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レッスルエンジェルス AWGP予選 第四試合 ミミ吉原vsフレイア鏡

AWGP王座決定戦 予選 第四試合
 
ミミ吉原 VS フレイア鏡


 《予選第四試合 試合前、控室》
 
 
 『裏武闘館』には控室がいくつも用意されていた。
 この会場では今回のAWGP王座決定戦のように、多くの団体・関係者が一堂に会するトーナメントを開催するのも稀ではない。なんでもアリ、な真剣勝負を行うため、選手を大部屋にまとめてしまうとトラブルの元となりかねない。なるべく顏を合わせぬよう、小分けにするのは当然の措置であった。
 大所帯の新女は別として、今回は基本的には団体ごとに控室が割り当てられている。第三試合の草薙みことと十六夜美響のように、抗争中のライバルはむろん別室になるよう配慮されていた。
 
 新興団体ワールド女子プロレスにも、4人の所属選手に対してひとつの控室が与えられていた。
 
「ケケケ。ラッキーだったよねェ~、鏡は。ロートル相手なら楽勝じゃ~ん♪」
 
 ピンク髪の小柄なレスラー、サキュバス真鍋がニタニタと笑う。ジト目で同僚を見ているが、別段相手に不満があるわけではない。真鍋にとってはこれが標準装備なのだ。
 
「このリングでは、いかなる相手でも油断は禁物ですわ。表のリングでは最弱クラスのあなたが、予選を勝ち抜いてきているようにね」

 パイプ椅子に腰かけながら、フレイア鏡は爪の手入れに余念がなかった。
 銀のマニキュアを塗っている。太ももまで届く長い髪も銀色なら、コスチュームにところどころ配色されたのも鮮やかなシルバー。〝銀狼”の異名が定着したのも自然の成り行きであったろう。
 
「ウフッ、やだなー。それじゃあ、あたしがなんでもアリだから勝ってるみたいじゃん」

「その通りでしょう? これでも褒め言葉のつもりですのよ」

 表情ひとつ変えずに、鏡は爪の仕上がりを眺めている。
 その言葉の端々に感じられるように、資産家の息女である彼女は育ちがよかった。切れ長の瞳が印象的な美貌。モデルも顔負けであろう、抜群のスタイル。リングのスーパ―モデル、の二つ名も持つ鏡だが、恐らく実際にモデルをやっていてもトップを取れたに違いない。本来は『裏』のリングに立つような人種ではなかった。
 
 しかし鏡は、周囲の反対に耳も貸さず、自らの意志でリングに上がり続けている。
 理由はただひとつ。プロレスが、面白いからだ。
 
「あたしだってホントはね、こんなアブナいリングには立ちたくないのよ? でもさー。ほら、『上』がいろいろとうるさいじゃない?」

 どう見ても楽しんでいる、としか思えない顏で真鍋はケラケラと笑う。
 控室の隅では、残るワールド女子所属のレスラーふたりが、それぞれ自分の世界に入っていた。大空みぎりと寿零。みぎりは手にしたぬいぐるみに話しかけ、零は黙々とシャドーボクシングを繰り返している。
 
 よくまあ、これだけキャラの濃いレスラーたちを集めたものね。
 
 ワールド女子のリーダー格とされている鏡は、かすかに溜め息を吐く。鏡自体はそれなりにキャリアのある選手だが、真鍋以外のふたりとは、これまでにほとんど接点がなかった。寄せ集めの団体、といっていい。新団体を立ち上げるまでは、4人はバラバラに活動していた選手たちなのだ。
 
 だがワールド女子所属となり、互いに練習するようになって一か月。
 すでに鏡は、『上』が集めた選手たちの実力を知っていた。ただマット界からあぶれた者、はぐれ者を集めたのでは決してない。
 
「あなた抜きでもこのメンバーなら・・・AWGP王座なんて、もらったようなものですけどね」

 ワールド女子プロレスの所属レスラーは、ただ個性が強いだけではなかった。
 恐らく、今日の予選が終わったころには、日本女子マット界は激震に揺れることだろう。ワールド女子という名の黒船によって。
 むろん鏡自身も、その激動の中心に立っているつもりだった。新日本女子プロレスが盟主とされる時代は、間もなく終わりを告げるのだ。
 
「ダメ、ダメ。ただ優勝すればいい、ってものじゃないのよ。『上』が求めているのは、新女を完全にぶっ潰すことなんだからさー」

「そんなことはわかっていますわ。まあ、見ていてご覧なさい。私が華々しく、ワールド女子の初陣を飾ってみせましょう」

 本当にプロレスは面白い。鏡はつくづく思う。
 他人を痛めつけ、嬲り者にするのを、合法的に許されるのだ。
 ましてここは『裏武闘館』。おおよその行為は咎められなかった。極端にいえば、殺人以外はなにをやってもいいのだ。
 こんな素敵なプレイを、他のどこで楽しめるというのか?
 
「ミミ吉原の悲鳴と鮮血が・・・このフレイア鏡の勝利を彩ってくれますわ」

 完成した銀の爪をペロリと舐め、スタイル抜群の〝銀狼”はリングへと向かった。
 
 
 
 意識を戻したマイティ祐希子の視界に、柔らかな笑顔が飛び込んでくる。
 
「ようやく眼を覚ました? ずいぶんと寝ていたわね」

 女性の顏は近かった。ショートヘアで、優しさが滲み出た表情。後頭部に当たる心地よい硬さに気付き、祐希子は己がこの女性に膝枕されているのだとわかった。
 
「・・・あれ? ミミさん?」

「まったく、市ヶ谷も無茶するわね。まあ、スリーパーのダメージというよりも、理沙子さんとあんな試合をした後じゃ無理はないかな」

「わ、わわ・・・! すみません! 先輩にこんなメーワクかけちゃって・・・」

 慌てて頭を起こし、祐希子は正座して吉原に向き直る。
 ショートヘアのレスラーは同じく正座をし、微笑んだままだった。祐希子が知る、いつものミミ吉原がそこにはいた。優しく面倒見のいい、お姉さんのような先輩。あるいは母親のような、と言い換えてもいいのかもしれない。
 このひとが、元全日本空手王者だと、誰が信じるだろう。
 しかもかつては、格闘技最強の名を賭け、新女に乗り込んできたなんて。そんな血気盛んな時期があったとは到底思えないほど、今の吉原は落ち着き払っていた。
 
「へへッ・・・新人の頃から祐希子は図太かったからねえ。今更、泉の膝でグースカ寝てたところで、驚きもしないさね」

 吉原を本名である〝泉”と呼ぶのは、同じく先輩格の六角葉月だった。
 控室に敷かれた畳にあぐらをかき、ふたりを見てカラカラと笑っている。その手にあるのは、驚くべきことに日本酒の入った盃だ。
 これから試合があるというのにアルコール、などとはとんでもない暴挙だが、六角なら不思議ではなかった。女傑、という言葉がこのひとほど似合うレスラーもいまい。
 どうやら自分は同じ新日本女子プロレスでも、年長組の控室に運ばれたらしい。ようやく祐希子は悟った。
 
