巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

ご意見をお聞かせくだされば幸いです | main | オメガスレイヤーズ ~カウント5~ 「第三話 半年前。迫るその刻」③
レッスルエンジェルス AWGP予選 第三試合 草薙みことvs十六夜美響

AWGP王座決定戦 予選  第三試合

草薙みこと VS 十六夜美響


 《予選第三試合 試合前、実況席》
 
 
『真の日本最強の女子プロレスラーを決めるAWGP王座決定戦ッ! 初日の予選もいよいよ第三試合が始まろうとしています。ここで実況席には、素敵なゲストをお迎えしました。第一試合にて惜しくも敗退となった〝女帝”パンサー理沙子さんに、この試合より解説をお願いすることになりました。理沙子さん、よろしくお願いします』

『こちらこそ、よろしくお願いします』

『この解説役は理沙子さん自身のたっての希望と聞いているのですが・・・まさか、無期限の休業宣言をされた直後に、こちらに来ていただくとは驚きました』

『一線を退いた者として、後進の皆さんのお役に立てることはないかと、考えただけのことです。不束者ですが、精一杯務めさせていただく所存です』

 リングサイドに普段着で現れた理沙子の姿を見て、『裏武闘館』がざわめいている。
 これまで女子プロ界を牽引してきた〝女帝”が裏方に回る・・・ある意味で、世代交代を象徴する光景ともいえよう。
 さすがというべきか、リングを降りてもパンサー理沙子は麗しく、気品があった。数十分ほど前、ビューティ市ヶ谷に失神させられたダメージは、欠片も感じさせない。
 

『早速ですが予選第三試合の展望と見所を、理沙子さんに伺います。くしくも同じ東京女子プロレスのレスラー同士の対戦となった第三試合。草薙みこと選手と十六夜・・・ビキョウ? ミヒビ・・・と読むのでしょうか?』

『美響、と書いてヒビキですね。十六夜美響選手は東京女子プロレスの、トップヒールです』

『あ、これは大変失礼しました』

 勉強不足を露呈するアナウンサーに、隣席の理沙子は困ったような微笑を向けた。
 本来ならプロとして失格、と注意したいところだが、新女のリングばかりを見ている者ならば仕方ないのかもしれない。十六夜美響をイザヨイヒビキと正しく答えられる者など、よほどのプロレス通だけだ。
 なぜなら、彼女が所属する東京女子プロレスは、地味なインディーズ団体だから。
 
『草薙選手は東京女子プロレス三銃士のひとりで、いわば団体のエースと言えます。対する十六夜選手は、古くからフリーとして活躍していた実力者。最近は東女に所属し、三銃士の壁となっていますね。このふたりの闘いは、東京女子プロレスの看板対決と言えるでしょう』

『なるほど。東女の頂点を決める闘いが、このAWGP予選でくしくも実現したわけですね!』

『これまでにもおふたりは何度も闘っていますが、〝裏”のリングでどうなるのか? 興味が尽きません』

 東京女子プロレスには草薙みことの他に、氷室紫月と伊達遥という才能溢れるレスラーがいる。投げの草薙、関節の氷室、打撃の伊達とで〝東女の三銃士”と彼女たちは呼ばれていた。
 この三銃士と〝カラミティ・クイーン”十六夜との抗争が、今、東女のリングを熱くしていた。元々フリーだった十六夜の実力は高く評価されているし、それに挑む三銃士も決してひけを取らない。レベルでいえば、新女と変わらないものを東京女子プロレスは持っている。
 しかし、それだけリング内の闘いは充実しているにも関わらず、新女と東女とでは人気も知名度も企業規模も、天と地ほどの差があった。
 
『いやあー、東京女子プロレスといえばソニックキャット選手のイメージが強いものですから・・・ヘビー級戦線にも、素晴らしい人材が揃っていたんですね』

 アナウンサーがなにげに漏らした感想が、多くの人々の印象を代弁していた。
 東京女子プロレス=ソニック・キャット。いい意味でも悪い意味でも、そのイメージが世間に浸透している。新女に劣らぬ実力者が存在するのに、試合内容の濃密さと知名度とが一致していないのだ。
 原因はわかっている。
 経営が、致命的にヘタクソなのだ。
 強い選手はいる。内容も面白い。だがそれを伝える方法が、東女という組織には欠けていた。結果、『マニアだけが嵌る、知るひとぞ知る団体』になってしまっている。
 
『・・・確かに、ソニックキャット選手はジュニア最強と名高い実力の持ち主ですし、華やかですものね。ですが、東女には他にもいい選手がたくさん所属しています。今大会の優勝をさらっても、決して不思議ではありません』

『まずは東女の頂上決戦といえるこの闘いが、今後の情勢を占う大事な一戦となりそうです。さあ、間もなくゴングですッ!』



 《試合前、控室》
 
 
 草薙みこと。氷室紫月。伊達遥。
 〝東女の三銃士”と呼ばれる次期エース候補生たちは、同じ控室に振り分けられていた。3人でひとつの部屋。所属団体が同じ者同士、気が休めるようにと主催者のちょっとした配慮だろう。
 
「「「・・・」」」

 控室のなかは、静寂が支配していた。
 無言。ここに来てから、誰も喋らない。
 みことは小さな祭壇をつくって精神集中をはじめ、紫月は占いに没頭。伊達は黙々とウォーミングアップをこなしている。
 仲が悪いわけでは、決してなかった。これが彼女たちの普通の姿なのだ。
 よく言えばマイペース。悪くいえば・・・ぼっち気質。内向的すぎて、他者とほとんど交わらないのだ。
 この性格も、エースとなるべき彼女たちを、より目立たなくしている一因だった。
 
「・・・いってきます」

 不意に草薙みことが立ち上がる。
 巫女をイメージしたリングコスチューム。長い黒髪を背中でひとつに束ねた姿が凛々しい。
 試合時間が迫ったことを知り、みことは席を立ったのであった。
 
