巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

ファントムガール 第十一話 7章―6

 驕りでも、脅迫でもなく――
 桃子の死を婉曲に宣言する海堂一美の声は、無機質な響きのなかにただ現実を突きつけるような冷徹さが込められていた。
 ゴクリ、細く白い咽喉が鳴る。冷たく濡れた己の掌と尖った顎を伝う汗の感覚を、エスパー少女はどこか霞みがかった意識のなかで自覚していた。
 
 強い―――
 超能力者ならではの鋭い嗅覚が語りかけてくる。このひと・・・海堂一美と名乗ったこのひとは、途轍もなく強い。本来ならば、桃子が相手をしてはならないほどの。
 正確に言えば、恐ろしい―――
 外見が示す彼の職業、真正のヤクザ者であることが恐ろしいのではない。海堂という人間の存在、そのものが桃子に畏怖を与えている。
 
 身長は180cmを越えるくらいか。ソフトモヒカンの髪型が細長い顔をより鋭利に見せている。高く尖った鼻梁と薄い唇。全身のあらゆるパーツが鋭く研ぎ澄まされたような印象。長方形のサングラスで表情は読み取れないにも関わらず、海堂の放つナイフの如き殺意が、桃子には明確に伝わってくる。
 恐らく100人が100人、この白ずくめの凶魔と遭遇した者は、触れれば切れそうな殺意を感じ取ることだろう。
 だが天から念動力を授けられた美少女は、その類稀な直感で海堂一美の本質にまで迫っていた。
 
「明治神宮で話した通り、藤木七菜江という餌がすでにある以上、お前を生かしておく必要はない。見せしめの意味も含めて盛大に死んでもらおう」

「・・・あたしを殺したくて・・・たまらないって感じだね・・・」

「人類の守護天使を屠る。殺しを生業とする者として、これ以上の名誉もないだろうな」

「許せないってひとたちはいっぱい見てきたけどォ・・・人の仮面を被った悪魔は初めて見たよ・・・」

 存在そのものが悪であり、邪。
 環境とか教育とかまるで関係ない、生れ落ちての生粋の悪党。魂自体が邪悪で出来ている存在。
 赤ん坊が事故に遭いかけていたら助ける。理由もなくひとを傷つけることには躊躇する。それが人間の性というもの。海堂は違う。他者が傷つくことに、傷つけることにまるで抵抗感のない男。殺人という人類最大の罪に対してすら罪悪感を露ほどにも持たぬ。思考から発想まで、全ての根本が常人とは違う存在なのだ。
 悪事に喜びを見出すのが悪魔ならば、悪魔はこの世に実在する。目の前に。海堂一美こそ、本物の悪魔。
 
「さすがは超能力者。この海堂一美をよく理解している」

 否定するどころかやや感心したような口調でサングラスの極道が応える。
 むろん、自身のことはよく悟っている。スカーフェイスのジョーは殺人快楽者、人殺しに快感を覚える異常者だが、『最凶の右手』は少し異なる。殺人が当然のことなのだ。食事を摂るのと、同じ。通常では有り得ない感覚。 『エデン』が邪の資質に合わせて闇のエネルギーを授けるというのであれば・・・邪そのものである海堂が秘める暗黒エナジーはいかなる巨大さになるというのだ。
 危険すぎる。この闘いは。
 誇張ではない、死の薫りが濃厚に漂う闘い。現に十数分前、桃子はわずかな激突で、常人ならば死は免れぬ破壊を『最凶の右手』から受けている。
 