「え、ええーッ!? なんでこっちに? もしかして私が理沙子さんに勝ったから、控室も交替になっちゃったとか?」

「ははっ、なんだい、そのシステムは。後輩連中は試合前でみんな、ピリピリしてるからね。お前さんを介抱する余裕なんてとてもなさそうだから、こっちで引き取ったんだよ」

「あの子たちのなかには、『裏』での試合は初めて、という子もいるしね。普段の試合以上に神経をすり減らしているのよ」

 サキュバス真鍋にはロートル扱いされた吉原だが、実際のキャリアは祐希子とは3年ほどしか変わらない。六角ともども現在でも一線級として、バリバリ活躍しているトップレスラーだ。
 パンサー理沙子を頂点とし、その傍らに立つ側近ふたり。それがミミ吉原と六角葉月のイメージであった。頂点に挑もうとする旬のレスラーたちを、このふたりがどれだけ門前払いにしてきたことか。エースを目指す者からすれば、そびえたつ高き壁だ。
 吉原は空手、六角はアマレスの元日本王者。そしてともに関節技を得意とするなど、共通点は多い。だが、豪放磊落な六角に対し、選手たちの悩み相談に応じたり、率先して掃除をしたりする吉原はより人望が厚かった。新女の若手レスラーからすると、父親代わりが六角で、母親が吉原、という感覚だろう。
 
「す、すみません・・・なんだかホントにすごくお世話になっちゃって・・・でも、なんかちょっとショックかなぁ」

「え? どうして?」

「あー・・・んーと・・・他の子たちはともかく、恵理とか菊池にまで見捨てられた気がしちゃって。あはは・・・」

 こめかみをポリポリと掻きながら、寂しげに祐希子は笑った。
 恵理ことボンバー来島はゴールデンペアと呼ばれるほどの長年のタッグパートナーだし、菊池理宇は世界一の祐希子ファンを自称する後輩レスラーだ。試合を控えているとはいえ、失神という醜態を晒した折りにそばにいてくれないのは・・・さすがの元気娘も少しは凹む。
 
「ったく。お前さんはどうもまだ、自分がしでかした事の重大さをわかっちゃいないねえ」

 やれやれ、とオーバーなジェスチャーを見せつつ、六角が盃を口へと運ぶ。
 
「へ? 私がしでかした事って・・・もしかして試合前にカレー食べたことですか? あ、わかった! カレーを恵理たちにわけてあげなかったのがマズかったんだ!」

「ふふ、全然わかってないわよ。祐希子、あなたはね。あのパンサー理沙子に勝ったのよ」

 微笑んだままの吉原の声に、ほのかな鋭さが混ざったように祐希子は感じた。
 無言の六角からも、圧力が漂ってくる。圧力。正しく、圧力。ただあぐらをかいているだけなのに、見えない何かが祐希子に迫ってくる。
 
「・・・ッ!?」

「来島も菊池も、あなたがパンサー理沙子に勝つのを眼の前で見て、何も感じないレスラーなのかな? 少なくとも私が知っているあのふたりは・・・いえ、新女の全てのレスラーたちは、心が燃え上がるのを抑えられないはずよ」

「・・・ミミさん」

「みんながあなたに勝ちたいと思っている。あなたに嫉妬している。そして、思い出して欲しいの。パンサー理沙子にもっとも勝ちたかったのは・・・ここにいる私たちだということをね」

 ミミ吉原から笑顔が消える。ほのぼのとした普段の顏と、凛としたリング上の顏しか知らない祐希子は、初めて吉原の真顔を見た。
 能面のような無表情。で、ありながら、その裏に隠された情念の炎。
 恐怖という感情にほとんど無縁と思える祐希子が、その瞬間に背筋を凍らせる。
 
 これが空手で日本を制した女の・・・本当の姿か。
 
「誰かと闘うのを心の底から望むのは・・・久しぶりのことよ。マイティ祐希子、私は理沙子を破ったあなたと闘いたい」

「ッ・・・私も、本物のミミ吉原と闘いたいッ・・・!」

 正座するふたりが、互いを直視する。あたかもその光景は、真剣勝負に臨む侍のごとく――。
 ふわりとした微笑を再び戻したのは、ショートヘアの先輩レスラーだった。
 
「ふふ、いい返事ね。じゃあ、そろそろ試合にいこうかな。まずは予選を勝ち抜かないとね」

 長時間正座していたとは露とも見せず、グリーンのコスチュームに身を包んだ吉原はすっと立ち上がった。
 両腕を天に突き出し、伸びをする。そんな吉原が、祐希子にはいつもより大きく見えた。
 
「あの・・・ミミさん。ひとつだけ聞いてもいいですか?」

「なに?」

「これからすぐに試合だっていうのに・・・倒したくて仕方ないはずの私を、どうして介抱してくれたんですか?」

 他のレスラーたちが祐希子に付き添う余裕がなかった、というのならば、同じ理由で、いやそれ以上に吉原は、ライバルの世話など拒否することが出来たはずだ。
 
「あなたを介抱したぐらいで、試合に影響なんて出ないもの」

 ショートヘアを翻し、元全日本空手王者は控室の扉に向かった。
 
「だって、ミミ吉原が本気で闘うのよ?」



 《予選第四試合 ミミ吉原vsフレイア鏡》
 
 
『開始のゴングを待ちます、リングインした両雄! 第四試合は〝関節技の魔術師”こと新女の参謀格・ミミ吉原と、新興団体ワールド女子のエース〝銀狼”フレイア鏡の一戦です! ワールド女子のレスラーは、今大会初めての登場になりますね、理沙子さん』

『鏡選手自身は実績もキャリアもありますが、ワールド女子所属としてリングにあがるのは、これが初めてですね』

『しかしまさかワールド女子が、このような形で復活するとは驚きました。数年前に崩壊した、あのワールド女子とは全くの別団体と捉えていんでしょうか?』

 ワールド女子プロレス、を名乗る団体は、以前にもマット界には存在していた。
 豊富な資金力を持つスポンサーをバックにつけ、高額なファイトマネーで選手を掻き集めたその団体は、既存のプロレス団体に大きな激震を引き起こした。選手の引き抜きを行ったからだ。むろん、業界最大手の新女も〝ワールド女子ショック”に巻き込まれている。
 高額な年棒で選手が移籍するのは是か非か・・・マット界は大論争に包まれたが、すぐに事態は収束することとなる。ワールド女子は呆気なく崩壊してしまったからだ。選手同士に確執が生まれ、空中分解したのが主な理由だった。
 結局のところ、金銭で掻き集められた選手たちが、ひとつの団体として共存共栄していくのは難しかったのだろう。ワールド女子の名は、各団体と多くのレスラーに苦い想い出を与えただけで、人々の記憶から忘れ去られようとしていた。
 
 そんな折り、突如ワールド女子プロレスは復活したのだ。このAWGP王座決定戦にあわせるかのように。
 『表』ではまだ旗揚げ戦も行っていなかった。実質、歴史がゼロの団体。所属選手をはじめ、全貌はまるで明らかになっていない。
 関係者たちの多くが、神経を過敏にさせるのも無理はなかった。
 
『私も詳しいことはわかりません・・・ただ』

『ただ?』

 解説席に座るパンサー理沙子の表情も、知らず険しいものとなっていた。
 同じ他団体について語るのでも、第三試合で登場した東京女子プロレスとは、まったく雰囲気が違っている。館内に流れるマイク越しの声にも、警戒の調子がはっきりと聞き取れた。
 
