巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

ウルトラレディ・レオナ&メリム②「誇り継ぐ者」後編 | main | オメガスレイヤーズ ~カウント5~ 「第二話 1年前。落日のプレリュード」⑤
ウルトラレディ・レオナ&メリム①「誇り継ぐ者」前編
 1、
 
 
「うおおッ・・・メリウムダイナマイトっ!!」

 辺境の惑星に、膨大な光と熱の爆発が起こる。
 断末魔の咆哮を轟かせ、怪獣の群れが炎の渦に消えていく。数多く跋扈していた怪獣たちは、気がつけば当初の3分の1以下にまで減っていた。ウルトラクイーン直属の親衛隊による掃討作戦は、間もなく終結を迎えようといている。

 
「レオナさん、アスっち! こっちはほとんど終わりですっ! あとはそちらをやっつけてもらえれば・・・」

「わかっている! 言われなくとも、すぐに終わらせる!」

「アスっちって呼ぶなってば! もう、レイがヘンな呼び名つけるから、メリちんにまで移っちゃってるじゃんか!」
 
 ウルトラレディ・メリムの反対側では、獅子座の双子姉妹が無数の怪獣相手に奮闘していた。
 エンペラ星人率いる〝帝国”軍と、ウルトラ戦姫の存亡を賭けた決戦から数か月。
 暗黒宇宙の首魁を滅ぼした闘いは、戦姫たちの母星・光の国にも大きな後遺症を残していた。多くの戦姫が斃れただけでなく、侵攻を受けての損壊も激しい。ウルトラクイーンやマザーによる懸命の復興作業は、今も依然として続いている。
 
 光と闇。ある意味で、安定していたバランスが崩壊したのだ。暗黒皇帝を倒したことで、もたらされたのは平和だけではなかった。
 無秩序状態となった宇宙を守るためにも、ウルトラ戦姫たちの果たす役割は、より大きなものとなっていた。特に中心的存在である、ウルトラシスターズにかかる期待は大きい。
 獅子座L77星雲の皇女、レオナとアスナの双子姉妹と、次世代のホープとされるメリム。この3人は光の国に配属され、宇宙全体に睨みを利かす重責を担っていた。クイーンやマザーの手足となって、重要案件の処理にあたるのだ。
 地球では異次元人ヤプールやヒッポリト星人の残党が暴れているという噂も耳にするが、詳細は彼女らには伏せられていた。戦力の乏しい今、この3人に地球に向かわれたら、広い宇宙全体の平和を保てなくなってしまう。クイーンやマザーが光の国を離れられないのも、同じ理由からだ。
 
 今回、ある惑星に凶悪かつ獰猛な怪獣たちが、大群を成して集結しているという情報をえて、この3人が掃討に向かったのも当然の流れであった。
 
「レオナキィーックッ!!」

 ツインテールの姉戦姫が、必殺の飛び蹴りを炸裂させる。
 泡攻撃を繰り出そうとしていたアボラスの頭部に、真っ赤に輝く右脚は吸い込まれた。一瞬の間を置き、爆発する青色の怪獣。
 
「危ない、お姉ちゃんっ! 後ろ!」

 アスナの声より早く、衝撃がレオナの後頭部を襲った。
 巨大な岩石を持ち上げたレッドキングが、金色のツインテールに容赦なく振り下ろしていた。
 
「ぐああ”ッ!! ・・・ぐッ・・・うう”ッ!」

 さすがのウルトラ戦姫も、怪力を誇るどくろ怪獣に、巨岩で殴られてはたまらない。
 一瞬、レオナの視界が暗黒に染まる。卒倒しかける肢体を、武人戦姫は両脚を踏ん張って耐えた。
 
「今度は前っ!! 避けて、お姉ちゃんっ!!」

 悲痛な妹の声に、ハッとして顏をあげる。
 キングザウルス三世が、四つ足を駆って、イノシシのごとく猛進していた。
 ジャンプしてかわす――脳はそう指示するものの、レッドキングの一撃で肉体にはわずかな麻痺が残っていた。数瞬の遅れが命取りになる。
 
 グサアアアッ・・・!!
 
「うぐう”ッ!! ぐあああ”ア”ア”ッ――ッ!!」

 キングザウルス三世の長く鋭いツノが、レオナの右の太ももに突き刺さった。
 
「ぐうう”ッ・・・し、しまッ・・・!!」

「お、お姉ちゃっ・・・きゃああっ!?」

 姉の窮地に駆け付けようとするアスナに、怪獣の群れが重なって襲い掛かる。
 四方を囲む怪獣軍団に、アスナもまた飲まれていった。無理もなかった。獅子座姉妹を包囲した凶悪怪獣は、20体は下らないのだから。

「くッ!! アスナァッ、インフィニティー・ノヴァだ! こいつらをまとめて倒すにはそれしかッ・・・」

 レオナとアスナ。武闘派で鳴らすふたりの格闘技術は眼を瞠るものがあるが、強力な光線技を持たない、という弱点がL77星雲の皇女にはあった。
 姉妹が手を取り合って放つ合体光線、インフィニティー・ノヴァならある。威力という点でも、数あるウルトラ戦姫の光線技のなかでも最上位にランクされるだろう。
 だが、ふたりが揃わなければ、放てないのだ。
 レオナの叫びは、いくつもの咆哮に掻き消された。怪獣たちがつくる波に阻まれ、双子姉妹は完全に分断されてしまっている。
 
「あ”ッ!? は、離せッ・・・!!」

 背後のレッドキングによって、レオナの両腕は羽交い絞めにされた。
 格闘術に自信はあっても、純粋なパワー勝負ではどくろ怪獣には敵わない。敵意を剥き出した凶悪怪獣の群れのなかで、レオナの動きは封じられてしまう。
 
 ブスウウッッ!!
 
「はア”がッ!! うあア”ッ、ぐわああア”ア”ア”ッ~~ッ!!」

 キングザウルス三世のツノが、今度は下腹部に抉り刺さっていた。
 激痛に叫ぶ獅子戦姫を、レッドキングが解放する。両腕が自由になったレオナは、反撃より先に、たまらず鮮血を噴き出す下腹部を抑えていた。
 ドガアアアッ!! と轟音が響いて、レッドキングの豪腕が横殴りにレオナの側頭部を薙ぎ払う。
 
「ごふッ!! ・・・ぅ”ア”・・・ェ”ッ・・・!!」

 半ば失神した、ツインテールの武闘戦姫。
 受け身も取れず、仰向けに倒れ込む。しかし、レオナがダウンしたのは、惑星の大地の上ではなかった。
 マット代わりに待ち受けていたのは、磁力怪獣マグネドンの背中だった。
 
 バジジッ!! バリバリバリッ!! ズバババッ!!
 