「・・・がんばって」

 ひと言だけ発した伊達の顏は、真っ赤に染まっていた。恥ずかしさで。
 内気な少女にしては、それが精一杯のエールであった。
 
「・・・大丈夫。運命は、あなたが勝つと言っている・・・」

 初めて視線をみことに向けた紫月が、澄んだ瞳で真っ直ぐに見つめた。
 運命がわかるという少女には、この先が全て読めているようでもあった。
 
「ありがとう、ふたりとも。破邪の力で、〝カラミティ・クイーン”とは決着をつけてきます」

 かわす言葉は短くても、互いの気持ちは十分に通じ合っていた。傍から見れば不思議だが、これが彼女たち三銃士の関係なのだ。
 控室の扉を出た巫女風のレスラーは、入場ゲートへと通路を歩む。
 通路脇で待ち構えていた人影を見て、みことは脚を止めた。
 
「ご無沙汰しております。みことお嬢様」

 メイド姿のレスラーが、深々とお辞儀をする。
 他に人通りはなかった。偶然ではなく、この時間帯・この場所では通る者がいないことを、メイデン桜崎は予め調べておいたのだ。
 
「桜崎さん。・・・活躍しているようで、なによりです」

「みことお嬢様のおかげで御座います。こんな私が理沙子お嬢様の眼にとまったのも、曲がりなりにもタッグ王座に就かせてもらえたためですから」

「・・・本音をいえば、あなたとはずっと良きパートナーとして、やっていけると思っていました」

 年齢もキャリアもメイデンの方が少し上だが、レスラーの格は草薙が逆転していた。
 とはいえそれは、東女時代の話だ。移籍したメイデンにとっては過去の話で、ましてこの『裏武闘館』のリングでは関係がない。
 
「言いにくいことですが・・・みことお嬢様と一緒では、いえ、東京女子プロレスという地味な団体に属していては、私は埋もれていってしまうと感じました。私の輝かしい未来を実現させるためには、理沙子お嬢様こそ理想の師であったのです」

「それがあなたの願いなら、私は否定しません」

「ハッキリ申し上げます。東女という団体に未来はありません」

 再びお辞儀をし、深く頭を垂れたままメイデンは話した。
 
「メイド、巫女、占い師、アンドロメダ星雲から来たスーパーヒロイン・・・このような小手先のキャラに頼るばかりで、肝心の経営が疎かでは近い将来潰れることでしょう」

「あの・・・私の巫女や、紫月さんの占いはキャラじゃなく本当のことですけど・・・」

「みことお嬢様のような実力ある方が、このような団体でくすぶっているのは勿体ありません。このAWGP大会の期間中にでも、移籍をオススメします。私が言いたかったのはそれだけです」

 頭をあげたメイドレスラーは、答えを促すように巫女を見詰めた。
 
「経営は下手かもしれないけど・・・私をプロレスのリングにあげてくださったのは、今の社長です。たとえ小さな団体であろと、東女の社長を裏切るような真似はできません」

「・・・みことお嬢様なら、そう言うと思っておりました」

 メイデン桜崎の横をすり抜け、草薙みことは入場ゲートへと向かう。
 巫女衣装の背中に、メイデンは名残惜し気に言葉を投げる。
 
「残念ですが仕方ありませんね。せめて、みことお嬢様と再びリングでまみえる日が来るのを、楽しみにしております」

「あなたが勝ち進めば、このリングでも闘えるでしょう。明日にでも・・・あるいは決勝戦でも」

「申し訳ありませんが、それは有り得ないことと断定させていただきます」

 振り返ることなくリングに向かうみことに、メイデンは小さく呟いた。
 
「なにしろみことお嬢様が、この『裏武闘館』で災厄の女王・十六夜美響に勝つことはありませんから」



 《予選第三試合 草薙みことvs十六夜美響》
 
 
 リング上で対峙するのは、対照的なふたりだった。
 巫女衣装に身を包んだ、黒髪の和風美女。〝最強巫女伝説”草薙みこと。164cm、ベビーフェイス。
 SMチックなボンデージ衣装の洋風美女。〝カラミティ・クイーン”十六夜美響。176cm、ヒール。
 
『こ、これはッ・・・並び立つと凄い光景だぁッ―! まさに善と悪の頂上決戦ッ! 破邪の力を持つとされる本物の巫女=草薙みことと、災厄を呼び寄せる魔女の使者=十六夜美響ッ!! 正義と悪魔の激突が始まりますッ!』

『草薙選手はキャラで巫女を名乗っているのではなく、ご実家が神社。一方、十六夜選手も災厄が集まってしまう特異体質だそうですから・・・〝本物同士の対戦”という看板に偽りはありませんわね』

『東京女子プロレスの名勝負とは聞いていましたが、思った以上に凄まじい闘いになる予感がありますッ!』

 アナウンサー同様、東女のリングを知らない多くの観客が認識を改めるなか、ゴングは鳴った。
 
「あらあら。魔女の使者なんて、ひどい言われようね。私にはただ、災厄が寄ってくるだけだというのに」

 セリフとは裏腹に、十六夜美響は満更でもない表情を浮かべている。
 露出の多いコスチュームで、乳房などはトップ以外のほとんどが見えてしまっていた。太腿にはドラゴンのタトゥー。
 妖艶という点では解説席のパンサー理沙子も劣らないが、理沙子が高貴な気品を醸していたのに対し、十六夜はもっとドギツイ。娼婦のような淫靡さが全身から漂っている。エロスの種類が直接的なぶん、セクシーさでは日本マット界最上といっても過言ではないだろう。
 
「十六夜選手。あなたとはこれまでに何度も闘ってきましたが、今日こそ決着をつけるつもりです」

 ムダのない動きで、みことが構えを取る。
 
『理沙子さん、草薙みことはまるで武道家のような構えですね』

『巫女である彼女は、実家で護身術を発展させた武術を習っていたそうです。一説には合気道の元となった大東流合気柔術は会津藩で教えられたと言われていますからね。山形の草薙流にもなんらかの影響を与えていたとしても、不思議ではないでしょう』