 逃げるしか、ない。
 
 エスパーの勘と海堂に潰された柔肉の痛みが教えてくれる。勝ち目はないと。逃亡こそが唯一の対抗手段。
 
「また逃げる気か?」

 青白い桃子の表情を読み取ったようにサングラスの凶魔が訊く。
 
「無駄だ。お前は逃げることはできない」

 暗黒の空から漆黒の稲妻が迸ったのは次の瞬間であった。
 真夜中の渋谷駅前に、ひとつ目の巨大生物が降誕していた。
 ダイヤを思わす菱形の頭部に濃紺に光る一文字の眼。誰が見ても明らかな人型のミュータントは、鋭利な印象のある白き甲冑を身に着けている。肩・胸・腰のプロテクターの間から覗く肉体は漆黒の縄で編まれたか如く形状。仰ぎ見る桃子の脳裏に、呪術で使われるという藁人形の姿が重なる。
 地鳴りにも似た悲鳴が、若者集う歓楽街に轟いた。
 突如出現した巨大生物への恐怖、絶望、驚愕。
 海堂一美、いや、凶魔ゲドゥーが振り撒く瘴気に汚染されるかのように、退避中であった渋谷の街をパニックが猛烈な勢いで飲み込んでいく。
 
「さて、どうする? 正義の使者ファントムガール・サクラ」

 口も鼻もない細長いゲドゥーの顔が、不敵に歪んだようであった。
 
「何万という犠牲を残して逃げるつもりか? それとも、お前ひとりが犠牲になるか?」

 悲鳴轟く真夜中の渋谷に、光の奔流が渦を巻いて立ち昇る。
 こだまする叫喚に挿し入る、歓喜とどよめき。死を覚悟した人々の、藁にしがみついた迸りであったか。
 女神が、降臨していた。
 漆黒の凶魔を追うように続けざまに現れた、銀とピンクの守護天使。歓楽街を塗り潰す絶望に、希望の光が切り込みを入れる。巨大生物の目の前に対峙する桃色のファントムガールの姿は、逃避すらままならぬ人々には、まさに美麗なる神の遣いとして映った。
 
 噂には聞いていたが、なんと神々しき姿か。
 50mに迫る身長は巨大生物と遜色ないものの、抱かせる心象はまるで違う。恐怖と威圧感の代わりに感じるものは、どこか慈しみの和やかさと尊きものへの畏怖。全身銀色の体表に浮かんだシンメトリーの模様は、シンプルでありながら可憐さを強調するような趣があった。模様と同じピンクの髪は、肩にかかるストレート。街角でよく見かける髪形は、人気モデルさながらの美貌に驚くほどマッチしている。
 女神の形容に決して位負けしない容姿であった。
 瓜実の輪郭に可憐と美麗を備えた魅惑的な瞳。色香ほのめく高い鼻梁と厚めの唇。全てのパーツが完璧にしつらえられた美少女。まだ発達段階と見受ける小柄な肢体は洗練されてるとは言い難いが、小ぶりでも形のいい乳房とキュッと吊り上がった大きめのヒップは少女のそれとは思えぬほどに艶かしい。
 その美貌といいスタイルといい・・・蕾の愛くるしさと成熟した芳香を兼ね備えた美乙女。
 たんなる巨大な存在ではなく、守護天使と呼称されるべき説得力を、ファントムガール・サクラの雄姿は物語っていた。
 
 圧倒的悪の化身と、美しき守護少女。
 前もっての知識などなくても、巨大な存在の本当の正体など知らなくても、場にいる全ての傍観者は悟っていた。両者が何者かを。漂う臭気が教えてくれる。本能のアンテナが感じてくれる。ひとつ目の怪物が恐るべき脅威であり、絵に描いたような巨大な美少女が唯一対抗出来得る戦士だと。
 今、日本有数のカジュアル都市は、正邪の聖戦の舞台となった。
 
「死ぬと知りつつ躊躇なく変身したか。守護天使の異名に恥じぬ決断だ」

「ナナのときとは・・・違うよ」

 皮肉でもなく賞賛を含むような低い声に、ファントムガール・サクラの応えは凛として響いた。
 
「ナナは・・・ううん、あたしたちは、『エデン』を受け入れた時からいざって覚悟はできてる。さっきは逃げるのが一番いい方法だと思ったから逃げた。でも・・・この場にいる人たちを見捨てるなんて、ゼッタイにできっこない」

「不便なものだな。逃げたくても逃げられぬとは」

「不便なんかじゃない。あたしひとり助かるためにファントムガールになったんじゃないもん、ひとりでも多くのひとを助けるためにファントムガールに選ばれたんだって思ってる。ここで逃げるなんて有り得ないよ」