『今回のワールド女子の背後には・・・IWWFが絡んでいるという噂があります』

 『裏武闘館』の客席が、一様にざわめいた。
 世界最大のプロレス団体であり、実質上マット界を支配しているといっていい帝国IWWF・・・その名を知らぬプロレスファンは存在しない。『裏武闘館』のようななんでもアリの闘いも、元々はIWWFが考案し隆盛を築いたと言われている。
 
 IWWFには、以前から良からぬ噂が流れていた。都市伝説的な、あくまで未確認の噂話だが・・・
 日本の女子プロレスを完全に牛耳り、全ての団体を支配下に置く。その野望を叶えるため、IWWFは着々と侵略を進めていると言われているのだ。
 
『では、日本最強の座を奪うために、IWWFが刺客を差し向けてきたということでしょうか?』

『・・・以前のワールド女子も、バックではIWWFが動いていたと言われています。日本マットへの侵攻を本格化させるため、AWGP王座に狙いを定めたのかもしれません』

『となると、新女を長きに渡って支えてきたミミ吉原と、ワールドのエースであるフレイア鏡の一戦は、重要な意味を持ってきますね。ワールド女子という団体のレベルを、ミミを媒体として推し量ることができるのでは・・・』

 実況アナウンサーの発言に、理沙子は薄く笑いを洩らした。
 
『え? 理沙子さん?』

『ああ、すみません。失礼しました。確かに吉原選手が〝いつも通り”ならば、物差し代わりになるでしょうね。彼女はひとが良すぎるので』

『えー、それはどういう意味でしょう・・・』

 フフ、と再び微笑むと、かつての女帝ははぐらかすように冷静な選手分析を話した。
 
『吉原選手と鏡選手、関節技を得意とするバランスの取れた好選手、という点でふたりはよく似ています。キャリアも大きな差はなく、若干身長差があるくらいでしょうか。実力者同士の対戦と言えるでしょうね』

『元空手王者のミミは人格者として有名で、名家の令嬢である鏡は残虐ファイトで名を馳せている、というのは対照的ですね。経歴と性格が真逆でもよさそうな・・・』

『・・・裏の闘いが、表と同じとは限りませんわ』

 含みを持たせた理沙子の言葉を合図に、試合開始のゴングは鳴った。
 
 リング中央。緑のリングコスを着たミミ吉原と、銀毛のファーをところどころにあしらったフレイア鏡とが向き合う。160cmのミミが、173㎝の鏡をやや見上げる格好。
 対峙してみれば、ふたりには対照的な部位がいくつもあった。黒髪ショートのミミに対し、鏡は太ももまで届く銀髪。ミミは丸い垂れ目が愛らしく、切れ長の鏡の瞳はクールビューティーと呼ぶのに相応しい。
 90㎝を越えるバストサイズは互いに共通しているものの、ふたりはまるで本質の異なる存在だった。恐らく至近距離で睨み合う両者が、一番に嗅ぎ取っているだろう。
 
 端的に言ってしまえば・・・性善者と性悪者。
 
 水と油の存在が、こんなところにいたことに、ふたりは今更ながら気付いた。
 
「お互いにキャリアは長いけど・・・あなたとの闘いは初めてだったかしら?」

「そうですね。鏡さん、今日はよろしくお願いします。悔いのないよう、共に全力を尽くしましょう」

 年下の鏡に、ミミは敬語を使った。初対面に近い相手にはそうするのが、新女の良心と言われる彼女のマナー感覚だ。
 試合はとっくに始まっているのに、悠然と会話するのもベテランレスラーならではか。
 
「面白いものね。ほとんどあなたのことは知らないけど・・・向き合っただけでもわかりますわ。私が嫌いなタイプの人間だって」

「同感です。私も、鏡さんとは相容れないんだろうな、ってわかりました」

 冷たく見下ろす鏡と、微笑み返すミミ。
 
『おーっと、これはなんとも不思議な光景です。試合は始まっているというのに・・・両者闘わずにお喋りに興じているぞ!?』

『いえ、もう闘っていますよ』

 リング上を見詰める理沙子の額に、じっとりと汗が滲む。
 百戦錬磨の元女帝には、ふたりのレスラーの攻防が見えているかのようだ。
 
「私は新日本女子プロレスのレスラーを、ひとり残らず潰さねばなりませんの。あなたごときに手間取っている暇はありませんわ」

「そうなんですね。私も今回は、自分ひとりのために全力を出すつもりです」

「あなたの全力? フフッ、パンサー理沙子のかませ犬だったあなたが、全力を出したところで・・・」

「では、よろしくお願いします」

 ショートヘアを垂らし、深々とミミは頭を下げた。
 あまりに無防備な態勢だった。後頭部はガラ空き。膝を顔面に突き刺すには、絶好のポジション。
 〝銀狼”の赤いルージュが吊り上がるのも、仕方のないことだった。
 
「お人好しって・・・笑えるほど愚かですわね」

 お辞儀したままのミミの後頭部に、鋭角に突き出した鏡の右肘が振り下ろされる。
 
『ああーっと!! いきなりフレイア鏡ッ、ミミ吉原に襲い掛かっ・・・アアッ!?』

 驚愕の光景に、実況アナの叫びが裏返った。
 リング上に、竜巻が発生していた。緑のハリケーン。頭を下げていたミミが高速で回転したのだと、数瞬の後にようやく悟る。
 
 バッキャアアアアァッ!!
 
 独楽のように反転したミミ吉原の右手の甲が、不用意に近づいた鏡の顎に叩き込まれた。
 
『バックブロ――ッ!! いやこれは、元空手王者の裏拳と呼ぶべきかァッ!? ミミ吉原の強烈な一撃が炸裂ッ――ッ!!』

「ごふうッ!! くはァッ・・・!! ガ・ア”・ア”ッ・・・!!」

「ちゃんと言いましたよね? 全力を尽くすって」

 鏡の口付近が、鮮血で真っ赤に染まる。
 ミミ吉原が元全日本空手王者であることは、当然鏡も知っていた。だが、ミミはプロレスに転向してから、ほとんど打撃を使わなかった。〝関節技の魔術師”を異名とするように、極め技を中心として闘ってきたのだ。
 ここに来て、空手技を使ってくるとは・・・つい警戒は甘くなっていた。
 
「ミ、ミィッ・・・!! わざ、とッ・・・隙を見せッ・・・ッ~~ッ・・・!!」

「ゴングはすでに鳴っていますから・・・卑怯とは言わないでくださいね」

 ミミの右脚が跳ねあがる。
 フラつく鏡の側頭部に、吸い込まれていくハイキック――。
 ガードしようとする両腕をすり抜け、鮮やかな蹴りが〝銀狼”のこめかみに撃ち込まれた。
 
 スパアアァッ―――ッンン!!
 
