巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

あと一週間時間をください | main | ファントムガール 第十一話 7章―6
ファントムガール 第十一話 7章―7
 
 地を揺るがす衆人のどよめきが、若者の街に立ち昇る。
 どよめき、としか表現できない唸りであった。とんでもないものを見た、という動物の咆哮。その瞬間人々の胸を塗り潰したのは、歓喜よりも先に驚愕であった。
 見ただけで、いや、感じるだけで理解できる。漆黒の凶魔の恐るべき強さ。裏付けるように、ピンク色のファントムガールが仕掛ける光線を片手で容易く跳ね返す。花咲くような光の女神に、勝利の可能性など微塵も感じられはしなかった。
 今。明らかに。守護天使最強の光線は、鋭利な悪魔の中央に直撃していた。
 逃げられはしなかった。最大放出の聖なる光がまともに胸を抉る。渋谷に降る白甲冑の破片がそれを証明している。もし正義の勝利する確率が1%であったのならば、その100分の1の奇跡が起きたのではないか?!
 本能から迸った叫びが凱歌の歓声へと変わる、その時であった。
 
「・・・そ・・・・・・んな・・・・・・」

 呆然とした呟きは、荒々しく肩を上下させる桃色天使の口から洩れていた。
 凶魔ゲドゥーは無傷であった。
 白煙を昇らせた縄目の如き黒の胸は、ただその表面をわずかに削らせたのみで、出血すら認められなかった。
 胸のプロテクターは破壊した。だがサクラの新必殺技ができたのはそこまでだった。邪悪の化身ゲドゥー。そのコールタールに浸かったような幾重もの暗黒の前に、少女戦士の正義はダメージひとつ与えることが出来なかったのだ。
 
「甘いな。キャンディのごとく、だ。ここを狙っていれば、お前にも勝つ可能性があったというのに」

 藁人形にも似た漆黒の肉体が膨らむ。力を込めた、と見えた瞬間であった。
 ダイヤモンドを想像して創られたサクラの光の結晶は、乾いた音色を伴って粉々に弾け飛んだ。
 サイコの防御壁が?! あのウミヌシを束縛した堅固な牢獄すらもこの凶魔には数秒しかもたないのか?!
 最強の光線は通じなかった。
 最硬の障壁は容易く破られた。
 引いていく全身の血に代わってサクラに押し寄せたのは、悪寒と戦慄。グラリと揺れる視界のなかで、ゲドゥーの右手はゆっくりと濃紺に光るひとつ目を指差した。
 
「狙うべきは、ここだろう? 非情になれず千載一遇のチャンスを逃すとは、所詮惨めな小娘だな」

 必殺を決意し、思念の力を凶悪なドリルへと変形させたことですら、サクラには英断であった。
 それを顔面になど。まして眼を狙うなどと。
 心優しきエスパー少女に気付けというのが無理な注文。いや、たとえ気付いていようと、誰かに教えてもらおうと、女子高生桜宮桃子に無慈悲な攻撃が出来得るわけもない。
 
「では」

 銀色の可憐なマスクに瞬間走る、恐怖。
 来る。凶魔ゲドゥーの攻撃が。
 鋭身に纏う瘴気のもやが、濃度を増して澱みへと移る様をサクラは見た。
 
「引き裂いてくれる」

 ゴオウウウッッ!!!
 
 突き出した“最凶の右手”から放たれる、暗黒の光線。
 遠距離戦は己のフィールドと信ずる超能力戦士を嘲笑う弩流が、大気すら死滅させて桃色の天使に殺到する。
 
「フ、フォース・シールド!!」

 ありったけのサイコエネルギーを、光のパワーを結集して聖なる防御盾を出現させるサクラ。
 バリィィッッ!! 悪魔の死光線は薄紙のように光の盾を突き破った。
 
 ババババババッッッ!!! バチバチッッ!! バチイィッッッ!!!
 