「ぎゃハア”ッ・・・ガアアアア”ア”ッ――ッ!! ああああ”ア”ア”ッ~~ッ!!」

 マグネドンの両側面から生えた、合計6本の赤いツノ。
 身体全体が磁石で出来ている怪獣は、内部で生み出した電流をツノから放った。背中に転がる、戦姫に向かって。
 高圧の放電が、レオナを焼く。処刑の電気ベッドに寝てしまった獅子戦姫は、絶え間なく撃ち込まれる電撃に身を起こすこともできない。
 
「うああ”ア”ッ、こ、これでは・・・逃げられッ、ない!! 身体、がッ・・・痺れッ、て・・・!!」

 ビクンッ・・・ビクッ、ビクンッ・・・
 
 痙攣するレオナを、レッドキングが冷たく見下ろす。その頭上に、巨大な岩石を高く掲げて。
 
 ドキャアアアッッ!!
 
 マグネドンの背中に張り付いたレオナの胸に、力一杯、固い岩が投げつけられる。
 乳房の膨らみごと、巨岩はツインテール戦姫の胸骨を粉砕した。
 
 グシャアアアッ!! ベキベキベギィッ!! グチュッ!!
 
「ごぴゅうッ!! ゴハア”ッ!! アガァ”ッ・・・!! グアアアア”ア”ッ――ッ!!」

 血塊と絶叫が、レオナの口から迸った。
 怪獣軍団の責めはまだ終わらなかった。勢いをつけたキングザウルス三世が、岩とマグネドンの間にサンドイッチされたスレンダーな肢体に突っ込む。
 右の脇腹に、根本まで深々と長いツノが突き刺さる。
 
 ズボオオッ・・・オオオッ!!
 
「んぐう”ウ”ゥ”ッ――ッ!! ・・・ゴフッ・・・!! ァ”・・・ぅア”・・・」

 再び大量の吐血が、レオナの口を割って出た。
 深紅のレオタードにも似た強化スーツは、戦姫自身が噴き出した鮮血で、真っ赤に濡れている。
 獰猛さを露わにした怪獣たちの猛撃に、武闘戦姫は成す術なく飲まれようとしていた。
 
「レオナさんっ! 今、助けるのです!」

 天を仰ぐレオナの視界に、黄金の光を纏った後輩戦姫の姿が映る。
 上空を舞うウルトラレディ・メリム。いや、白を基調とした強化スーツに、黄金のパーツが華々しく装飾されたこの姿は・・・〝セカンド・ブレイク”=第二のエネルギーを開放し、進化を遂げたメリム・ブレイブであった。
 
「メリ、ムッ・・・お前、力をッ・・・全開にしたのかッ!?」

 この場に救出に来たということは、ブレイブ化したメリムは、己に割り当てられた区域の怪獣は一掃したということだろう。
 
「気を、つけろッ・・・! 残ったこいつら、はッ・・・いずれも手強い、連中だッ!」

「大丈夫なのですっ! 一気にやっつけちゃいますからねっ!」

 メリム・ブレイブの口調には、どこか余裕が漂っていた。
 自分がこれほど苦戦している相手に・・・余裕なのか!?
 レオナの胸の奥が、チクリと痛む。そこは、無傷で済んでいるはずの箇所なのに。
 
「メリウムナイトブレードォ・・・アタァーック!!」

 左手首に装着したメリウムブレスから、光の剣が長く伸びる。「∞」の形をした光輪を描くと、超高速度で群がる地上の怪獣たちに射出した。
 
「なッ、なんだとッ!?」

 ドドドッ!! ドドオオオッ!! ドゴゴゴオオオッ!!
 
 最大の必殺光線を、メリム・ブレイブは惜し気もなく撃ち込んだ。怪獣軍団に何発も連射する。
 レッドキングが一瞬にして蒸発し、マグネドンが光のなかに消えた。爆発と眩い閃光が煌めくなか、20体もの怪獣たちが呆気なく滅んでいく。
 
「・・・なんて、ヤツだ・・・」

 レオナが苦戦を続けた怪獣たちは、メリム・ブレイブの登場で1分と経たないうちに殲滅されていた。
 電撃の拘束から逃れたレオナの足元では、沸騰したマグマがグツグツと滾っている。
 メリウムナイトブレードアタックの、あまりの高熱と出力によって、マグネドンが変わり果てた姿だった。
 磁力怪獣はバラバラにされても、全身磁石の身体ゆえ元通りに戻ってしまう。その不死身ぶりに、かつて闘った先輩戦姫のジェニスは、マグネドンを倒すことを諦め、宇宙に放り出すことで災厄を除いたほどだ。
 そのマグネドンを、メリム・ブレイブはあっさりと倒していた。
 磁石の身体すらを超高熱で溶かし、元のマグマにまで戻してしまったのだ。
 
「・・・私は・・・光線技すら、満足に出せないというのに・・・」

 無意識のうちに、レオナは己の拳を、強く握っていた。
 血が、滴り落ちるほどに。
 
「うっひゃあーっ、すっごいねぇ! これ、全部メリちんがやったんだぁ?」

 感心の声をあげるアスナが、自分の任務を終えて足取り軽くやってくる。
 四方から襲ってきた怪獣たちは、パワー溢れる打撃で、残らず殲滅していた。努力型のレオナに対して、アスナは紛れもなく天才型。こうした乱戦になればなるほど、その格闘センスは発揮される。
 
「あはは。さすがに数が多かったから・・・ちょっと、疲れちゃいまし・・・た・・・」

「おっとぉ! ダイジョウブ?」

 話している途中で、メリム・ブレイブの身体が傾いた。
 黄金のパーツが消え、通常のメリムの姿に戻る。意識を失った後輩戦姫を、すかさず駆け寄ったアスナが抱き止めた。
 
「もう! ブレイブ化すると大量のエネルギーを消費するってのに・・・そういうとこは成長してないなぁ」

「アスナ。しばらくメリムを頼めるか」

 じっと黙り込んでいたレオナが、静かに妹戦姫に呟く。
 状況が飲み込めなかったアスナであるが、すぐに姉が緊張している理由を悟った。
 
 キングザウルス三世が、生きている。
 この怪獣は、強力なバリアを張れるのだった。メリウムナイトブレードアタックの威力さえ、防いでしまうほどの。
 
「お姉ちゃんっ! その身体じゃっ・・・」

「構わない。私にだって、これくらいは・・・なんとかなる」

 レオナの口調に含まれた響きが、やけに自虐的なものにアスナは聞こえた。
 刺された太ももにも関わらず、全力でレオナは疾走した。
 鮮血を散らしながら向かってくる獅子戦姫の勢いに、押されたのか。危険を感じたキングザウルス三世は、眼前にバリアを発生させた。
 
