巨大変身ヒロインのオリジナル小説を書いている草宗の独り言をつぶやくブログです。

草宗の書斎

ファントムガール 第十一話 6章―4

 金切る少女の悲鳴に、夜の東京湾が震えたかのようであった。
 クールな態度とは不釣合いな、やや鼻にかかったアリスの甘い声が、壮絶な苦しみに獣のごとき絶叫を迸らせる。
 巨大クラゲとタコの魔獣。半透明と濃緑の触手とによって、四肢と胴体とを絡め取られたオレンジ色の天使は、空中で全身を突っ張らせてヒクヒクと痙攣している。暗雲で覆われた天を仰ぐアリスの視界は、黒一色で塗り潰されほとんど何も見えてはいない。
 
 上腕、手首、太腿、ふくらはぎ、下腹部、背中、臍上、肩口、頸部・・・
 火箸を突きこまれたかのような灼熱とともにアリスを襲った猛毒は、ありとあらゆる箇所から装甲天使の体内に打ち込まれていた。
 蜂に刺された折のズキンッとくる痛み。その何倍にも相当する激痛が、巨大クラゲより遥かに小柄なツインテールの戦士の体内、二桁を越える箇所で疼き暴れているのだ。
 青い光を放っていた女神の瞳が、点滅を繰り返す。ドリルで全身を抉られる激痛と焼きゴテを押し付けられたような業火に一斉に包まれ、サイボーグ少女の意識は断絶と蘇生の狭間にあった。
 
「ふぇぐうッッ・・・グウウ・・・あがッ・・・うああァァッ・・・・・・」

「これほどの毒を打たれても死なないとは、さすがに身体の半分が機械でできているだけあります。アーマーが身を守ったというのもありますかね」

 愉悦を隠しきれないクトルの言葉に、アリスはただ呻くしか応えることができない。
 確かにサイボーグであるアリスには、毒の効力は生身の戦士に比べて薄い。だからこそクラゲの猛毒を大量に受けてなお、意識を繋ぎ止められている。
 とはいえ痛覚は人並みに持つために、雪崩となって押し寄せる激痛に意識はほとんど飲み込まれてしまっていた。さらに毒の影響で麻痺した身体は、思うように動いてはくれない。
 反撃できない装甲天使の窮地を、破壊と淫欲に飢えたタコ魔獣が見逃すはずがなかった。
 
「これまでのお礼、たっぷりさせてもらいましょうかねえ。以前、君に受けた痛み、忘れてなどいませんよ。さあヒドラよ、この生意気な少女に地獄というものを見せてやりなさい」

 海中から飛び出した、数十本の触手。降りしきる豪雨が、逆回転の映像で海から空へ昇っていくかのような。
 腕に、脚に、胴体に。毒の腐敗と高熱に唸されるアリスの肢体に、ビッシリと電気クラゲの触手が巻きつく。
 幾分太い濃緑の触手が、背後から絡みつくのはほぼ同時であった。東京湾上空に浮かんだツインテールの装甲天使。前方の海に蠢くはクラゲの怪物。背面にはタコの魔獣。圧倒的な邪の猛威を知らしめる光景が、ネオン照らす夜の海に展開されている。
 
 ギチッ・・・ギギッ・・・ミシギシッ、ギリリッ・・・
 
 混濁する夕子の意識に飛び込んできたのは、両方の腕と脚とを強烈に引っ張られる新たな苦痛。
 クトルとヒドラ、巨大獣の触手がアリスの肢体を真ん中からふたつに裂けよと言わんばかりに、容赦なく左右に開く。毒に苛まれ力の入らない聖少女にとって、過酷すぎる責め苦。肩も肘も脱臼しそうな痛みと、180度見事に開脚した股裂きの苦しみに、クールな少女戦士があられもなく頭を振って悶絶する。
 
「ああッッ?! あぐあアアッッ!! くううッ・・・うぐッ・・・はッ、はなせッ・・・放せえェッ・・・」

「おやおや? 能ある鷹は、と昔から言いますがアリスくんも実に罪深い。普段小憎たらしいほど無愛想なくせに、こんなにも可愛らしい声で鳴くんですねえ。ではもっと大きな声で鳴いてもらいましょうか」