『ダウ―――ッンンッ!!! フレイア鏡ッ、リング上に大の字だァッ――ッ!! これが本気のッ・・・本物のミミ吉原ッ、ここに見参ッ――ッ!!』

 瞳を裏返した鏡が、仰向けでリング中央に転がった。
 
 
 
 《試合開始より 2分経過》
 
 
『まさかッ・・・! まさかの展開に、『裏武闘館』が揺れていますッ!! マット界の黒船と警戒されたワールド女子のエース、フレイア鏡が一撃で沈没ッ――ッ!! 誰も予測し得なかった光景に、どよめきが鳴りやみませんッ~~ッ!!』

『私のなかでは、予想通りでしたが』

 ダウンカウントが進む場内。騒然とする観客席に、冷静なパンサー理沙子の声が響く。
 
『吉原選手の実力をもってすれば、決して不思議なことではありません』

『し、しかし、打倒新女を目論むと噂されるワールド女子のエースが、失礼ながら新女では関脇クラスと言われているミミにこんな一瞬で・・・』

『それはあくまで、表のリングの話ですわ。ベテランから若手にまで気を配り、団体のために己を犠牲にしているミミ吉原なら、鏡選手相手には好勝負するのが精一杯でしょうね』

 カウントが7まで進み、ようやく〝銀狼”の身体がピクリと反応した。
 
『ですがここは『裏武闘館』ですから。今日の吉原選手は、周りのことなど考える必要はありませんもの』

『それにしても、打撃の封印を解いたミミが、ここまで強いとはッ・・・』

『強いのは当たり前です。なにしろ彼女は、元全日本空手王者なのですから』

 ガクガクと膝を震わせながら、フレイア鏡は懸命に立ち上がろうとする。瞳の焦点はあっておらず、明らかにいまだ脳は揺れていた。
 
「・・・9ッ・・・テッ・・・!」

 完全に身を起こすかどうか。レフェリーがカウントを止めようかと迷った瞬間に、緑の風は鏡を襲っていた。
 態勢の整っていない”銀狼”の鳩尾に、ミミ吉原の下段突きが埋まる。
 
「ごぼアア”ッ!? ぐぶう”ッ!! グア、ア”ッ・・・!」

「立ってくる限りは攻撃をします。あなたが勝利を諦めるまで」

 無表情で元空手王者が、浮き上がった〝銀狼”から拳を引き抜く。
 涎を垂らし、無防備で悶える鏡は格好のサンドバッグだった。左右の下段蹴りが、適度に逞しく、長い脚に叩き込まれる。
 
 ドドォッ!! ドドドドドドオオォッ!!
 
「ぎゃあッ!! ぎいいッ!? うぎゃッ、がああアアッ――ッ!!」

 マシンガンのように速く、斧のように重いローキックの連打。
 気高く、美しく、冷酷な〝銀狼”が無様に叫ぶ。脳は揺れ、内臓は鉛のように重く、両脚は金属バットで殴られているかのようだ。ここまで一方的に痛めつけられたことなど、鏡の記憶になかった。虐げるのは常に、美と富と力を持った令嬢の方であり、虐げられる側に回るなどあってはならないことなのだ――。
 
「このッ・・・! 私がッ! 私がこんなッ!! ・・・ミミ吉原ッ、覚悟はできてッ・・・はあぐぅッ――ッ!!」

 恫喝しかけた声が、瞬時に惨めな悲鳴に変わる。
 ローキックの苦痛に、すっかり鏡の意識は下半身に集中していた。ガラ空きになった左の脇腹に、軌道を変えたミミのミドルキックが突き刺さる。
 メキメキと、嫌な音色がアバラで響いた。駆け巡る激痛。恐らくヒビの入った肋骨の痛みに、〝銀狼”は呼吸もできずに悶絶する。
 
「かふッ・・・!! ぐぶぅ”ッ・・・!! はあ・あ”ッ・・・!!」

「鏡さん。あなたたちワールド女子プロレスが、日本の女子マット界制圧を狙っているという噂は、私も聞いています。そのために新女を潰そうとしていることも。そんなあなたが相手だから、私も遠慮なく闘えるんです」

 いくら『裏』のリングで本気で闘えるといっても・・・新女の後輩が相手ならば、空手技を出せたかどうか。
 ミミ吉原自身も、わからなかった。ただひとつ、相手がフレイア鏡という強豪であり、ワールド女子からの刺客であることは、ミミにとってはむしろプラスに働いているのは間違いない。
 
「このリングで対峙する相手が鏡さんで・・・よかったです」

「ッッ!! ・・・ミミッ・・・吉原ァッ!! 調子に乗るのもいい加減になさいッ!!」

 美しき手負いの〝銀狼”が吼えた。右の拳を握って。
 ナックルでの打撃はプロレスではもちろん反則。しかし、5カウント以内ならば反則負けは宣告されない。
 
「やはり、そう来ましたか」

 激痛疼く肉体を走らせ、フレイア鏡が右ストレートを顔面に放つ。
 ミミは全てを読んでいた。
 いや、正確に言えば、鏡の性格を把握したうえで、敢えて挑発し誘いを掛けた。
 
『ああーッ、鏡逆襲の右パンチッ・・・!! 避けたッ!? 身を捻ってかわしたミミッ、逆に鏡の右手をとって・・・カウンターの脇固めだァッ――ッ!!』

 殴りかかる鏡の右手首を掴むと、元空手王者は横をすり抜ける。
 そのまま〝銀狼”の右腕を小脇に抱え、一気に逆に反りあがらせた。
 
『フレイア鏡ッ、顔面からマットに激突ッ――ッ!! ぐちゃりと美貌が潰れたァ! 天を向く右腕が悲鳴をあげるッ! 肩の壊れる音色がここまで聞こえてきそうだッ~~ッ!!』

「げぶう”ッ!! があ”ッ!! アアア”ッ・・・ぎゃああア”ア”ア”ッ~~~ッ!!」
 
 モデル顔負けの美貌を歪ませ絶叫する鏡と、その肢体の上に乗るようにして、涼しい表情で締め上げるミミ吉原。
 
『ここで〝関節技の魔術師”の面目躍如ッ~~ッ!! そうです、ミミ吉原は打撃だけの選手ではなァ~~いッ!! プロレスを覚えた元空手王者の、これが私の生きる道ィッ――ッ!!』

『これは・・・完全に極まっていますね! いくら鏡選手といえ、ここから脱出するのは不可能でしょう』

 パンサー理沙子の見立て通り、ミミ吉原の脇固めはガッチリと〝銀狼”の右腕を固めていた。
 場所はリング中央。フレイア鏡も関節技を得意とするとはいえ、マットにうつ伏せに這った状態では何の反撃もできない。
 
 ギリギリ・・・メキメキメキッ・・・
 
「うがああああ”ア”ア”ッ~~~ッ!! ぐうう”ッ!! あああ”あ”ッ~~ッ!!」

「鏡さん。あなたもわかっているはずです。もう、逃げられないことを」

 あくまで表情を変えずに、ショートヘアの元空手王者は右腕を逆に曲げていく。
 
「ぎゃあああア”ア”ア”ッ―――ッ!! 腕がッ!! 私のッ・・・腕がァあああ”あ”ッ~~~ッ!!」

「早くギブアップをしてください。このまま我慢しても、苦しむだけです」

 ミミの言葉が優しさから発せられていることは、悶える鏡にもわかった。
 だからこそ、余計にプライド高き令嬢は、痛みに屈するなど許せなかった。
 
「誰ッ・・・がッ!! この私をッ、誰だと思っていますのッ!!」

「折りますよ?」

「ッ!! ・・・やれるものなら、やってごらんなさいッ!! あなたごとき下賤の女にッ、このフレイア鏡は死んでも頭は下げませんッ!!」

「・・・では、仕方ありませんね」

 鏡の右手首を掴んだまま、ミミが後ろへ体重を預けていく。自然、背中側に回っている鏡の右腕は、ますます可動域の限界を超え反っていった。
 
「んぎい”ィ”ッ!? うぎゃあああア”ア”ア”ッ~~~ッ!!! はぎゅう”ッ!! へぶぅア”ッ!!」

 クールビューティーを体現したような美貌が、マットに押し付けられていく。
 あまりの苦痛に鏡の瞳がぎゅるりと裏返り、開いた口からゴボゴボと泡が噴き出した。流れる唾液とともに、マットに沁みが広がる。あと数cmもミミが傾けば、確実に〝銀狼”の右肩は壊れるだろう。
 だが、醜態をさらしつつも、ギブアップの声だけは鏡は言おうとしなかった。
 