「たあッ――ッ!!」

 四つ足怪獣の直前で、大きくレオナは飛翔した。
 バリアを飛び越える。ギュルギュルと回転しながら、キングザウルス三世の背中に急降下する。
 
「錐揉みレオナキィーック!!」

 深紅のドリルと化した獅子戦姫は、怪獣を真上から串刺しに貫いた。
 生き残った、最後の怪獣が炎に包まれて爆散した時、3人の戦姫に与えられた掃討作戦は終了した。
 
 
 
 2、
 
 
 怪獣軍団との闘いから、一週間が過ぎていた。
 
 光の国の「修練場」には、鋭い呼気と打撃が風を切る音が、すでに10時間以上鳴り続けている。人影は他にないというのに、広い室内には熱気が充満していた。
 一心不乱に空想した敵とのシャドーを行っているのは、ツインテールの戦姫だった。
 
 一週間前、レオナが負った傷は、ほとんど完治している。
 胸骨が完全にくっつく前から、獅子戦姫は稽古を再開していた。動かずには、いられなかった。
 じっと病室のベッドに眠っていると、目蓋の裏には決まって同じ光景が蘇るのだ。
 
『大丈夫なのですっ! 一気にやっつけちゃいますからねっ!』

「・・・くッ!」

 鋭い右のストレートを、レオナはなにもない空間に突き出した。
 スピードもタイミングも、申し分ない一撃だった。師匠であるセレナが見たら、少しはお褒めの言葉がもらえるかもしれない。
 だが、唇を噛み締めたレオナは、じっと握った拳を燃えるような瞳で見詰めた。
 
「あー! レオナさん、こんなところにいたんですねっ!」

 「修練場」に入ってきた後輩の姿に、思わずレオナは視線を逸らした。
 
 なぜ、よりによってお前が来るんだ?
 
 よぎった思いを、必死に打ち消す。いや、私はこの子のことが嫌いなわけではないのだ。ただ・・・今は少しだけ、顏を合わせたくなかった。
 
「・・・なんのようだ、メリム」

「クイーンがお呼びなのです。メリムとレオナさん、ふたりに用があるらしいですよ? なんなんだろうなー、きっとお仕事ですよっ、たぶん、きっついヤツ!」

 太陽のような笑顔で、新世代戦姫は喋り続けた。
 天真爛漫を絵に描いたような娘だ、レオナは思う。そこが魅力であり、羨ましくもあり・・・今はちょっと、苛立たしくもある。
 
「クイーンがわざわざ呼びつけるのであれば、重要な任務が我らふたりに課せられるのだろうな」

「あ、そうだ。レオナさん、この前のケガはもう大丈夫なんですか? あのときは、かなり重傷だったみたいですけど・・・」

 メリムに悪意がないのは、わかっていた。
 それでも視線が鋭くなるのを、レオナは抑え切れなかった。
 
「・・・済まなかったな。お前の足を引っ張ってしまって」

「へ?」

「メリム・ブレイブがひとりいれば、実際私たちなどいなくてもよかったんじゃないのか? なにしろ、私ときたら」

 先程と同じように、右のストレートを空間に放つ。
 空気との摩擦で、拳から仄かな煙が昇るほどのいいパンチだった。
 だが、レオナが本当に出したかったものは、打撃技などではなかった。
 
「・・・ご覧のように、ひとりではろくに光線技も出せない未熟者だからな」

 何万回と繰り返し練習しても、レオナから光線技が撃ち出されることはなかった。
 
「み、未熟者だなんてっ・・・! レオナさんはめちゃめちゃ強いじゃ・・・」

「私が苦戦する相手を、お前の光線は一瞬で消し去る。さぞ、痛快だろうな。セレスさんたち先輩戦姫を押しのけて、お前はブレイブ化までしてしまうんだから・・・さすがに次世代のホープは、私などとは才能が違うというわけだ」

「・・・レオナさん・・・メリムはそんなこと、思ったことないです」

 視線を合わせぬ獅子戦姫のスーツを、すがるようにメリムは掴んだ。
 純粋な新世代戦姫の声には、深い悲しみがはっきりと込められていた。
 
 私は、なにをやっているのだ?
 
 後悔の念が、レオナの胸に押し寄せる。わかっている。メリムは、なにも悪くはないのだ。
 悪いのは、自分。才能の無さと、心の弱さが憎い――。
 だが、レオナの口を突いて出るのは、ますます後輩を責める言葉だった。
 
「ひとつ、言っておくぞ。お前のように、力に任せた闘い方は・・・私は嫌いだ。あのような、ブレイブ化に頼った闘いを続ければ、いずれ必ず身を滅ぼす。キングザウルス三世を、仕留め切れなかったようにな」

「・・・でも、メリムは・・・」

「私のような落ちこぼれの言葉は、耳には届かないか」

 スーツを掴むメリムの指を、レオナは振り切った。
 
「・・・先にいく」

 ひとり暗い室内に残されたメリムは、己の指をじっと見つめ続けた。
 
 
 
「おお、ふたりとも揃ったかの」

 直立不動で並んで立つふたりの若き戦姫を見て、ウルトラクイーンはすぐに異変に気付いた。
 
(ふむ。こりゃあ、ちょいとやらかしおったようじゃなぁ)

 幼稚園児にも見える外観のクイーンではあるが、その実年齢はレオナやメリムの10倍ほどはある。
 視線を合わせぬふたり、そしていつもより0.07倍ほど開いた距離を見れば、両者の間にひと悶着あったのは歴然であった。
 
(ま、そうなるのは想定済みで、こやつらは同じ配属にしとるんじゃがのう。昔のシャインとセレス・・・最近でいえば、アルファとティアナを思い出すわい)

