巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

オメガスレイヤーズ ~カウント5~ 「第二話 1年前。落日のプレリュード」② | main | キュアラブリー対アンラブリー
オメガスレイヤーズ ~カウント5~ 「第二話 1年前。落日のプレリュード」①

「第二話  1年前。落日のプレリュード」


 1、パーティー
 
 
 ざわめく会場のなかで、その美女はひとり視線を集めていた。
 決して派手な格好をしているわけではない。その逆で、華やかなパーティーにはそぐわないほど地味な服装だった。目立つ場所にいるわけでもなく、むしろ会場内の壁際にひっそりと立っている。
 
 それでも男たちは、幾度も繰り返し彼女を眺めた。目蓋にその美形を焼き付けるために。
 女たちは無視したくとも意識せざるを得なかった。羨望と嫉妬が自然に沸き起こってしまうが故に。
 
 モデルあがりと思われる美女も、選りすぐりのコンパニオンも集まっている豪勢なパーティー会場で、ナンバー1がそこにいることに、誰もが気が付いていた。
 

「グラスが空いているようですが・・・いかがです?」

 カクテルのグラスを手にした男が、勇敢にも声を掛ける。
 イケメン、の部類に入る容姿だった。身長も180は越えていようか。
 IT関連のベンチャー企業の社長、というその男を、会場の多くの者が見知っていた。つい最近まで、元タレントとの離婚がワイドショーや週刊誌を賑わせていたものだ。
 ルックスにも経歴にも財力にも自信があるような、こういう男でもなければ、到底その美女に声を掛けることなどできなかっただろう。
 
「え? ・・・私、ですか?」

「貴女以外に周囲に誰もいませんよ。それともまさか、未成年ってわけでもないですよね?」

「ん・・・まあ、そうですけど」

 白桃のような頬が、瞬く間に真っ赤に染まった。
 男性に声を掛けられることが、恥ずかしいらしかった。ナンパされるのは、むろん初めてのことではないが、いつになっても慣れることがない。
 しかし男は、美女が照れた理由を勘違いした。
 
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。テレビなどで報道されてるような、浮気性の男というのはあくまで捏造ですから。現実のボクは一途なんです」

「は、はぁ・・・?」

「今日の参加者のなかで、もっとも美しいあなたに惹かれただけのことです。元妻との間では、近々示談が成立する手はずですから、あなたは何も気にしなくていいんですよ」

 大きな瞳をパチクリとさせながら、美女は言葉を探しているようだった。
 透明感のある素肌が、真珠のように輝いている。
 髪質がいいためか、茶色に染めたセミロングの髪も、角度によってはゴールドに輝くように見えた。柔らかなウェーブを描き、両肩にかかっている。
 すっと高く通った鼻梁に、やや厚みある桃色の唇。口元だけを見れば、ドキリとするほど芳醇な色香が漂っているが、眦が少し切れ上がった魅惑の瞳には、芯の強さを感じさせる。
 華やかな美貌とは対照的に、服装は簡素だ。黒のインナーTシャツに清潔そうなホワイトのジャケット。同じく白のパンツルックでまとめた姿は、スポーティーで颯爽としている。
 式典パーティーの参列者というより、それを取材に来た女記者とでもいうような格好だった。きちんと正装しようとしたら、これくらいしか着るものがなかったのだ。だがそれでいて、着飾った周囲の誰よりも、飛び抜けて美が際立っていた。
 
「えっと・・・ごめんなさい。褒めてくれるのは嬉しいんですけど・・・どちら様でしたっけ?」

「え? あれ? その、ほら、テレビや雑誌なんかで見たこと、なかったかな?」

「テレビはあまり見ないので、タレントさんとかよく知らないんです・・・すみません」

 赤くなるのは、今度は男の方だった。
 
「ああ、そう! 知らなかったんだね・・・はは。いや、気にしなくていいんだよ、別にタレントってわけではないし。ちょっとした企業の取締役をやってるだけだから。ほら、今流行っているクイズ&パズルのアプリ、知ってるかな? あの会社の・・・」

「私、どうしてもやらなきゃいけないことがあるんで、今日はお酒は飲めないんです。せっかくだけど、これはお返ししますね」

「え、ちょッ・・・! せ、せめて名前だけでも教えッ・・・」

 白と黒のコーデでまとめた美女は、グラスを返すと壁際から放れて歩き出す。
 視線は正面に向けられていた。それまでオードブルのひとつも取ることなく、立ち尽くすだけだった美女は、急に動きを見せていた。
 話し掛けてくれた男には悪いが、もうじっくり相手をする暇はなかった。彼女の「目的」が動き出したからだ。
 
『・・・皆様、本日はKアミューズ・エンタープライゼスが本格運営する、アミューズメントパーク第一号店の開店祝賀パーティーにお集まりいただき、誠にありがとうございます。来年4月の正式オープンとともに代表取締役に就任したします甲斐より、皆様にご挨拶申し上げます』

 司会の女性アナウンサーが、正面の檀上に次期社長となる人物を呼び寄せている。
 弱冠18歳の女子高生が、大手企業のトップになる、ということで話題になっている人物だった。深紅のドレスが登壇した瞬間、あちこちで感嘆の声があがっている。
 話題のひとを目の当たりにする、という感激もさることながら、衣装に負けぬ美少女ぶりに圧倒されたのだろう。若くして社長の椅子に座る少女が、容姿にも恵まれているとなれば、耳目を集めるのは当然のことだ。
 
 甲斐家といえば、日本でも有数のコンツェルンのひとつである。
 檀上の中央でスピーチを始めた少女が、Kアミューズなる会社の代表となるのも、なんら不思議なことではない。要は、経営者一族の一員として、ポストを割り当てられたに過ぎないのだ。
 