「きゃはァううぅッッ?!!!」

 邪悪なる具現者の放った殺戮の光線は、ファントムガールの生命の象徴、胸中央のエナジークリスタルを穿っていた。
 ヒクヒクと痙攣する美少女の銀面が、ゆっくりと己の小ぶりな胸を見下ろす。
 黒く焦げ爛れた胸の真ん中で、青く輝いていた水晶体は、弱々しい点滅を開始していた。
 
「あッ・・・あァァ・・・・・・ああッ・・・」

 ヴィーン・・・ヴィーン・・・ヴィーン・・・
 
 命の危機を知らせる警告の音を、サクラは遠い霞の向こうで聞いていた。
 肉体が、八つ裂きにされたようであった。
 薄皮の一枚一枚、筋繊維のひとつひとつを引き剥がされたような、激痛。己の身体がまだひとの形を取っているのがサクラには不思議であった。魂を短冊のように細断された時、このような煉獄の苦痛に身を堕とすのだろう。左手は愛しいように我が身を抱き、右手は救いを求めるように宙空をさ迷わせ・・・銀とピンクの女神がよろめきながら悶絶に揺れ踊る。
 
 カラダ・・・が・・・・・・壊れ・・・るぅ・・・・・・
 
 ゲドゥーの一撃で、サクラは死を実感していた。
 肺腑が爛れる。乙女の柔肉が細切れになる。灼熱に燃える玉石を腹腔に埋め込まれたか如き苦しみ。邪悪に生まれ殺人に手を染めてきた凶魔の光線は、正体は女子高生に過ぎぬ美少女を戦闘不能にするのに十分であった。ただの一撃で、勝負は決まったようなものだった。
 動く。感情のない、菱形の頭部を持った悪魔が。
 一歩、一歩と苦痛に揺れる美乙女に近付いていく。小刻みに震えるピンクのストレート。魅惑的な青い瞳に、無言で迫る鋭利な凶魔が映っている。
 
 殺される。
 逃げなきゃ。でも・・・逃げられない。
 蝋のように白い顔で絶句したまま見守り続ける多くの人々がいる以上、ファントムガール・サクラに延命の逃避は許されてはいないのだから。
 
 条件反射のように右腕があがる。それが超能力戦士にできた精一杯の抵抗であった。
 棒立ちといっていい巨大な美少女の鳩尾に、斜め下方から撃ち込まれたゲドゥーの右ブローが極太の杭となって突き埋まる。
 
「ッッ!!! はあァぐううッッ!!!」

「フン。女子高生の肉体は豆腐のように脆いな。これが胃か?」

 ぐしゃああああッッ!!!
 
 銀色の天使の内部でなにかが潰れる悲愴な音色が、声を失った暗黒の空に轟く。
 苦悶に歪む厚めの唇を割って噴射する、黄色の吐瀉粘液。
 それとともに耳を覆う痛哭の呻きが、ギクシャクと身を折れ曲がらせた美天使の口から発せられる。
 
「ッッッ~~~~~~ッッ!!!」

「この右手の脅威、お前の身体で人間どもと残る守護天使どもにたっぷりと教えてやろう」

 “最凶の右手”がサクラの鳩尾から引き抜かれる。美少女の銀色の腹部に、抉られた漆黒の孔が洞窟のように残る。
 失神すら許されず、ただ貫く痛みにビクビクと痙攣するしかない美少女戦士に、更なる加虐を避ける術などなかった。
 肉体ごと回転させた凶魔の右フックは、爪先立ちでくの字に折れたままのサクラの左脇腹に、弾丸となって突き刺さった。
 
 ボギイイッッ!! ゴキゴキッッ、グジュウッ!!
 