 思わず微笑みそうになるのを必死にこらえ、クイーンは本来の主旨を語り始めた。
 
「レオナ、メリム。おヌシらには、怪獣墓場近くの惑星にいってもらうぞ」

「怪獣墓場の近く、ですか」

 クイーンに直接仕えるのには慣れているレオナが、すかさず聞き返す。
 
「暗黒皇帝エンペラ星人が滅びて以来、怪獣墓場から、安らかな眠りについている怪獣を連れ去るケースが増えているのじゃよ」

 遠回しに言ってはいるが、要するに強豪怪獣を配下にするため、蘇生させる宇宙人が増えている、ということだろう。
 
「暗黒宇宙の支配者が、消えたわけじゃからな。野心を抑え切れぬ連中が、跋扈するのも仕方あるまい」

「なぜ、私たちふたりを?」

 言外に、なぜアスナとの姉妹で行かせてくれないのか、不平を含ませてレオナは訊ねた。
 
「相当な大物が、その惑星には潜んでいる可能性がある」

「大物、ですかっ?」

 初めてメリムが言葉を発する。
 戦力が限られている今、このふたりを投入するということは・・・クイーンも強い覚悟でこの作戦に臨んでいるのだろう。
 
「万が一、その情報が真実ならば・・・我らにとっては大いなる好機。だからこそ、現時点で最高戦力のお前たちを送り込むことにしたんじゃ。心してかかるがいいぞ、ふたりとも」



 3、
 
 
 一言も交わすことがないまま、レオナとメリムは問題の惑星へと到着した。
 茶色の岩肌と、わずかな緑。湖らしき、青い水面がキラキラと光っている。
 名もなき辺境の惑星にしては、かなり環境のいい星だった。暑すぎず、寒すぎず、酸素も少しはある。
 知性を持つ異星人が、この地を潜伏場所に決めたとしても十分納得がいった。
 
「・・・あの・・・レオナさん」

「私のことは、構わないでいい」

 ピシャリと遮るように、レオナは言った。
 
「ブレイブ化したければ、とっとなればいい。その代わり、私も好きなようにやらせてもらう」

「・・・なんで、そんな・・・悲しいことを言うんですか?」

「私など、足手まといになるだけだろう。だがな、これでも武人の誇りまで失くしてはいないつもりだ。後輩に守ってもらうくらいなら、いっそひとりで闘った方が・・・」

「誰かと思えば、貴様たちか」

 レオナの言葉を、低い声音が遮った。
 反射的に、構えていた。レオナもメリムも。
 身構えずにはいられないほど、突如荒野に出現したその異星人は、存在を際立たせていた。
 
「うっ!! あ、あなたは!?」

「ッ!! ・・・大物というから誰かと思えば・・・まさか貴様がこんな惑星に潜伏していたとはなッ!」

 言い争っていたのがウソのように、ふたりの戦姫は並んで構えた。
 圧倒されていた。敵異星人に。
 叩きつけてくる風格の威圧に、ふたりが揃わねば立ち向かえない気がした。
 
「メフィラス星人ッ!! ・・・なにを企んでいるッ!?」

 真っ直ぐに歩みを進める悪質宇宙人は、まるでレッドカーペットの敷かれた王道を闊歩するがごとくであった。
 威風堂々。
 光の国の使者である自分たちが、ひどく矮小なものにレオナは思えた。あるいは、現在の精神状態が、必要以上に自信を失わさせているのかもしれない。
 
 元〝帝国”四天王のひとりであり、実質のリーダー格であった〝知将”。
 先の〝帝国決戦”では、確かにエンペラ星人が暗黒宇宙の首領ではあったが・・・現実的には、ウルトラ戦姫をほぼ壊滅状態に陥らせたのはこの男だった。エースであるシャインをはじめ、多くのウルトラシスターズがメフィラスの奸計に嵌って敗れたのだ。
 エンペラ星人亡き今、暗黒宇宙の支配者にもっとも近い位置にあるのは、この男に間違いなかった。
 
「・・・あのときの傷は、治ったんですね」

 〝帝国”との最終決戦。現場に居合わせたメリムは、メフィラスの最後の姿を覚えている。
 ウルトラ戦姫もボロボロだったが、〝知将”もまた無事ではいられなかった。深手を負った両者は、そこでの決着を回避して別れたのだ。
 
「・・・80%というところだ。だからこそ、貴様らを呼び出した」

「呼び出した、だとッ!?」

「我が現状を確認するためにな。それには、貴様らウルトラ戦姫との手合せが一番だ」

 クイーンは情報を得たと言っていたが・・・まんまとメフィラスに「情報を掴まされていた」事実をレオナは悟る。
 そうした情報戦の類いは、悪質宇宙人がもっとも得意とするもののひとつだ。戦姫をこの地に派遣させるため、わざと痕跡を残したのだろう。
 
「だが・・・正直、ウルトラクイーンにはガッカリだ」

「なんだと・・・?」

「この私がいることを教えてやったというのに・・・貴様らのような、ハンパ者をよこすとはなッ!! なぜクイーンかウルトラマザーが出撃せぬ!? 随分と舐められたものだ」

「なっ・・・こっちの方が舐められてるのですっ!!」

 いつもはどこかノホホンとした雰囲気を纏うメリムが、怒りを露わにするのは珍しいことだった。
 
「メリムもレオナさんも、ハンパなんかじゃないのですっ! それに自分の調子を確認するためにあたしたちと闘うなんて・・・上から目線もいいとこすぎますっ!」

 自分の名前を出されて、ジクリとレオナの胸の奥が痛む。
 メリムが気を遣って、ふたりを同格にしているとは思わない。きっと、本心からの想いなのだろう。
 だが・・・。
 
「フン。少し見ぬ間に随分と偉そうな口を利くようになったな、メリム。この私に手も足も出ずに敗れ、凌辱の末に息絶えた過去を忘れたのか?」

 怒りではない感情に、メリムの頬が真っ赤に染まる。
 まさしく〝帝国決戦”の緒戦。メリムはメフィラス星人に惨敗を喫していた。その屈辱は、若き戦姫の脳裏に、当然こびりついている。
 
「あ、あれはっ・・・卑怯なのですっ! ナックル星人とかバードンとか、いっぱい他にいたんだもん! それに今のメリムは、あの時と比べモノにならないほど強くなってますっ!」

「・・・笑わせる」

 うんざり、といった様子を、メフィラス星人は隠しもしなかった。
 
「ホープと称えられ、思い上がるマヌケと・・・光線技もろくに使えぬ未熟者が相手だと? 貴様らは所詮、劣化版のシャインとセレスではないかッ! 身の程をしれッ、小娘どもッ!!」