 引き抜かれそうな四肢の関節が、奇妙な音を奏で始める。
 霧澤夕子の端整な美貌を象ったマスクが、無表情のままガクガクと前後左右に振り回る。マスクの端から涎と思しき透明な雫が、つっと首筋を伝って糸を引く。
 オレンジと銀の胴体に絡みついた触手、半透明な4本と濃緑2本に猛烈な圧迫が込められたのはこの時であった。
 
「ごぶッッ!!!」

 くぐもった苦悶が端整なマスクの内側でこもるや、アリスの顎から耳へのラインにかけて、ちょうどマスクと素顔の継ぎ目の部分から紅の鮮血が霧となって噴き出る。
 マスクの下、同じ表情をした素顔が、女神自身の吐血で真っ赤に汚れていることは確実であった。
 一本の触手に締められるだけでも、その苦しみは相当なものがあるだろう。今のアリスはくびれた胴を合計6本もの触手に責められているのだ。しかも前からも背後からも引かれることで、内臓を襲う圧迫は途轍もなく高くなっていた。破損した臓器から溢れた血は、更なる加圧でたまらず口へと逆流していた。
 それほどの凄惨なる圧搾刑に処して尚、触手たちの暴虐は留まらない。胸のプロテクターごと銀色の胴体を飽きることなくギリギリと締め付けていく。呼吸すらままならない苦しみに、たまらず仰け反るクールな天使。マスクの継ぎ目から流れた真紅が、リングの嵌った首に網目状の模様を描く。
 
「ぐぶうッッ!!! ガフッッ!! ぐあああッッ・・・グウウッッ?!!」

「美しい。美しい響きです! なんと心地よいアリスくんの鳴き声! 肺腑を潰されるのはそれほどに苦しいのですか? 東京湾に季節ハズレの巨大ウグイスが舞い飛んできたようです」

「ぐふッッ・・・こ、このッ・・・毒よりもあんたの下衆ぶりが吐き気するわッ・・・クトルッ・・・」

「弱々しい鳴き声とは対照的な、生意気な態度がまたそそりますねえ。以前から君のひとを見下した視線を、官能で蕩けさせてみたかったのです。発情ウグイスはどんな声で鳴くのでしょうか?」

 真一文字に開ききった無防備な股間に、ヌメリ光ったクトルの触手が迫る。
 拘束に使う触手を4本に減らし、残る3本が天使愛撫の担当となる。卑猥極まりない粘液まみれの触手が、性に疎い美少女の敏感な箇所を求めてまさぐり這いずる。首筋、腋、太腿の付け根、お臍、脇腹。腐臭を撒き散らしながらグチュグチュとアリスを翻弄する3本の淫手は、ウブな少女の弱点を容易く嗅ぎ分けていた。
 
「くふッッ・・・んんッッ、んくッッ!・・・ク、クトル・・・き、貴様・・・」

「ほれ、どうしました? 声に艶がでてきてますよ。17歳の乙女の肢体は実に感度がいいですねえ。全身をローション付きで撫でられればひとたまりもないでしょう。所詮、天才少女といえど雌なのですよ」

「こ、こんなものが・・・私に効くと思ってるの?・・・ひうッ?! んくふッッ!!」

「己の淫乱ぶりがわかっていないようですねえ、アリスくん! 言葉では装っても、素直な身体は快楽にヒクついていますよ」

 毒とは違う種類の刺激に、アリスの肢体はもぞもぞとくねり始めていた。艶を帯びたその動作が、装甲天使の全身が女の昂ぶりに染まっている事実を知らせる。大開きにされた股間の中央から、とろりとした雫が垂れ落ちていく。性に疎いサイボーグ少女の肉体は、クトルの淫戯に容易く虜にされていた。
 その腰がたまらずひくつき始めた瞬間、股間担当の触手が動く。
 
 ずりゅりゅりゅ、ずりゅ、ずりゅりゅりゅりゅ
 
 生温かな極太触手の、摩擦愛撫。
 くっきりとクレヴァスの窪みを露わにしたアリスの股間を、触手が執拗に擦りあげる。クトルのものだけではない粘液が、クチュクチュと淫靡な音色を大開きになった下半身の中央で奏で始める。
 