「正義の名の下に犠牲になるか。まさか生存できるなどと思っていないだろうな?」

「勝てるとは思ってない。だからって犠牲になるわけじゃない」

 ピンクに輝くストレートの奥で、美麗なる令嬢と交わした会話と、瀕死のアスリート少女を置いて逃げた記憶とが混濁して蘇る。
 
「理由も勝算もないよ。闘わなきゃいけないから闘うの! もう、逃げたくなんかない!」

 銀のグローブをはめた両手が真っ直ぐに突き出される。
 決戦の火蓋を切って落としたのは、生来闘いを好まぬ優しきエスパー戦士の光線であった。
 掌から射出される、ピンク色の光。銀色の女神たちが基本技として使うハンド・スラッシュが、佇むゲドゥーへと放たれる。
 比較的容易く放つことができるハンド・スラッシュは、ファントムガール全員が扱える初歩的光線であった。ジャブという意味では適格ではあるが、威力に乏しい欠点は否めない。
 
「つまらんな」

 キャッチボールでもするかの如く。
 バチイッッ! という炸裂音を響かせて、聖なる光の帯は漆黒の縄で編まれた右手に受け止められていた。
 致命傷を負わせる技ではないことは確かにしても、ミュータントにとって最も災いを為す光の攻撃を、こうも易々とあしらうというのか。
 だが生身の身体にて手合わせ済みのサクラは、ショックであるはずの事態にまるで動じず、次なる追撃を仕掛けていた。
 
「“ショット”ォッ!!」

 差し出した両手が強く瞬いたと見えたのは、一瞬。
 一直線だった光線が無数にその数を増殖させる。ハンド・スラッシュの乱れ打ち。豪雨のごとき光線の乱射は、まさにショットガンの命名に相応しい。
 エスパーである、サクラならではのハンド・スラッシュの進化形。
 数え切れぬ大量の光線を一度に放つなど、この技をオリジナルとするサトミにしてもできるかどうか。身体能力では他戦士に一歩譲るサクラであるが、思念を元に技を発動する光線技は種類にしろ威力にしろ得意とするところであった。散弾となった光の飛礫が、佇む凶魔に襲い掛かる。
 
 バババババババンンッッッ!!!
 
 爆ぜる音色が断続して渋谷の夜空に奏でられる。
 全身に殺到したピンクの連撃を、ゲドゥーの右手は全て小蠅を叩き落すが如く弾いていた。
 
「“バースト”ォッッ!!」

 昼のような明るさが深夜の街を支配したのは、数瞬の間も置かぬ時であった。
 連続の光線技。更なる進化を遂げたハンド・スラッシュ。
 いやもう、同一系の技とは到底見ることはできない、通常の20倍はあろうかという巨大な光の砲撃が、渾身の力とともにサクラの両手から放たれる。
 ゴオオオオオウウウッッ!!!
 桃色の弩流が大地を揺るがす。空気を焼くツンとくる異臭が鼻腔をくすぐる。
 闇の眷属を十分に一撃で葬る強大な光の波動が、刃のような鋭利な凶魔に突き進んでいく。
 
「フン」

 真一文字の眼しか持たぬ菱形の頭部は、塵ほどの動揺も示すことはなかった。
 右手を握る。振りかぶる。
 必殺の域に達しているはずの、サクラ渾身の光線に向かい―――『最凶の右手』が拳を振るう。
 
 ―――信じられぬ、光景であった。
 美乙女と、いみじくも聖戦の観覧者となった渋谷の住人たち。蒼白となった彼女らの瞳に映ったものは。
 怒涛となって押し寄せる光線が、拳ひとつで微塵となって吹き飛ばされる姿。
 力の限り威力を高めた光線技“バースト”・・・ゲドゥーの大振りの一撃によって、サクラの必殺光線は霞となって消え去ってしまっていた。
 
「う、うそ・・・そん・・・なァ・・・」

「やはりつまらんな。桃色の戦士サクラはファントムガール内でも最弱とは聞いていたが・・・弱すぎる」

 眩暈が、エスパー天使の足元をグラグラと揺るがす。
 眩暈ではなかった。一歩、一歩と向かってくるゲドゥーの前進。地響きが局地的な地震となって、サクラと恐怖に打ちのめされた人類を襲う。漂う惨劇の予感。かつてない悪魔の脅威に、何かこれから途轍もない、想像するだに恐ろしい悪夢の予兆が・・・暗鬱な空と重なって覆ってくる。
 