「く、ぬぬぬっ・・・! もう許せないのですっ! やりましょう、レオナさんっ!」

 今にも漆黒の異星人に飛び掛かろうとするメリム。
 だが、対照的にレオナは、ぐっとふたつの拳を握ったまま視線を落としていた。
 
「っ!? レオナさんっ?」

「・・・劣化版のセレスさん、か・・・確かにセレスさんから、光線とセレスラッガーと天才的な格闘センスを引けば・・・私になるのかもしれないな・・・」

「な、なに言ってるんですかぁっ! メフィラスの挑発なんか、マジメに聞かなくていいのですっ! レオナさんはセレスさんとは、ぜんっぜん違いますよぉ!」

 励ましてくれている、とわかっても、メリムの言葉はレオナには素直に届いてこなかった。
 それは・・・セレスさんとは全然違うだろう。あのひとも、そしてメリム、お前も天才で・・・私は・・・
 構えたはずの拳から、力が抜けていく錯覚をレオナは感じた。
 
「・・・フン。ますますもって、気に入らんな・・・」
 
 吐き捨てるように、メフィラスが言ったのが合図。
 荒野の地中から、咆哮とともに怪獣が出現する。
 
「あ、あれはっ・・・古代怪獣ゴモラ!」

「メリム、貴様は以前に敗北したのを、多勢に無勢だったからと思っているようだな。ならばよかろう」

 メフィラスの纏う空気が、鋭さと威圧を増した。
 
「2対2の、タッグマッチといこうではないか。完全なる力の差を、その空っぽな頭にも理解できるようにな」



 4、
 
 
 恐竜に近い筋骨隆々のフォルムに、特徴的な三日月型のツノ。
 かつての闘いで死んだはずのゴモラが蘇っているのは、不思議な話ではなかった。クイーンが言っていた『安らかな眠りについている怪獣を連れ去るケース』。メフィラスもまた、怪獣墓場からゴモラを復活させたのだろう。
 
「貴様らは知らぬだろうが、暗黒宇宙では強豪怪獣の奪い合いが熾烈でな」

 ゴキゴキと、首の骨を鳴らしながら悪質宇宙人は言う。
 気のせいなどではなく、全身に力が漲っていくのがわかった。
 
「エンペラ星人滅亡のあと、クズどもが覇権を求めて戦力を掻き集めている。・・・低能が集まったところで無力だというのにな」

「・・・それで、貴様も怪獣墓場から・・・」

「私の配下にカスは不要だ。選びし精鋭で、全宇宙を掌握してみせる」

 完全に地中から這い出たゴモラが、雄叫びを轟かせる。
 メフィラスの言葉をそのまま信じれば、数ある強豪怪獣のなかでも、特にゴモラは選び抜かれたことになる。その強さはすでにわかっていることだが、改めて警戒が必要かもしれなかった。
 
「強いといっても・・・ゴモラはシャインさんやジェニスさんに負けているのですっ! メリムにだって、決して倒せないことは・・・」

 敵意を剥き出しにする古代怪獣にあてられ、突っかかろうとするメリム。
 その肩を、獅子座の戦姫が押し留めた。
 
「私は、タッグマッチだなんて御免だ。特に、お前と組むのはな」

「レオナさんっ!? なんでまだ、そんな悲しいことを・・・」

「言ったはずだ! 後輩の足を引っ張りたくはない・・・私は私で闘う。2対2といっても、サシでの勝負を二組行う、という形にするぞ」

 今の自分がメリムと組んでも、まともに闘えないことをレオナはよく理解していた。
 否応でも、過剰に意識してしまう。メリムのブレイブ化に嫉妬し、メリムの光線技に嫉妬し、己の不甲斐なさに打ちのめされ・・・
 ならば、ひとりで闘った方がよほどスッキリするはずだった。〝知将”と呼ばれたメフィラスは、ふたりの不和を必ず見抜く。コンビネーションの隙を確実に突く。
 勝利のためには、こちらも敵も分断して闘うのがベストなはずであった。
 
「じゃあ、メリムはどっちかひとりと闘えば・・・」

「・・・お前には、メフィラスを頼む」

 一瞬の間の後、レオナは言った。
 
「肉体派のゴモラの方が、私には相性がいいはずだ。・・・いくぞ!」

 言い終わるより早く、獅子座戦姫は古代怪獣に向けて走り出していた。
 
「うおおおッ・・・レオナキィーック!!」

 疾走の勢いをそのままに、必殺の飛び蹴りを放つ。
 開始早々の一撃に、ゴモラは虚を突かれた。野生の本能が根強い怪獣は、赤いスーツを着た華奢な存在が、いかに危険な敵かを把握し切っていなかった。
 深紅に輝くレオナの右脚が、まともにゴモラの顔面に吸い込まれる。
 
 ドドドオオオッッ!!
 
 轟音を響かせ、重なるように吹っ飛んでいく古代怪獣と獅子戦姫。
 この一撃で斃せるほど、ゴモラがヤワな相手でないのはわかっている。レオナの真の目的は、ふたつのバトルフィールドを隔離して形成することにあった。
 
「よおおおしっ!! メリム、いきまーっす!!」

 遥か後方で、新世代戦姫が真正面からメフィラスに飛び込んでいく。
 辺境の惑星にて、ふたつの戦場で次世代を担う戦姫たちの闘いは始まった。
 
 
 
(・・・くッ・・・なぜ私は・・・自分がいくと言えなかった・・・)

 地面を這いずるゴモラに、追撃のラッシュをレオナは浴びせていた。
 パンチとキックの連打を、速射砲のごとく撃ち込む。一切容赦はなかった。巨大なゴムの塊を殴っているような感触が、並みの打撃ではゴモラに通用しないことを教えてくる。
 
(強い。確かにゴモラは強い。しかし・・・メフィラスとの格の差は歴然じゃないか!)

 以前のレオナなら、宇宙でも屈指の脅威である悪質宇宙人を、後輩のメリムに押し付けただろうか?
 いや、ない。メリムの実力はわかっていても、自分がメフィラスとの闘いを望んだはずだ。
 たとえメフィラスに敵わないとわかっていても・・・負けを、死を恐れず、困難な敵に向かっていった。武人としての誇りが、逃げることを許さなかった。
 
(違うッ! 私は、逃げたわけではないッ! ただ・・・冷静に考えて、メリムの方が勝算があると判断しただけだ。なにしろメリムには、ブレイブ化という切り札が・・・)

 バシイイッ!!
 