 少女は朗々とスピーチを続けている。真っ直ぐに前を向いて語る姿勢には、遠目からでも、可憐さと爽やかさが伝わってきた。
 人波を掻き分け、前へと進む白黒コーデの美女は思った。とても自分には、マネできない芸当だと。
 真の令嬢とは、こういうものなのだろう。300人は下らぬ百戦錬磨の企業人を相手に、まるで物怖じしていない。大人数へのあいさつに慣れている・・・というより、当たり前として育っている。
 
「・・・どう考えても私、場違いだよね・・・」

 茶髪の美女は、少し後悔した。
 パーティー会場への潜入は、予想以上に簡単だった。多くのひとが行き来するため、紛れ込むのも可能かと思ってはいたが・・・チェックは甘いどころか、無きに等しかった。
 招待されていないのに、無断侵入していたことがバレれば、どうなっちゃうんだろう?
 ふと湧き上がる不安を、頭を振って打ち消した。こうでもしなければ、「目的」は達成できないのだ。怯えて行動しないほど、愚かなことはない。
 
『それでは、質疑応答の時間を少々ですが設けさせていただきます。各社記者の皆様、質問などあれば挙手で・・・』

 マスコミの取材も来ていることに、白黒コーデの美女は驚いた。
 話題の女子高生が社長を務めることに加え、都内の一等地に巨大アミューズメントパークが誕生するのだ。確かに、ニュース素材としての価値は十分あろう。
 
『来年4月から代表取締役に就任されるとのことですが、なぜ今じゃないんです?』

『私が高校を卒業するのを待つため、ですね。規則的には二足のわらじを履くのも問題はないのですが、けじめはきちんとつけるべきだと思いまして』

『となると、我々は厳密には女子高生社長の誕生を見られない、というわけですね』

『あら? セーラー服を脱いだら脱いだなりに、皆さんからは力添え頂けると期待していますよ』

 檀上の少女がわざと艶めかしく言うと、場内で笑いが起こった。
 なにが面白いのか、白黒コーデの美女にはさっぱりわからない。むしろ、女をバカにされたようで不愉快ですらある。
 
『アミューズメントパークの一号店・・・つまりは、今まさにパーティーが開かれているこの会場ですが、〝呪い”があるとして有名な大樹が根を張っていた土地ですよね? 大樹はどうされたんですか?』

 そう、パーティーが開かれているのは、ホテルの宴会場などではなかった。
 内装もほとんどできあがったアミューズメントパーク。
 アーケードゲームやクレーンゲーム、果ては室内用ジェットコースターからお化け屋敷まで、その他様々な遊戯が揃った巨大な空間が、レセプションパーティーの場となっているのだ。
 ゲームセンターと遊園地が、ひとつ屋根の下でぎゅっと凝縮された空間、といえばいいだろうか。
 今宵のパーティーは、内装の展覧会も兼ねて行われているものだった。
 
『もちろん、伐採して処分いたしました』

『〝呪いの大樹”をですか!? その・・・悪影響が出ることなどは考えなかったんでしょうか』

『私ども、Kアミューズ・エンタープライゼスは未来を切り開くことが与えられた使命だと自認しております。〝呪い”などと非科学的な事象に、惑わされることはありません』

 場所柄、室内の照明は薄暗い。
 薄闇のなか、なんとか人を掻き分け前進してきた白黒コーデの美女だが、記者たちが陣取る最前列には、どうしても割り込むことができなかった。強引に前へ出ようとすれば、ギロリと睨まれる始末だ。
 だが、この状況はチャンスかもしれない。
 
(この暗がりのなかで、こんな格好してるんだから・・・他の記者さんたちと、見分けつかないよね? 質問することもできるんじゃないかな・・・)

 檀上の人物、つまり甲斐家のひとり娘に接触するのが、彼女の「目的」であった。
 とはいえ相手は、巨大グループ企業の創業者一族だ。気軽に声を掛けるどころか、近づくことすら難しい。
 しかし今なら、記者のひとりにしか見えない状況を利用して、話をすることができるのだ。
 
(とはいえ、あんな質問に・・・ちゃんと答えてくれるんだろうか? きっと、こんな大勢の前で話す内容じゃないよね・・・ううん、でも私が彼女に近づけるチャンスなんて、滅多に有り得ないわ)

 質疑応答が繰り返される間にも、セミロングの美女のなかで葛藤は続いた。
 だが、ここでなにもしなければ、これまでの苦労が意味を持たなくなってしまう。今日一日のことだけではない。彼女がこの場に辿り着くまでは、4年もの調査の期間が必要だったのだ。
 意を決し、右手をあげた。
 指名を受ければ、容赦なく質問をぶつけるつもりだった。場の雰囲気が硬直しようが、呆気にとられようが構わない。白黒コーデの美女にとっては、なによりも重要な疑問なのだ。
 
(甲斐凛香さん・・・あなたは、オメガスレイヤーのひとり、オメガフェニックスなんですか!?)

「えッ!?」

 あげかけた右手が、何者かに背後から掴まれ止められていた。
 反射的に振り返る。男がいた。黒のスーツに包まれた男。
 顏が異様に、横に広かった。
 えらが張っているのと、両肩の僧帽筋が発達しているため、首がないまま顎と肩とが直接つながっているように見える。顏の幅に合わせるように、薄い唇も横に長い。両目の間がやけに離れ、ほとんど側頭部ともいう場所に、丸い眼がギョロリと浮き出ている。
 ゾッとするとともに、ピンときた。
 この男の顔は、蛙にそっくりだ。
 
「四乃宮天音さん・・・だね?」

 美女の魅惑的な瞳が、大きく見開かれた。
 つ・・・と額を垂れる汗が、蛙男への返答としては十分だった。
 
「隣のゾーンへ移動しようじゃないか。なにしろここでは、ギャラリーが多すぎる。なあ、究極の破妖師オメガヴィーナス?」



 2、大蟇
 
 
 美女の右手を掴んだまま、蛙男が記者会見の場から抜け出す。
 薄暗い室内で、異変に気付いた者はいなかった。質疑応答はまだ続いているのだ。意識が檀上に向くのも無理からぬことだった。
 