「ひゅうああアアッッ!!!・・・あくうゥッッ!! ああアアッッ・あッ・アアッ・・・」

「肋骨3本。続けてトドメだ」

 右手で左のアバラを、左手で腹部の中央を、押さえながら反り返った桃色の天使は、もはや格好の的でしかなかった。
 再び突き上げられる“最凶の右手”のボディブロー。
 だが今度の標的は鳩尾ではなかった。その斜め上方。まだ発達段階にある思春期の少女の肢体にとって、急所のひとつである左の乳房―――
 柔らかな肉を抉る重々しい響きが、残酷な処刑場に居合わせた渋谷の住人の耳朶を打った。
 
 ごぶううううッッッ・・・!!!
 
 綺麗であり可憐であり・・・アイドル顔負けの巨大な美少女が大地に吐き出したのは、泥のごとき大量の血塊であった。
 一気に天高くまで掲げられた右腕のブロー。その手首にまで、容姿の造形だけならその辺りの女子高生と変哲のない銀と桃色の天使が埋まっている。
 地獄としか形容できぬ、無惨な光景であった。
 鳩尾と左脇腹、二箇所に孔を穿たれた守護天使が、発展途上ながら形のいい乳房を抉られて、朱にまみれた瀕死の姿を悪魔によって掲げられている。
 苦悶を通り越し、ただ絶望に彩られたサクラの美貌。
 四肢を垂れ落し、ヒクヒクと痙攣するだけの哀れな少女戦士。喜びすら表さぬまま右手を突き上げた無傷の凶魔との対比は、残酷な現実をまざまざと満天下に示していた。
 
「ファントムガール・サクラ。女子高生など元々このゲドゥーの相手になるわけがない。メフェレスとの契約通り、その命を貰うぞ」

 グボリ・・・乙女の肉体から拳を引き抜く凄惨な音色が、言葉を失った人類の頭上に降りかかる。
 投げ捨てられた銀色の少女が、巨大な百貨店の一棟を崩壊させていく。地鳴りと轟音。雪崩れ落ちる建造物の瓦礫。そこにあるのが当たり前だった建物が破壊される光景よりも、手足を投げ出し力なく倒れていく守護天使の姿は衝撃的であった。病床に眠る患者のように、半壊したビルの瓦礫に銀とピンクの女神が横たわる。
 洞窟のようにポカリと窪んだ、3つの拳の跡。
 無惨に変形した、丸みを帯びた少女の肢体。己の吐血と倒壊ビルの土砂とで薄汚れたサクラの身体に、容赦ない凶魔の右手が伸びる。
 ピンクのストレートを鷲掴みにされた聖天使は、脱力した肢体を強引に吊り上げられていた。
 ハンターに仕留められた獲物のように・・・右手一本でゲドゥーに捕獲され、空中に持ち上げられる光の女神。だらしなく垂れ下がった腕が、脚が、すでに事切れたようにブラブラと漂っている。
 
「ただ殺すだけでは済まさん。ファントムガールがいかに無力な存在かを、見せ付けてお前は死ぬのだ」

 縄で編まれたような漆黒の左手が、小ぶりながら形のいいサクラの右乳房を包み込む。
 パカリと開く、美少女の厚めの唇。思春期の喘ぎが思わず迸るかと期待したゲドゥーの耳に、思いもかけぬ台詞は飛び込んできた。
 
「女子・・・高生でも・・・・・・闘う・・・もん・・・・・・」

「・・・予想以上に、いい女だ」」

 濃紺に光るひとつ目が、わずかにその視線を下げたようであった。
 普通の少女ならば“最凶の右手”の一撃を食らって戦意を保つことなどできぬだろう。懇願し、従属する。生命の危機を知った細胞が、凶魔への全面服従を採択させる。歯向かうなど有り得ぬことだ。
 カワイイ顔をしてこの小娘・・・守護天使に選ばれるだけはある。
 ゲドゥーの左胸、心臓の真上にピタリと当てられたサクラの右手。
 この一撃に全てを賭けていたことを、白甲冑の凶魔はその一瞬で悟っていた。
 
