適当ならば、治めている、と言い換えてもよい。
 それだけでも、両者は全校生に一目置かれるだろうが、ひまわりと優莉が目立つ理由はそれだけではない。
 
 まず第一に、ふたりは揃って美少女だった。性格も特徴的だった。
 しかもふたつ名が示す通り、その性質はまるで正反対。水と油のくせに、仲の良い名コンビなのだから、耳目を集めるのも当然のことだといえよう。
 
 グラマラスなボディの持ち主である百地ひまわりは、誰にも優しく寛容であった。『やらかした』生徒の多くが、この生徒会長の処断を望む。かつてひまわりに恨みを持つ者などおらず、感謝を寄せる者は数えきれないほどだった。寓話「北風と太陽」でいえば、まさに「太陽」にあたるのがひまわりだ。
 もう一方の「北風」に当たるのが、風紀委員長・九条優莉であろう。
 スレンダーなモデル体型の美少女は、容姿の端麗さにおいては校内トップともいえるほどだった。しかしながら、ルールや秩序を破った者への処罰は容赦がない。よくいえば厳格なのだが、悪くいえば融通が利かないのだ。見目麗しさとは対照的に人気がないのは、その苛烈とも思える性格ゆえだろう。
 
 不良グループからは正義のミカタ呼ばわりされる玲央奈であるが、事実のみを見れば、単なる暴力沙汰の常習犯だ。
 当然のごとく、〝峻厳なるジャッジメント”は出来れば関わりたくない上級生であった。逆に〝寛容なるプレジデント”には、これまで何度、停学処分を助けてもらったかわからない。
 
「うふふ、どうしたの、玲央奈ちゃん? いつもより元気ないみたい。〝最強の帰宅部”ともあろうひとが、まさか今のケンカでケガしたわけじゃないわよね?」

「あは。あはは。大丈夫です、ハイ。ていうか、ひまわりさん・・・と九条さん。今の、見てたんですか・・・?」

 眼の前まで来たふたりの3年生に、恐る恐る玲央奈は訊ねた。
 
「もっちろん。スゴイわよね、玲央奈ちゃん。あれだけの男のひとに囲まれて、一瞬で倒しちゃうんだもの」

「私は気に入らないけど。十王玲央奈。釈明があるなら、今のうちに言いなさい」

 笑顔のひまわりと対照的に、切れ長の瞳で九条優莉は睨み付けてくる。
 
 こ、こわ~・・・
 
 腕っぷしには自信がある空手少女も、厳格で有名な風紀委員長の前では脚がすくむ。佐古田よりも、よほど優莉の方が手強そうだった。噂では、学業優秀・スポーツ万能だけでなく、格闘技の腕前も相当のものだという。
 
「私が把握しているだけで、今年に入って4件もあなたは喧噪を起こしているわ。本来なら停学処分も辞さない数よ」

「えと・・・それはですね・・・その・・・」

「相手の方に非があった、というのは百地会長から伺っているわ。しかしながら、風紀委員でもないあなたが、勝手に審判を下し処罰を与えているのは、見過ごすことはできない」
 
「まあまあ。優莉も見てたでしょ? 今回に関しては、玲央奈ちゃんは繭ちゃんを助けるためにひと肌脱いだだけなんだから」

 ピリピリとした空気を醸す風紀委員長を、和やかな生徒会長がやんわりとなだめる。
 身長こそ変わらないものの、体型といい性格といい、ふたりはどこまでも対照的だった。ひまわりがウェーブのかかったオレンジの髪を肩甲骨まで伸ばしているのに対し、腰付近にまで長く伸びた優莉のストレートヘアーは青みがかった黒。やや垂れがちな、丸く大きなひまわりの瞳に対し、切れ長の優莉の瞳はやや吊り気味。
 ひまわりのボディは、バストもヒップもムチムチに成熟しているが、優莉の肢体は出るところは出ているものの、すらりとした印象が強い。
 春のようなひまわりと、冬のような優莉ではあるが、凸凹だからこそふたりは気が合うのかもしれなかった。
 
「わぁ、うれしい! ひまわり先輩、マユの名前覚えててくれたんですねぇ!」

 カチューシャをしたショートヘアのアイドルが、飛び跳ねながらキャッキャッと喜ぶ。
 大袈裟にも映るアクションだが、案外計算づくで、八神繭は行動しているのかもしれない。事実、愛くるしい笑顔を振りまかれて、さすがの〝峻厳なるジャッジメント”も追求の腰を折られたようだった。
 