『は、はあ~。なるほど、言われてみれば合気道の構えにも似ています、草薙みこと』

「ふん。破邪の力を持つ巫女、ねェ。あなたはどうしても相容れない存在・・・いきなり対戦が決まったのも、災厄のパワーが呼び寄せたんでしょうね」

「あなたの災厄は、私が打ち破ってみせます」

「うふふ・・・あなた程度の力で、災厄に勝てるかしら?」

 互いに手の内を知るふたりは、徐々に間合いを詰めていく。
 なんでもアリ、の『裏武闘館』のリングでは、一瞬の攻防が命取りになる。これまで互角の闘いを繰り広げてきた両者だが、今回も接戦になるとは限らない。いつにない緊張感が、ふたりを包んでいた。
 
『しかし理沙子さん、十六夜美響のいう災厄とは、なんなんでしょうか?』

『それがその、私にもよくわからないのです』

『なにかこう、得体の知れない不気味さは感じますが・・・』

『不幸をもたらす闇のパワー、みたいなものが自然に十六夜選手に寄ってくるようですね。それを利用して彼女は闘っているようですが・・・』

『オカルトチックな、超常現象の一種なんでしょうか・・・あっと、ここで十六夜が仕掛けたッ―!』

 〝最強巫女”と〝カラミティ・クイーン”が、ついに激突した。
 頭ひとつ高い十六夜が、パワーに任せて突っかかる。対するみことは冷静だった。
 拳で殴りかかる十六夜の打撃をすべて捌き、投げ技で応酬する。
 
『こ、これはッ・・・凄いラッシュだッ、十六夜美響ッ!!』

『ですが草薙選手は見事に受け流していますね。柔術らしい、防御テクニックです』

 激しい攻防に観衆が沸きかえる。
 東女のレスラーを見るのが初めての観客が多くても、ふたりの実力の高さはすぐにわかった。これまでの試合に出てきたマイティ祐希子やビューティ市ヶ谷と比べても、遜色ない強さだ。
 
『どうやら我々は認識を改めねばならないようですッ! 東京女子プロレス、これほどのものとはッ!』

『十六夜選手は私とほぼ同時期にデビューし、これまで活躍してきた実力者ですからね。しかし・・・驚くべきは、草薙選手です』

 5分以上に渡る攻防で、目の肥えた観衆たちは気付き始めていた。
 
 ふたりとも強い。だが・・・わずかに草薙みことの方が、上回っている。
 
『ああーっと! またも組み合った瞬間、十六夜美響、投げられたぁ――ッ!』

『合気道のような崩し、ですね。草薙選手、柔術を応用した投げが抜群です! 噂には聞いていましたが、まさかここまでの強さとは』

 合気道の達人レベルとなると、組み合っただけで相手を脱力させることが可能となるが・・・草薙みことも同様の技術をこの若さで会得しつつあった。
 十六夜が組み付くと、バランスを崩され逆に投げられる。安易に手を出せば、関節を極められることもあった。
 といって打撃を仕掛けても、巧みにみことは受け流して捌き切る。
 離れても、組んでも、十六夜美響の攻撃は草薙みことに通じなかった。いたずらに体力だけが削られていく。
 
「このッ・・・! いつもは敢えて、攻撃を受けているってことね・・・」

「草薙流の真髄をお見せすれば、こんなものです。もう一度言いましょう。あなたの災厄は、私が打ち破りますッ!」

 苛立ちを抑え切れぬように、十六夜が顔面にストレートのパンチを放つ。
 拳を握るのは反則だが、このリングでは5秒以内は許容範囲だ。
 
「無駄ですッ! あなたの攻撃は、全て見切っています」

 顏への豪打を沈んで避けたみことが、十六夜の右手首を握り掴む。
 そのまま自ら回転しつつ十六夜を背負い・・・脳天から硬いマットへ投げつけた。
 
『うあーっと! ここで逆一本背負い、炸裂ッ――ッ!! これは十六夜美響、痛烈な一撃を浴びてしまったァッ―ッ!!』

『ウェイトがあるぶん、投げのダメージは深刻ですね、十六夜選手! かなり効いていますよ!』

 脳天を押さえ、〝カラミティ・クイーン”がのたうち回る。
 ダメージも大きいが、力の差を見せつけられたような展開が、十六夜の動きを鈍くさせていた。
 
「ぐああ”ッ・・・くうッ・・・!! 憎らしいけど・・・大したものね、破邪の巫女・・・ッ! 本気のあなたが、ここまでの強さだったとは・・・」

「早く立ち上がってきてください。それとも、このまま負けを認めてくれますか?」

「・・・ふふ。なぜそちらから掛かってこないの? ダメ押しをする、決定的なチャンスなのに」

「草薙流は護身術が基本です。倒れた相手に掛ける技など、存在しません」

 構えを崩さぬまま、草薙みことは十六夜美響が立つのを待った。
 
『・・・実力は確かですが、草薙選手・・・闘い方がキレイすぎるのが気になりますね』

『余裕があるのか、あるいは草薙流の美学なのでしょうか。おっと、ここで十六夜が立ち上がった!』

 頭を振りつつ、微笑を浮かべて〝カラミティ・クイーン”が距離を取る。
 リング中央に立つ巫女レスラーは、表情を変えずに十六夜の動きを視線で追った。
 
「随分御立派だこと。あなたは本当に目障りだけど・・・その性格、嫌いじゃないわ。でも、その甘さでは怪物たちが揃ったこのAWGPの闘いは勝ち抜けないわよ?」

「いえ、私は優勝してみせます。東京女子プロレスの名を世間に広げ・・・社長に恩返しするのが、今の私の使命ですから」

「・・・うふふ。真面目しか取り柄のないあの社長に・・・ね。あなたも変わっているわね」

 両腕を大きく広げ、高身長の十六夜が突進する。
 再び組み付く、と思わせたのはフェイントだった。寸前でみことの鳩尾目掛けて蹴りを放つ。
 だが、冷静な〝最強巫女”はその動きを読んでいた。
 半身を捻り、前蹴りをかわす。ヴァイオレットのブーツが腰をかすって過ぎていく。
 
「くッ!?」

「これで・・・終わりにしますッ!」

 キックを空振りした十六夜の背後に、みことが回る。右腕を災厄女王の首に絡ませて。
 このまま反り投げれば、受け身も満足に取れないまま、十六夜の後頭部はしたたかにマットに叩き付けられることになる。その威力は逆一本背負いの比ではないだろう。
 改良裏投げとでもいうべきこの技が、草薙流の奥義であり、みことの必殺技だった。
 