「・・・『デス』」

 暗黒の光が、サクラの右手を包み込む。
 正義に似合わぬ禍々しき光。しかしそれこそが、超能力少女が全身全霊で『必殺』の意志を込めて創り上げた、絶対なる技たる証明。
 『デス』。ファントムガール・サクラ、最強の切り札。エスパーならではの究極の技。念動力で敵の心臓を直接握り潰す、悪魔も青ざめる文字通りの必殺技。
 いかなる強靭な肉体の持ち主も、圧倒的闇エネルギーの支配者も、思念そのもので創られたこの技を防ぐ術など存在しない。
 “最凶の右手”を持ち、かつてない暗黒の力に満ちた邪悪の化身ゲドゥーであっても、例外なく『デス』の死からは逃れることなどできぬ―――
 
 だが。
 
「不発のようだな」

 サクラの右手に纏った暗黒の光は、放たれることはなかった。
 撃てなかった。いや、エスパー少女は懸命に死の光を発射しようとしている。決して悪魔に情けをかけているのではない。
 発動しないのだ。『デス』が。いくら表面上、必死に念を込めたところで、絶対不可避の死の技はサクラの意志通りに作動してくれないのだ。
 実は。予想はしていた。『デス』は撃てないのではないかと。己の能力については誰よりもエスパー少女自身が一番知っている。超能力でひとを殺すという行為。本来許されざるその想いを本気で抱くことがいかに難しいか。心の底から死を願うことがいかに残酷なことか。人並み以上に心優しき桜宮桃子にとって、『デス』は対極に位置するとも言える技なのだ。
 
 以前に『デス』が撃てたのは、相手がメフェレスであったからだ。裏切られ、処女を散らされ、蹂躙され、虫けらのように殺されかけた敵であるからこそ、桃子は『デス』を放てた。
 ゲドゥーがメフェレスと同等以上の悪鬼であることは理解している。誇張なしでファントムガールを抹殺するつもりであることもわかっている。この凶魔を生かしてはならない。自分ひとりではない、仲間全員が死を迎え、何万、何十万という単位で無辜の人々が犠牲となることだろう。正義というのが何かはわからないけど、今刺し違えてでもこの男を葬ることは絶対に必要なことだ。
 頭ではわかっているのに、それ程度ではダメなのだ。
 メフェレスに対する憎悪とでも呼ぶべき感情。桃子が世界中で唯一久慈仁紀にだけ持つ感情を、このゲドゥーにも抱くことができない以上、『デス』が発動することはない。
 
 終わった。
 もう、ファントムガール・サクラにできることは何もない。
 あとはただ、凶魔による処刑を待つのみ―――
 
「ファントムガールのなかで最も弱い、超能力戦士サクラか」

 左胸に当てられていたピンクのグローブをゲドゥーの左手が引き剥がす。すでに暗黒の光はサクラの右腕から消え失せていた。ストレートヘアーを放した“最凶の右手”が銀色に輝く少女の丸い右肩に掛けられる。
 
「だがオレが最も警戒したのはサトミでもナナでもない。お前だ、サクラ。超能力という予測不能な能力。事実お前は、甘ささえ捨てていればオレを殺すチャンスもあった。お前さえ始末すれば、忍者もアスリートも武道家もサイボーグも、まるで脅威の欠片すら感じん」

 ゴキイッ!! グキンッ!! ボゴンッッ!!
 