『こ、これはッ・・・!? 耐える耐えるッ!! フレイア鏡、懸命に耐え続けるッ!! あるいは脇固めは〝銀狼”には通じていないのかァ!?』

『いえ・・・ッ! 吉原選手の脇固めは完璧に極まっています。ただ・・・精神力で、鏡選手は耐えているだけですわ。・・・どうやらフレイア鏡というレスラーは、冷酷なファイトだけが身上ではないようですね』

『しかしこのままではッ・・・』

『はい。いずれ肩が脱臼するか、右腕が折れるだけです。ですが、試合には負けません。『裏武闘館』ではレフェリーストップはありませんから・・・』

 ギブアップしなければ、負けない。
 だからギブアップだけはしないと、決めているのか、フレイア鏡。
 
「・・・くッ!」

 根負けしたのは、ミミ吉原の方だった。
 ついに自ら、脇固めを解く。素早く立ち上がると、ぐったりとマットに転がる〝銀狼”を見下ろした。
 
『ああ~~っと!? ここで攻めているミミ吉原の方が、技を解いてしまったッ?』

『・・・いくら本気を出すといっても、吉原選手は故意に相手をケガさせることなどできないでしょう。なにより、このまま脇固めを続けても勝てませんから』

『勝利のために、わざと解放したと・・・おっとッ、ここでミミが強引に鏡を立たせるッ!』

 鮮やかな銀の髪を掴み、震える鏡を無理やり引き起こす。右肩を押さえた〝銀狼”は、激痛で意識も朦朧としているようだ。
 ロー。ミドル。ハイ。
 再び元空手王者の蹴撃がフレイア鏡を襲った。面白いように決まる。空手流の蹴りが、矢継ぎ早にモデル並みの美ボディに打ち込まれる。
 
 ドゴオッ! ベキィッ!! バシッ! スパア――ンッ!!
 
『滅多打ちィッ――ッ!! アバラを砕く! 太ももを抉る! 顎を蹴り抜く! 美しき〝銀狼”が全身痣に覆われていくゥッ~~ッ!! ギブアップしないのならばと、ミミ吉原、KO勝利を狙いにいくのかッ――ッ!?』

『・・・凄いですね。我々は認識を改める必要がありそうです』

『はい、理沙子さん! よもやミミ吉原がこれほどの強さとは、思っていませんでした!』

『いえ、私が驚いているのは、フレイア鏡選手に対してですわ』

 元女帝がゴクリと生唾を飲み込む音が、マイクを通じて場内に流れた。
 
『吉原選手の実力が高いことは、私はとうに知っています。凄いのは、彼女の打撃をあれほど浴びて、いまだ立っていられる鏡選手の耐久力・・・脇固めを耐え切った気力といい、並みのレスラーではありません』

 そう、元空手日本王者の本気の蹴りがいかに強烈か。本当に身をもって知っているのは、マット界ではパンサー理沙子だけだろう。
 その理沙子が驚愕するほど、フレイア鏡はミミの蹴りを受け切っている。
 鏡が実力者であることは理沙子も知っていたが、予測を遥かに越えていた。ワールド女子のエースに君臨しているのも、決して人気や知名度故ではないのだろう。
 
「いくら頑丈でも・・・脳震盪を起こせば立っていられませんよね!?」

 焦りがミミの胸に去来するのも、仕方がなかった。なにしろ、ここまで本気の蹴りを浴びせて倒れなかった人間など、パンサー理沙子以外に記憶にないのだ。
 側頭部を蹴り叩くべく、大きく右脚を跳ね上げる。
 大股を開いてのハイキック。それは鏡からすれば、待ってましたの隙だった。
 
 ゴキャアアアアッ!!
 
 一気に飛び込んだ鏡の左拳が、ミミの股間に撃ち込まれる。
 
「はあぐぅ”ッ!? グア”ッ・・・ア”ア”ア”ッ!!」

『うわああ~~っとッ!! 鏡の急所へのパンチが、もろに突き刺さったァッ――ッ!!』

「ぜえッ、ぜえッ、ぜえッ・・・!! 調子に乗るなと・・・言ったでしょうッ!!」

 股間を押さえて棒立ちになったミミのショートヘアを、〝銀狼”が両手で抱え込む。
 引き寄せた160㎝の鳩尾に、173㎝の膝が突き上げられた。
 逃げられないよう、動きを封じたうえでの連続ニーリフト。身長差があるだけに、膝蹴りの連打は効いた。急所打ちに昇天しかけたミミの腹部を、膝の爆撃が破壊する。
 
 ドボオオッ!! ズボオオッ!! ドズウッ!! グボオオッ!!
 
「ごふッ!! あ”ッ!! んああ”ッ――ッ!! うぐぅ”ッ!!」

「苦しみなさいッ、ミミ吉原ッ!! この私にこれだけのことをしてッ・・・無事で済むと思わないことね!」

 膝を突きあげるたび、ミミの肢体が宙に浮いた。
 叫ぶ口から、唾液が飛び散る。飛沫には、ほのかな紅が色づいていた。的確に胃を抉る膝に、ミミの腹筋と内臓がビクビクと痙攣する。
 
(こ、このパワー・・・!! 見た目以上に、なんて力強いの! は、反撃したくてもッ・・・股間への一撃で身体がシビレてッ・・・!!)

 男性ほどではなくても、股間への急所攻撃は致命的となりかねない。下腹部を潰されたような激痛に、数分は悶絶し続けねばならなかった。
 むろん反則なのだが、一瞬の攻撃ゆえにジャッジには見逃されている。明らかに命に関わる反則でなければ、『裏武闘館』では許容されるのだろう。
 
 このままでは、胃が破裂してしまう。
 
 執拗な膝攻撃に、股間を押さえていた両手がたまらず鳩尾をガードする。ミミ吉原としては、防衛本能に従った当然の動きだった。
 だが、防御が薄くなるのを待っていたかのように、フレイア鏡のニーリフトは、今度は股間を蹴り上げた。
 
 ドキャアアアアアッッ!!
 
「はがああああアアア”ア”ア”ッ――ッ!!! ・・・がひゅッ!!」

「いい悲鳴ですわねッ!! そうしてカエルのごとく、ゲロゲロ喚いているのがお似合いですわッ!!」

 視線を虚空に彷徨わせ、緑のリングコスチュームが壊れたように痙攣する。
 深刻なダメージに、動きの止まった元空手王者。鮮血の混ざった唾液が、半開きの口からツツ・・・と垂れた。
 哀しげに眉を八の字に寄せたミミの顔面に、突き上げる膝蹴りが直撃する。
 
 ぐちゃああああ・・・っ!!
 