「いきますッ! 草薙流兜落としッ――・・・きゃああッ!?」

 十六夜の身体が浮き上がった瞬間だった。
 不意にみことが技を解く。十六夜から両手を放し、自らの腰部分を代わりに掴んだ。
 
 一体なにが!? 事態を飲み込めない会場は、みことが掴んでいるものを見て、状況を悟った。
 帯がほどけ、巫女衣装の下半身・・・ショートパンツほどの赤い袴がずりおちている。
 手を離せば、下着が丸見えになってしまう――その危機に、咄嗟に淑やかな巫女は攻撃を中断して、パンティのご開帳を防いだのだ。
 
『あ、ああッ!? これは思わぬハプニング発生ですッ!』

『先程、十六夜選手のキックを避けたときですね! 帯の結び目にかすった衝撃で、切れてしまったようです』

『しかし頑丈な帯が切れるなんて・・・まさか、これが災厄ッ!? あッ! ああッ――ッ!! ここで十六夜が反撃に出るゥッ――ッ!!』

 ドキャアアアア”ア”ッ!!
 
 巫女レスラーの股間を、十六夜の右脚が蹴り上げた。
 一回り小さなみことの肢体が浮く。大事な秘部に、猛烈なキックが直撃したのだ。

「おごォオアア”ッ!!? うぐう”ッ・・・!! ゴアア”ッ・・・!!」

 可憐な黒髪美女が発したとは思えぬ、獣のような苦悶。
 股間を押さえ、ヒクヒクとみことは痙攣する。いくら武術で鍛えた少女でも、ここばかりは鍛えようがなかった。
 
「ふ・・・うふふ。形成逆転ね。災厄の恐ろしさが、わかったかしら?」

 〝カラミティ・クイーン”が右手を伸ばす。悶絶する、巫女の首に。
 もちろんみことは知っている。十六夜美響の必殺技・災厄降臨を。のど輪落としの改良版、ともいうべきこの技は、敵の首をのど輪で掴んで締め、天高く持ち上げて脳天から落とす荒業だ。
 草薙流兜落としと同じく、一発で終わってしまってもおかしくない、危険な技。
 
「ぐうう”ッ・・・うああ”ッ!!」
 
 下腹部の痛みに耐え、懸命にみことは背後に跳んだ。逃げた。
 だが無論、宿敵の動きを読んでいる十六夜も、みことを追ってくる。
 バックにジャンプした〝最強巫女”の首を、〝カラミティ・クイーン”の右手が鷲掴む。
 
「ッ!! し、しまッ・・・!!」

「あなたの方こそ喰らいなさいッ、草薙みこと! 災厄の脅威をッ!」

 宙高く跳んだ巫女を、首を掴んだまま叩き付ける。
 マットに、ではなかった。後方にジャンプしたみことを叩き付けるには、格好の場所が十六夜にはわかった。
 リングの隅、コーナーポスト。
 その一番上の紐がほどけ・・・クッション材が外れて、ロープを固定する金具が剥き出しになっている。
 
 コーナーポストが外れているなど、本来、有り得ない偶然だった。
 これが十六夜美響が呼び寄せた、災厄だというのか――。
 
「滅びなさいッ、破邪の巫女よ! 災厄降臨ッ!!」

 グキャアアアアッッ!!
 
 ポストの金具に、草薙みことの後頭部が叩き付けられた。
 マットに落とされる、とばかり思っていたみことの受け身は、完全にタイミングを間違えた。ほとんど無防備で、黒髪の後頭部に金具が埋まる。
 
「んはあ”ッ――ッ!!? うああ”あ”あ”ッ―――ッ!! ガア”・ア”ッ・・・!!」

『うわああッ――ッ!! 残酷な音色が『裏武闘館』に響き渡ったァッ――ッ!! 硬い金具に後頭部を強打した草薙みことッ、大の字になってダウンだァッ――ッ!! 優勢だった〝最強巫女”が、一瞬のうちに大転落ゥッ――ッ!!』

『・・・不運が重なりましたね。草薙選手はこのリングで闘うには、少し正統派すぎたかもしれません・・・』

 コーナーポストの下で、ガクガクとみことは震え続けている。
 仰向けに転がった瞳には、天井の照明以外、なにも映っていないようだった。
 
 ・・・3・・・4・・・5・・・ッ
 
 草薙みことのダウンを数えるカウントが、試合終了に向けて進んでいった。
 
 
 
 《試合開始より 10分経過》
 
 
「・・・7ッ・・・8ッ・・・!!」

 レフェリーのカウントが止まる。
 膝を揺らし、小刻みに身体を震わせながらも、草薙みことは立ち上がった。
 
『立った! 立ちました、草薙みこと! さすがは東京女子プロレスの未来を背負う逸材ですッ!』

『しかし・・・草薙選手の将来を思えば、立たない方がよかったのかもしれませんね』

『え? と言いますと・・・?』

『私もレスラーをしていましたからわかりますが・・・あの角度で後頭部を打てば、草薙選手の意識は朦朧としているはずです。半失神状態ですね。恐らく、立っているのがやっとでしょう。これ以上試合を続けても、凄惨な、一方的な展開になるかと・・・』
 
 パンサー理沙子の指摘通り、みことの瞳は焦点があっていなかった。
 後頭部を打ち付けた影響で、意識が混濁している。天も地もわからない有様だった。
 意地と使命感だけで立ったものの、闘う相手である十六夜美響の居場所さえ巫女レスラーには掴めていない。
 
「・・・はあ”、あ”ッ・・・!! ・・・あがあ”っ・・・!!」

 両手を伸ばし、必死に災厄女王の場所を探ろうとするみこと。
 フラフラとヨロめき歩く〝最強巫女”は、十六夜からすれば格好の獲物に過ぎない。
 
「所詮、あなた程度の力では、私の災厄は抑え切れなかった、ということね・・・」

 どこか哀しげな口調で、〝カラミティ・クイーン”が半失神の巫女に迫る。
 真正面に立った十六夜は、両手でみことの首を絞めた。
 
 グググッ・・・ギュウウッ・・・
 
「ぐう”ッ!! うぐう”う”ッ・・・!! くる・・・し・・・ィ”ッ・・・!!」

 窒息の苦しみにもがく〝最強巫女”。だが十六夜は、さらに頭上高くにまで持ち上げる。
 いわゆるネックハンギングツリーの態勢。首を絞められるだけでも息苦しいが、長身の十六夜にこの技を極められれば、完全に地面から脚が離れてしまう。
 