 右肩の砕ける濁った響きと、悲痛な少女の絶叫が暗黒の空にこだまする。
 
「ひとりノコノコと明治神宮にお前が現れたのはラッキーだった。この好機を逃すかと追いかけたのだ。お前は他の連中のために犠牲になろうと考えているようだが・・・愚かな。オレからすればお前こそが真っ先に始末したいターゲットだった」

 ぬいぐるみでも、扱うかのようだった。
 右腕一本でサクラの肢体が空中高く舞い上がる。ギュルギュルと回転する銀色の乙女の肉体は、暗雲のなかにも美しくすらあった。
 やや敷地の開けたスクランブル交差点の中央に、受け身も取れずにサクラの肢体が地響きとともに落下する。背中を叩く衝撃に、反り返って悶え揺れる巨大美少女。
 魅惑の瞳を歪め、悲鳴を懸命に噛み殺すサクラの無防備な右脚を、ゲドゥーは易々とその両手に掴んでいた。
 
 ゴギイイッッ!!・・・
 
「うああああああッッ~~~ッッッ!!! アアアッッ―――ッッッ!!!」

 爪先と踵を掴まれたサクラの右足首から先は、180度その方向を逆にねじ折られていた。
 可憐な声音が痛撃に咽ぶ。救いを求めるような、悲痛な叫び。足首を食い千切られたような激痛に、ひとりの乙女に戻った哀切の悲鳴が、絶望の街に響き渡る。ゴロゴロと転がり狂う銀と桃色の天使。やがて突っ伏したまま、爪先を逆方向に向けた聖なる戦士の動きが止まる。ただ投げ出された右手の指が震え、いびつに変形した肩がブルブルと痙攣するのみ。
 肩までかかるピンクのストレートに表情を隠された女神の左脚。ムッチリと張りのある太腿の裏側に、凶魔の右手が食い込む。
 引き攣るような衆人の悲鳴と、反り上がった超能力天使の絶叫は同時にあがった。
 
 ブチイッッ・・・ブチブチイッッ・・・ビチイッ・・・
 
 銀色の皮膚に包まれたサクラの肉片が、筋組織とともに凶魔の右手に強引に毟り取られていた。
 生々しい内肉の色と糸を引く鮮血。
 絵に描いたような美少女が。モデルと遜色ない美貌を誇るアイドル戦士が。
 猟奇的ですらある嗜虐に血祭りにされ、痛哭に身を焼いている。
 
「助けてくださいと、このオレに命乞いするがいい」

 仰向けに蹴り転がした美乙女の可憐な顔を、漆黒の足が踏み躙る。
 額に頬に、薄皮を通じてねじ込まれる摩擦の痛み。大の字で横臥した桃色の聖天使は時折思い出したようにビクビクと痙攣するだけで、四肢を投げ出したまま動かない。
 かざした右手から暗黒の闇光線が、地に倒れるファントムガール・サクラの水晶体に照射される。
 
「んんんあああああああッッッ――――ッッ!!!!・・・あくうぅッッ・・・あがァッ・・・アアア・あァッ・・・」

「哀願しようがお前は殺す。だが命を乞え。苦痛から解放されたければ、オレに服従するのだ。殺されると知りつつお前は助けを乞い、希望虚しく惨めに処刑される。守護天使にあるまじき最期を、全人類に見せ付けろ」

 サクラの細い首を凶魔の右手が鷲掴む。
 邪に染まった暗黒光線を光の象徴に直撃された美戦士の苦悶は激しかった。小さな身体の全身に痙攣が広がっている。脱力した四肢。鳴り止まぬエナジークリスタル。銀色の皮膚からは輝きが消え、乾燥したように細かなヒビが入っている。胸の水晶体同様、点滅を繰り返す青い瞳は暗黒の空をさ迷い、だらしなく半開きになった唇からは、とろとろと朱色混じりの唾液が顎を伝って、細首を絞めるゲドゥーの右手を濡らしていく。
 もはや、守護天使の勝利を願う声など聞こえてはこなかった。
 もう、楽にしてあげて欲しい。ただ、安らかに眠らせてあげたい。
 悪の勝利を悟った人類の胸に、せめて女神がこれ以上苦しむことのない死を願う気持ちだけが募っていく。
 
“うぇあああッッ・・・んああッッ・・・腕がァ~~ッ・・・脚ィ・・・があァ~~ッ・・・ダ・・・めェ・・・あ、あたしィ・・・・・・もォ・・・ダメえェッ・・・・・・も・・・う・・・・・・”