「う”ッ!!」

 顔面に放った左の蹴りを、ゴモラは片手で受け止めていた。
 三白眼がレオナを睨んでいる。滾る怒りが、眼差しの鋭さとなって獅子戦姫を射抜いた。
 
「くッ、このッ・・・! コイツ、なんて頑丈なヤツだッ!」

 古代怪獣の手が左脚を握り潰す前に、咄嗟に引き戻す。軽やかに後方に跳んで、一旦距離を置いた。
 着地の瞬間、鋭い痛みが左の足首に走る。
 ゴモラの爪が、深紅のブーツごと脛の肉を削り取っていた。
 
「痛ッ・・・! 骨までは届いていないか・・・」

 顏いっぱいに脂汗を浮かべながら、レオナは構えを取る。左に重心を傾け、負傷の具合を探る。
 プシュプシュと、鮮血が飛沫を噴いていた。立てる。蹴りも・・・出せそうだ。痛みはあるが、これなら闘いに大きな支障はない。
 だが・・・タフさだけでなく、パワーとスピードも尋常ならざる強敵であると、認識せざるを得ない。
 
 汗を垂らすレオナの後方で、眩い黄金の光が輝き、惑星全体を明るく照らす。
 
「こッ、これはブレイブ化の光ッ!? バカな! メリムのやつ、あれほど容易に使うなと言ったのにッ・・・!」

 獅子戦姫の注意が、たまらず背後の戦場に向く。一瞬ではあるが、視線をゴモラから外してしまう。
 
「グモオオオオッ――ッ!!」

 咆哮をあげた古代怪獣は、三日月型のツノを突き立て、ツインテール戦姫に突進した――。
 
 
 
「メリウムブレードっ!!」

 振り下ろした光の剣が、メフィラスの身体をすり抜ける。
 あっ! と思ったときには、衝撃が右の脇腹に突き刺さっていた。いつの間にか、背後に回っていた悪質宇宙人の右フック。
 ボギンッ! と音がして、アバラの一本が簡単に折られていた。
 
「うくう”っ――っ!! うああああ”あ”っ――ッ!!」

「なんだ、このノロマぶりは?」

 二度目の衝撃が来て、メリムは激しく吹き飛ばされていた。
 背中を蹴りつけられたのだ――わかった時には、大地を転がっていた。土にまみれながら、懸命に立ち上がる。
 
「メ、メリウムシュートっ!!」

 幾多の怪獣を葬ってきた得意光線が、真っ直ぐ漆黒の星人に迫る。
 今度はヒットした、と思った瞬間、またしてもメリムの攻撃はメフィラスに当たることなく通り過ぎる。
 
「何度やってもムダだというのが、まだわからんのか?」

「くうううぅっ~~!! ・・・な、なんで!?」

 闘いが始まって以来、ウルトラレディ・メリムは、まだ一度もメフィラスに有効打を与えることができずにいた。
 何度やっても同じだった。当たった、と思っても、霞のように消えてしまう。
 
「貴様が次世代のエース候補だと? 本気で言っているのか?」

 純白のスーツを泥で汚したメリムが、鋭い視線でファイティングポーズをとる。
 天然、とも呼ばれる性格ではあるが、決して戦士の牙は抜けていない。
 ウルトラ戦姫の宿敵とも言える相手に、戦意は最高潮に高まっていた。
 
「シャインは・・・貴様のようにノロくなかった! 脆くなかったぞッ! 貴様ごときがシャインの跡を継ぐエースだとはッ・・・恥を知れィッ、小娘ッ!!」

 猛るメフィラスの身体が、二重にボヤける。
 自分の目がおかしくなったのか? 慌てて両手で目蓋をこすったメリムは、それが錯覚などでないと悟る。メフィラスの肉体が、ふたつに分かれようとしているのだ。
 
「ぶ、分身の術っ!?」

 悪質宇宙人の忠実なる下僕、レディ・バルタンの術を使えるというのか。
 だが、メフィラスの恐ろしさを知るのはこれからだった。
 二体、三体、四体・・・十体・・・百体・・・!!
 無限のように増殖するメフィラスが、メリムの眼前を覆い尽す。
 
「んなっ・・・!! これってどうなって・・・っ!?」

 100対1で襲い掛かられたら、ひとたまりもない。たったひとりのメフィラスにも、これまでさんざん手を焼いてきたのだ。
 
「くっそぉっ――っ!! こうなったら・・・全員吹っ飛ばすだけなのですっ!!」

 100体のなかから本物を見つけることは、不可能であった。事実、メリムにはまったくわからない。
 スーツの色と同じく、純粋な戦姫はすぐに決断した。迷いはまるでなかった。
 
「メリウムっ――っ・・・ブレぇーイブっ!!」

 光のエネルギーが、メリムの内部で爆発を起こす。
 あまりに急激な光の開放に、戦姫の全身が輝いた。黄金の光を四方に放つ。
 メリム・ブレイブへと進化変身を遂げた戦姫は、一気に天空へ上昇する。
 左腕のメリウムブレスから、ナイトブレードが長く伸びる。
 
「メリウムナイトブレードっ・・・アターックっ!!」

 ドガガガアッ!! ドドドドオオッ!! ドドドオオオッ――ッ!!
 
 大地を埋めるメフィラス軍団に、「∞」の光輪が何発も発射される。轟音と光の炸裂するなか、粉塵が高々と舞い上がる。
 敵の本体がわからなければ、その全てを殲滅する・・・メリムらしい発想であり、体力に任せた力押しの攻撃だった。
 
「はあっ! はあっ! はあっ! ・・・これなら・・・さすがに・・・」

 濛々と立ち込める土煙を見下ろし、空に浮いたメリム・ブレイブは両肩で息をした。
 
「メフィラス星人といっても・・・はぁ、はぁ・・・無傷で済むわけには、いかないのです・・・」

「と、愚かな貴様ならば、考えるのだろうな」

 背後に湧いた低い声に、メリム・ブレイブの全身が総毛立った。
 次の瞬間、悪質宇宙人の左右の拳が、両サイドから新世代戦姫の豊かな乳房に突き刺さる。
 
 ズボオオッ!! ドブウウッ!!
 