「ぐあああ”ッ――ッ!! ぐぶッ!! うぐぐぅ”ッ・・・!! 息ッ・・・がっ・・・!!」

 宙吊りとなった巫女レスラーは、脚をバタつかせて悶え暴れた。
 文字通りの絞首刑だった。しかも十六夜美響は、両手にさらに力をこめ、クローの要領でみことの首を圧迫する。
 
 メキッ・・・ゴキゴキッ・・・ギュウッ、ググググッ・・・
 
「かはあ”ッ――ッ!! ガア”ッ・・・!! の・・・どッ・・・!! 潰れッ・・・るッ・・・!!」

「ふふ、わかっていると思うけど・・・本当の災厄降臨は、クローで咽喉を潰しながら後頭部をマットに叩き付ける技・・・真なる災厄降臨を放つ態勢に、ようやくなったというワケ。今のあなたに、耐え切れるかしら?」

「・・・ぐぶッ・・・!! ああ”ッ・・・んはあ”ッ・・・・・・!!」

「自分でも、もう一度災厄降臨を喰らえば終わり、っていうのは理解しているようね。なんなら、今すぐギブアップしてもいいのよ? ま、あなたが死んでも降参しないタイプなのは、わかってるけどね・・・」

 ゴキッ!! ゴリゴリッ・・・メキィッ!!
 
 両手の指が、さらに深く咽喉に食い込む。みことの食道と気管とが、圧搾される音が響く。
 
「ガアア”ア”ッ――ッ!! ゴボオア”ッ!! げほお”ッ・・・!!」

 清楚な巫女の顏が苦悶に歪み、だらだらと大量の唾液が溢れ出る。
 脱出したくても、災厄降臨で脳をシェイクされたみことの四肢には力が入らなかった。ただ息苦しさと咽喉の潰れる痛みに弄ばれるだけではない。頸動脈を締められているため、脳への血流が遮断され、意識はますます混沌としている。
 
(・・・ま・・・ずい・・・視界、が・・・もう・・・真っ暗・・・)
 
「あなたの巫女の力に触発されて・・・私のなかで、災厄が暴れているわ・・・決着をつける前に、その身体で災厄を処理してもらおうかしら?」

 〝カラミティ・クイーン”の頬は、上気して桃色に染まっていた。
 ねっとりとした視線でみことを見上げている。声に含まれているのは、明らかな色欲の艶だ。
 
「うふ、ふ・・・もう我慢・・・できないわ・・・。宿敵の巫女が欲しいと・・・災厄が、疼いてる・・・」

「なッ・・・に・・・をッ!? ・・・」

 十六夜の淫靡な声を聞き、草薙みことは新たな危機を悟った。
 絞首刑だけでは済まない。災厄という名の肉欲の疼きを、〝カラミティ・クイーン”は巫女の肢体で晴らすつもりなのだ。
 だが、手足が麻痺したみことには、迫る危機を回避する方法はなかった。
 
 ゴキャアアアアッ!!
 
 首吊り状態から、十六夜は巫女レスラーをそのまま真下に降ろした。
 待っていたのは、片膝。直角に曲げた十六夜の膝が、みことの股間に吸い込まれる。
 
「はあぐううう”う”ッ――ッ!!? オア”ッ・・・!! ア”ア”ア”ッ・・・!!」

『ぐわああッ~~ッ!! ダイレクトに恥骨を砕く、十六夜のマンハッタンドロップ炸裂ッ――ッ!! これはたまらないぞォッ、草薙みことッ!! 白目を剥いて悶絶ッ――ッ!!』

『今のはキツイですよ、草薙選手! 頭部への強打に加え、頸動脈を締められてほとんどオチかけていましたからね! 脱力しているところへ、急所に強烈な一撃を喰らったら・・・!』

『あッ、あああッ!? 激しく痙攣する〝最強巫女”を、再び〝カラミティ・クイーン”が持ち上げたッ―ッ! またしてもクロー攻撃によるネックハンギングツリーだァァッ!! 反撃不能の草薙みことに、これまでの因縁を晴らすかのごとくやりたい放題ですッ!』

 緋袴の帯が完全に切れ、ドサリとみことの足元に落ちる。
 黒のインナーショーツを、露わにする巫女レスラー。上半身は白衣に朱襟という巫女装束でありながら、下半身は現代的な下着を露出させた姿は、アンバランスの妙でより官能的に見せる。
 
 白目を剥き、大きく開いた口からゴボゴボと泡を吹く草薙みこと。
 宙に吊りあげた〝最強巫女”の乳房に、真っ赤な舌を伸ばした十六夜美響がパクリと吸い付く。
 
「んはあ”ッ・・・!? ・・・アア”ッ・・・!! ぅふう”ッ・・・!!」

「んちゅッ・・・ふふふ・・・おいひいオッパイね・・・先っぽの果実が・・・コリコリした木苺みたい・・・ころがひて・・・あげりゅわぁ~・・・」

 レロレロレロ・・・ちゅぶッ・・・ぶちゅううッ・・・
 
 白衣に浮き上がった乳房の頂点を、十六夜が舌で転がす。唇でついばみ、甘噛みしながらバキュームする。
 生温かい唾液が、巫女装束越しにみことの乳首に纏わりつく。穢されている、悪寒。だが、ゾワゾワと這い上がる疼きは、紛れもなく快感。
 〝カラミティ・クイーン”の巧みな舌技に、清純な巫女は淫らな肉悦に堕ちていく。
 
「やめッ・・・!! やめなさッ・・・ぁあんっ!! ぁはあ”っ・・・!! そんなとこッ・・・す、吸わないでくださッ・・・あふぅ”ッ!! ん”っ!! ・・・だ、ダメっ・・・!! そこはダ・・・ぁはあ”ぁっ――ッ!!」