 ふたりが移動した先は、ジェットコースターやメリーゴーランドがある、簡易遊園地ゾーンだった。
 パーティー会場となったゲームエリアとは、同じ室内とはいえやや距離がある。様々な遊具の機械電子音が飛び交うなかでは、なにが起きようが気付かれることはないだろう。
 
「オレたち妖化屍(アヤカシ)も、お前たち破妖師も、一般人に存在を知られるのは得策ではないからなぁ」

 パンツルックの美女の耳元で、蛙男が臭い息を吐いた。
 右手首を捻りあげ、背中に回す。
 一気に肩関節を極められた美女は、たまらず叫んでしまっていた。
 
「ぐああ”ッ!! ――ッ・・・!!」

「クヒュヒュ・・・脆い。やっぱり脆いなあ、お前。オメガスレイヤーも変身前には本来の力は発揮できないという噂は、本当だったようだなぁ」

 背中に回された右腕と肩が、ギリギリと悲鳴をあげる。
 脂汗が、凛とした美貌に浮かぶ。呻き声が漏れそうになるのを、歯を食い縛って美女は耐えた。
 
「まさかこんなところで、最強のオメガスレイヤーに逢えるとはなぁ。しかも変身前の、人間状態で。オレは本当に運がいい」

「ッ・・・なぜッ・・・妖化屍が、こんなところに・・・ッ!?」

「困るんだよなぁ。あの〝大樹”はオレの隠れ家だったのさ。切ろうとするヤツは片っ端から喰ってやったら、〝呪い”の噂がひとり歩きしてくれていたのに・・・。責任者とかいうあの小娘を引き裂くつもりでいたんだが、もっとおいしい獲物が現れたってわけさぁ」

「どうして・・・オメガヴィーナスの正体をッ・・・!?」

「四乃宮天音、あんた有名人だぜ? オレたち妖化屍がどれだけあんたを恐れ・・・憎んでいるのか。わかってないのかなぁ。変身前の姿の情報は、かなり広まっているんだよ。白と黒の服装を好み・・・そそらずにいられない美貌の持ち主だってなぁ」

 白のジャケットとスラックス。インナーの黒Tシャツを着こんだ美女の右腕を、蛙男はさらに捩じ上げた。
 ボギイ”ッ!! と嫌な音色が響き、右の肩が脱臼する。
 
「んうゥ”ッ!! きゃあああッ――ッ!! ア”ア”ア”ッ・・・!!」

「クヒュヒュヒュ! 真の姿になれないとこうも脆いかなぁ、オメガヴィーナス!?」

 絶叫する白い背中を、蛙男は蹴り飛ばす。
 右肩を抑えたまま、もんどりうって茶髪の美女が倒れた。
 
「自己紹介がまだだったなぁ。オレは〝大蟇(おおびき)”の我磨。見ての通り、蛙との半人半妖の妖化屍さぁ!」

 男の全身が膨れ上がった、と見えるや、黒のスーツが弾け飛ぶ。
 まさしく、ひとと蛙とのキメラ、だった。
 がっしりした四肢は人間のものだが、濡れ光る濃緑の体表は蛙のものだ。胸から上は、ほとんど蛙そのもの。両生類らしい針目の眼球が、苦悶する美女をギロリと覗き込む。
 
「どれだけ叫んでも、助けは来ないぜ。まぁ、人間が何人集まろうが腹の足しになるだけだがなぁ」

「う”ゥッ・・・! くッ・・・!」

「お前を殺せば、オレも晴れて六道妖の一員になれるかもなぁ。力を開放する前に嬲り殺しにしてやるよ」

 六道妖――。
 その名を聞いた瞬間、白黒コーデの乙女は美貌をあげた。
 明確な怒りが、切れ上がった大きな瞳に灯っている。
 
「お? なんだぁ、その眼は。お前は絶対許さない、とでも言いたそうだなぁ?」

「・・・あなたは・・・いえ、あなたたちは、ゼッタイに許さないわ」

「そういや聞いたことがあるぞ。お前の両親は、六道妖のひとりに殺されたらしいじゃないか。仇討ちの感情が急にムクムク湧き上がりでもしたかぁ?」

 脱臼した右肩を抑え、無言で美女は立ち上がる。
 真珠のような肌が、脂汗で濡れ光っていた。襲っている激痛は二十歳前後の乙女に耐えられるものではないはずなのに、意志の力で抑え込んでいるようだった。
 
「クヒュヒュ! 愚かだなぁ。親の仇もなにも・・・これから自分が死ぬっていうのに」

 蛙との半人半妖が跳んだ。二本の脚で、大地を蹴る。
 アミューズメントパークの天井に届くほどの、大ジャンプ。
 瞳を見開き、白黒コーデの乙女は硬直した。驚くべき、敵の能力。それもあるが、上空から襲撃されるということに、そもそもひとは慣れていない。
 どう避ければいいのか、一瞬で判断できずに固まってしまったのだ。
 
 ドガアアアッ!!
 
 〝大蟇”の我磨が頭から突っ込んでくるのを、もろに茶髪の美女は喰らった。
 くぐもった悲鳴を漏らし、派手に10mは吹っ飛んでいく。
 
「ぐうう”ッ!! ・・・んくッ・・・う”ッ・・・!!」

「本当にお前弱いね。変身する前は、こうもオメガスレイヤーってのは力が落ちるものなのかぁ? これじゃあ普通の人間と変わらないぞ」

 遊園地の床に突っ伏し、小刻みに震える美女に蛙男が近づく。
 茶髪のセミロングを掴むと、片腕のみで易々と吊り上げた。
 
「ああ”ッ・・・あ”っ・・・!!」

「もしかして、四乃宮天音じゃないのかなぁ? それにしてはオメガヴィーナスのことを知ってるのはおかしいし」

 我磨の針目が、眼の前で回っているメリーゴーランドを見詰める。
 誰も乗っていないが、パーティーの盛り上げのためか、全ての遊具は稼働していた。メルヘンな仕様で装飾された木馬たちも、当然のようにクルクルと回っている。
 ユラユラと波打ちながらやってくる木馬のひとつに、蛙男は乙女の美貌を叩き付けた。
 
 ゴガンッッ!!
 