 再び暗黒光線が宙吊りの天使に注ぎ込まれる。
 溶け爛れ、腐敗し、焼き尽くされる煉獄に、壊れたはずの手足が狂ったように暴れる。苦痛に泣き叫ぶ少女の悲鳴と、徐々に間隔を空けていくクリスタルの警告音。渋谷駅前の交差点、今、人類のためにその身を捧げた愛らしき超能力天使が、その命を刻一刻と削られ死に向かっていく・・・
 
「アッ・・・アアッああァッッ・・・た、助けェ・・・てェ~~ッッ・・・・・・」

 夢遊病者の如く。
 引き攣る苦悶の絶叫の狭間、ファントムガール・サクラの潤いある唇から、哀切の台詞は紡ぎ出された。
 
「ゆッ、ゆるぅッ・・・してえェェ・・・・・・も、もォッ・・・・・・ゆるし・・・てえェェ・・・くだ・・・・・・さ・・・いィ・・・・・・」

 大きな瞳に灯っていた、青い光が消える。
 “最凶の右手”から解放された銀と桃色の美乙女の肢体は、どしゃりと膝元から崩れ落ち、スクランブル交差点の中央に敗北の姿を晒して座り込んだ。
 濃紺のひとつ目が見下ろす先で、黒い煙を全身から立ち昇らせたサクラの小さな肢体は、もはやピクリとも動きはしなかった。

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| ファントムガール | 02:42 | トラックバック:0コメント:10
コメント
勢いで一気に書いたので、チェック甘くなってるかも、です。
あと2回くらいで十一話もようやく終わる予定です。
ひとりでも多くの方に完走して付き合っていただければ幸いに思います。
2008.11.09 Sun 02:45 | URL | 草宗
体調不良であるなか、更新お疲れ様です!

確かに!確かにゲドゥーの一番の天敵は不可視の力を操る、所謂「硬さ」を無視できるサクラ!

しかし打撃主体の他のファントムガールでは「殺しの経験」を持つ意志力を備えたゲドゥーを今現在では上回れそうもない中、
唯一対抗できそうなのが一番慈悲深いサクラなのはいかにも皮肉ですね。
優しさは弱さなのか?
弱さは罪なのか?

これは私なりのファントムガールのテーマの一つと思っているのですが、サクラ戦はそれが強く現れますね。
まあとかなんとか言いつつ、久々のファントムガールの死があるのかと期待しまくっちゃってる訳ですがw

草宗様におかれましては、この季節は無理だけはせずお身体に気をつけて下さいね。
それでは失礼しま~す。
2008.11.09 Sun 18:45 | URL | 藤井羅洞
更新お疲れ様です☆
ウチもリディア再開しましたので、お暇な時にでもご覧下さい。

まだ全部読み終えてないのに、宣伝だけはしっかりしていく最低野郎・あすでした(汗)
2008.11.09 Sun 22:20 | URL | みすた~あす
ども。更新お疲れ様でした^^

サクラ VS ゲドゥ戦も佳境に来ましたね。
久々の「身体中穴だらけ」シーンを堪能致しました^^

私の中では、今でも第4話終盤から第5話冒頭にかけてユリアが被った惨劇が「究極のピンチシーン」として脳裏に焼き付いています。
あのときユリアの身体からは完全に生体反応が消えたようで、ファントムたちがこれまで体験した唯一の「死」ではなかったでしょうか。
それ以外のシーンは、敵がトドメをささないか、(図らずも)トドメをさされる前に変身解除して戦線離脱していますね。
なので、「まだこの子は生きている」という安心感がまだ残っていますね。
今回の東京三部作では、ユリアのあのシーンを上回るピンチシーンが出てくるかもしれないと、毎回ワクワクドキドキしながら読んでいます^^