 全身を突っ張らせ、みことは叫び続けた。
 凛々しい声に、まろやかさが混ざる。やがてまろやかさは、獣が切なげに鳴く声に似てきた。
 嬌声であった。
 成す術なく、丹念に乳房を舐められて、巫女の肢体は女の悦びに染まった。性への興味を堅く閉ざしていたぶん、みことのカラダはウブそのものだった。愛撫への免疫力は、無きに等しい。
 
「こんッ・・・なぁ”・・・!! 力が・・・抜けっ・・・て・・・んふぅ”ッ!? あはぁ”、ああ”ッ・・・!! そんなッ・・・穢らわしい、ことを・・・やめぇ”ッ!! んああ”ッ、そこ噛んじゃッ!! 噛んではダメですっ――ッ!! あはあ”ッ、舌ッ・・・!! 舌、でぇ”・・・舐めないで、くだッ・・・んあぁぁうぅ”ッ――ッ!!」

 清楚な巫女の淫乱な叫びに、『裏武闘館』の場内が異様な興奮に包まれた。
 十六夜がやっている行為が、本来リングの上でされるべきものでないことはわかっている。実に破廉恥で、プロレスの本質からは外れた攻撃。
 だが、ここは『裏』のリングなのだ。
 性的な攻撃はルール上、厳密には反則にはなっていない。モラルの観点から反則扱いとなるだけだ。
 であれば、このリングでは反則としてカウントされることはなかった。
 草薙みことは十六夜美響の愛撫を、脱出できない限り浴び続けることになる。
 
「んあああ”ッ~~ッ!! ぐうぅ”ッ・・・!! 舐めッ・・・ては・・・ひゃあう”っ!! くすぐっ・・・!! うああ”っ――ッ、舌がぁ・・・ヌルヌルとォ――ッ!!」

 両手で首を絞められ、高く持ち上げられたまま、乳房に吸い付かれる草薙みこと。
 ただでさえ意識が飛び掛けているところに、官能の悦楽が昇天を誘う。朦朧とする意識のなかで。次々と襲ってくる愉悦の波動。
 
 ・・・クチュ・・・ぶちゅ・・・ヌチャ・・・
 
 宙空をみことの脚が暴れるたび、淫靡な粘着音が股間の秘部から漏れ聞こえた。
 黒のインナーショーツに沁みが広がっていた。よく見れば、悶えるみことの内股が、ヌラヌラと濡れ光っている。
 
「うふふ・・・ビンビンに・・・感じちゃっらみらいねぇ~・・・」

「あ”ッ!! ああ”ッ!! んふぅ”ッ・・・!! ダ、メッ・・・も、う・・・先端、は・・・噛まない・・・で・・・ッ!!」

「トドメよッ!! これが本物のッ・・・災厄降臨ッ!!」

 首締めと愛撫とでヒクつく〝最強巫女”を、片腕でさらに高く持ち上げる。ゴキゴキと、右手が咽喉を潰す音色が響く。
 最高点に達したところから・・・一気に後頭部をマットに叩き付けていく。
 
 ドガアアアアッッ――ッ・・・ンンッッ!!!
 
『決まっ・・・たァッ――ッ!! 決まってしまった、災厄降臨ッ!! 草薙みこと、後頭部から真っ逆さまだッ――ッ!! 災厄まみれの〝最強巫女”が地獄の底に堕ちてしまったァッ~~ッ!!』

 ビクッ!! ピクピクッ・・・ビクンッ!!
 
 リング中央、大の字に倒れたみことが痙攣を繰り返す。
 白目を剥き、小さな舌を垂らした巫女は、完全に失神していた。
 
『・・・勝負ありましたね。さすがにこれは立てません』

『いや、ちょっと待ってください、理沙子さん! 意識のない草薙に災厄女王がのしかかっていきます! 宿敵をさらに嬲ろうというのか!』

「うふふ・・・言ったでしょう。私のなかで災厄が、暴れているって。この炎を消さないとね」

 覆いかぶさった十六夜は、巫女装束の朱襟をずり降ろす。
 左右の胸の膨らみが、ぷるんとまろび出てくる。ゆったりとしたコスチュームのため気付きにくいが、みことのバストは十分に豊かなものだった。
 黒のインナーを引き裂くと、雪のように白い美乳が露わとなる。
 
 いろいろな意味ですでに興奮していた場内が、十六夜の意図を悟って沸騰した。
 カウント3ならいつでも奪える状態。しかし災厄女王は、処女の巫女を〝犯して”完全なる勝利を目指すつもりなのだ。
 
「災厄があなたの破邪の力を上回っていることを・・・大観衆に目撃してもらいましょう」

 右の乳房に赤い唇が吸い付いた。
 もう一方の膨らみは右手が揉み潰す。白いバストがぐにゃぐにゃと変形し、屹立した突起がクリクリと指で転がされる。
 残った左手を、十六夜は巫女の股間へと伸ばした。すでに沁みを作っている黒ショーツに、二本の指を添える。縦に走ったクレヴァスの筋を、すりすりと摩擦していく。
 
「・・・ぁ”・・・ん”ぁ・・・!? ふああ”ッ・・・こ・・・れは・・・ぁあ”っ!!」

「気がついたようね。でもあれだけ後頭部を打ち付けたら、しばらく身体は動かないでしょう?」

「ああ”ッ!! や、やめなさいッ・・・!! んくぅ”ッ!! ふぅ”ッ、あはぁ”っ・・・!! こんなっ・・・辱め、を・・・んんん”っ――っ!!」

「安心しなさい、草薙みこと。東女の名を広めたいというあなたの願い、叶えてあげるわ。このリングで派手にイケば・・・嫌でも話題になるでしょう」

 生温かい舌が、右の乳首に絡みつく。
 コチコチに尖った左乳首は、指でじりじりと弄られ、乳房全体をソフトな指先で撫でられる。
 ショーツ越しに摩擦する十六夜の指は、肉溝の奥へと侵入してきた。シルクの生地が、しょりしょりと陰唇に擦りつけられる。
 