「があ”あ”ッ!! ああ”ッ――ッ!!」

 パッと鮮血の華が咲く。
 セミロングの茶髪を引っ張られ、美女の顔面が木馬から引き剥がされる。鼻血、さらには額からの出血で、端整な美貌はねっとりとした紅に染まっていた。
 切れ上がった大きな瞳に、うっすらと雫が滲んでいる。単に痛いだけではない。顏を潰されるということは、妙齢の乙女にとってはなにより忌むべき行為なのだ。悔しさと悲しさが、どっと押し寄せても無理はない。
 
「うああ”ッ・・・ああ”ッ・・・!!」

「おやおや。顏を傷つけられるのが、そんなに嫌だったかなぁ? そうとわかれば、ますますこの美しいマスクを潰したくなるよねぇ」
 
 声が漏れそうになるのを、懸命にこらえた。白黒コーデの美女が、思わず眉を八の字に寄せる。
 蛙の眼には、続いてやってくる木馬が映っていた。髪を掴んだまま、血に濡れた美貌をグイと突き出す。
 
「いや・・・いやッ・・・いやあッ――ッ!!」

「ダメだね。万が一、お前が四乃宮天音でなくても、このオレに生意気な口を聞いたメスを許すわけないだろ?」

 波打ちながら回る木馬。そのデコボコの側面に、我磨は美女の顔面を押し付けた。
 
 ギャリギャリギャリッッ!! ガリガリッ!!
 
「うわああああ”あ”ッ~~ッ!! ア”ッ!! くあああ”あ”ッ――ッ!!」

「いい声で鳴くなぁ、お前。よし、今度は胸をすり潰してやるよ」

 真っ赤に染まった顏を引くと、今度は黒のTシャツに収まったバストを突き出す。
 二十歳代の乙女に相応しい、弾力と瑞々しさを感じさせる形のいい乳房。
 やってきたのは木馬でなく、カボチャを模した馬車だった。派手な装飾を施した壁に、ふたつの丸みを押し当てていく。
 ガリガリと、摩擦で柔肉が削られる音が、美女の胸部で響いた。
 
「きゃああ”あ”ッ――ッ!! あッ、ああ”ッ~~ッ!! うああ”ッ~~ッ!!」

 蛙男が手を離した瞬間、もんどりうって大地に転がる白黒コーデの乙女。
 顏と胸とを、交互に左手で抑える。脱臼した右腕は、使いたくても動かない。
 メリーゴーランドによる擦り潰し刑に処された美女は、白のスーツが汚れるのも構わず転がり続けた。
 
「いくら変身前といっても、これだけ弱いのはおかしいなぁ。お前、何者だ? オメガヴィーナスがこんなに脆いわけないもんなぁ」

「くッ・・・ううぅ”ッ~~!! ・・・あぁ”・・・」

「まぁ、オレたち妖化屍やオメガスレイヤーの存在を知っているんだ。『水辺の者』には違いないだろうさ。破妖師一族のひとりなんだろう、お前?」

「ッ・・・あなたにはッ・・・関係ないことだわッ・・・!」

 地を這いずり回っていた乙女が、キッと顏をあげる。
 輝くような素肌が鮮血で汚れていた。美女が受けるにはあまりに酷い仕打ち・・・でありながら、血染めにされて尚、この乙女の美はいささかも翳ってはいない。むしろ凄惨さの中に、美形が凄みを増したかのようだ。
 腰が引きかけた己に気付き、我磨は苛立った。
 たかが人間に妖化屍の自分がビビるなど・・・あってはならない恥辱。子鹿に怯えるライオンがどこにいるのか。ましてや相手は、人生経験も少なそうな小娘――。
 
「まさかお前、オメガヴィーナスの代わりに、両親の恨みを果たそうとでもしているのか?」

「違うわ。あなたたちは私にとっても仇だからッ・・・許せないだけよッ!」

「ほほう。ということはお前は・・・」

 蛙男の脳裏で、天啓のように閃きが奔った。
 四乃宮天音そっくりの特徴を持つ乙女。天音の両親が、妖化屍に殺されたという事実。眼の前の美女もまた、妖化屍を親の仇と呼ぶのなら・・・導かれる答えはひとつだ。
 
「そうかそうか! オメガヴィーナスに姉妹がいたとは、知らなかったぞ」

「・・・四乃宮郁美。天音は、私の姉よ」

 女子大生になった郁美は、4年前に姉がスーパーヒロインになった時とそっくりの、美しき淑女に成長していた。

「妹か、道理で脆いわけだぁ。クヒュッ、クヒュヒュ! で、無力極まりないお前が、このオレに勝てるとでも思っているのかぁ?」

「勝つなんて言わないわ・・・どんなに頑張っても、私があなたに勝てるとは限らないもの。でも、ゼッタイにあなたに屈したりなんかしないッ! 私の心次第で、屈しないことはできるからッ!」

 蛙男の針目が、さらに細まる。
 とびきりの大殊勲をあげられる、そんなチャンスが消え失せた残念さはある。だが、我磨の怒りを湧き立たせるのは、そんなことではなかった。
 醒めるような美人だけに・・・郁美の言葉は、よけいに癪に障った。頑として抵抗を続けようとする瞳が、〝大蟇”の醜さを嘲笑っているようにさえ見えてくる。
 