「あくッッ?!!・・・ハアッ、ハアッ・・・んッ、んくッッ!!」

「おやおや、我慢しきれませんか? 天才少女は勉強ばかりでこちらの方面はとんと学習不足のようです。無様なものですねえ。ほーれ。ほおーれ」

「くふッッ?!! んくううッッ――ッッ!! くあッ・・・ハアッ、ハアッ、い、いまのうちに・・・たっぷり愉しんでおくことねッ! 最後に跪くのはあんたなんだから!」

「いやらしい声で喘いでいる淫乱少女の台詞とは、とても思えませんねえ! もっと鳴きなさい、発情ウグイスめ。ほら、股間のクリちゃんがコリコリに勃ってきましたよ。ほれほれほれ! クリクリクリっと!」

「んきゃううッッ?!! はくううッッ――ッッ!! ひゃ、やめェッッ・・・くあああッ、ああああッッ――ッッ!!!」

「ほれ鳴け! さあ鳴け、無様なウグイスアリス! ホーホケキョ! ホーホケキョ!」

 性についてはほとんど無知の霧澤夕子を堕とすのは、百戦錬磨の変態教師にとっては赤子を相手にするような作業であった。
 情念のほとんどを色欲に占められた中年男は、『エデン』の持つ特殊な性質によって、情欲の魔物とも呼ぶべき存在に変化している。クトルというミュータントはそれ自体がエロスの凝縮体であり、粘液ひとつにも媚薬の効果が秘められているのだ。
 さらに猛毒によってアリスの生命が危機に瀕していることも、少女の発情を高めた。人間が持つ生殖本能。子孫を残す本能が、死が迫った状況に陥ることで必然的に発情を呼び起こしたのだ。戦場で知り合った男女、あるいはともに遭難した男女が、恋に陥りやすいとされるのは、この生殖本能がゆえ。己の肉体が感じてしまっていることを自覚し、内心動揺するアリスには、昂ぶりを抑えるのはあまりに至難の業であった。
 
「やめッッ・・・やめ、ろッ・・・あくううッッ――ッッ!!! んはあああッッ?!!」

「クッキリとよく見えていますよ、アリスくんのヴァギナ。溢れ出た生温かい蜜で、入り口までもうグチュグチュです! 挿入するには十分のようですねえ!」

 回転する濃緑の触手が、槍と化して装甲天使の股間を貫く。
 
「んんんあああああああああああッッッ――――ッッッ?!!!」

「イヒヒヒヒ! 気持ちいいッ――ッ!! 最高ですねえ、美少女の膣は! あの生意気なアリスくんの聖洞が、これほどに柔らかく温かいとは! それそれ、食らいつくしてあげますよ」

「あぐあああッッ!!! くうううッッ――ッッ?!! いひゃああッ、ひゃばああッッ!!」

 ギュリギュリと天使のクレヴァスの内で、残酷な回転音が響く。
 海に飛び散る、愛液の飛沫。かつてない悦楽と吐き気がするほどの恥辱で、美貌のマスクをつけたツインテールが狂うほどに振り乱れる。
 
「そおら、もう一本!」

 拘束女神の真下から迫る、新たな淫触手。
 ズリュズリュと蠢く挿入済みの濃緑槍のやや後方、小ぶりな臀部の割れ目に突き込まれたタコの魔手は、アリスの菊門をこじ開けて細い狭穴を抉り進んだ。
 
「ひぎいィィッッ?!! ぎあああああああッッ・・・ウアアアア・ア゛・ア゛・ア゛ッッ!!!」

 排便用の管を強引に異物が遡っていく苦痛と違和感、不快な圧迫。
 天才と呼ばれる少女の尊厳をズタズタに引き裂くアナル貫通責めに、銀とオレンジの肢体が哀れなまでに悶え震える。
 少女にとって大切なふたつの聖穴を醜い触手で貪るように犯される苦痛は、極限に達した嫌悪感と相まって、下腹部を食い破られたごとき衝撃でアリスを叩きのめす。
 子宮にまで達した第一の触手と、直腸を埋め尽くした第二の触手。
 ギュルギュルと更なる回転を続ける悪魔のドリルは、そのまま融合した『エデン』をも破壊し、腸の内部を逆行し続けていくかのようだった。
 体内をそれだけの暴虐で荒らされながらなお、肉襞に隠された敏感なスポットは官能の刺激を容赦なくアリスの煩悩に送り込み、肛門からは苦痛の裏に秘められた禁断の刺激が電流となって流れてくる。恥辱と苦痛と悦楽の混合麻薬。乙女を襲う残酷な嗜虐に、アリスはただ嬌声と悲鳴を狂ったようにあげ続ける。
 