「ひゃあぐゥ”っ!! あはア”・・・ぇあ”っ・・・な、なん・・・で・・・っ!?」

「こうなるのを待っていたのだ。メリム・ブレイブの力を、使い果たすのをな」

 純白のスーツに包まれた巨大な膨らみに、拳を埋めつつメフィラスは光線を射出した。
 拳の先から発射されるグリップビーム。
 シャインのスペリオル光線とも同等の威力を誇る必殺光線が、柔らかな豊乳の内部に直接撃ち込まれる・・・
 
 ジャジャッ!! ジャジャジャアッ――ッ!! ・・・ッドオオッ・・・ンンッ!! 
 
「ひゃぎイ”ィ”っ!? ぎゅア”ッ、ウギャアアア”ア”ッ――ッ!!」

 メリム・ブレイブの左右の乳房の内部で、爆発が起こった。
 白のスーツが弾け飛ぶ。ブレイブ化したことを示す、黄金のパーツが砕けて剥がれる。
 挟まれるようにして、左右からメフィラスの拳を埋められたまま。
 脳天から真っ逆さまに、新世代戦姫は落下した。
 
 ズガアアアッッ・・・!!
 
 己とメフィラス。真っ直ぐ打ち込まれる杭のように、ふたりぶんの衝撃がピンク色の頭部にかかる。
 白目を剥いた戦姫の肢体は、大の字で荒野に倒れ込んだ。
 ブレイブ化の解けたその身体は、元のウルトラレディ・メリムに戻っていた。
 
 
 
 5、
 
 
「目覚めたか、身の程知らずな小娘よ」

 意識を取り戻したメリムの視界に、真っ先に飛び込んだのは青い眼をした異星人の顏だった。

「・・・ぅああ”・・・あぐ・・・ぅ”・・・」

 記憶が蘇るとともに、メリムは己が闘いの途中であったことを思い出す。
 乳房を包む白のスーツは弾け飛び、カラータイマーとヒビ割れたプロテクターだけがこびりついていた。タイマーの色も赤くなり、残りのエネルギーがわずかであることを示して点滅している。
 ウルトラシスターズのなかでも大きいと評判の胸は、左右とも、黒い穴が開いている。
 ドクドクと血が流れ、胸から下を真っ赤に染めていた。灼熱が身体の内部を溶かすように感じるのは、このダメージのせいだろう。
 
 メフィラスにピンクの髪を握られ、メリムは強引に立たせられていた。
 頭がグラつく。足元が覚束ない。
 悪質宇宙人に支えられねば、恐らくメリムは、ひとりで立つこともできなかった。
 
「エースの称号など、仮につけるにもおこがましい未熟者だが・・・ブレイブ化だけは厄介だったのでな。まず、あの出鱈目な力を封じさせてもらったぞ」

 パチンと、空いている手で指を鳴らす。
 虚ろなメリムの視界に、もう一体のメフィラス星人が瞬時に出現した。
 
「分身の術と貴様が間違うのも無理はない。だがこれは・・・『アーマー・ド・クルーェル』の一種。破壊エネルギーで作り出す鎧を、同じ要領で我が肉体と同じ姿形にしたに過ぎん」

 もう一度、本物のメフィラスが指を鳴らすと、不意に現れたメフィラスは蒼い光となって淡く消えた。
 ウルトラ戦姫が光のエネルギーを様々な形に変えるように、知の結晶を自認するこの異星人は、破壊のエネルギーを自在に操る。
 鎧として纏う『アーマー・ド・クルーェル』がその代表であるが、鞭や剣、その他あらゆる形態に変化可能だった。
 
「蒼き破壊エネルギーでニセモノを作り、己自身は気配を殺して背後に回る・・・」

 すっと、メフィラスの漆黒の肉体が薄くなったように感じた。
 本当に薄くなったわけではない。殺気や戦意を消し去ったことで、その存在感を抑えたのだ。
 
「ただ、これだけのことだったのだがな。挑発のスパイスを組み合わせてやれば、予測通りにメリム・ブレイブとしての力を出し尽くしてくれたわ」

 ほとんど勝負を決めたはずのメフィラスの声は、喜びよりも怒りに満ちて聞こえた。
 独り言のような呟きが、風に乗ってメリムの耳に届いてくる。
 
「・・・こやつらごときが・・・シャインの次を担う戦姫なのか? ・・・なんという弱さッ・・・脆さだッ・・・!」

「うあっ・・・あああ”っ――っ!!」

 叫ぶとともに、メリムは右の拳を突き出していた。
 乾いた音をたて、容易くメフィラスの掌に受け止められる。
 
「あたしはまだっ・・・負けてないっ!! まだまだ全然闘えるっ!!」

 キッと悪質宇宙人を睨み付ける瞳に、涙の雫が浮かんでいた。
 
「・・・見直した、と言いたいところだがな」

 メリムの拳を握る掌に、蒼い光が集まっていく。
 レッドキングも顔負けの怪力だった。握ったままのメリムの右拳を、メフィラスはそのまま圧搾していく。
 
 メキィッ・・・ゴキゴキッ・・・ペキッ・・・
 
「うう”ゥ”っ――っ!! うわあああア”ア”っ~~っ!!」

「そう来るのが当然だ。小娘ッ、貴様の闘志はまだまだウルトラ戦姫としては最低ランクよ! これからが我らの本当の闘いだッ!」

 歩くことすらままならないメリムに、メフィラスは怒涛の攻撃を仕掛けていく。
 蒼き破壊の光を纏ったままの左手で、メリムの鳩尾に拳を突き上げる。
 
 ズドオオオッッ――ッ!!
 
「ぐぼおおオ”オ”っ――っ!! オ”ブッ・・・オ”・オオ”っ・・・!!」

「内臓を潰されたくらいで、喚くな」

 深々と腹部に拳を埋め、「く」の字に折れ曲がるメリム。
 髪を掴んだままの右手に蒼の光が集まっていく。鳩尾を抉られ、悶絶するメリムは、後頭部で大きくなっていくエネルギーに気付けない。
 気付いたとしても、歴然としたパワーの差があっては、逃れることはできなかったろう。
 密着した至近距離から、メフィラスは破壊の光弾を撃ち込んだ。

「があア”っ・・・あああア”ア”ア”っ――ッ!!」

 後頭部を襲う衝撃に、メリムは木の葉のように吹き飛んだ。
 ピンクの髪が煙をあげて焦げている。頭部から肩、広背部にかけて火傷を負った戦姫は、うつ伏せに寝たままヒクヒクと痙攣を続けた。
 
「・・・早く立て。まだ終わってないのだろう?」

 大の字になって動けないメリムの頭上に、冷たい声が降り注いだ。
 左右の手を広げ、メフィラスは10本の指をメリムの背中に向ける。ヒクつく戦姫は、肉感的なボディを震わすのみだった。
 蒼の光が針のように長く伸び、10本の串がメリムの全身に突き刺さった。
 
 ドシュドシュドシュドシュドシュッ・・・!!
 