「小娘・・・四乃宮郁美といったか。お前、よっぽどチヤホヤされてきたんだろうなぁ」

 クワッと蛙の口が大きく開く。真っ赤な舌が、一直線に吐き出される。
 長く伸びた我磨の舌は、女子大生の細首に巻き付いた。気管と食道を一気に締め上げる。
 
「ううッ!? ううう”ッ・・・!!」

「容姿に恵まれたヤツは、なんでも思い通りに運ぶと勘違いしているから大嫌いだ。お前らが大事にされるのは、所詮平和なときだけだぁ! いざとなれば、力の前にはなんの意味もないんだよ!」

 郁美の首に絡みついた舌を、〝大蟇”がブンブンと振り回す。
 容易く白スーツの肢体が宙に浮く。妖化屍の怪力によって、プロペラのごとくグルングルンと旋回する。
 遠心力によって、真っ赤な舌はさらに咽喉に食い込んでくる。酸素を求めて、郁美の唇は開閉した。
 
「うあ”ッ・・・!! はぁぐッ!! ・・・うあああ”あ”ッ――ッ!!」

 頭上を走るジェットコースターの線路に、我磨は舌を通した。
 白スーツの乙女が空中に吊り下げられる。西部劇で見るような、ブルロープを使った絞首刑の構図が、蛙の赤いベロによって完成していた。
 
「ぐうッ、う”ぅ”ッ・・・!! い、息がッ・・・く、くるし・・・い”ッ・・・!!」

 動く左手の指を必死に咽喉と舌との間に滑り込ませ、バタバタと宙空を蹴って足掻く血染めの女子大生。
 ゲラゲラと笑う蛙男は、白のスラックスから伸びた両足首を、左右の手でガシリと掴む。そのまま力任せに、下へと引っ張る。
 
「ぐええ”ッ――ッ!! おぼオ”ッ・・・こふッ・・・!! ご、ゴボボッ・・・!!」

 咽喉元の赤い舌が、グイと食い込む。ヒクヒクと郁美の肢体が揺れた。
 首に巻き付いたベロと、足首を掴む両手によって、白黒コーデの身体が縦に長く伸ばされる。乙女の柔肉が、ミシミシと嫌な音色を奏でている。
 パクパクと震える口からは、唾液と白い泡が次々に溢れていく。酸素の供給が途絶寸前の脳で、ぼんやりと郁美は死を覚悟した。
 
(くるしッ・・・い”ッ・・・!! 首ぃ・・・しま・・・るッ・・・・・・もぉ・・・ダ、メ・・・意識・・・・・・が・・・・・・)

「まさか、簡単に死ねるなんて、思ってないだろうなぁ?」

 ドボオオオオッ!!
 
 〝大蟇”の巨大な拳が、宙吊り乙女の鳩尾に深々と抉り埋まっていた。
 
「ごぼオ”オ”オ”ッ――ッ!?」

 秀麗な美貌から漏れ出たとは思えぬ、獣のような悲鳴。
 胃の中身を全て、郁美は吐き出していた。黄色の胃液まで、全て。
 その気になれば、我磨は女子大生の腹部に風穴を開けることも可能だった。しかし、敢えて加減をする。内臓がひしゃげる程度で許してやる。少しでも長く、生意気な小娘に制裁を加えるために。
 
「ひぐう”ッ・・・!! かはア”ッ・・・!! あ、ああ”ァ”ッ~~ッ・・・!!」

「ほう。見た目からは意外なまでに、なかなか鍛えているなぁ。この腹筋の堅さはアスリート並ではないか。とはいえ、このオレの打撃に耐えるには脆弱すぎるがね」

 乙女の腹部に埋まった拳を、〝大蟇”がグボリと引き抜く。
 涙を浮かべた魅惑的な瞳に、わずかな安堵がよぎる。だが、激痛からの解放はほんの数秒もなかった。
 今度は、桃をふたつ埋めたように膨らんだ胸へ。
 蛙の拳が突き刺さる。斜め下から抉り込むや、左の乳房の内部でぐにゃぐにゃとこね回す。
 
「ひぎイ”ッ・・・!? きゃああああ”あ”ア”ッ~~~ッ!!」

「クヒュヒュヒュ! いい鳴き声だぁ! 胸を揉み潰されるのは、そんなに痛いか? 苦しいかね?」

 絞首刑状態の白スーツの美女を、半人半蛙の妖化屍は責め続ける。胸の果実に突き入れた手で、内部の肉を思うがままに掻き混ぜる。
 窒息で思考もままならない郁美は、激痛と恥辱のなかで、涙を撒き散らして悶え踊るしかなかった。
 華やかな記者会見が続く会場の隣で、妖魔による蹂躙は続けられた。
 
 
 
 3、催淫粘液
 
 
(こ、こねられる・・・内臓、を・・・胸・・・を・・・。く、苦しッ・・・潰れぇ・・・ちゃッ・・・!! コイツ、は・・・私の身体で、遊んでいる・・・ッ・・・!!)

「クヒュッ、ヒュヒュヒュッ! いい肉をしているなぁ、四乃宮郁美? このオッパイの弾力、よく締まった腹筋・・・さすが、オメガヴィーナスの血縁だけある。思わぬところでいいオモチャを手に入れたぞ、これは」

 長く伸びた真っ赤なベロで首を吊られ、郁美はゆらゆらと揺れ続けていた。
 両手の指を必死に首とベロとの間に差し込み、なんとか窒息を免れている。しかし、美貌の女子大生には真実がわかっていた。〝大蟇”の我磨は、わざと郁美を生かしているのだ。ネチネチと獲物を弄ぶために。
 宙吊りでは、脚をバタつかせるくらいしか、何もできない。しかも絞首刑状態とあっては、両手も気道の確保に精一杯だ。
 ホワイトのジャケットとスラックスに包まれた肢体は、サンドバッグも同然だった。やりすぎて殺してしまうことのないよう、それだけを蛙男は気遣っている。
 