「ヒドラよ、首を絞めてやりなさい。アソコの締まりがよくなるようにね」

 無防備なサイボーグ天使の首にクラゲの触手が巻きつく。
 間断なく続いていた胴への締め付けに続き、咽喉元への圧迫が新たに抵抗もろくに出来ぬアリスに加えられる。二匹の触手獣に嬲られるツインテールの女神は、甘んじて窒息処刑を受けるしかなかった。
 
 ゴボッ・・・ゴボゴボゴボ・・・ゴボボ・・・
 
 天を仰ぎ見る端整な美貌。マスクと素顔の継ぎ目から溢れ出てきたものは、今度は吐血ではなく白い泡であった。
 ファントムガール・アリスの顔の周囲からとめどなく白泡がこぼれ出てくる。マスクの内部は口腔から溢れた泡で充満しているはずであった。咽喉と肺腑とを強烈に締め付けられ、サイボーグ天使にはほとんど酸素が届けられていない。無表情なマスクの隙間から異常な量でブクブクと排出される泡が、オレンジ色の女神の惨状を象徴するかのようであった。
 窒息の苦しみに硬直するアリスの肢体を、淫触手がふたつの聖窟内で抉り乱して愉悦に浸る。
 装甲天使を犯しながら破壊する快感に、淫欲のタコ魔獣はもはや夢見心地であった。
 
「んん?」

 変態教師の成れの果てが異変を察知したのは、この時。
 肉壷の味をたっぷりと舐め取っている最中、ツインテールの獲物から感じられたのは、明らかな「力」であった。
 
「ほほう、大したものですねえ・・・毒の効力は続いているはずなんですが」

「ギシャアアアアアアッッッ―――ッッッ!!!」

 己の吐いた血と泡に汚れたマスクのなかで、装甲天使の瞳が強く青く輝いている。
 ギシギシと、奇妙な音色を奏でるのはその右腕。
 だが、今度の音はアリスの肉体が破壊されている悲鳴ではなかった。反撃の咆哮。クラゲとタコの触手に絡め取られ、一文字に引っ張られていたはずの腕が、力瘤を作るように拘束に反して折り曲げられている。
 触手の拘束は、サイボーグのパワーによって今まさに振り切られんとしていた。
 触手獣たちの戒めをアリスの右腕のパワーが凌駕しようとしている。電気クラゲの猛毒は今もアリスの肉体を激痛と灼熱で苛み、麻痺は未だに完全な自由を少女戦士に与えてはいない。だが、混濁していた意識は度重なるクトルの嬲りによって火のついた怒りで覚醒が進んだのだ。首と胴への圧搾刑も、下腹部への串刺し刑も、アリスへの責め苦は依然休むことなく続いている。それでも怒りに燃える勝ち気なツインテールの戦士は、不愉快な変態中年に拳を振るいたい一心で、毒に冒された不自由な肢体を懸命に動かす。
 
「さすがはサイボーグ、凄い力ですねえ。クールと称されていますが、姦通された程度でカッとなるなんてアリスくんもまだまだ幼いですな」

「ハアッ、ハアッ・・・言うことは、それだけ? ぐッ、ククッ・・・私の身体を愉しむなら・・・今が最後よ」

「数学や化学は天才的でも、闘いのことはよくわかっていないようですねえ」

 不意にクトルの触手が、一斉に装甲天使の肉体から離れる。
 拘束を解放し、挿入から抜け出して。アリスにとって僥倖としか思えぬ措置に、一瞬少女の脳裏は、何が起きようとしているのか読み取れなかった。
 
「確かにカツオノエボシ、電気クラゲは本当に電気を発生させるわけではありません。しかし『エデン』の力を得てミュータントとなった動物は、光線でも熱線でも放てることを忘れてはいませんか?」

 ゾブゾブゾブゾブゾブッッ!!!
 