「うふふ、もっちろん。我が翠民高校期待の一押しアイドルだもんね。繭ちゃんはケガとかなかったかしら?」

「はい! 玲央奈先輩が助けてくれましたからぁ。先輩はビッグボディさんのことがなんか気になってるみたいですけど」

「うん、マユちゃん。とりあえず、そのビッグボディはやめようか。なんかわからないけど、やたら噛ませ犬っぽい響きがあるのよね」

「ビッグボディ?」

 ニコニコしているアイドルにではなく、ツッコミを入れた赤髪ツインテールに、生徒会長は問い掛けた。
 
「ああ、佐古田のことです。チェーン遣いで有名な・・・って、ひまわりさんは知らないか」

 キョトンとして振り返るひまわりに、漆黒ストレートの相棒が教える。問題生徒の情報については、生徒会長よりもむしろ風紀委員の範疇だ。
 
「佐古田錠。いくつかある不良グループの、リーダーのひとりね。先週この問題児とひと悶着起こしているはずよ」

「も、問題児・・・」

「ふーん。じゃあその佐古田というひとと、玲央奈ちゃんは因縁があるわけね・・・」

 オレンジ髪の生徒会長が、珍しく思案顔になる。
 よくよく考えてみれば、決して治安が良いとは言えない不良たちの溜まり場に、優莉はともかくひまわりが連れ立ってやってくるのは不思議な話だった。特別な用などないはずの中庭に、〝寛容なるプレジデント”はなんの目的があって現れたのか・・・?
 
「ねえ、玲央奈ちゃん。ひとつ訊いてもいいかな?」

 突然、柔らかに微笑みかけてきたひまわりに、思わず玲央奈はドキリとした。
 このひとと、ずっと一緒にいたいと思うような。そんな魅力的な笑顔だった。
 
「いくらあなたが強いといっても・・・女のコが、どうして危険な眼に遭ってまで、不良グループと闘うの?」

「あ、やだな。別にそんな深い意味は・・・全然ないんですけどね」

 赤い髪のツインテールをポリポリと掻いて、玲央奈は凛とした美貌を紅潮させた。
 
「ただ・・・私、悪いヤツは許せないんです。たとえちょっとくらい、危険であっても」



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| キュート! | 00:42 | トラックバック:0コメント:4
コメント
アンケートに協力いただきまして、ありがとうございました。一番人気のあったエロ重視のオリジナル変身ヒロイン「キュート!」を真っ先に取り組ませていただきました。
とはいえまだ第一話なので、変身してませんけど・・・(^^ゞ ストーリーをある程度重視するのはボクのやり方なので、サービスシーンになかなか辿り着けない時はすみません(^^ゞ
基本的に「キュート!」は、エロがメインでちょっとしたリョナが入る程度だと思います。(少年誌レベルのリョナ目安でw)

今回は序章から2章までアップしました。更新の目安となる文章量はこれから変わるかもしれません。まあ、いいタイミングで更新できれば・・・
アンケートの方は、はじめから「キュート!」が強くてw、その後を「サイバードール」、「レッスルエンジェルス」と続く展開。
ところが最近になって票差が縮まり、特に「レッスル」の追い上げが顕著だったんですが、一日一回投票できるシステムを思うと、熱烈に好きな方が何度か投票された可能性もでてきますね。

というわけで今後は、票数の順に「サイバードール」「レッスル」と順に書くつもりです。そこに優先的に扱う「オメガスレイヤーズ」を混ぜる、って感じですかね(^^ゞ

新たなヒロインの物語も楽しんでいただければ幸いです(*´▽`*)
2015.08.27 Thu 00:44 | URL | 草宗
ビッグボディ=かませ犬ワロス
今後もフェニックス、ソルジャーと出てくるのかあ、、、
主人公は赤髪でツインテールなんだね。
次の話も楽しみにしてます。
2015.08.28 Fri 01:34 | URL | 肉山田洋
>肉山田洋さま
あなたがここにやってくるとはww
あなたならこのネタ、わかってくれると信じてましたよ(∩´∀`)∩ さすが肉フリークですw

ちなみにマリポーサとかゼブラとかも出てきませんので悪しからずですw

ヒロインは赤髪ツインテールにしました。以前も同じ髪型の子を登場させたことあるんですけど、今回は性格とかまるで違うのでいいかな、と。

またぼちぼちとよろしくお願いしますw
2015.08.28 Fri 21:52 | URL | 草宗
>拍手コメントくださった方
ありがとうございますw
実をいいますと、オメガスレイヤーズのスタートの時、ちょっと失敗したというか、後悔している面がありまして・・・同じ轍を踏まぬように今回は気を配りました。

ありがたいお言葉の数々をいただき、本当に嬉しくなりますw 励みになります(*´▽`*)
極端にいえば、本当に面白いもの(興奮する、という意味ももちろんありますがw)を生み出していくのが目的なわけですが、いかにそうした態勢を作れるか? が目下の悩みどころですね・・・。
今すぐに全ての作品を有料化するとか、そういう話ではないんですけど(^^ゞ、どういう意図で行動しているかについては、表明しておくべきかと思った次第です。
いずれにしても現時点では特に今までとは変わらないつもりですのでw、しばらくはできるものをどんどん発表していきたいと思っています。

あまりたくさん作品を同時に出すと混乱するかな? というのがちょっと不安ですけど(^^ゞ、「キュート!」も他作品同様に楽しんでいただければ幸いですw
2015.08.28 Fri 22:24 | URL | 草宗
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