「んん”ぐう”っ!! ふぎゃああア”ア”っ――っ!! 痛いっ!! 痛いよぉっ――っ!!」

「・・・ブザマな悲鳴をあげおって・・・」

 腕に、肩に、胸に、腹部に、下腹部に、太ももに、ふくらはぎに・・・
 ブスブスと突き刺さり、メリムを貫通した10本の蒼い串を、頭上に持ち上げる。
 ムチムチとした乙女の肢体が、串刺しの焼き鳥のように高く掲げられる。天を仰いだ豊満なボディが、己の重みでより深く刺さっていく。
 白を基調とした強化スーツは、流れる血によって鮮やかな網目模様が描かれている。
 
「ぎィ”っ・・・!! ア”ア”っ・・・!! ィぎっ・・・!! ェ”ア”っ・・・!!」

「なんとも・・・手応えのない小娘だ・・・ッ!!」

 メフィラスの蒼い眼が、強い光を放った。
 その怒りを表すように、10本の指から伸びた蒼き串が、ギュイ――ンと高速で回転を始める。
 
 ドリュッ!! ドリュリュリュッ!! ザクザクザクッ!!
 
「アアア”ッ――ッ!! メ、メリムっ・・・メリムの身体がァ”っ~~っ!! ウギャアアア”ア”ア”ッ~~~ッ!!」

 背中から表へ。10本も貫通した串が、若き新世代戦姫の肉を抉って、回り続けた。
 メリムの痛切な悲鳴が響き、噴き出した鮮血が霧となって、掲げられたダイナマイトボディを赤く濡らしていった・・・。
 
 
 
「・・・メリ・・・ム・・・」

 後輩戦姫の無惨な絶叫は、距離を置いた戦場にも届いていた。
 ウルトラレディ・レオナに対するは、古代怪獣ゴモラ。
 圧倒的なパワーと頑強さをウリとする怪獣なら、格闘戦を得意とする自分こそが、相手として相応しいとレオナは考えた。だからこそ、自ら選んでゴモラ退治に乗り出した。
 
「・・・すまん・・・私は・・・・・・お前を、助けにいけそうにない・・・」

「グモオオオオッ――ッ!!」

 咆哮するゴモラの足元で、ツインテールの獅子座戦姫は、泥にまみれて横臥していた。
 レオナの全ての技は、ゴモラに通用しなかった。
 どちらも接近戦を得意とする肉弾ファイター。しかし、喩えるなら格闘家と恐竜との闘いは・・・実力の差もそのままであった。
 
 レオナの打撃は蹴りも突きも、面白いようにゴモラに決まった。
 だが、そのどれもがダメージを与えることはできなかった。
 
(・・・私は・・・なんと愚かなのだ・・・お互いに光線がないのなら・・・なぜ、私が勝てると思いこんだ・・・)

 以前のゴモラ相手ならば、レオナもきっと勝利することは可能だったろう。
 しかし、実際に打撃を打ち込んでハッキリわかった。このゴモラは・・・メフィラスによる改造を受けている。
 より強靭に、よりパワフルに特化した、古代怪獣。
 
(力対力で・・・遥か上をいくコイツに、私が勝つ方法など・・・)

 顔面を踏みつけようとしたゴモラの足を、間一髪で避ける。
 何か所ヒビが入っているかわからない身体で、懸命に起き上がる。レオナが生き延びるには、闘って勝つしか方法はなかった。
 
「何度跳ね返されても・・・私には、これしかないッ!! レオナキィーック!!」

 数えきれぬほど放ってきた必殺のキックを、レオナは再び敢行した。
 赤々と右脚が輝く。より高く、より速く・・・威力をわずかでも高めるため、全エネルギーを右脚に集中させる。
 
「これでッ・・・どうだッ!! 錐揉みレオナキィーックッ!!」

 キングザウルス三世を倒したときのように、ツインテール戦姫の肢体が空中で回転した。
 ドリルの貫通力を加えて、2倍。いや、通常の3倍の威力で、レオナキックを放つ。
 
 ドキャアアアアッッ!!!
 
 ゴモラの厚い胸板に、錐揉みレオナキックは炸裂した。
 衝撃と轟音が広がる。生み出されたソニックブームに、大地がビリビリと振動した。
 弾き飛ばされたのは、技を仕掛けたレオナの方だった。
 
「ッッ!! ・・・バ・・・カなッ・・・!!」

「グモオオオオッ――ッ!!」

 金色のツインテールをなびかせ、力なく上空より落下してくる戦姫に、ゴモラが突進する。
 三日月型のツノが、まともにレオナの胸に衝突した。
 
 ベキベキベギィィッ!!
 
 数日前に完治したばかりのレオナの胸骨は、再び原型を留めないほどにグチャグチャに潰れた。
 遥か彼方の地まで吹き飛んだ獅子座の戦姫は、大の字で倒れたまま、ヒクヒクと痙攣を繰り返した。
 
 己の現状を実戦で確かめんとする悪質宇宙人と古代怪獣にとって、闘いはまだ始まったばかりだった。
 
 
スポンサーサイト
| ウルトラ戦姫物語 | 00:59 | トラックバック:0コメント:1
コメント
えー、DL頒布用のウルトラ戦姫が、ようやく本文完成いたしました。
あとはDLサイトに送るための準備をするだけなのですが、これがなかなか大変で・・・もうちょっと時間がかかると思いますので、お待ちいただいている方にはしばしご辛抱願います(^^ゞ

というわけで、完成を祝してウルトラ戦姫の特別篇を急遽書上げました。
急ごしらえなので、ちょっと粗いところもあるかもですが・・・エッチシーンなどもないので申し訳ないんですけど、このふたりは頒布用作品には登場しないんですよね。
「この頃、レオナとメリムは・・・」といったノリで書いてみましたw
少しでも楽しんでいただけたら幸いですw
2015.01.22 Thu 01:04 | URL | 草宗
コメントする














管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL
http://kusamune.blog45.fc2.com/tb.php/351-4cd4c0f7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック
| ホーム |

プロフィール

kusamune

Author:kusamune
FC2ブログへようこそ!

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ

カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索

RSSフィード
リンク