「んはあ”あ”あ”っ~~~ッ!! やめッ、やめてぇっ――ッ!! あ、あついッ!! 身体がアツイっ!! お、おかしくなってしまいますっ!!」

「わかったかしら? これが災厄の力よ」

「うああ”っ、指をっ!! 指を抜いてくださいっ!! む、胸っ!! もう、先端にィ・・・触れないでくださいっ――っ!! く、くるっ!! なにかがキテしまいますっ!! んああ”あ”っ――っ!! と、とけるっ!! 蕩けてしまうぅ”っ――っ!!」

 巫女装束の美少女が、横たわったままビクビクと痙攣する。
 股間からマットへと愛蜜が落ちて小さな水溜まりを作っていた。全身が汗で濡れ光る。叫ぶ口からは、透明な涎がトロトロと溢れ出た。
 
 ズブ・・・ズブブ・・・
 
 4本の指を揃えて、十六夜美響はみことの秘裂の奥へと押し込んでいく。
 ぶじゅ、と半透明な蜜がさらに溢れ出る。ぐにぐにと内部で指を動かすと、津波のような快感が巫女の肉襞に叩き込まれた。
 
「ふぎゃあ”っ!? えはああ”あ”あ”っ――っ!!」

 残った親指が、縦筋の上部にある肉芽に当てられる。
 もっとも過敏な淫豆を、親指はコリコリとこね回した。
 電撃のような快感が、トドメとなってみことの子宮に突き刺さる。
 
「ひぎゃああ”あ”っ――っ!! く、くるぅっ――っ!! あああ”あ”あ”あ”っ―――んんっ!!」

 一瞬、大きく巫女の肢体が跳ねた。
 決壊の音がして、黒ショーツの股間から大量の飛沫が噴出される。
 
 ぶしゅっ!! ぶしゅうううっ――っ・・・!! じょぼぼぼ・・・
 
『あっ・・・ああっ――と!! 昇天ッ!! 草薙みこと、無惨な昇天ッ――ッ!! あらゆる巫女の体液が、マットへと沁みを広げていきますッ・・・』

 涎と涙を垂らしながら、みことはガクガクと震え続けていた。
 ようやく十六夜の唇が、右胸から離れる。唾液の糸が、ツ・・・と乳首との間に繋がった。
 大きく開いた股間からは、ぶしゅぶしゅと、愛蜜混ざりの飛沫がいまだ飛んでいる。
 
「終わった・・・わね」

 長きに渡る抗争の相手を、〝カラミティ・クイーン”はじっと見下ろした。
 巫女装束の少女は、大の字のままで濡れ光っている。股間は自らの潮、乳房は十六夜の唾液で濡れ、顏は涙と涎でグショグショだった。
 
「あなたの代わりに、私が勝ち進むわ。東京女子プロレスの、看板を背負ってね。あの地味な団体の凄さが、もっと世間に伝わるように・・・」

 両手で首を掴んだ十六夜は、ぐったりと脱力したみことを無理やり引き起こした。
 ポタポタと雫を落とす巫女レスラーは、〝カラミティ・クイーン”に支えられて立ち上がる。
 
「・・・ぁあ”ッ・・・・・・ぅあ”・・・ア”・・・・・・」

「これまでしのぎを削った者としての、情けよ。きちんとした必殺技で、決着はつけてあげるわ」

 そのままフォールに入っても、十六夜の勝利は決まっていただろう。
 だが、愛撫による失神で負けたとあっては、草薙みことの名に傷がつく。最大の必殺技で負けるのとは意味が大きく変わることを、ベテランレスラーはわかっていた。
 
「さあ、これで全て終わりにしましょう! 災厄降臨ッ!!」

 片腕で持ち上げられた巫女の肢体が、高々と宙に舞った。
 
 
 
 《試合開始より 20分経過》
 
 
 破邪の力を持つ巫女と、災厄を呼び寄せる〝カラミティ・クイーン”。東京女子プロレスの、そして正邪の頂上決戦に決着がつく――と、誰もが思った。
 白目を剥いていたみことの瞳に、突如生気が戻ったのはその時だった。
 
「なッ!!」

 死に体だった巫女の、突然の蘇生。
 右腕を掴まれる感触に、十六夜が慌てる。宙高く掲げられた体勢から、みことの反撃が始まっていた。右腕を両手で掴み、身体を反転させる。黒タイツを履いた脚が、十六夜の首にかけられた。
 
『くッ、草薙みことッ!! まだ終わってはいなかったッ――ッ!! 災厄降臨で掲げられた状態からッ・・・これは腕ひしぎ逆十字だァッ――ッ!!』

『十六夜選手、油断していましたね! 首へのクローが甘かったようです!』

 〝最強巫女”が十六夜の右腕に絡んでぶら下がる。
 両腕、両脚、そして背筋とに力をこめ、一気に引き伸ばした。
 
 ブチブチブチィッ!! ビキビキッ!!
 
「ひぎィッ!! ぐわああ”あ”ッ―――ッ!!!」

『十六夜美響の右腕がッ・・・崩壊の悲鳴をあげるッ――ッ!!』

『いくらパワーに差があるとはいえ、草薙選手は全身の筋肉、対する十六夜選手は右腕一本ですから、敵うわけがありませんッ!! マットに引き倒されたら最後、右腕は完全に脱臼してしまうでしょう!』

「はあっ!! はあっ!! はあっ!!」

 これが最後のチャンスとばかり、みことが全力で右腕を伸ばしていく。
 ブチブチと、不気味な音色が響いた。激痛に〝カラミティ・クイーン”が絶叫する。
 
「長い愛撫のおかげで・・・助かりました」

 荒い息を吐きながら、みことは感謝の言葉を口にした。
 
「確かに私は・・・あなたの色責めによって、惨めな醜態を晒してしまいました・・・ですが災厄降臨のダメージからは、わずかに回復できたのです」

「くッ・・・!! 災厄の疼きに従ったのが・・・失敗だとでも言いたいようね!?」

「そうですッ・・・! 勝負に徹していれば・・・私はこのリングを去らねばならなかったでしょう」

「そのしぶとさッ、さすがと言っておくわ! だけど、もう勝った気でいるのは・・・感心できないわね!」

 ドオオオオッ!!
 