『ひィッ!? あッ・・・ああッ!! こ、これはッ・・・残酷すぎる一撃ィッ~~ッ!! フレイア鏡の顔面膝蹴りに、ミミ吉原ッ、壮絶なダウンッ~~~ッ!!』

 鼻と口から鮮血を撒き散らし、白目を剥いたミミが大の字で、青いキャンバスに沈んだ。
 
 
 
 《試合開始より 10分経過》
 
 
「・・・4ッ・・・5ッ・・・6ッ・・・」

『フレイア鏡の逆転を告げるカウントが刻々と進むッ!! さすがにミミもこれは立てないでしょう!』

『いえ、まだです』

 カウントが7まで進んでも、悠然とパンサー理沙子は答えた。
 
『し、しかし理沙子さん』

『吉原選手は打撃の真髄を知り尽くしています。当然、防御に関しても。今の一撃、寸前でわずかにですがポイントをずらして受けていますわ』

 カウント8のコールと同時に、大の字で転がったミミの指が、ピクリと動いた。
 
『そしてその事実は・・・鏡選手も気付いています』

 カウントの途中で、横臥する緑の戦士に〝銀狼”が飛び掛かる。
 
「そう何度も騙されませんわ! ひとの好い顏をした、下劣なカエル女めがッ!!」

 裏返っていたミミの瞳が、パッと正気に戻る。
 すぐさま立ち上がろうとする元空手王者。だが、鏡の動きが一瞬早かった。油断なく警戒していた分、対応が上回っていたのだ。
 組み伏せたミミの腹の上に、フレイア鏡は馬乗りになった。
 
『マ、マウントポジションッ!! この態勢は圧倒的に鏡が有利だァッ~~ッ!! 尻に敷かれたミミ吉原ッ、ここからの反撃はまず通用しませんッ!!』

 かつて格闘技界を席巻した、一大柔術ブーム。最強と呼ばれた彼らを象徴する技術こそが、このマウントポジションであった。
 まるで幼児のケンカに見るような、馬乗りという単純な行為。だが、上にある者が打撃も関節技も自在に狙えるのに対し、下からの攻撃はほとんど不可能といえた。顏へのパンチは届かず、関節技も仕掛けられない。なにしろ手の届く範囲が、せいぜい相手の胸から太もも付近までなのだ。しかも上に乗られているだけで、体力も消耗してしまう。
 
「さて・・・今度は私が忠告する番ですわね。早くギブアップなさい、ミミ吉原」

 真っ赤な舌をペロリと出し、鏡は唇を舐めた。瞳がギラついている。明らかに〝銀狼”は愉悦を感じていた。
 復讐と、破壊できる悦び。
 言葉とは裏腹に、鏡の内心は試合が終わらないことを願っている。これからたっぷり、忌々しい獲物を嬲り殺せるのだから。
 
 ミミは何も答えなかった。
 ただ、澄んだ瞳で真っ直ぐ鏡を見詰め返す。その表情に、怯えはなく、怒りもなく、丸い瞳に真摯な光を宿らせて―ー。
 
「そう。では・・・壊れなさいッ!!」

 ドガガガガガアアアッ!!!
 
 負傷した右腕にも関わらず、ふたつの拳を容赦なく〝銀狼”はミミの顔面に浴びせた。
 降り注ぐ、パンチの豪雨。
 必死にガードする元空手王者の両腕をすり抜け、いくつかの拳が被弾する。グチャグチャと、拳が埋まるたびに噴き出す鼻血が粘った音をあげる。懸命にガードを続けたところで、ミミの終焉が訪れるのは時間の問題だ。
 
「フフッ・・・ウフフフッ!! おしまいですわね、ミミ吉原ッ!! でもギブアップは言わなくてもけっこうよ。意識が途絶えるまで殴り続けてさしあげますわッ!!」

 唇を吊り上げ、〝銀狼”が笑う。血で染め上げたような、真っ赤な口腔だった。
 勝敗も、ワールド女子としての使命も、ミミに対する憎悪すらも、全て忘れているようであった。ただただ、愉しい。女体を殴る感触が、敵が苦しんでいる様子がたまらなかった。こんなに心地よい遊戯はない。
 フレイア鏡が男性だったら、この瞬間、彼女は射精していただろう。
 
 快楽に溺れたがために・・・〝銀狼”は己を狙う射撃のスコープに気付けなかった。
 
 スパアア―ーァンンッ!!
 
「ッ・・・え?」

 甲高い音色が鳴った、と思った時には、フレイア鏡は前のめりに突っ伏していた。
 視界がぐにゃりと歪んでいる。
 
 脳が揺れているのか? バカな。ミミ吉原は私の下にいた。
 あの態勢から、顎に拳が届くことなど有り得ないのだ・・・。
 
「元空手家を、舐めないことですね」

 背後でミミ吉原の声がした。鏡が崩れ落ちたため、馬乗りの態勢から脱出できたのだ。
 四つん這いになった〝銀狼”を、顏を朱に染めた〝関節技の魔術師”が見下ろしている。
 
「確かに普通のひとならば、マウントポジションからの反撃はできないでしょうね。でも空手家ならば、後頭部に足を届けることはできます」

 フレイア鏡を襲ったのは、後ろからの攻撃だった。
 ミミの脚はほとんど180度、跳ね上げることができる。真横に立つ人間の後頭部を、振り上げた脚で蹴ることができる・・・それが元空手王者の柔軟性。
 ミミからすれば、馬乗りになった人間を爪先で蹴ることも、決して不可能ではなかった。
 
「とは言っても、マウントポジションから慎重に責められれば・・・攻略は難しかったかもしれませんが」

 這いつくばって逃げようとする鏡を、ミミ吉原が捕獲する。
 尻餅をついた鏡の顏を、ミミの右腋が挟む。同時に左腕が、〝銀狼”の左肩をロック。
 背中を反らせて絞り上げると、フレイア鏡の背骨と首、そして左肩が同時に極まる。ミシミシと悲鳴をあげる。
 
『極まったァッ~~ッ!! ここで! ミミ吉原、必殺の!! ドラゴンスリーパァァッ~~ッ!! これこそまさにッ、脱出不能だァッ―ーッ!!』

「ッッ!! ・・・ぶッ!! ・・・ッッ!! ・・・ん”ゥ”ッ・・・!!」

 両脚をバタつかせ、悶絶するフレイア鏡。
 しかし、首を絞められ、背中を反らされる拷問技はただでさえ苦しかった。しかもミミの右腋がピッタリと鼻と口とを塞いでいるため、呼吸すら満足にできない。
 
『考えましたね、吉原選手! ギブアップをしない鏡選手ですが・・・ドラゴンスリーパーなら酸欠による失神を狙えます! 意識を奪ってフォールすれば・・・』

『フレイア鏡の全身が痙攣しているゥッ――ッ!! 実力者同士の第四試合、シーソーゲームにいよいよ決着がつくのかァッ~~ッ!!』

 ビクンッ・・・!! ビクンッ・・・!! ビクンッ・・・!!
 