 近づけては、ならない。
 
 予想は確信に変わっていた。あのゲドゥーの右手。脅威を通り越し、畏怖すら覚えるあの右手はあまりにも危険すぎる。海堂一美の右手にさんざん蹂躙された経験が、サクラの脳裏に警鐘を鳴らし続けていた。あの右手の届く範囲に近づいてはいけない。接近戦になった時点で・・・終わりだ。
 念動力で作った、鉄の壁。海堂の右ブローは信じられぬことに、サイコのシールドを破った。あらゆる防御が無意味であることだろう。接近は即ち、死を意味する。勝機があるとすれば、右手の届かぬ遠距離戦。同時にそれはサクラの得意フィールドである光線の攻防も意味していた。
 
「“レインボー”!!」

 サイコの力、念動力を実体のあるエネルギーに変えてふたつの掌に集中させていく。
 最大出力の超能力を、七色の光線と化して照射するサクラの必殺技“レインボー”
 唐突に最高の技をこの場面で出すことが、決して褒められた策でないことは、戦闘に本来無縁のサクラとて理解している。
 だが・・・通常の攻撃がゲドゥーの前ではほとんど無意味であることが明らかとなった今、その前進を食い止めるのは最高威力のこの技しか思いつかない。
 
“お願いィ、効いて! あたしの力の・・・超能力の全てを!”

 桜宮桃子が、人類の守護者である理由を。常人とは一線を画す、選ばれた戦士であるべき源泉を。
 心優しきイマドキ美少女が、戦士として闘わなければいけなかった全て・・・天から授かったサイコのエネルギーが、強烈な正義の刃となって迫る凶魔を迎撃する。
 
 光り輝く、一直線の虹。
 エスパー天使から撃たれた七色の光の奔流が、死の化身である漆黒の凶魔に呑み込みかかる。
 
 ドンッッ!!
 
 逃げていた。
 それまでの悠然とした足取りが一転、日本刀の妖気を纏ったひとつ目の藁人形が、地を蹴り凄まじい速度で一気に可憐な少女戦士に殺到する。
 
「は、速いッッ!!」

 虚しく宙を過ぎる虹色光線。予想を遥か上回るゲドゥーの身体能力。刹那に訪れた、絶体の窮地。
 危険領域に躊躇なく踏み込んでくる菱形の凶魔。
 必殺光線を避けられた桃色の女神の身に、終末の息遣いが一気に吹きかけられる。
 
「“ブラスター”ッッ!!」

 突如火花に包まれる、白甲冑の悪魔。
 爆発という現象自体を、超能力によって直接敵の肉体に引き起こす異能技。通常の光線では猛スピードで迫るゲドゥーに的中させるのは、サクラにはできない。だが“ブラスター”であるなら、気配さえ掴めばいかなる速度の持ち主であろうと攻撃は可能だ。
 
「効かねえな。こんなものは」

 サクラの懐の内に、煙を立ち昇らせたひとつ目の凶魔はいた。
 手を伸ばせば確実に届く距離。絶対不可避である反面、与えるダメージには劣る“ブラスター”では、進撃をわずかに留まらせるので精一杯であった。
 菱形の頭部がニヤリと笑う愉悦の響きを、美貌を汗に濡らした可憐な少女戦士は聞いた。
 
「この至近距離で攻撃をかわすのは、無理ってもんだ」

「普通に闘ったら勝てるわけないって・・・あたしだってよくわかってる」

「超能力者ってやつは、突拍子もない技仕掛けてきやがる。“ブラスター”か? 愉しめた攻撃だった」

「通用するなんて思ってないよ。ただ、ちょっとの間、動きを止められれば良かった」

 絶対の死を招くはずの接近戦。圧倒的劣勢に立たされた、窮地の守護天使。
 だが。
 違った。
 サクラの目前に迫ったゲドゥーの周囲には、ピンクに輝く巨大なダイヤモンドがその身を閉じ込め包囲している。サイコが作り出した桃色の結晶の内部に、恐るべき凶魔は拘束されていた。
 