 腕ひしぎを掛けられたまま、十六夜が脳天からみことをマットに落とす。
 無茶な態勢からの反撃で、十六夜の右腕がビキビキと鳴る。何度目となるかわからない痛打を受けて、巫女は災厄女王の右手を離していた。
 
「ぐああ”ッ!! ううう”ッ――ッ!!」

『十六夜美響、腕ひしぎから脱出ッ――ッ!! なんと強引な技の外し方だァッ~~ッ!!』

『あれでは一歩間違えたら、二度と右腕が使えなくなりますよ!? 十六夜選手、なんて危ないことを!』

「ふ、ふふッ・・・! ケガなんて恐れていたら・・・災厄なんかと長く付き合えないわ・・・」

 右手の指を大きく開き、また閉じる。
 数回同じ動きを、十六夜は繰り返した。
 
「・・・大丈夫。まだ私の右手は、壊れていないわ・・・これなら災厄降臨は放てる・・・!」

 草薙みことが、フラフラと立ち上がっていた。
 汗と涙と涎とでベトベトに濡れた顏は、蒼白になっている。
 瞳の焦点が、定まっていなかった。幾度も頭部を叩き付けられ、〝最強巫女”の視界はぐにゃぐにゃに歪んでいる。眼の前にいるはずの十六夜の姿さえ、見えていないのだ。
 股間からは、トロトロと秘園の蜜露が垂れていた。
 精力も体力も、限界は間近だった。なにが巫女レスラーを立たせるのか、十六夜にはわからない。
 
「ぅああ”ッ・・・!! ああ”、ア”ッ・・・!!」

「それが、破邪の力というやつかしら? その身体で立ってくる精神力・・・褒めてあげるわ」

 みことに迫った十六夜が、右手で首を鷲掴む。
 ほとんど暗闇に視界を閉ざされた巫女は、逃げる術もなく掴まってしまった。
 
「草薙みこと、あなたの実力は確かよ。巫女というキャラも、悪くないわ。でも、あなたのまともすぎる闘い方では、このリングは勝ち上がれないッ!! 東女の強さを伝えられないわッ!!」

「うああ”ッ・・・ああ”ッ――ッ!!」

 もがくみことを、強引に〝カラミティ・クイーン”が高々と掲げる。
 後頭部から、真っ逆さまへ――。
 長き闘いに終止符をうつべく、十六夜が必殺技を放つ。
 
「災厄降りッ――!!」

 ズルウウウゥゥッ――ッ!!
 
 首を締め上げる右手が、ズルリと滑ったのはその時だった。
 
「しまッ――!!」

 なんというタイミング。間の悪さ。
 首のクローから逃れた〝最強巫女”が滑り落ちる。十六夜の背後へと着地する。
 その顏から噴き出した汗が、口から垂れ流れた涎が、〝カラミティ・クイーン”の右手をベチョベチョに濡らしていた。
 
「バカなッ!! まさかこれがッ・・・あなたの本当の破邪の力だと言うのッ!?」

「違います・・・ッ! 破邪の力は、特別な力でもなんでもありません」

 草薙みことの右腕が、背後から十六夜の首に絡みつく。
 意識朦朧としていても、視界がほとんど閉ざされていても、密着した状態なら技を掛けるのに問題はない。
 
「破邪の力は、努力し、困難に打ち克つ普通の力ですッ!! 地味といわれようが、まともと言われようが、私はこの普通の力でこの大会を勝ち抜きますッ!!」

 十六夜美響の長身が、ふわりと浮き上がった。
 草薙みことの変形裏投げ。反り投げられた〝カラミティ・クイーン”が宙を舞う。後頭部から、垂直に硬いリングに落下していく。
 
「草薙流・・・兜落としッ!!」

 ズダアアアアッッ――ンンンッ!!!
 
『決まっ・・・たァッ――ッ!! 〝最強巫女”の最大奥義が、ついに炸裂ッ――ッ!! 這いずるように、草薙みことが十六夜美響の上に乗ったァ!!』

 1ッ・・・2ッ・・・・・・3ッ!!
 
『大ッ、逆ッ、転ッ――ッ!! 破邪の力vs災厄、ここに決ッ着ゥゥッ――ッ!! 勝ったのは〝最強巫女”草薙みことだァッ――ッ!!』

 大歓声が、『裏武闘館』全体を包み込んだ。
 〝カラミティ・クイーン”の身体に乗ったまま、巫女レスラーもまた動くことはできなかった。搾りカスのような残りわずかな力を使い果たし、放った一撃だった。
 清楚な巫女と妖艶な災厄女王は、ともに全身で息をしながら折り重なっていた。
 その姿は、ふたりが抱き合っているようにも見えた。

「・・・ふふ・・・残念。負けちゃったわね」

「・・・災厄が集まるというあなたの体質なら・・・あなた自身にも災厄は降りかかるはずと思っていました。さんざん苦しめられましたが・・・最後は災厄に助けられたようです」

「勝ち上がって、東女の名を少しでも広める予定だったんだけど」

 〝カラミティ・クイーン”の口元がわずかに綻んで見えた。
 
「仕方ないわ。あなたに・・・任せてあげる。頼んだわよ、草薙みこと」

 満員の観衆による〝東女コール”が、死力を尽くしたふたりのレスラーの上に降り注いだ。
 
 
 
 ○草薙みこと(24分15秒 草薙流兜落とし→体固め)十六夜美響●
 
 
スポンサーサイト
| レッスルエンジェルス | 15:24 | トラックバック:0コメント:1
コメント
レッスルエンジェルス、予選の第三試合です。
これまではレッスルのなかでも比較的有名な選手の試合を書いてきたんですが、今回はちょっとマイナー?(とはいえ、レッスルファンのなかには、きっと好きな方も多いかとは思うのですが・・・)な選手を選んでみました。

当初思っていたのとは、逆の結末になったのですが、このふたりは公式でもライバル関係なので、そのあたりがうまく表現できているといいですね(^v^)
2015.05.07 Thu 15:29 | URL | 草宗
コメントする














管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL
http://kusamune.blog45.fc2.com/tb.php/360-1f0e1022
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック
| ホーム |

プロフィール

kusamune

Author:kusamune
FC2ブログへようこそ!

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ

カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索

RSSフィード
リンク