「考えてみれば、オレはラッキーだったなぁ。妹という、最高の人質を得るとは。お前を切り札にすれば、オメガヴィーナスを仕留めるのもさぞ簡単だろうよ」

 我磨が仕入れた情報によれば、4年前、オメガヴィーナスは家族を守るために相当な苦戦を強いられたとのことだった。
 最強の破妖師という、オメガヴィーナスの実力は知らない。しかし、妹が手中にあれば、六道妖も討ち損じた究極戦士を処刑することも、決して夢物語ではないだろう。
 
「・・・負け・・・ないッ・・・!」

 凛とした視線と断言する声は、蛙男の頭上から届いた。
 
「天音ッ・・・は・・・あなたなんかッ・・・に・・・負けないわッ・・・」

「息をするのもやっとのくせに・・・よく喋れるね。その勝気な瞳、実に不愉快だよ」

 両生類特有の、ネバついた掌が郁美の胸へと伸びる。
 黒のTシャツを一気に引き千切った。ふたつの乳房の周辺が、円を描いたように破り取られる。
 薄暗いアミューズメントパークの照明の下でも、くっきり浮かんだ白い果実が外気に晒された。
 
「ッッ・・・!!」

「・・・いい形だぁ。豊かな曲線を描く膨らみ・・・頂点に芽吹く桃色の突起・・・顏だけじゃなく、肉体も極上のものを天から授かったようだなぁ、四乃宮郁美」

 針目がギロギロと、遠慮なく乙女のバストをねめつける。
 くっと下唇を噛み、郁美は頬を染めた。屈辱で、長い睫毛がふるふると震える。
 己の裸身を家族以外の誰かに見られるなど、20年間生きてきたなかで初めての経験だった。よりによってその相手が、醜い半人半妖の怪物だとは。
 再び、濃緑の粘液にまみれた右手を、〝大蟇”の我磨は郁美の胸に伸ばす。
 
 ヌチャ・・・
 
「んう”ぅ”っ!!」

 たまらず声が漏れた。
 甘い響きを、伴った声が。
 
「クヒュヒュ! どうしたぁ、小娘? 随分色気づいた声で鳴いたようだが?」

「ハァッ、ハァッ・・・さ、触らない・・・でッ・・・!」

 瞳を大きく見開いた郁美の頬は、羞恥のせいではない火照りで紅潮していた。
 電撃が、奔ったのかと思った。
 それほどに鋭い、快感の刺激だった。剥き出しの神経を、愛撫されたかのような。
 我磨に触れられた右の乳首が、カチカチに尖り立っている。恥ずかしい、と思う以上に、そこからビンビンと伝わる官能の波動が、郁美の下腹部をむず痒くさせる。
 蛙男の掌から塗り付けられた緑の粘液が、乳房の先を覆っていた。
 
「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・!!」

「気付いたようだなぁ。オレの体表から滲出する粘液には、ちょっとした媚薬のような効果・・・つまり催淫作用があってなぁ。ケガレども、とっくに感覚などないゾンビが射精するほどの効き目はあるぞ。細胞のひとつひとつを嬲られているようだろう?」

 わずかに付着した粘液が、クチュクチュと蠢動している錯覚に郁美は捉われた。
 複数の生温かい舌が、乳首を丹念に舐めている。男性経験のない女子大生が感じたのは、そんな快感だった。不潔さに嫌悪感を覚えながらも、湧き上がる刺激を若い乙女の肉は拒絶し切れない。
 
「や・・・めぇ・・・やめッ・・・てッ・・・! こんッ・・・な・・・」

「掌にちょうどフィットする、ボリューム感のあるオッパイだなぁ。青く、弾んで、感度がバツグンだ」

 白い美乳を、今度は左右ともに蛙の両手が包む。
 濃緑の粘液が塗りたくられる。尖った先端を中心に、鎖骨周辺から丸みを帯びた下乳まで。
 
 ヌチャア・・・クチュ・・・ジュル・・・
 
「ふわあああ”あ”ァ”っ~~~ッ!!」

 ふたつの乳房から沁み込む疼きに、背を突っ張らせて宙吊り美乙女は叫んだ。
 
「はッ、離しッ・・・手を離してぇッ――ッ!! きゃふう”ッ!? ううう”ゥ”っ~~ッ!! も、揉まないでェッ――ッ!!」

 頭を振り、ガクガクと郁美は暴れ踊った。
 構うことなく〝大蟇”の我磨はバストを揉む。揉みしだく。
 数えきれぬ無数の舌に、ペロペロと乳房を舐め尽されるも同然の刺激。二十歳の生娘が耐えるには、その快感は巨大すぎた。力が抜け、首が締まっていくにも関わらず、沁み込む悦楽に悶え続ける。
 
(死・・・死ぬ・・・死んじゃ・・・う・・・・・・頭が・・・おかしくなって・・・)

 催淫粘液を塗られただけで蕩けかかるというのに、更に物理的に刺激を受ければ、女子大生の許容に収まるわけがなかった。
 涙と涎、そして泡とが愛くるしい美貌を濡らす。鮮血で汚れた顏は、別の体液で洗い流されようとしていた。
 このまま胸を揉まれるだけで、郁美は窒息か発狂による死に追い込まれても不思議ではなかった。
 だが、オメガヴィーナスの妹は、普通の乙女のようで並ではない。
 
 バシィッ!!
 
 バタバタと暴れる脚が、蛙男の側頭部を叩く。
 二発、三発・・・明らかな、苦し紛れの反抗。だが郁美は、快楽に痺れ、酸欠により朦朧とした意識で、何度も蹴りを繰り出した。
 妖化屍からすれば、ただの人間の打撃など、じゃれる赤ん坊と変わらない。
 効くわけなど、なかった。しかし、執拗に顔面を叩かれるのは・・・赤ん坊のやることでも、鬱陶しいのに違いはない。
 
「・・・いちいち・・・イラつかせる女だなぁ」

 蛙男が右の拳を握る。
 そのまま、真下から打ち上げるようにして放つ、アッパーブロー。
 濃緑の拳は太ももの付け根、スラックスの股間へと吸い込まれていく。
 
 ドキャアアアッ!!
 