「“プリズン”、フォース・シールドで作った光の牢屋よ。あなたを拘束できるのはわずかな間だろうけどォ、この距離だったら今度は外さないよ」

 両手を突き出したサクラの掌に、再び七色の光が集結する。
 
「光のエナジーで作った結晶の壁は闇の力で壊すのは難しいけど・・・同じ光なら簡単に通すことができる。あたしがあなたに勝てるのなんて、多分、このチャンスだけだろうから・・・」

 容赦は、しない。
 ナナを血の海に沈め、殺意をばら撒く恐るべき敵。情けをかけるべき相手ではないことは、少女にも百も承知であった。人類のために、滅ぼさなければならない悪魔。考え得る最強の技を、エスパー天使が放つ。
 
「“レインボー”!!」

 全サイコエネルギーを集約した聖なる光線が、手を伸ばせば届く距離で虹色の橋を架ける。
 ギュララララララララッッ!!!
 サクラ最大の光線が桃色の結晶をすり抜け、身動きできぬ凶魔の白甲冑、その胸の中央に激突した。
 しのぎあう、光と闇のエネルギー。漆黒に漆黒を重ねた殺人鬼の暗黒は、吐き気を催すほどの濃密さで凝り固まっていた。肉体の強さのみではない。いや、寧ろゲドゥーの本質的脅威は、純粋とまで言えるその圧倒的邪悪。底知れぬ負のエナジーが、全放出する美乙女の最強光線を黄金色に跳ね散らす。
 
「無駄だ。お前ごときがこのゲドゥーに通用すると思ったか」

「そんなこと、わかってる!」

 銀のマスクに光る青き瞳。
 ゾクリとする美しさとキュンとくる愛しさを同居させた魅惑の瞳が、強い決意を伴って凛と輝いた。
 
 気付いては、いた。
 最強の光線であるはずの“レインボー”が真の強敵に対し、必殺足りえないことに。
 殊更メフェレスとの闘いにおいて、真正面から七色の光線が打ち破られたショックは、争いを好まぬ桃子にしても改良の必要性を余儀なく思わせた。今のままでは通用しない。桃子が秘める超能力、そのサイコエネルギーを掻き集めて放つ“レインボー”は最大出力を誇るはずなのに、その威力がナナのスラム・ショットやアリスのヒート・キャノンに比べ見劣りするのは何か理由がある。
 疑問はほどなく解けた。
 超能力を結集する“レインボー”、その光のエネルギー自体は、決してナナやアリスに劣っているわけではない。
 問題なのは、そのエネルギーをそのまま光線として撃つ、その方法。
 “プリズン”がダイヤモンドをイメージするように、あるいは超巨大質量の球体で押し潰す“メテオ”がボーリングの玉を想像するように。
 具体的なイメージを創ることで、サイコパワーはその威力を増幅させる。
 
「“レインボー”ムーヴ・・・“スパイラル”ッッ!!」

 ぐにゃあああああ・・・
 捻じ曲がる。サイコの虹が。意志を持った動物のように、その真っ直ぐな七色の帯を、自ら回転して変形していく。
 サクラが脳裏に思い描いたものは、錐揉み回転して進むドリルであった。
 単に思念の力をぶつけていた虹色の光に新たな力が加えられる。回転力と推進力。そしてなにより、穴を穿つという、凶暴ですらある意志。エネルギーの集合体であった七色光線が、今、具体的な破壊の力を得て進化した必殺技として生まれ変わる。
 
 ギュリュリュッッ!! ギュル、ギュルルルルルルッッ!!!
 
「ぐうッッ・・・ぬぐッ・・・ぐおおおおッッ?!!」

 漆黒の凶魔が思わず洩らす叫びは、確かな驚愕に彩られていた。
 弾け飛ぶ白プロテクターの残骸と、壮絶なる破壊音。
 凶魔ゲドゥーの胸襟を抉る七色の光が、暗雲重なる渋谷の夜空に迸った。

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