だんだん寒くなってきましたが、御身大切に。
2008.11.10 Mon 00:43 | URL | にゃん
>藤井羅洞さま

今回の話のなかにはサクラが抱える矛盾を裏テーマのような形で含ませていたんですが、それを読み取ってもらえてとても嬉しく思いますw
殺意を容赦なく抱けるゲドゥーと殺意を持つことができないサクラ。
今回の敵とファントムガール陣営との違いを端的に表したのがこのふたりの闘いなのかな、という気がします。

とか言いながら、難しいことは置いといてw、両者の闘いの結末がどうなるのか、純粋に楽しんでもらえればいいんですけどねw
この季節はここ数年いつも胃腸壊して数日調子が出ないんで、ご忠告どおり気をつけながら頑張ります(^^ゞ

>みすた~あすさま

リディア本格再開ですか。まずはおめでとうございます♪
こちらからもまた伺いますので、よろしくお願いしますね。
2008.11.10 Mon 01:01 | URL | 草宗
>にゃんさま

いつもお世話になっております♪ 長かった三部作もようやく第一話のゴールが見えてきましたよ。

そうですね、後に復活するとはいえ、ファントムにおいて完全な死を迎えたのは4話のユリアだけだと思います。少なくともボクのなかの公式設定ではそうなっていますw
「戦士」という括りで考えると6話の四方堂亜梨沙と今回の相楽魅紀が第2、第3の犠牲者と言えるんじゃないでしょうか。

ユリアのあのシーンを越えられるかというと難しいですが(インパクトを出す、という意味では当時の持てる力を全て注いだのがあのシーンですので)、なんとかあれに迫る、あれに勝るシーンを三部作のなかで描けるよう全力を尽くす所存です。
三部作の評価がどのようなものになるのか、今からもう戦々恐々としてますけどw

ではではお互いに体調には気をつけて頑張りましょうねw
2008.11.10 Mon 01:16 | URL | 草宗
おぉ
更新乙です。
確かにユリアのシーンが最高ですが、11章のナナ・アリス・サクラもかなりでした。
ってサクラはまだ終わってないか!?
2008.11.10 Mon 13:58 | URL | TJ
>TJさま

毎度ありがとうございますw
はい、サクラはまだ終わってないですねw 東京三部作の第一弾がまずまず楽しめていただいているようでホッとしました。
三部作が終わったときに最高だったといっていただけるよう頑張りますw(先は長いですけど)
2008.11.10 Mon 22:11 | URL | 草宗
毎週の更新、お疲れ様です。

サクラの攻撃を堂々と受けてもほぼ無傷、防御も一瞬で突き破るゲドゥーの圧倒的な強さには、惚れちゃいます(笑)
この強さにはどんな強気の言葉にも、イヤミが無いですね。

こんな危機的状況の時のサクラの、
「女子・・・高生でも・・・・・・闘う・・・もん・・・・・・」
にはとても萌えたよ。
「デス」の不発がサクラの優しさであり、それが戦いでの弱さの表れになった感じですね。
超能力の技ゆえに、この技への迷いが技の失敗として出ちゃいましたね。
優しいサクラですから、心を鬼にして戦うのは難しいだろうな。
この後どうなっていくのか、楽しみにしてますね。
2008.11.12 Wed 01:23 | URL | さとや
>さとやさま

いつもありがとうございます♪
萌えていただけましたか? いや~、嬉しいです。サクラには一度は言わせてみたかった台詞なのでw

「デス」についてはもう仰る通りで、サクラの強さと弱さを端的に表してる技だといえるんじゃないでしょうか。
というかサクラ以外のメンバーがこの技できたらほぼ無敵かもしれません(^^ゞ
「必殺」という意味では全ての技のなかでも「デス」が一番だと思いますが、いかんせん発動されることがないのがこの技です。

十一話のラストも迫ってますんで、なんとかいい形で終われるよう、頑張りたいと思います。

2008.11.12 Wed 23:40 | URL | 草宗
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