「最終話 カウントゼロ。始まりの終わり」
1、ダミー
バブル時代の負の遺産が、首都にはいまだ点在している。建設はされたものの、高額な入居料を払う企業が現れず、結果空き家となったテナントビル。
買い取り手もないまま、その10階建てのビルは廃墟と化していた。使用者がいなかったため、内部にはなにもない。ただ床と壁があるだけの、ガランとした空間。
太陽はまだ沈み切っていないというのに、部屋も通路も堆積したような薄闇が支配していた。照明器具が一切ないためだ。窓から挿し込む光だけが、ぼんやりと室内を浮き上がらせている。
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