 アリスに絡まっていたヒドラの触手が、一斉に新たな棘を銀色の柔肌に打ち込む。
 ビクンッッと仰け反る拘束女神。次の瞬間、ツインテールの戦士に注がれたのは先程のクラゲの猛毒ではなかった。
 『エデン』の力を得た動物型ミュータントはただ巨大化するわけではない。カブトムシのミュータント・ラクレスは熱線を発し、クワガタのミュータント・チタヌスは電撃を操った。人間のミュータントが光線を使えるのと同様、動物もまた恐るべき悪魔の技を手に入れるのだ。
 電気クラゲのミュータント・ヒドラが持つ攻撃能力。
 それはやはりと言うべきか、超高圧の電撃であった。
 
「ウギャアアアアアアアアアアッッッ――――ッッッッ!!!!」

 電磁の蛇がサイボーグ天使の全身を食い破り、這いずり回る。
 雷が直撃する轟音。バチバチと銀とオレンジの肢体が火花を散らし、黄金のプロテクターが夜の闇に発光する。 アリスの体内に装備されたアースの許容を遥かに越えた電撃地獄。機械でできた肉体が、故障のアラームをかき鳴らし、生身の肉体が黒焦げて悪臭を漂わせる。
 ヒドラの放電は一瞬であった。だが、アリスに致命的ともいえるダメージを与えるには十分であった。
 黒く煤汚れたサイボーグ少女の全身からは黒煙が立ち昇り、回路がショートする音と飛び散る火花が、途絶えることなく続く。瞳からは完全に光が消え去っていた。
 
「どうやら、勝負アリのようですねえ」

 ズルリ、と音をたててクラゲの触手から抜け落ちた黒焦げの天使が、東京湾に巨大な水飛沫をあげる。
 シュウウウウウ・・・たちこめる白煙。うつ伏せ状態で水面に落下したツインテールの女神は、お尻をやや突き出した無様な姿勢で、顔面を海中に埋没させている。口の周辺から、ブクブクとあわ立つ気泡。弱々しい光を垂れ気味の瞳に灯した少女戦士の肢体が、苦痛に咽び泣くようにヒクヒクと痙攣を繰り返す。
 
「本当はコレクションに加えて永遠に愉しみたいところですが、生憎メフェレスくんからは機会があれば殺すよう指示されていましてねえ」

 ヒドラの触手が再びしゅるしゅると動かぬアリスに絡みついていく。四肢に、首に、胴体に。
 東京湾の上空に、装甲天使の身体はまたもや触手に拘束されて吊り上げられていた。先程までと同じ光景。ただ違うのは、全身に火傷を負い、時に火花を飛ばすアリスのダメージがより深刻なものになっただけだ。
 
「君たちファントムガールのしぶとさはよく存じ上げていますよ。毒の身体で動こうとした、さっきのようにねえ。アリスくんには確実で絶対な死をプレゼントしましょう」

 ドシュドシュドシュドシュッッ!!!
 猛毒を仕込んだ触手の棘が、無数に乙女の柔肌に打ち込まれる残酷な響き。
 迫る処刑の時を悟ったアリスの肢体がビクンッと硬直する。
 
「知っていますね、アナフィラキシー・ショック。クラゲに刺されて亡くなる方のほとんどがショック死です。一度毒に刺された人体は、その毒に対する抗体を体内で生成しますが、二度目に刺された折に抗体が激しく反応することでショックを起こしてしまう。サイボーグとはいえアリスくんも基本は人間だ。大量の毒を打ち込まれた君に再度同じ毒を大量に注入すれば・・・死は確実です」

 腕をもぎとっても、ローラーで潰されても、霧澤夕子=ファントムガール・アリスは絶命しなかった。
 だが人体が避けることのできない生体反応は、いかに頑強な肉体を誇ろうが、不屈の闘志を持とうが関係なく生命を奪う。生命力の凄まじさについてはミュータントを上回るファントムガール、そのなかでも特に耐久力の高いサイボーグ戦士アリスといえど、この死からは逃れることができない。
 己の運命を悟ったのか。
 無表情なマスクと脱力した身体。あとはただ、毒が注入されるだけのファントムガール・アリスは、なんの抵抗も示すことはなかった。
 
「さようなら、アリスくん」

 クトルの台詞を合図に、巨大クラゲの毒が触手に埋まった無数の棘から一気に発射される。
 アリスの全身に巻きついた半透明な触手から、死を誘う猛毒は銀の女神の体内へと注入されていった。
 
「ふふふ、呆気ないものですねえ。これで約束通り、全てのファントムガールを抹殺した後は、アリスくんの死体は私のものです! うふふふ・・・アハハハハ!」


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