 激しく震える〝銀狼”の四肢が、間もなく迎える熱闘の終焉を報せるかのようであった。
 
 
 
 《試合開始より 15分経過》
 
 
「ぐああ”ッ!?」

 突然の悲鳴は、ミミ吉原の口から迸った。
 勝利寸前、と思われた〝関節技の魔術師”がドラゴンスリーパーを解いて悶絶する。右の腋を押さえたミミは、顏を歪めてリングを転がり回った。
 腋を押さえた左手の隙間から、赤い雫が次々とこぼれ落ちていく。
 
「鏡ッ・・・さん!? あなたッ、一体何をッ・・・!!」

 噴き出す汗で濡れ光った顏で、ミミは叫んだ。今、技を解いたのは自らの意志ではない。解かずにいられなかったのだ。右腋を刺す、鋭い痛みに。
 ドラゴンスリーパーから逃れたフレイア鏡は、四つん這いになってミミ吉原を睨んでいる。
 銀色の長い髪から覗く視線は、まさしく異名通り、狼のようであった。
 
「ぶッ!!」

 唇を尖らせた鏡は、なにかの物体を口から吐き出した。
 真っ赤に染まったそれは、ミミ吉原の肉片であった。
 
「うッ!! まッ・・・まさかッ!?」

「・・・噛みつきも・・・知っての通り、反則ですわ・・・しかし、直接命に関わるような反則でなければ、このリングでは5カウント以内は許されるもの・・・」

 凄惨な笑みを、鏡は浮かべた。
 真っ赤な口腔は、正真正銘、血で塗られたものだ。
 
『フ、フレイア鏡ッ・・・!! ドラゴンスリーパーから・・・ミミの腋肉をく、食い千切って脱出ッ――ッ!! な、なんと恐ろしい勝利への執念ッッ!!』

『ッッ・・・!! これは・・・こんなことが・・・果たしてプロレスと呼んで、いいのでしょうか・・・』

「フフ・・・ホホホ・・・ホーッホッホッホッ!!」

 血を滴らせる唇を拭い、腰に手を当てながら、フレイア鏡は哄笑した。モデルのように立ちながら。悪魔のような笑い声で。
 
「笑わせるんじゃありませんわッ!! 5カウント以内なら反則も許される、それがプロレスでしょうッ!! 反則すらも技なのですッ!!」

 鏡の言葉は、ミミやパンサー理沙子のみならず、『裏武闘館』の観客にも訴えるかのようだった。
 
「本気を出す、ですって!? ミミ吉原ッ、あなたの覚悟など私からすれば幼稚園児のごとく甘ったるいッ!! ルールを最大限生かそうともしないその態度が、すでにプロレスを、このリングを舐めているのですッ!!」
 
 青褪めた元空手王者に、〝銀狼”が一直線に突き進む。
 左手で掌底を放つミミ吉原。だが、痛みで右腕を使えないのは、鏡には予想済みのことだった。
 再び鏡の唇が尖り、赤い飛沫を噴射する。毒霧ではなく、口に残ったミミの鮮血。
 血の目つぶしが、ミミ吉原の顔面を叩いた。
 
「あッ!?」

「私の右腕を折ることもできないあなたにッ・・・勝者の資格はありませんわッ!!」

 するすると背後に回った鏡が、脚を絡める。ミミの肢体に大蛇のごとく巻き付いていく。
 
『これはッ・・・コブラツイストだァッ~~ッ!! 古典的絞め技も、しかしフレイア鏡にとっては得意技のひとつですッ!!』

 絡みついたフレイア鏡の長身が、ミミ吉原の脇腹を捻じる。外見の派手さから効果は薄いと思われがちだが、現実に背骨を捻じ曲げる拷問技として、十分機能するのがコブラツイスト。
 しかもこの技の恐ろしいところは・・・鏡の右手が自由になっている点にあった。
 
 ドガッ!! ゴッ!! ガッ!! ゴスッ!!
 
『ミミ吉原の肋骨に、〝銀狼”の肘が振り下ろされるッ~~ッ!! これはたまりませんッ、コブラに喘ぐミミはこの暴虐を受け入れるしかないッ――ッ!!』

「あ”ッ!! はぐゥ”ッ!! げはあ”ッ!! ア、アバラッ・・・がッ!!」

「フフフ・・・剥き出しになっている肋骨は・・・折りやすいですわねッ!」

 ボギイッ!! ・・・ゴキッ!! メチイッ!!
 
 アバラの折れる音色が響いても、鏡は肘打ちをやめなかった。
 折れた肋骨をさらに砕く。捻じ曲げられる拷問に加え、打撃でもミミ吉原の脇腹は破壊されていく。
 
「あぐうう”う”ゥ”ッ――ッ!! うああ”ッ、がはァ”ッ!! や、やめッ・・・!! これ以上は、もうッ・・・!!」

「お黙りなさい。屠殺場のメス豚は、泣き喚いていればいいのです」

 たまらず懇願の声をあげたミミの顔面に、鏡の右拳が埋まる。
 すでに何ダースと殴っているが、コブラツイストを極めての殴打は別格だった。元空手王者はまるで避けることも、防ぐこともできないのだから。グシャグシャと、思うがままに拳を打ち込む。愛らしいミミの顏が倍ほどに膨れ上がっても、拳が返り血で真っ赤に濡れ光っても、〝銀狼”の折檻は終わらなかった。
 ボタボタと、赤い雫がマットに落ちる。
 白目を剥き、ヒクヒクと震える元空手王者。事実上、コブラツイストに捕獲された時点で、闘いの決着はついていた。
 
「このフレイア鏡をここまで愚弄したのです・・・罰を受ける覚悟はできていますね?」

 モデルのようなしなやかな指を伸ばし、鏡は右手でミミ吉原の右乳房を鷲掴んだ。
 バストサイズ90㎝。丸く実った豊かな柔肉を、無遠慮に揉みしだく。緑のリングコスに包まれた肉饅頭がぐにゃぐにゃと変形した。
 
「・・・ぅあ”ッ・・・!! んぅ”ッ・・・!! ぁふッ、う”ッ・・・!!」

「巨乳は感度が鈍い、という噂がありますが、ウソのようですわね。もっとも、あなたのカラダで調べなくても知っていましたが・・・」

 ミミを凌駕する92㎝のバストを持つ鏡は、乳房を揉み潰すたびに反応する元空手王者を見て、唇を舐めた。
 コブラツイストをかけられ、身動きできないミミ吉原は格好のオモチャだった。
 優しく、ときに強く、乳房を撫でながら先端に指先を集めていく。スリスリと頂点を摩擦するや、緑のコスチュームを押し上げ、突起が浮き上がる。
 
 勃起した乳頭を、〝銀狼”の指が摘まみ上げた。
 ソフトにこね回し、縦に横にと弄り倒す。純真な性格の持ち主は、性感帯まで純真なのか。ミミの反応は素直だった。指で先端を摩擦すればするほど、駆け巡る悦楽を示すように、ヒクンヒクンと下腹部を震わせる。
 
「あ”ッ・・・んふぅ”ッ・・・!! ・・・や、め・・・やめ、てっ・・・!! ・・・触ら・・・ない、で・・・」

 白目を剥いたまま、夢遊病者のように呟く元空手王者。
 股間を覆うコスチュームに、心なしか、淡い沁みが広がっていく。
 
「フフフ・・・あなたはもう、脱出不能・・・果てるまで、この豊乳を嬲り続けてもよくてよ・・・」

「うああ”ッ・・・!! ああ”ッ!! やめッ・・・こんなッ・・・辱めはッ・・・!!」

「ならば、私のフェイバリットで地獄に逝きなさいッ・・・ミミ吉原!」

 すでに限界を迎えていた肉体を官能で責められ、ミミの全身に力は入らなかった。
 コブラツイストで捻じりあげたミミの頭に、鏡は己の左脚をかける。
 同時に右肩を左腕でロック。直角に上半身を折り曲げたミミの首と右肩とが、相反するベクトルに締め上げられる。
 