「んぐううう”う”ゥ”ゥ”ッ―――ッ!! ・・・ごぱあッ!!」

 人気アイドルも逃げ出すような美貌の乙女が、舌を突き出し、白目を剥く。
 涎の塊が、シャワーとなって降り注いだ。恥骨を襲った一撃に、郁美の肢体は壊れたようにビクビクと痙攣する。
 懸命の反撃は、虚しい結果に終わった。脚を蹴り上げる力も失った女子大生は、白と黒でコーディネートされた全身をぐったりと弛緩させる。
 赤いベロで吊られた美しき乙女・・・四乃宮郁美は、完全な絞首刑状態となってぶらぶらと垂れ下がる。
 
「おいおい。オメガヴィーナスの人質として利用するって言っただろう? 誰が死んでいいと言ったぁ?」

 股間に埋めた拳を我磨が開く。厚いスラックスの生地を、なかのショーツとともに鷲掴みにする。
 力任せに引き裂いた。
 強引に股間部が破り千切られ、郁美の下腹部が露わとなった。産毛のような淡い陰が、乙女の秘部に茂っている。
 掌を開いた蛙男は、濃緑の粘液をたっぷりと女子大生の股間に刷り込んだ。
 秘裂の先端にある豆粒状の萌芽から、桃尻の狭間に隠れたアナルの皺まで。たっぷりと。あらゆる隙間に、染み込ませるように。
 
 クチュウ・・・ブチュウ・・・ズリ、スリスリスリ・・・
 
「ッッ・・・ひぐゥ”ッ・・・!! ゴボッ! ・・・ひゥ”・・・んぅ”ッ・・・!!」

 ゴボゴボと口から白泡を吹きながら、郁美がすすり泣くような悲鳴を漏らす。
 首吊りでほとんど意識を失いつつ・・・怒涛となって下腹部を襲う、法悦の刺激に震えていた。クリトリス、陰唇、アナル・・・感度バツグンの集積地を責められ、無意識に女芯が溶けているのだ。
 
「自分次第で屈しないとか、言ってなかったか、お前? その割には随分ヒクついているじゃないかぁ。気持ち良すぎてたまらないんだろう? そら、素直に蕩けてしまえ、オメガヴィーナスの妹よ」

「くふうゥ”っ、ふううう”う”ぅ”っ~~~ッ!! ふはあああ”あ”ぁ”っ~~ッ!!」

「クヒュヒュヒュッ!! もはや屈服の言葉も喋れないのかぁ! なら態度で示せ、脆い小娘め!」

 鈴のような声で嬌声を迸らせる女子大生に、妖魔のトドメが下された。
 粘液まみれの指で、過敏な萌芽を摘まむ。充血したクリトリスを、蛙男はぎゅるりと捻じった。
 
「ひぎィ”ィ”ッ!! いはあああ”あ”ア”ァ”ッ~~~ッ!! ひゅぎゅアア”ア”ッ――ッ!!!」

 窒息寸前の美乙女が、快楽に溺れて泣き叫ぶ。
 その瞬間、郁美の咽喉に絡まった赤いベロから、大量の催淫粘液が、ドロドロと滲み出し白黒コーデの全身を包んだ――。
 
 
 
「ねえ、それくらいにしてもらえる?」

 アミューズメントパークの簡易遊園地ゾーンに、不意に沸いたのはまだ少女と呼ぶべき声だった。
 暗がりのなかで男が振り返る。ひと目見れば、男の異様さは瞭然だった。体表は緑色に濡れ光り、顏が肩幅ほどまで広いのだ。
 蛙とひととの半人半妖、〝大蟇”の我磨を視線で迎えたのは、真っ赤なドレスに身を包んだショートヘアの女子高生だった。
 
「・・・おやおや。まさか、この段階で現れるとは・・・もしや、こちらの騒動に気付いていたかなぁ?」

「当然でしょ。こう見えても、あたしはここの主人だからネ」

「甲斐凛香、だったかな。記者会見は終わったのかね」

「ようやくネ。一応社長ともいうべき立場になるとサ、簡単に動けないのよね、責任ってもんがあるから。ま、殺意は薄いようだから、ギリギリまで我慢できたヨ」

 話題の女子高生社長は、先程までマスメディアに向けていたものとは、まるで異なる雰囲気に変貌していた。
 正確にいえば変わったのではない。戻したのだ。本来の自分に。
 Kアミューズ・エンタープライゼスという会社の代表である、甲斐家の令嬢はあくまで演じた姿。求められるが故、大財閥の一員をやりきっているに過ぎない。
 本当の凛香はもっと砕けていた。お転婆だった。天衣無縫だった。
 その証拠に、彼女の口調には、スピーチなどでは見せなかった軽い調子がある。
 
「オレのこの姿を見ても、動じないところを見るとやはりお前も『水辺の者』か」

「そんな探りを入れるような言い方、しなくていいヨ。妖化屍とあたしたちが出会ったら、結局やりあうしかない、でショ!?」

 ドレスの長い裾を、凛香は引き裂く。
 左腕を伸ばして、構えた。堂に入った姿。付け焼刃ではない、長年沁みついた武の香りが、日本を代表するコンツェルンの令嬢から、一気に噴き出す。
 
「じゃじゃーんっと! 甲斐凛香・・・またの名を、紅蓮の炎天使・オメガフェニックス! あなたの狙いは元々あたしなんでしょ?」

 深紅のドレスが似合う女子高生は、可憐さすら振り撒いてニンマリと笑った。
 話題の令嬢社長が、妖魔を人知れず討伐する、究極の破妖師だとは。むろん、引き揚げたばかりのマスコミは知るはずもない。そもそも、彼らはオメガスレイヤーなる存在すら、聞いたことがないのだ。
 つい先程まで華やかな記者会見があった隣で、闇に生きる妖魔と18歳の少女が命のやりとりをするなど、夢想だにするはずもなかった。

「クヒュ・・・クヒュヒュ・・・まさか、正真正銘のオメガスレイヤーだったとはなぁ。オレは〝大蟇”の我磨だ。最初にお前を狙わなくてよかったよ」

「あのさ、あなたが連れてった女のコ、あたしのちょ~~っとした知り合いなんだよネ。無事に返してくれないかナ?」

「あの小娘の正体ならすでにわかっているぞ。お前が必死に取り戻したい理由もなぁ」

「なんだ、バレてたのか。じゃあ話が早いや。力づくで取り戻すとするヨ」

「クヒュヒュヒュ! 悪いが、オメガフェニックスに変身することは許さんよ。四乃宮郁美を生かしておきたければなぁ!」

 ゴオオオオッ――ッ!!
 
 轟音が響く。それは、蛙男の背後で、8人乗りの小さなジェットコースターが通り過ぎる音だった。
 
「えッ!?」

 ショートヘアの少女が、猫のような吊り気味の瞳を見開く。
 誰も乗っていないはずのジェットコースター。そこには、取材記者然としたジャケット姿の郁美が、頭部を先頭に仰向けで縛りつけられていた。
 まるでジェットコースターの速度を、頭から突っ込むように体感する姿勢。仰向けのボブスレーともいうべき体勢にされ、郁美が受ける恐怖は並のものではないだろう。だが、〝大蟇”がオメガヴィーナスの妹に下した本当の地獄は、そんな生易しいものではなかった。
 
 白のジャケットとスラックスは、胸部分と下腹部を大きく切り取られていた。
 露出する、女子大生のバストと陰部。
 その真珠のような生肌に厚塗りされたのは、催淫効果のある濃緑の粘液だった。
 
「なッ・・・なんてことをッ!!」

 塗っただけで、湧き上がる悦楽を次々と生み出す官能の媚薬。
 それを敏感な乙女の柔肌に塗り重ね、ビュウビュウと強風で吹き荒べば・・・処女の肉体はどうなってしまうのか?
 
「いやああああ”あ”あ”ッ―――ッ!!! へあああ”あ”ア”ッ~~~ァ”んんッ!!」

 牝獣のような郁美の絶叫が響く。体液の全てが、媚薬に変えられてしまったかのようだった。何十時間もねっとりと愛撫されたような快感が、一瞬に凝縮されて、乳房と股間とを責めたてている。
 
 ぷっしゃああああッ――ッ・・・!!
 
 半透明の、飛沫が降る。
 郁美の汗、涙、涎、鼻汁、小水・・・そして愛液とが、全身から噴き出し、ジェットコースターの遠心力によって飛び散ったのだ。
 コースターの操縦室は、蛙男が立ちはだかる奥にあった。〝大蟇”を斃さねば、衰弱死するまで快楽列車のスピードは緩むことはないだろう。
 
「あんたって・・・ヤツはァッ!!」

「四乃宮郁美を縛った鎖は、オレの意志ひとつで千切れるようになっている。転落させたくなけりゃ・・・そのままの姿で闘うことだなぁ、甲斐凛香! もちろんノロノロしてたら、快楽の果てに本当に昇天しちゃうけどね。クヒュヒュヒュッ!!」

 むせび泣くような女子大生の嬌声が、ジェットコースターの轟音とともに響き渡った。
 
 
 
スポンサーサイト
| オメガスレイヤーズ | 00:57 | トラックバック:0コメント:3
コメント
いやもうギリギリ・・・正確にいえば若干アウトでしたがw、なんとか更新できました。
このFC2のブログは一か月更新ないと広告がでるんですが、ちょうど昨日で出現しちゃいまして。
一か月更新ないのはマズイと思い、なんとか頑張って更新にこぎつけました。とはいえ、手は抜いていない・・・はずですw

今回は実質あのコが主人公のようになってますが、こういうタイプのピンチでなんとか・・・よろしくお願いしますw
公私とも忙しかった先月ですが、今月は通常に戻ると思うので、挽回したいですね。
2014.10.04 Sat 01:01 | URL | 草宗
>拍手コメントくださった方
ありがとうございますw アツいメッセージで、本当に励みになるというか・・・嬉しいというか・・・申し訳ないというか(^^ゞ

言い訳になってしまいますが、裏で別のものを書いていたりするので、余計に更新が遅くなっています(-_-;) それを踏まえても、先月はいろいろあって遅すぎでしたが・・・

もうちょっと早くできるよう、なんとか頑張りたいと思います。(一応、毎月そんな心掛けではいるんですが・・・)
物語はまだこれからなので、期待いただけると嬉しいですw
2014.10.04 Sat 23:54 | URL | 草宗
>拍手コメントくださった方
いつもありがとうございますw
ターゲットとなっているコが、正確には「闘うヒロイン」ではないものですから、どうかな? とは思っていたんですが・・・楽しんでいただけたようでなによりでした(*´▽`*)

人質をとるのは、ヒロインのピンチには王道中の王道ですよねw

オメガスレイヤーズ全体で、なるべく考えている方向性がありまして、もしかしたら当初は違和感を与えてしまうかも、と思ってはいるのですが・・・
このカウント5が終わる頃には、読んで良かったと思える作品になっているよう、頑張りますw
2014.10.07 Tue 20:03 | URL | 草宗
コメントする














管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL
http://kusamune.blog45.fc2.com/tb.php/344-d39d5db4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック
| ホーム |

プロフィール

kusamune

Author:kusamune
FC2ブログへようこそ!

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ

カテゴリー
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索

RSSフィード
リンク