『極まったッ――ッ!! コブラツイストから移行してのッ・・・フレイア鏡の必殺技、オクトパスホールドッ!! 通称、卍固めェッ――ッ!! 跳ね返すだけの力は、ミミ吉原にはもうッ・・・』

 解説席のパンサー理沙子は、食い入るようにリング上を見ながら、一言も発しなかった。
 仕掛ける者の左右の脚が、首と脚とに絡みつく卍固め。
 その脱出は容易ではない。技を解くには、首・右肩・脚へのロックを強引に外すか、力づくで上半身を起こすか・・・。
 間違っても、潰れて崩れてしまえば、悲劇的な結末が待っている。卍固めを耐えるには、倒されないことが絶対条件。安易に倒れるのは、決してやってはいけない禁忌。
 だが、これまでの激闘で深いダメージを負ったミミ吉原に、残された力はあまりにも少なすぎた。
 
「ッッ~~~ッ!! ぅああ”ッ・・・!! んん”ッ―――ッ・・・!!」

 ギチギチと、首と右肩が鳴る。
 勝利の可能性が限りなくゼロに近いとわかっていても、元空手王者は耐え続けた。ほんの数十分前、激しく芽生えた感情だけが、ミミ吉原を動かす全てだった。
 
「ッ・・・負け・・・られ・・・ませんッ・・・・・・! ・・・マイティ祐希子、と・・・闘う・・・まではッ・・・!!」

 首の骨が、不気味に軋み始める。右肩がゴキゴキと異様な音色をあげる。
 強烈に締めあげる卍固め。それでもミミ吉原は、敗北を認めようとはしなかった。
 
「・・・何年ぶりか、のッ・・・渇望ッ・・・!! 本気で・・・勝ちたいと、思った・・・この気持ちッ・・・!! 今日は・・・今回くらいは・・・私も思いっきり・・・・・・闘い・・・たいッ・・・!!」

 封印したはずの空手を全開にした元王者の瞳から、一筋の雫が流れて落ちた。
 
「・・・この私との試合で・・・あなたの願いは叶ったでしょう? ・・・ミミ吉原」

 コブラツイストと同様に、卍固めも掛け手の右腕が自由になる技だった。
 フレイア鏡の右手は、ミミ吉原の股間に伸びた。すでにじっとりと、恥ずかしい沁みで濡れた、秘部に。
 
「全力で闘い、そして叩きのめされる。・・・納得して、散るがいいわ。もうあなたやパンサー理沙子の時代は・・・終わったのよ」

 コスチューム越しに鏡の右手が、秘裂の奥へと挿入される。
 生温かい肉壺の内部を、〝銀狼”の指が掻き混ぜた。コスチュームの生地で、摩擦される膣襞。
 卍固めで極められたミミ吉原に、鋭すぎる快楽の怒涛が押し寄せた。
 
「あ”ッ!! ふああ”ッ・・・!! ふぅわああああ”あ”ア”ア”ア”ッ~~~ッ!!! いやあああ”あ”ア”ア”ッ―――ッ!!!」

 甲高く轟いたミミの絶叫は、嬌声と呼ぶのに相応しかった。
 高速で愛撫される股間が、ブシュッ、と飛沫を飛ばす。元空手王者の愛蜜が、リング中央に撒き散らされる。
 オルガスムスに達すると同時に、力の抜けたミミ吉原の肢体は卍固めを極められたまま、崩れ落ちた。
 
 ボゴオオオオォォッ!!! ベギイイィィッ!!!
 
 顔面からマットに沈んだ瞬間、ミミ吉原の右肩は脱臼し、肘は逆に折れ曲がった。
 
「最後までギブアップを宣言しなかったことは・・・認めてあげますわ。おかげでたっぷりと、あなたの悲鳴、堪能できてよ」

 奇妙に右腕を変形させ、股間から飛沫を垂れ流す〝関節技の魔術師”を、フレイア鏡は蹴り転がした。
 すでに意識のないミミ吉原の巨乳を、〝銀狼”が踏みつける。
 
「・・・1ッ・・・2ッ・・・」

「所詮はロートル・・・でも、コレが本当に関脇クラスというのなら・・・新日本女子、侮れないわね・・・」

「・・・3ッ!!」

『入ったぁッ~~ッ!! 最後の最後はサドッ気を全開にして、〝銀狼”フレイア鏡がミミ吉原を凌辱処刑だァッ――ッ!! 謎に包まれた新興団体、ワールド女子プロレスッ!! その恐るべき実力の片鱗が垣間見えた激闘でしたッ!! 今後ワールド女子は、台風の眼となっていくんでしょうかッ!?』

「・・・フン。ワールド女子、ワールド女子って・・・騒がしいことだね」

 騒然とする場内の映像を、控室に備えられたモニターで見ながら、ひとりのレスラーが呟いた。
 大柄な選手だった。身長はフレイア鏡とほとんど変わらないが、肉付きに逞しさがある。といって太っているわけでも、筋肉質なわけでもなく、引き締まった肢体の内部に鋼が埋め込まれているかのようだ。
 赤いリボンで結んだ、ポニーテールが特徴的だった。
 切れ長の瞳は、紛れもなく美人。だが異性以上に、同性を虜にしそうな雰囲気があった。女が見惚れるような女、というのは、きっと彼女のような存在をいうのだろう。
 
「バックについているのが何者か知らないけど・・・強さに必要なのは金じゃない。心意気さ。打倒新女を果たすのに、そんな連中に任せちゃいられないね」

 彼女が着ているのは、龍をあしらった黒いリングコスチューム。
 その足元は、バケツをひっくり返したように濡れている。
 次に始まる試合に備え、ウォーミングアップで流した彼女の汗だった。
 
「龍子さん、もうすぐ第五試合・・・出番です」

 控室に入ってきた後輩レスラー・小川ひかるの声に、サンダー龍子はわずかに微笑んだ。
 
「さあて、ようやくか。長く待たせるから・・・うずうずしてきたよ」

 独立団体WARSの総帥にして、日本を代表するトップレスラー。サンダー龍子は、『裏武闘館』のリングに向けて歩き出した。
 
「新女だろうが、ワールド女子だろうが、東京女子だろうが・・・まとめてかかってくればいい。日本最強の女子レスラーの座は・・・このサンダー龍子が頂くことにするよ」



 ○フレイア鏡(17分18秒 卍固め→体固め)ミミ吉原●
 
 
 
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| レッスルエンジェルス | 00:04 | トラックバック:0コメント:1
コメント
おかげさまで夏コミ用作品が無事完成しました(*´▽`*)
あとは現地でブツを受け取るだけ・・・当日を迎えるのみです。よほどのことがない限り、あとは大丈夫だと思うのですが・・・

無事にひとつ山を越えたことで、ようやく通常業務に戻って参りましたw
復帰一発目にしては頑張り過ぎた感もありますが、とにかくやりたい題材がいっぱいありますからねえ。少しでも取りかかれるよう、頑張りたいと思います。
2015.07.27 Mon 00:07 | URL | 草宗
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